金銭信託とは?
・信託=財産を信託銀行などへ預けて、運用・管理を代行してもらう ・金銭信託=信託の中でも、特に金銭の運用・管理を代行してもらう |
信託とは、金銭や株式、土地といった財産を信託銀行等に預けて、運用や管理を代行してもらう制度です。信託のうち、金銭を扱う金融商品が「金銭信託」となり、金銭信託は主に信託銀行が管理や運用を行います。
信託銀行は、利用者から信託された金銭を株式や預金、貸付金として運用することで、収益を得ます。利用者は、信託銀行が得た収益の一部を配当金として受け取ることで、利益を得られる仕組みとなっています。
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特定金銭信託と指定金銭信託
・指定金銭信託=主に個人が利用。利用者が大まかに運用範囲を決める。詳細な方法は信託銀行が判断・実行。 ・特定金銭信託=主に企業が利用。利用者が運用目的を細かく決める。 |
金銭信託には「指定金銭信託」と「特定金銭信託」の2種類があります
指定金銭信託は、利用者が運用範囲を大まかに決めて、詳細な運用方法は信託銀行が判断して実行する金銭信託です。主に個人が利用する金融商品となっており、一口5,000円程度の少額から始めることができる商品もあります。
特定金銭信託は、利用者が運用目的を細かく決めることができる金銭信託です。主な利用者は企業となっており、大口の金銭を信託するための金融商品とされています。
合同運用指定金銭信託とは?
大口の金銭を信託する「指定金銭信託」のなかに、「合同運用指定金銭信託」があります。ここからは、「合同運用指定金銭信託」について解説します。
運用の仕組み
合同運用指定金銭信託は、複数の利用者から信託された金銭を信託銀行がまとめて運用・管理する金銭信託です。
利用者は信託銀行に対して、大まかな運用目的のみを指定できます。信託銀行は同じ運用目的である金銭信託を合算して運用することで収益を得ます。利用者は、自身が提供した資金に応じた額の分配金を得ることが可能です。
配当金の仕組み
合同運用指定金銭信託によって信託銀行が得た収益金は、利用者に配当金として分配されます。配当金の受取日は各信託銀行によって異なりますが、一般的に3月と9月の各26日に受け取ることができます。また、配当金を元本に組み入れて、複利運用することも可能です。
合同運用指定金銭信託の信託期間
信託銀行に資金を預けて、管理してもらう期間を「信託期間」といいます。信託期間は主に1年以上とされ、例えば満期は任意で1年・2年・5年等に設定できます。また、据置形の合同運用指定金銭信託の場合は、信託開始から1年以上経過していれば自由に引き出しが可能です。
合同運用指定金銭信託は主に2種類
合同運用指定金銭信託には主に「合同運用指定金銭信託(一般口)」と「実績配当型合同運用指定金銭信託」と呼ばれるものがあります。基本的な仕組みはほとんど変わらないのですが、実は異なる点がいくつかあるのでご紹介していきます。
・合同運用指定金銭信託(一般口):預金に近い、運用商品ではない。元本保証も預金保険も有り。 ・実績配当型合同運用指定金銭信託:安全性と収益性を兼ね備えた運用商品。元本保証も預金保険も無し。 |
合同運用指定金銭信託(一般口)
簡単にいうと、合同運用指定金銭信託(一般口)は「預金に近いもの」と考えていただいても構いません。ほとんどの場合、元本補填が付いて、安全性が預金並みに高いからです。また近年、多くの場合「運用商品」として販売されていることは少ないと思われます。「運用商品」というよりかは、後ほどご紹介する「教育資金贈与信託」など「次世代型の信託商品」として、高齢化社会に向けた相続目的の商品のように認識されています。
いずれにせよ、重要な点は「元本補填がある場合が多い」「安全性が高い」「運用商品としては扱われない」といったところでしょう。
実績配当型合同運用指定金銭信託
今回の記事で主にご紹介するのは、こちらの「実績配当型合同運用指定金銭信託」です。イメージとしては「安全性を重視した運用商品」といったところでしょうか。前述の「合同運用指定金銭信託(一般口)」とは異なり、安全性と収益性を兼ね備えていますが、預金に比べるとリターンが高い代わりに損失が発生した際の元本補填はありません。また、後ほど説明するように預金保険の対象ではないので、万が一信託銀行が倒産した際に受けられる元本保証もありません。
しかし、今まで説明してきたように合同運用指定金銭信託はいずれも「安全性」に配慮した運用をしています。実績配当型合同運用指定金銭信託の中には、ごくまれに投資信託に近い商品性(リスク・リターンともに高い)のものもありますが、基本的にはなるべく「安全に」かつ「安定した」収益をあげられるような運用がなされています。
例えば、三菱UFJ信託銀行の「投資の一歩」はその1つです。実績配当型のため元本保証も配当保証もなく、預金保険の対象でもありませんが、「A格以上」という信用度の高い資産へ投資し、安定的に円定期預金より高い利回りを目指すものです。
この点、実は多くの方が誤解しやすいポイントでもあります。実績配当型の場合「金銭信託だから絶対に安全」というわけでは決してありません。預金と異なり元本割れのリスクも存在します。ただし、安全性に配慮した運用方針にしている商品が多く、一般的には「比較的リスクの低い運用商品」として認識されています。そのため「投資信託より安全性が高い、かつ定期預金よりリターンが高い」といっても差し支えないでしょう。投資信託や定期預金との違いは後ほど詳しくご説明します。
ここからは、主に運用商品としての実績配当型合同運用指定金銭信託について説明していきます。
(実績配当型)合同運用指定金銭信託の特長
ではまず実績配当型合同運用指定金銭信託の特長を踏まえて、3つのメリットを紹介します。
・基本的にリスクが低い:安全性を配慮した運用のため、投資信託や株式投資に比べリスクが低い ・確定申告を行う必要がない:利子所得であるため、信託銀行が源泉徴収している ・予定配当率が明示されている:目安だが、株式投資と違い事前にリターンがどのくらいかわかっている。 |
基本的にリスクが低い
まず「合同運用指定金銭信託(一般口)」の場合、前述したようにリスクの大きさはほとんど預金と同様です。そのため、元本割れリスクはほとんどありません。
運用商品としてこの記事でご紹介している「実績配当型合同運用指定金銭信託」の場合、こちらも既に説明しましたが、元本割れリスクもありますし、預金保険の対象でもありません。その点リスクはゼロでは決してありません。
しかし「比較的リスクが低い」というのは繰り返し強調しておくべきポイントです。安全性に配慮し、信用度の高い資産で運用しているためです。
確定申告を行う必要がない
合同運用指定金銭信託によって得られる配当金は「利子所得」とされ、事前に信託銀行が源泉徴収を行っています。利子所得は確定申告に含まれないため、利用者自身で手続きする必要はありません。
予定配当率が明示される
予定配当率とは、実績配当型合同運用指定金銭信託によって利用者の得ることができる配当金を予測して、算出した配当率の目安です。あくまで予測値ではありますが、事前に配当金の目安を知ることができます。
一般的に、株式投資は投資者自身が企業を細かく分析して利益を予測するため、さまざまな経験や知識が必要とされます。一方、実績配当型合同運用指定金銭信託では、商品によっては優良企業向け貸付債権などで運用するので、予測値を事前に把握できるほか、毎日の価格変動を気にする必要もありません。初心者の方でも安心して信託を行うことができます。
合同運用指定金銭信託の注意点・リスクは?
合同運用指定金銭信託は、気をつけなければならない点もあります。
このリスクは、「合同運用指定金銭信託(一般口)」「実績配当型合同運用指定金銭信託」ともに共通するものです。
・原則として中途解約できない:途中で現金へ戻せない。 ・予定配当率は目安:経済状況次第で配当金が予定より少なくなる可能性あり。 |
原則として中途解約できない
ほとんどの合同運用指定金銭信託は、信託期間中に中途解約できない取り決めがあります。また、中途解約できる契約内容であっても、手数料が必要とされる場合もあります。契約する前には、利用する信託銀行の解約内容を確認しておきましょう。
中途解約できないため、合同運用指定金銭信託として一度お金を預けてしまうと、しばらくそのお金を別の用途に使うことができません。信託用の運用資金と、生活費や貯金、教育資金などはきちんと別に分けておくようにしましょう。
予定配当率は目安
合同運用指定金銭信託に出資する際、事前に予定配当率が明示されます。しかし、予定配当率はあくまで目安です。金融市場の金利次第で、配当金が予定配当率より低くなる危険性があります。たとえ、配当金が予定配当率より少額になったとしても、補填は行われません。
合同運用指定金銭信託の仕組みを利用した金融商品
安心して運用を信託できる合同運用指定金銭信託は、将来のために投資する手段として非常に適しています。下記で具体的な金融商品を紹介します。
教育に関わる商品
非課税措置を受けて創設された金融商品が「教育資金贈与信託」です。平成25年度に行われた税制改正により「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」が制定されました。これは、祖父母世代が持つ資産を孫世代の教育資金として活用する際に、贈与税が発生せず非課税になる措置です。
これは合同運用指定金銭信託(一般口)が基礎にあります。そのため預金のように安全性が高く、孫世代へ確実に教育資金を提供することが可能です。
結婚・子育てを支援する商品
非課税措置を受けて創設された金融商品が「結婚・子育て支援信託」です。平成27年度に行われた税制改正により「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」が制定されました。これは、結婚や子育てに関わる資金として、父母などの直系親族が子どもに贈与を行う際に、贈与税が発生せず非課税になる措置です。こちらも教育資金贈与信託と類似の仕組みです。
この金銭信託では、結婚・子育てに関わる費用であると証明できる請求書や領収書を提出すると、父母などが信託した資金を引き出すことができます。また、資金を引き出して支払う際は、1,000万円まで贈与税が課されません。
遺言を代用する商品
遺言代用信託を利用すると、遺産相続を非常にスムーズに行うことが可能です。通常、亡くなった方の資産を遺族が銀行から引き出すには、遺産分割協議を終える必要があります。
遺産相続を行う際は、葬儀費用や配偶者の生活費用などすぐに必要な資金があっても、遺産分割協議がまとまるまでは引き出すことができません。
これに対し、遺言代用信託を利用して信託していた遺産は、事前に指定していた相続人が遺産分割協議を待たずに引き出すことが可能です。この遺言代用信託は、主に各地方銀行が取り扱っています。
ただし、このようないわゆる「遺言信託」とは、「信託」という名前がつけられているものの、実務上のもので法律上の信託ではありません。この点は注意してください。
金銭信託と投資信託の違い
金銭信託と投資信託は、信託を行う点においては同様の金融商品です。しかし、根本の運用システムが異なります。ここでは「運用商品」という共通点を持つ、投資信託と「実績配当型」の金銭信託を比較していきます。
・金銭信託:信託銀行自身が管理・運用。 ・投資信託:信託銀行が管理、専門の投資信託委託会社へ指示を出し運用。 |
運用方法が異なる
金銭信託は、金銭を預かった信託銀行が管理・運用を行います。投資信託も信託銀行が管理と運用を行いますが、運用する際には専門の投資信託委託会社が指示を出します。
販売手数料
投資信託は販売手数料がかかる商品が一般的です。一方で、金銭信託の場合、販売手数料がかからない商品が一般的です。
金銭信託と定期預金の違い
定期預金では、預けた金銭を一定期間引き出すことができない代わりに、普通預金よりも高い金利が設置されている預金です。原則として一定期間中途解約できない点においては金銭信託と類似していますが、相違点もあります。
ここからは、定期預金と金銭信託の違いについて解説します。
・金銭信託:実績配当型合同金銭信託は元本割れリスクあり。リターンが事前に確定しない。 ・定期預金:元本割れリスクなし。利率により、リターンが確定。 |
元本割れリスクの有無
定期預金を預けている銀行が倒産した際は、預金保険機構が合算して元本1,000万円までと破綻日までの利息等を保護します。つまり、定期預金には(およそ1,000万円までは)元本割れリスクがありません。しかし、実績配当型合同運用指定金銭信託には元本補てんも預金保険制度もありません。そのため元本割れリスクはあります。
ただし、預金に近い「合同運用指定金銭信託(一般口)」には損失時の元本補てんがある場合が多く、預金保険の対象でもあります。
金利変動の有無
定期預金は事前に金利が明示されています。つまり、固定金利の定期預金は金融市場の変動に関わらず、明示された金利の通りに利息を得ることができます。変動金利の定期預金であっても、発生する利子は半年ごとに明示される金利と同額になります。
一方、金銭信託において事前に明示される予定配当率は、金融市場の影響を受けて変動します。配当金が予定配当率よりも少額になる可能性があるため、金銭信託は定期預金よりも不安定といえます。
まとめ
今回の記事では合同運用指定金銭信託について紹介しました。一般的な投資と違い、安定した利益を低いリスクで得ることができる金融商品となっています。合同運用指定金銭信託を検討してはいかがでしょうか。
スマートプラスで取り扱う合同運用指定金銭信託は、「投資を始めてみたいけれど、大きな損をしたくない」という投資初心者の方にオススメの商品となっています。合同運用指定金銭信託をお考えの方は、ぜひスマートプラスまでご相談ください!