投資クラブとは?身近な友人とつくるコツ 「リターン追求」より、「楽しい勉強」を最優先 - 特集【投資クラブ】 - 経済トピックス - 話題とコラム

投稿日:2017/06/27 最終更新日:2022/08/05
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特集・コラム [ 投資クラブ ]

投資クラブ-1- 身近な友人とつくるコツ

QUICK・MoneyLifeが2006年末におこなったアンケート調査で、「投資について身近な信頼できるアドバイザーはいません」との回答が8割ほど寄せられた。そこでMoneyLifeでは、投資入門者がアドバイザー、仲間を見つける上で役立ちそうな「投資クラブ」について取材を実施。全3回にわたって特集する。
 第1回目は、投資クラブの概要と、それを支援する証券業界の取り組みについて紹介する。取材の結果、投資クラブはアドバイザーを見つけるというより、友人たちと投資を学ぶ機会を得て、『自分の知識・経験を磨くのに有益』であることが分かった。

日本に500グループ、拠出金は月5000円

 
「投資クラブ」とは、少人数の投資家がお金を少しずつ出しあって投資の経験を積むグループのことをいう。法律的な位置づけは民法上の組合となり、投資クラブの名義で、証券会社で口座を開くことも可能だ。日本で投資クラブの普及・支援活動をおこなっている特定非営利法人(NPO)エイプロシス(※1)によると、日本の投資クラブは500件ほど。その多くが会員7〜8名、毎月の拠出金は5000円ほどで運営されているという【図1参照】。
 
図1
 
※NPOエイプロシス:東京・大阪など10ヶ所に事務所を設け、150名を超えるボランティアの講師陣(証券カウンセラー)の協力を得て、証券投資に関する基礎的な知識の普及・啓発活動を行っている団体。団体の運営については、日本証券業協会を始めとした、関係諸団体が支援を行っている。
エイプロシスが奨める投資クラブの結成の趣旨は、気のおけない友人たちによってつくるもの。地域的・年齢的に近い人たちが集まり、楽しく投資を勉強しようというものである。
投資経験者が加われば心強い感じもするが、投資金額を少しだけにとどめることで、あくまでも「金儲け」ではなく、「学習」の場として活用するのである。
一般的な投資クラブは毎月1回会合を開き、そこで運用方針を決める。取引を判断する機会は月に1回しかないため、短期売買が減り、自然と長期運用も身につく。近所の友人と始めてもいいし、学生時代のOBで集まるのもよし。学生時代のゼミ仲間が70歳を過ぎて集まったり、投資の講習会で出会った見ず知らずの人たちが意気投合し、クラブを結成したケースもあるという。
図2
エイプロシスのアンケート調査によれば、投資クラブ参加者の年齢は50代以上で8割超を占めている【図2参照】。リタイア後の生活を考え、真剣に資産運用をはじめたい層がクラブを結成しているようだ。特に団塊の世代にとって、退職したあとも仲間と集まり、サークル感覚で楽しむこともできる。
各メディアで報じられているように、最近は大学生が投資クラブをつくるケースもある。世代に関係なく、身近な人たちと資産運用をいっしょにできれば心強い。
 

無料カウンセラーの派遣受け入れなど、メリットも

 
投資クラブを実際に立ち上げるためには、発起人会をひらいてクラブの名称や役職者を決める必要がある。規約などの手続きは面倒に感じるかも知れないが、前出のNPOエイプロシスでは規約などの「ひな形」を用意しているため、所定の書式に沿って書類を用意すれば、簡単に手続きは済むという。設立までの相談などにも無料で応じてくれる。
現在、投資クラブとして口座が開ける証券会社は20数社あるが、関係者によれば実際に受け入れている会社は大和証券など5社程度に限られるようだ。投資クラブの受け入れに消極的な証券会社が存在する背景には、金融機関が本人確認を厳格化していることはもとより、事務手続きの煩雑さに加え、会員同士のトラブルに巻き込まれたくないことなどが影響しているという。しかし、証券業界をあげて「貯蓄から投資へ」の流れを後押ししているため、今後は投資クラブを受け入れる証券会社も増える見通しだ。
そんな苦労をしてまで投資クラブを作りたくないという声もありそうだが、勉強熱心な投資家にはメリットも多い。1つはエイプロシスによる証券カウンセラーの派遣が無料で受けられること。エイプロシスが2005年度、投資クラブに講師を派遣した件数は769件となり、前年の292件から2.6倍に増えた。2006年も増加傾向にあり、所属する160名のカウンセラーが積極的に活用されていることが分かる。
派遣されるカウンセラーたちは(1)所属した会社名・営業色を出さない、(2)相場見通しを言わない、(3)個別銘柄には触れない——ことを守るよう指導されている。営業的な話は一切ないため、まだ口座を開かず、投資をはじめていない入門者でも気兼ねすることはなさそうだ。
また、投資クラブに所属することによって、エイプロシスが主催する企業の工場見学などにも参加できる。最近でこそ、企業が株主総会などでも個人投資家に積極的に情報を開示するようになったが、アナリストの会社訪問のように、株主でもない個人を受け入れる会社はまだまだ少ない。たった1人では「一個人投資家」だが、「投資クラブ」として企業と接する機会が増えれば、株式投資の情報収集も幅が広がる。
 

投資クラブへの印象、「もめるの嫌」「集まるのが面倒」?

 
イメージ画像
東京証券会館で開かれた「株式入門土曜集中講座」
2006年12月9日、東京証券会館1階のJASDAQプラザ・セミナー室で「株式入門土曜集中講座」が開催された。エイプロシス主催、日本証券業協会の後援によるもので、冬の冷たい雨が降るあいにくの天候にも関わらず、投資の基礎を学ぶために30名以上の個人投資家が参加。全3部、4時間半にわたって講義が行われた【写真参照】。
この日の入門講座の講師を担当し、普段から投資クラブでも講演している証券カウンセラーは「実際に投資クラブを作っても、長続きしないケースがある」と指摘する。知識が実践に役立つまでに、時間がかかることもその一因だ。
そのため担当者も、入門・初級・中級編など、段階をへて長く勉強を続けられる環境づくりには気をつかっている。「いきなりPER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)といわれても分かりにくいと思いますが、こういった基礎知識はあとで必ず役に立ちます」(同)。
今回、この講座にはじめて参加した都内在住のOLのAさんは、ファイナンシャル・プランナーの講演などは一通り受講したという。「全体的な勉強はもう十分しましたので、次は株式投資を実践したいです」とのこと。そのAさんに誘われて、投資関係のセミナーにはじめて参加したOLのBさんは、すでに投資信託で資産運用を始めている。しかし「投信もきちんと理解して買っていたわけではないので、次の株式投資は勉強してから始めたいですね」という。
2人とも投資の勉強には熱心な一方、「投資クラブ」については消極的なようだ。「お金を出し合って、後でもめるようなことは嫌です」(Aさん)、「会社勤めもあるので、貴重な土日の時間は取られたくないです」(Bさん)といった声も。最初は覚えることも多いため、なかなか投資に踏み出せない個人投資家も多いと思われるが「投資クラブなどをきっかけにして、まずは資産運用の体験をし、関心を深めてもらいたいですね」(前出・担当者)とのアドバイスもある。
 

投資家自身の積極性が大事、考える投資を

 
投資クラブを運営する秘訣について、NPO日本個人投資家協会の北村静子理事は「気軽な仲良しクラブでも良いのですが、長続きさせるにはある程度の緊張感も必要です」と指摘する。北村氏は協会理事として日本における投資クラブの普及・促進活動に携わる一方、10名の仲間とともに、1998年に投資クラブ「たんぽぽ倶楽部」を設立。自らもその運営に当たっている。
たんぽぽ倶楽部では、毎月1回の会合の際、1人ずつ交代で投資テーマを発表するという。参加者は発表に備えて資料などを用意する必要があるため、企業業績・経済情勢などをきちんと調べなければならない。「10人が毎回違うテーマを持ち寄れば、10ヶ月間は投資の判断材料に事欠きません」(同)というわけだ。
投資クラブに所属すると、どうしても仲間や講師の見通しなどに自分の投資判断が左右されがちになる。しかし投資家自身が積極的に勉強し、クラブ活動を通じて知識と経験を身につければ、証券会社のレポートなどを鵜呑み(うのみ)にすることもなくなるだろう。
「企業業績をどう判断するか、チャートはどうやって分析するのか、個別テーマにあった講師を派遣してもらえば、投資クラブのレベルアップにもつながります」(同)。実際、たんぽぽ倶楽部では、さわかみ投信の澤上篤人社長に長期的な企業の見方を講義してもらったこともある。一般の投資クラブが著名ファンドマネージャーを講師として招くのは難しいが、前出のNPOエイプロシスや取引所・証券会社など、各種制度をうまく活用する手はありそうだ。
お金を投資クラブに預けたまま、おんぶに抱っこという姿勢では何の意味もない。投資クラブに限らず、株式投資をしているのなら、株主総会に出席してきちんと質問してみてはどうだろうか。「最初は勇気がいることですが、その会社に投資して良いかどうかを真剣に考える上では何事も経験です」(前出・北村氏)。いまでこそ、前出のたんぽぽ倶楽部の運用成績は好調だが、株式市場が低迷した1998〜99年の間は全く成果が出なかった。しかし「損失を出している時こそ、投資家は真剣に勉強するものです」(同)。
 

日本株で基礎を学び、自信がついたら応用も?

 
数年前、都内で開かれた金融シンポジウムで、株式投資コンテストの入賞者の発表を聞いたことがある。高校生のグループがテーマを決めて自分たちの株式ポートフォリオを作成。年齢に関係なく、仲間と積極的に勉強することはいいものだと感心した。
このシンポジウムで、高校の現役教師が述べたことも印象深かった。「性教育も金融教育も、正直、学校ではなかなか教えづらいのが現状です。しかし両方とも、それで失敗すると人生で取り返しがつかなくなります」。資産運用では、株式投資などに元本割れリスクがつきまとうが、いまや何もしないことの方がリスクだとよく言われる。しかし投資に限らず、正しい知識がないまま行動を起こせば、予期せぬ事故(アクシデント)を招くことにつながるだろう。
いまのところ、投資クラブとして口座を開ける証券会社で、取引を受け付けているのは国内の上場株式だけである。そのため投資クラブ名義では、外国債券投信やREIT(上場不動産投資信託)、外国株などに投資することはできない。一見すると物足りなさを感じるかも知れないが、投資クラブの趣旨が投資初心者のための勉強の場である以上、クラブ活動を通じて投資に自信がついてきたら自分の口座で取引すれば良いだろう。資産運用のきっかけの1つとして、投資を始めてみたいという友人が近くにいるのなら、あなたも投資クラブを作ってみてはいかがだろうか。
【執筆:MoneyLife 片平正二】
(掲載日:2007年1月25日)

●第2回目は1月に開催されたNPOエイプロシス、NPO日本個人投資家協会らが行った個人投資家向けセミナーの模様をお送りします

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