退職・年金ナビ [ 目指せ!バランスシート・リッチ 長期資産づくり ]
【第25回】
65歳以上の具体的なアセット・アロケーションとは
グローバル・リンク・アソシエイツ 代表 米田 隆
今回は65歳以上のアセット・アロケーションを具体的に見てみましょう。前提として退職金で住宅ローンを返済し、残った金融資産の25百万を老後の運用資産とします。公的年金の受取額が毎月20万円であるのに対し、生活費は30万円かかると、月に10万円が不足することになります。年間では120万円の老後資金の定期引出額(全資産に対し4.8%)が必要です。老後資産2500万円の内、10年以内に取崩す予定のある1200万円については、一切為替リスクも株式リスクも取らず債券90%、オールタナティブ10%に各々配分し運用することにします。(以下アセットアロケーション(A)と呼ぶ)。一方、10年以内に取崩す可能性のない相対的リスク許容度の高い残りの1300万円については株式に15%、オールタナティブに10%各々分配し元本保全への十分な配慮をしつつも同時にやや高い利回りを狙うことで、長い生きリスクへの備えることとします。(以下、アセットアロケーション(B)と呼ぶ)。
これに加え、0.5%の預金だけで全額運用するケースをアセット・アロケーション(C)とします。
毎月の引出金額を10万円から30万円とした時、老後資産(nest egg)が何年持ちこたえられるか資産の耐用年数を計算してみました。(表3参照)
預金だけで運用する(C)のケースでは、医療費や消費税の値上げにより生活資金不足が10万円から15万円と5万円増加してしまうと15年前後しか資金はもたず、65歳の平均余命(男性18.9年、女性23.9年)をカバー出来なくなります。まして人口の高齢化に伴う預金減少で国債の国内消化が困難となり、悪い円安が始まり、輸入インフレでも起きれば、預金運用だけでは実質購買力の維持は困難となります。一方、アセット・アロケーションの(A)と(B) には、債券だけでなくREITやコモディティ等インフレに強い資産も組み込んでいます。またポートフォリオ(B)には、株も15%組み入れているので長生きリスクにも耐えることが出来ます。
2500万円のうち10年以内の資金を(A)に、10年超の資金を(B)のアセット・アロケーションに組み入れて運用し毎月15万円ずつ引き出した場合、老後資金は20年持ちこたえてくれるとの結果が出ています。
表1アセット・アロケーションと月次引出額別に見た老後資金耐用年数(66歳からの引出)
注:表の中の数字は老後資金の残高がゼロになるまで要する年数。
執筆:株式会社グローバル・リンク・アソシエイツ 代表/米田 隆
米田 隆(よねだ たかし)氏
株式会社グローバル・リンク・アソシエイツ代表取締役
1981年早稲田大学法学部卒業、日本興業銀行入行。 85年米フレッチャー法律外交大学院修士(国際金融法務専攻)。85〜91年、日本興業銀行企業審査部、PB推進部に勤務。91年(株)グローバル・リンク・アソシエイツを設立、代表取締役に就任。96年(株)グローバル・ベンチャー・キャピタルを共同設立、取締役就任。99年エル・ピー・エル 日本証券(株)代表取締役社長、2008年12月より同社取締役会長。2010年6月同社退任後、グローバル・リンク・アソシエイツ代表に復帰。