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【第5回】FXレートをペアチャートで分析

最終更新:2013/06/27 16:04

FX・CFD [FXテクニカル分析入門編]

【第5回】

FXレートをペアチャートで分析

過去、第4回までに、「トレンド」、「移動平均線」、「MACD」、「一目均衡表」について説明をしてきました。これらは1つの通貨ペアを分析するテクニカル手法です。一方、裁定取引(2つの通貨ペアを同時に売りと買いを建て、その後のレート変動で差益を得る取引)に対する、テクニカル分析手法として「ペアチャート」があります。裁定取引とは具体的に、割安と思われる通貨ペアを買い、同時に、割高と思われる通貨ペアを売ります。その後、2つの通貨ペアの損益を合算して利益が出たところで反対売買を行います。この売買方法はペアトレードとも呼ばれています。その分析手法のペアチャートを知ることは、1つの通貨ペアを売買するときにも大変参考になります。

それでは、第5回「FXレートをペアチャートで分析」について説明します。

(1)ペアトレードとは

ペアトレードとは、相関関係が高い2つの通貨ペアの異なる値動きを利用してパフォーマンスをあげようとする取引である。価格変動リスクは1つの通貨ペア取引に比較して小さく抑えられる。

ペアトレードは金利の高い通貨を買い、金利の安い通貨を売るのが一般的である。なお、長期で高額の運用になるとスワップポイント(スワップ金利、通貨国金利差調整分のことで、低金利の通貨を売って高金利の通貨を買うと得られる金利差益、低金利の通貨を買って高金利の通貨を売ると金利差損になる)に注意する必要がある。

レート差(スプレッド)のある2つの通貨ペアで、スプレッドが狭まったとき(タイトニング=略して「タイト」)、レートの高い通貨を買い、レートの低い通貨を売る。その後、スプレッドが広がったとき(ワイドニング=略して「ワイド」)、レートの高い通貨を売り戻し、レートの低い通貨を買い戻すと差益が取れる。

ここでは、第1回の「FXレートのトレンドを知る」で説明した、流動性リスクの小さい、米ドル/円、豪ドル/円、英ポンド/円、ユーロ/円を対象にして解説する。

【1】相関係数と決定係数

まずは、米ドル/円、豪ドル/円、英ポンド/円、ユーロ/円の4つの通貨ペアの各々2つの相関関係を知る必要がある。その手段として「相関係数」(2つの変数の相関を示す統計学的指標で、1〜−1の間の値で、1に近い程2つの変数は正の相関があり、−1に近い程負の相関がある)と「決定係数」(2つの変数の連動性を1〜0の間の値で表す。1に近い程連動性が高い)を用いる。対象期間は2005年〜2010年10月末の約6年間。上半期(1〜6月)と下半期(7〜12月)に別け、日々の直近100日間の相関係数と決定係数を求め、その100日移動平均を計算した。

その結果、対象期間を通して相関関係が最も高かったのは英ポンド/円とユーロ/円のペアで、期間平均で見ると相関係数は0.809、決定係数は0.684と極めて高い結果になった(図表5-1参照、網掛けは相関係数が0.7以上)。次いで、ユーロ/円と豪ドル/円が相関係数は0.711、決定係数は0.594であった。続いて、英ポンド/円と豪ドル/円の相関係数は0.687、決定係数は0.571であった。逆に、相関関係が最も低かったのは、ユーロ/円と米ドル/円で、相関係数は0.463、決定係数は0.347であった。なお、同ペアは、2007年から2009年上期までは相関関係が高かったが、それ以降は低くなった。

リーマンショックがあった2008年下期は、英ポンド/円が211.40円から132.41円になり、-78.99円の大幅下落となった。その後の2009年上期は、4つの通貨ペアの全ての相関係数が0.7を上回った。いずれのペアも水準訂正が行われたと解釈できる。2009年下期は、各ペア通貨の相関係数がマチマチになったが、英ポンド/円とユーロ/円の相関係数は0.771、決定係数は0.605と高かった。

【2】各国・地域の金利のベースとスワップポイント(スワップ金利)

各国・地域の金利のベースは政策金利(日本で以前は「公定歩合」と呼ばれていたもの)である。日本の政策金利は具体的には、無担保コール翌日物(1年以下の短期資金の貸借を行うコール市場での無担保の翌日返済の金利)である。

対象通貨の5カ国・地域の政策金利を低い順に見ると、日本0-0.10%、米国0-0.25%、英国0.50%、ユーロ圏1.00%、豪州4.50%である。(図表5-2参照)

各国・地域の金利差がスワップポイント(通貨国金利差調整分)に反映される。スワップポイントは、前に述べた通り、豪州のように高金利の通貨を買って、日本のような低金利の通貨を売ると得ることが出来る。逆に、豪ドルを売って円を買うとスワップポイントを支払うことになる。このスワップポイントを得る取引はペアトレードに適している。例えば、豪ドル/円を買って米ドル/円を売ることである。しかし、この裁定取引でスワップポイント益より為替差損が大きくなり差引損になることもある。

日々受領・支払が生じ変動するスワップポイントはFX取引会社のホームページに掲載されている(図表5-3参照)。上記のペアトレードの事例を当てはめると、豪ドル/円を買って米ドル/円を売ることになるので、10,000通貨の売買の場合、+97円と-5円のネットで一日に+92円となり、仮にこのままの金利で100日間推移すると+9,200円、100,000通貨では+92,000円のスワップポイントを得ることが出来る。

なお、金利は土・日曜日、祝日も発生するため決済では、原則水曜日は3日分に、祝日が入るとその分プラスされたスワップポイントになる。

(2)ペアチャートの見方

ペアトレードに必要な情報として、ペアチャートがある。2つの通貨ペアとその乖離幅(又は乖離率)を描画するチャートである。

過去約6年間で最も相関が高かった英ポンド/円とユーロ/円のペアチャートを見てみる(図表5-4参照)。なお、図表のAveは平均値(描画の209日分)、S.D(Standard Deviation)は標準偏差。金利の高いユーロ/円を「買い」、低い英ポンド/円を「売り」スタンスとして見る。

英ポンド/円とユーロ/円の価格差(乖離差)が狭まっている(タイトの)ときは、レートの高い英ポンド/円は割安、レートの低いユーロ/円は割高と見て、英ポンド/円を買い、ユーロ/円を売る。乖離差が広がっている(ワイドの)ときはこの逆の対応を取る。

例えば3月1日は乖離幅が12.67円とタイトになっていた。よって、英ポンド/円を133.47円で買い、ユーロ/円を120.80円で売ったとする。4ヵ月後の6月30日には23.93円とワイドになった。ここで、反対売買をすると、英ポンド/円を132.04円で売り戻し、ユーロ/円を108.11円で買い戻す。そうすると英ポンド/円では132.04-133.47=-1.43円の損失だが、ユーロ/円では120.80-108.11=+12.69円の利益であり、ネットで-1.43+12.69=+11.26円の利益が出たことになる。10,000通貨の場合は112,600円の利益になる。この間のスワップポイント(仮に10/21のスワップポイントを適用した場合)は-6(=+17-23)×121日=-726円となる。為替差損とスワップポイントの合計では112,600-726=+111,874円の利益(税金等を除くシミュレーション結果)になった。

6月30日は、乖離幅が23.93円とワイドになっているので、英ポンド/円は割高、ユーロ/円は割安と見る。そこで、ドテン(それまでとは逆の売買をおこなう)して、英ポンド/円を132.04円で売り、ユーロ/円を108.11円で買う。3ヵ月半後の10月15日には乖離幅が16.39円とタイトになった。ここで、反対売買をすると、英ポンド/円を130.12円で買い戻し、ユーロ/円を113.73円で売り戻す。そうすると英ポンド/円では132.04-130.12=+1.92円の利益、ユーロ/円でも113.73-108.11=+5.62円の利益で、ネットで+1.92+5.62=+7.54円の利益が出たことになる。10,000通貨の場合は75,400円の利益になる。この間のスワップポイント(仮に10/21のスワップポイントを適用した場合)は-2(=-22+20)×107日=-214円で、75,400-214=+75,186円の利益(税金等を除くシミュレーション結果)になる。

次に、主要4通貨ペアの相関係数が2番目に高かったユーロ/円と豪ドル/円を見てみる(図表5-5参照)。金利の高い豪ドル/円を「買い」、低いユーロ/円を「売り」として見る。ユーロ/円と豪ドル/円との乖離差がタイトになっているときは、ユーロ/円は割安、豪ドル/円は割高と見て、ユーロ/円を買い、豪ドル/円を売る。乖離差がワイドのときはこの逆の対応を取る。

例えば1月4日は乖離幅が48.87円とワイドになっていた。よって、ユーロ/円を133.30円で売り、豪ドル/円を84.43円で買ったとする。8ヵ月後の8月31日には乖離幅が31.68円とタイトになった。ここで、反対売買をすると、ユーロ/円を106.81円で買い戻し、豪ドル/円を75.13円で売り戻す。そうすると、ユーロ/円では133.30-106.81=+26.99円の利益で、豪ドル/円では75.13-84.43=-9.3円の損失、ネットで+26.99-9.3=+17.69円の利益が出たことになる。10,000通貨の場合は176,900円の利益になる。この間のスワップポイント(仮に10/21のスワップポイントを適用した場合)は+74(=-23+97)×239日=+17,686円で、176,900+17,686=+194,586円の利益(税金等を除くシミュレーション結果)になる。

(3)標準偏差での売買シミュレーション

過去約6年間で最も相関が高かった英ポンド/円とユーロ/円のペアチャートを対象にして売買シミュレーションを行う。まず、売買信号のルールを作成する。

英ポンド/円とユーロ/円の乖離差がタイトのときは、英ポンド/円は割安、ユーロ/円は割高と見て、英ポンド/円を買い、ユーロ/円を売る。乖離差がワイドのときはこの逆の対応を取る。タイトとワイドの売買信号は、乖離幅、乖離幅200日移動平均線、200日標準偏差を用いる(図表5-6参照)。

対象期間は2006年1月〜2010年10月末の約5年間(日足終値)とする。模擬売買の方法は「ドテン売買方式」(最初の売買後、清算と新規売買を繰り返し、売買執行は翌日の始値で行う、期限最終日は当日の清算売買で終了、スワップポイント・手数料・税金等除く)とし、元金は10,000円とする。

その結果、2010年10月末の元金合計は10,571円(年平均利回り+1.22%)になった。売買回数は8回あり、ネット利益回数3回、ネット損失回数は5回であった(図表5-7、図表5-8参照)。

(4)ペア倍率での売買シミュレーション

次に、「ペア倍率」での売買シミュレーションを行う。ペア倍率とは、2つの通貨ペアの乖離率のことで、2つの通貨ペアの名称の最初の通貨ペアを分子に、最後の通貨ペアを分母にして計算する。直近(2010/10/末)のペア倍率は、米ドル・豪ドル倍率が1.016、英ポンド・米ドル倍率が1.605、ユーロ・米ドル倍率が1.397、英ポンド・豪ドル倍率が1.630、ユーロ・豪ドル倍率が1.418、英ポンド・ユーロ倍率が1.149である(図表5-9参照)。

ペア倍率の推移から通貨ペアのどちらが割高か割安になっているかを知ることができる(図表5-10参照)。

ペア倍率をもとに、中期と長期の移動平均線を計算すると、ゴールデンクロス(GC)とデッドクロス(DC)の売買信号が得られる(第2回の「FXレートを移動平均線で分析」を参照)。中期は25日移動平均線、長期は100日移動平均線、GCは買い信号、DCは売り信号として、10,000円を元金に約5年間(2001年1月〜2010年10月末)の模擬売買をドテン売買方式でおこなう。

模擬売買の結果、ユーロ・米ドル倍率は、売買機会が14回(利益回数6、損失回数7)、売買損益合計+2,012円(年平均利回り+3.35%)、英ポンド・米ドル倍率では、売買機会が17回(利益回数8、損失回数9)、売買損益合計+1,975円(年平均利回り+3.29%)であった。英ポンド・豪ドル倍率、ユーロ・豪ドル倍率の売買損益合計はわずかのプラス、同様に米ドル・豪ドル倍率、英ポンド・ユーロ倍率はわずかにマイナスであった(図表5-11参照)。

ペア倍率方式でも利益は小さいが損失も小さく、レート変動リスクも小さく押さえることができる。

(5)まとめ

まとめ:第5回「FXレートを2つの通過ペア比較で分析」
◎ペアトレードとは
 相関関係が高い2つの通貨ペアの異なる値動きを利用してパフォーマンスをあげようとする取引である。価格変動リスクは1つの通貨ペア取引に比較して小さく抑えられる。ペアトレードは金利の高い通貨を買い、金利の安い通貨を売るのが一般的である。なお、長期で高額の運用になるとスワップ金利(通貨国金利差調整分のことで、低金利の通貨を売って高金利の通貨を買うと得られる金利差益、低金利の通貨を買って高金利の通貨を売ると金利差損になる)に注意する必要がある。投資対象は流動性リスクの小さい通貨ペアが望ましい。
◎ペアチャートの見方
 ペアチャートは、2つの通貨ペアとその乖離幅(又は乖離率)を描画したものである。相関性の高い2つの通貨ペアの標準偏差を求め、価格差(乖離差)が狭まっている(タイトの)ときは、レートの高い通貨は割安、レートの低い通貨は割高と見る。乖離差が広がった(ワイドの)ときは、レートの高い通貨は割高、レートの低い通貨は割安と見る。
◎ペア倍率
 2つの通貨ペアの乖離率のことで、2つの通貨ペアの名称の最初の通貨ペアを分子に、最後の通貨ペアを分母にして計算する。ペア倍率のトレンドから通貨ペアのどちらが割高・割安になっているかを知る。おもな円ベースのペア倍率には、米ドル・豪ドル倍率、英ポンド・米ドル倍率、ユーロ・米ドル倍率、英ポンド・豪ドル倍率、ユーロ・豪ドル倍率、英ポンド・ユーロ倍率がある。

執筆:QUICK 小沢文雄(執筆日:2010年11月02日 掲載日:2010年11月12日)


《筆者紹介》
1952年東京生まれ。1975年(株)市況情報センター(現QUICK)入社。2001年情報本部長、2003年役員待遇情報開発室長などを経て、現在、役員待遇フェロー(新規企画担当)。
NPO法人日本テクニカルアナリスト協会元副理事長。国際検定テクニカルアナリスト(MFTA)。
主な著書に、『投資家の予想形成と相場動向』(2001年、共著、日経BP企画)、『日本テクニカル分析大全』(2004年、共著、日本経済新聞社)、『株式相場のテクニカル分析【第3版】』(2006年、共著、日本経済新聞社)などがある。


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