特定不妊治療助成金は県と市で両方もらえる?保険適用すると助成金はなくなる?

投稿日:2022/11/29 最終更新日:2023/03/14
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令和4年4月から不妊治療の保険適用範囲が拡大され、一般不妊治療の「人工授精」や特定不妊治療助成金対象であった「体外受精」や「顕微授精」も保険適用対象となりました。

保険適用範囲の拡大に伴い、従来の特定不妊治療助成金は終了しましたが、現在は経過措置により助成金の申請が可能になる場合があります。不妊治療中の方は自身が助成金の経過措置対象になるか確認してみて下さい。

また、従来の助成金とは別に市町村独自の助成金がもらえる場合もあるので、お住いの自治体の情報を確認して、もらい損ねることがないようにしましょう。

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特定不妊治療助成金の対象者や対象治療は?

特定不妊治療助成金の対象は、不妊治療すべてではなく特定の治療のみとなります。「特定不妊治療」の対象となるのは、「体外受精」と「顕微授精」です。

また、年齢や助成回数の上限などの条件もあるので注意が必要です。ここでは不妊治療の種類や助成対象となる条件について解説していきます。

詳細については厚生労働省の情報(※1)やお住いの自治体情報も確認してください。

※1 厚生労働省「不妊に悩む夫婦への支援について」

不妊治療の種類

不妊治療には「一般不妊治療」と「特定不妊治療」の2種類があります。

 治療種類  治療の内容  詳細
 一般不妊治療   排卵時期のチェック、タイミング指導(タイミング療法)  卵胞の大きさやホルモン値をチェックし、性交のタイミングを合わせる
 卵巣刺激法  卵巣を刺激して排卵を促し、受精の確率を高める
 人工授精   排卵時期に合わせて濃縮・洗浄した精液を注入し、受精の確率を高める
 特定不妊治療  体外受精  卵子と精子をそれぞれ採取し、調整後専用の容器の中に入れて受精を促す
 顕微授精  卵子と精子をそれぞれ採取し、卵子の中に精子を注入して受精を促す

特定不妊治療は保険適用外の治療でしたが、令和4年4月から保険適用範囲が拡大(※2)されたことに伴い、保険適用されることになりました。(人工授精も保険適用対象となりました)

※2 厚生労働省 「不妊治療に関する取組」

一般不妊治療

一般不妊治療には以下のようなものがあります。

タイミング療法

タイミング療法は排卵の時期に性交渉のタイミングを合わせるために、その時期を診察を行ったうえで指導します。自然な妊娠に近く、費用の負担も少ない方法です。

卵巣刺激法

卵巣刺激法の目的は、質のよい卵子を一定数確保することです。卵巣刺激法には様々な方法がありますが、一般不妊治療ではクロミフェン療法、またはhMG-hCG療法が利用されます。

人工授精

人工授精は排卵のタイミングに合わせて、子宮の入り口から管を入れ子宮内へ精液を直接注入する方法です。一般的にはタイミング療法の次の段階で行う治療です。基本的に自然な妊娠に近く、副作用などもほとんどありません。

特定不妊治療

体外受精

体外受精とは、排卵近くまで発育した卵子を体外に取り出し(採卵)、精子と接触させ(媒精)、受精し分割した卵を子宮内に戻す不妊治療のことです。体外受精は、一般的にタイミング療法や人工授精からのステップアップや、体外受精でしか妊娠できないと判断された方が行う治療法です。

顕微授精

顕微授精は形態が正常な運動良好精子をひとつ選別して、細いガラス針の中に取り込み、これを卵子に注入する方法です。顕微授精の対象となるのは、上で説明してきたような方法では効果がなく、「顕微授精以外の方法では妊娠の成立が見込めない方」です。

特定不妊治療助成金の対象となる条件

特定不妊治療助成金をもらうためには、以下の条件をすべて満たす必要があります。

・治療開始日の妻の年齢が43歳以上でない

・特定不妊治療助成制度の助成回数が上限に達していない

・今年度で一度も申請をしていない

・特定不妊治療以外では妊娠が見込めない、もしくは極めて少ないと医師に判断された夫婦

それぞれ解説していきます。

治療開始日の妻の年齢が43歳以上でない

治療開始時の年齢が42歳以下である必要があります。

ただし、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う時限的措置が各自治体で取られていますので、詳細はお住いの自治体の情報をご確認ください。

特定不妊治療助成制度の助成回数が上限に達していない

助成回数には上限があり、上限に達していると受けることができません。助成回数は条件により上限が異なります。

 妻の年齢が40歳未満で通算1回目の助成を受けた夫婦  通算6回まで
 妻の年齢が40歳以上43歳未満で通算1回目の助成を受けた夫婦   通算3回まで 

※1回の治療期間の開始(初日)の年齢が43歳以上で開始した治療は全て対象外となります。

また、以下の条件に合致する場合、助成回数はリセットすることができます

・特定不妊治療費助成事業の助成金をもらった後(他の自治体の情勢を含む)に出産した場合

・妊娠12週以降に死産に至った場合

助成回数のリセットは申請制なので、希望する方のみ申請します。助成回数をリセットすると残りの助成回数が減る可能性があるので注意してください。

助成回数のリセット申請には以下の書類が必要になります。

 リセット条件   必要書類(下記のいずれか1点)
 出産によるリセット 
  • 住民票
  • 戸籍全部事項証明書
 死産によるリセット 
  • 死産届
  • 母子健康手帳の「出産の状態」ページの写し 

指定医療機関で特定不妊治療を受けたこと

1回の治療の初日から最終日まで指定された医療機関(※3)で治療を受けることが条件となります。東京都内の場合、指定医療機関(※4)は以下の通りです。

※3 厚生労働省 「不妊に悩む方への特定治療支援事業 指定医療機関一覧」

※4 東京都福祉保健局 「指定医療機関」

特定不妊治療以外では妊娠が見込めない、もしくは極めて少ないと医師に判断された夫婦

助成金の対象となるには、特定不妊治療以外では妊娠が見込めない、もしくは極めて少ないと医師が判断したという条件がつきます。

医師の判断とは?

「1回の治療」の終了後に、指定された医療機関で「特定不妊治療費助成事業受診等証明書」を作成してもらう必要があります。

特定不妊治療助成金申請での夫婦とは?

助成金申請での夫婦は法律婚だけでなく、事実婚も認められています。細かい条件もあるので、詳細は都内の場合の条件はこちらの東京都福祉保健局のサイト(※5)を確認してください。

治療開始時に婚姻していない場合や申請時点で離婚している場合など、タイミングによっては助成対象外になるので注意が必要です。

※5 東京都福祉保健局 「東京都特定不妊治療費助成の概要」

関連記事:特定不妊治療助成金の申請方法や必要書類は?

特定不妊治療助成金は県と市で両方もらえるの?

特定不妊治療の助成金は県と市で両方もらうことは原則できません。ただし、一部地域では市町村独自助成金がもらえる場合もあるので、お住いの自治体でご確認ください。

県と市で両方はもらえない

特定不妊治療費の助成は都道府県、政令市、中核市にて行っています。そのため、住んでいる場所が政令市や中核市の場合、問合せ窓口や申請様式等が異なるので注意が必要です。

申請手続き等に関してはお住まいの都道府県・指定都市・中核市にお問い合わせください。

一部例外はある

一部の市町村では、独自の助成金がもらえる場合があります。例えば東京都の場合、港区は1年度あたり限度額30万円、千代田区、葛飾区は15万円、世田谷区、文京区、江東区、中央区は10万円の助成金が支給されます。治療費の助成を受ける際にはお住まいの自治体の制度を一度確認してみるとよいでしょう。

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不妊治療の保険適用で助成金はなくなるの?

令和4年4月から不妊治療は保険適用されるため、従来の特定不妊治療助成金はなくなりました。現在は移行期間中の治療に支障をきたさないよう経過措置がとられています。

令和3年3月31日までに治療を開始し、令和4年4月1日以降に終了する治療が経過措置の対象となります。経過措置は夫婦1組(事実婚を含む)につき1回限り申請が可能です。

保険適用範囲の拡大に伴い、特定不妊治療助成金の対象であった「体外受精」や「顕微授精」に加えて、保険適用と助成金のどちらも対象外であった「人工授精」についても保険適用されることになりました

保険適用で治療費が3割になるため、「人工授精」の費用負担は大幅に軽減されます。また、高額な治療になるほど経済的な負担割合が減るので、若く、体力的な余裕のあるうちから積極的に不妊治療を始めやすくなったといえます。

ただし、保険適用でかならず費用負担が小さくなるわけではありません。特定不妊治療助成金の対象でこれまで助成金の範囲内であった場合でも、今後は3割負担になるからです。例えば不妊治療の費用が30万円で、今までは助成金が30万円で実質負担がなかったとしても、今後は約9万円は自己負担となります。

保険適用にも年齢や回数に制限(特定不妊治療助成金と同様の条件)があるので注意してください。

 不妊治療の保険適用はこちらの記事で詳しく解説しています。

【関連記事】2022年4月から保険適用になった不妊治療、何が変わった?どこまでが対象?適用範囲と条件について解説

まとめ

保険適用の拡大に伴い、特定不妊治療助成金はなくなりましたが、現在は経過措置の期間中です。現在治療中の方は自身が助成金経過措置の対象者になるかをしっかりと確認して、もらいそびれることがないようにしてくださいね。

県と市の助成金は、原則として両方をもらうことはできませんが、一部では独自の助成金制度を行っている市町村もあるので、お住いの自治体でも確認してみて下さい。

これから不妊治療を始める方は、保険適用の対象となります。保険適用にも条件や回数制限があるので、事前に確認してから不妊治療の計画を始めるのがよいでしょう

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よくある質問

Q

不妊治療をしている人は何人に1人?

A

国内で不妊治療を行ったことがある夫婦は5〜6組に1組といわれています。実は自分の身近にもいるかもしれませんし、自分自身が当事者になることも珍しくありません。また、不妊治療についても一般不妊治療と特定不妊治療の2種類があります。

詳しくは「不妊治療の種類」を参照。

Q

特定不妊治療助成金の申請方法は?

A

特定不妊治療助成金の申請は、まず医療機関に書類を作成してもらいます。それを記入して、郵送もしくは窓口に提出し、承認されれば完了です。

詳しい内容は以下の記事を参考にしてください。

【関連記事】特定不妊治療助成金の申請方法や必要書類は?

Q

どれくらい妊娠していないと不妊?

A

定期的な性生活を送り、とくに避妊などをしていないのに、1年以上妊娠しない場合、不妊症と言われます。まずは産婦人科での検査をおすすめします。年齢が若い時のほうが妊娠の確率が高いと言われています。

妊娠や出産を考えている人は、合わせてこちらの記事も参考にしてください。

【関連記事】妊娠・出産に備える医療保険についてわかりやすく解説

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