どうして規制があるの?
証券取引所等は、株価の急激な上昇や下落、売買高の急増や大幅な信用取引残高の増加など、株式市場の過熱感を抑えるために規制措置を実施します。当該規制措置に関しては、個別銘柄規制および全面規制の2通りがあります。多くの場合が個別銘柄規制となりますので、今回は個別銘柄規制に絞って確認しましょう。
特に信用取引に関しては、現物取引(手元資金や手元株式での売買)ではなく、投資家は証券会社から資金や株式を借りて売買をしているため、株式市場の状況によって、規制を受けることが多くなることにも注意が必要です。
規制/制限の種類
投資家が株式を売買するにあたり、規制(制限)を実施するのは大きく3つの機関となります。取引所、証券金融会社および証券会社となります。
それぞれの機関にとって、規制(制限)する目的が異なっています。機関ごとに実施する規制(制限)と目的を確認しましょう。
<ここで紹介する規制の一覧表>
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取引所の規制
取引所は株式市場の過熱感を1つの判断材料として規制を実施します。つまり、投機的な取引に過度な信用取引を利用することを防ぐためのガイドラインを設けていることです。
取引所の定めた基準に該当した銘柄については、日々信用残高が公表されて、売買に関して注意を喚起されたり、信用取引に係る委託保証金の率の引上げ措置(以後、「増担保措置」とします)が実施されたりします。
取引所の措置は、一般信用取引ならび制度信用取引に適用されます。
日々公表銘柄
取引所は「「日々公表銘柄」の指定等に関するガイドライン」を公表しています。当該ガイドラインの基準に該当した場合、対象銘柄は日々の信用残高が公表されることとなります。「日々公表銘柄」に指定されたとしても、売買や信用取引自体を規制するわけではありません。あくまで、信用取引による売りや買い注文は大きな損失につながる注意を促すためのものとなります。
また、対象銘柄は新規に追加されたり、対象から解除されることも多いですので、気になる方は日本取引所グループのホームページで確認してください。
「日々公表銘柄」は、後ほど説明する「信用取引の規制措置銘柄」等と一緒に「個別銘柄信用取引残高表」として、日々の信用取引残高が公表されます。
信用取引の規制措置銘柄(増担保規制)
取引所は「信用取引に係る委託保証金の率の引上げ措置等に関するガイドライン」を公表しています。当該ガイドラインの基準に該当した場合、対象銘柄は、適用日以降の信用取引における新規約定に関して、取引所が定めた委託保証金の引上げ率に応じた担保を差し入れる必要が生じます。
つまり、増担保規制に指定された銘柄に信用取引を行う場合、通常より多くの委託保証金が必要になります。たとえば、4月1日から委託保証金率を30%から50%(うち、20%は現金)と引き上げられた場合、3月31日までは約定評価(100万円)に対して委託保証金率30%(委託保証金:30万円)が必要でしたが、4月1日以降の新規約定では約定評価(100万円)に対して委託保証金率50%(委託保証金:30万円、および、現金:20万円)が必要になります。「増担保規制」がかかることで投資家にとっては信用取引の新規約定にかかる負荷が大きくなるため、過熱感を抑制することとなります。
繰り返しとなりますが、適用日以前の信用残高(約定評価)に遡って算出されないことは重要です。
「増担保規制」が適用した銘柄も「個別銘柄信用取引残高表」として、日々の信用取引残高が公表されます。
証券金融会社の制限
信用取引のうち、制度信用取引においては、投資家が約定した分の借入に関して、証券会社は証券金融会社に再借入が可能となっています。投資家から証券会社への買い申込は証券会社から証券金融会社の融資申込となり、投資家から証券会社への売り申込は証券会社から証券金融会社の貸株申込となります。
証券金融会社は制度信用取引の残高を集約して処理する役割を担っていることから、特に株式調達に関しては調達の困難さに応じて、制限を通知することになります。
証券金融会社の措置は、制度信用取引のみに適用されます。
貸株注意喚起銘柄
証券金融会社は各証券会社からの申込みを受け、貸株超過(貸株残高>融資残高)となった場合に株式調達を実施します。制度信用売り残高が膨らんでいる場合や当該調達等が困難となる可能性がある場合に、「貸株利用等にかかる注意喚起」を通知します。当該注意喚起を受けた銘柄を「貸株注意喚起銘柄」と言います。
「注意喚起」通知以降も、制度信用売り残高が増加した場合や調達可能な株式数が減少した場合には、逆日歩が高騰する可能性や次に挙げる「申込停止措置」を通知する可能性があり、大変重要な通知となります。ただし、「注意喚起」通知は、売買や信用取引を規制するものではありません。あくまで、注意を促すためのものとなります。
貸株申込制限措置銘柄
証券金融会社は各証券会社からの申込みを受け、貸株超過(貸株残高>融資残高)となった場合に株式調達を実施します。制度信用売り残高が著しく膨らんでいる場合や当該調達等が著しく困難である場合に、「申込停止措置」を通知します。当該措置を受けた銘柄を「貸株申込制限措置銘柄」と言います。
「申込停止措置」では、制度信用取引に関する2つの手法を制限することとしています。
制度信用取引の新規売りに伴う貸借申込(融資返済、貸株新規)
証券会社は自社内で買い残高と売り残高を集計し、その差分を貸借申込として証券金融会社へ申し込みます。このため、前日と比較し制度信用の新規売りが増加すると、証券金融会社への融資申込が減少するか、貸株申込が増加することとなり、証券金融会社として調達すべき株数が前日より膨らむこととなるため、当該手法を制限するものとしています。
制度信用取引の買い残高の現引きに伴う貸借申込(融資返済、貸株新規)
証券会社は自社内で買い残高と売り残高を集計し、その差分を貸借申込 として証券金融会社へ申し込みます。買い残高の返済方法である「現引き」は市場での売買を伴わないため、売り残高の買い返済と約定することなく、一方的に制度信用の買い残高が減少すると、証券金融会社への融資申込が減少するか、貸株申込が増加することとなり、証券金融会社として調達すべき株数が前日より膨らむこととなるため、当該手法を制限するものとしています。
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証券会社の規制
信用取引は、投資家が証券会社から資金や株式を借り入れることから始まるため、状況に応じて、証券会社が規制を実施することもあります。
取引所の措置は、一般信用取引ならびに制度信用取引に適用されます。詳しくは、口座を開設している証券会社のWebサイトでご確認ください。
増担保規制
前述の取引所からの「信用取引の規制措置銘柄(増担保規制)」を受けて、証券会社は同内容の措置を投資家に向けて設定することとなります。
新規建て停止
一般信用取引の対象銘柄については、証券会社が独自で定めることができます。このため、対象銘柄の追加および削除と同様に、新規買いや新規売りについても証券会社が独自で規制措置を実施する場合があります。
制度信用取引の対象銘柄については、取引所と証券金融会社が協議して公表しており、同公表に準じて、証券会社も投資家の売買可能銘柄を定めています。一方で、制度信用取引の新規売りに関しては、前述の証券金融会社の「申込停止措置」を受けて、投資家による新規売りの規制措置を実施することとなります。これは、証券金融会社が証券会社からの新規売りに伴う申込を停止することに伴い、証券会社も投資家からの新規売りの申込みを停止するためです。
その他、証券会社独自のルールがある場合がありますので、各証券会社のWebサイトでご確認ください。
保証金評価(代用掛目)の引き下げ
有価証券の種類や評価時の掛け目を独自で定めることができます。多くの証券会社で国内株式は差し入れ可能で、評価時の掛け目は80%に設定されています。ただし、株価が乱高下するなど代用担保として安定して評価できない場合などでは、証券会社は独自の判断で評価時の掛け目を引き下げる措置(例えば、A銘柄のみ、評価時の掛け目を50%にするなど)を実施することができます。
時価評価額100万円相当の有価証券(A銘柄のみ)を代用担保とした場合、通常(掛け目が80%)であれば、委託保証金80万円相当として換算されますが、掛け目引き下げ(掛け目が50%)となると、委託保証金50万円相当にしか換算されなくなるので、注意が必要です。
証券会社独自のルールがある場合がありますので、Webサイトで確認してください。
規制を確認する方法
規制措置の情報は大変重要ですので、確認方法を見ていきましょう。
東京証券取引所で確認する
取引所による措置の確認について、代表として東京証券取引所のWebサイトを挙げます。
・日々公表銘柄
https://www.jpx.co.jp/markets/equities/margin-daily/index.html
・信用取引の規制措置銘柄(増担保規制)
https://www.jpx.co.jp/markets/equities/margin-reg/index.html
日々の信用取引残高のデータは以下で公表されています。
・個別銘柄信用取引残高表
https://www.jpx.co.jp/markets/statistics-equities/margin/index.html
日本証券金融で確認する
証券金融による措置の確認について、日本で唯一の証券金融会社である日本証券金融(日証金)のWebサイトを挙げます。
・貸借取引情報
https://www.taisyaku.jp/
証券会社で確認する
証券会社による措置の確認については、口座を開設している各証券会社のWebサイトで確認しましょう。
まとめ
信用取引で実施される規制(制限)措置について、実施する機関とそれぞれの措置内容について、確認しました。各種措置を理解することは大変大切です。小まめにWebサイトを確認するなど自ら情報を取得する習慣をつけるようにしましょう。
監修:日本証券金融株式会社
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