「かぶオプ」で人間の弱さを克服する - 先物・オプション
先物・オプション [ 「かぶオプ」買い方・売り方 ]
シンプレクス・インスティテュート取締役 塙麻紀子の「かぶオプ」個人投資家向け週刊コラム
「かぶオプ」で人間の弱さを克服する
気が付けばもう師走、厳しかった今年の相場も残りあと1ヶ月を切りました。忘年会に参加するのもいいですが、今の時期こそ、今年の売買履歴を見直し、現在のポジションについて改善の余地がないかを考えてみて下さい。今回は、この見直しの機会に、投資の新たな選択肢として加えたい「かぶオプ」の活用方法を紹介したいと思います。
さて、自身の売買を分析してみると、色々と反省する点もあると思います。今年はいい銘柄にあたらず、悔しい思いをしているかもしれません。しかし、以前、個人投資家の実際の売買データを分析していた人から聞いた話では、投資のパフォーマンスを上げるためには、銘柄選びよりも、どう行動するかが重要だそうです。上手い投資家と下手な投資家では、同じ銘柄を買ったとしても、売買のタイミング、特に損切りや利食いの行動が違うために、結果に大きな差が表れるそうです。
投資というのは難しいもので、儲かっていると欲が出て強気になりがちです。しかし、結局売るタイミングを逃し、損で終わってしまったという経験はないでしょうか。逆に、損が膨らむと、もはや冷静な判断ができなくなります。「塩漬け」は、資金が寝てしまっている最悪のパターンですが、損失を確定する作業は負けを認めることを意味し、目をそむけがちです。また、迷っているうちにチャンスを逃した、なんてこともあるでしょう。
上記のような失敗パターンの行動の原因は、人間の心の弱さによるものです。利食いが出来ないのは、欲が深いからです。損切りできないのは、プライドが高いからです。迷うのは、優柔不断だからです。なんだか耳が痛い話ですよね。そこで提案したいのが、人間の弱さを克服するための「かぶオプ」の使い方です。
欲深い人
利食いができない欲深い人の場合、売りたい値段で強制的に売る、という方法があります。逆指値注文を使うのではありません。保有している株の「かぶオプ」を活用し、売りたい値段の権利行使価格のコールを売るのです。
例えば、現在3,000円の値がついている株を1,000株(10単位)保有している人が、株価が3,400円になった時に売るつもりでいるならば、権利行使価格が3,400円のコールを10枚(株を10単位保有しているため)売るのです。
もし、権利行使日の株価が3,400円を超えたら権利行使され、その株を3,400円で売ることになります。たとえその時点の株価が3,500円になっていようと、これは義務ですので、権利行使されたら、必ず3,400円で売らなくてはいけません。しかし、言い方を変えれば、最初に自分で決めたとおり、きちんと3,400円で利益確定ができるということです。
また、コールを売ると売却代金が手に入ります。権利行使されようと、されまいと、コールの売却代金が入ってきます。この点、逆指値注文を出すよりもお得な方法だと言えるでしょう。
さて、既にお気づきの方も多いと思いますが、これは、「現物株買い持ち+コール売り」の、いわゆる「カバコ」の戦略です。ただし、戦略を組む時の気持ちや目的が、第3回のコラムで紹介した「配当+αを目指す!『カバコ』ちゃんとの付き合い方」とは少し違いますよね。
プライドが高い人
負けを認められず「損切り」ができない人のための、強制的に損切りする方法です。逆指値注文を出しておくという手もあるのですが、「かぶオプ」のプットを使うと、もう少し複雑な相場観に応えることができます。
例えば、現在3,000円の株を1,000株(10単位)保有している時に、以下のような気持ちだったとします。
「損切りラインは2,600円。もしそれ以下の値段になっても1ヶ月は様子を見たい。1ヶ月後に株価が2,600円を下回っていたら、諦めて損切りしたい。」
この場合は、保有株の「かぶオプ」について、権利行使日が1ヶ月後の2,600円のプットを10枚(株を10単位保有しているため)買えばいいのです。そうすれば、権利行使日の株価がどんなに安くなっていても、権利行使して2,600円で株を売ることができるので、1ヶ月後の株式による損失は確実に400,000円以内に抑えることができます。
(2,600円−3,000円)×1,000株=−400,000円(注:プット代金および手数料は除く)
これは、いわゆる「プロテクティブ・プット」の戦略です。詳しい説明は、第2回のコラム「株を買い持ちしている時の不安やダメージを、「かぶオプ」を使って和らげる方法」をご参照下さい。
ここで、逆指値注文を使った損切りと比較してみましょう。逆指値の場合、いったん2,600円を付けたらすぐ売却になるので、1ヶ月後まで様子を見るような選択肢はありません。また、問題点として、例えばストップ安が続くような事態になれば、必ずしも2,600円で株を売却できないことがあります。ところが、「かぶオプ」のプットを買っておいて権利行使をすれば、確実に2,600円で売ることができるので安心です。ただし、オプション代を支払う必要があるので、相場観やコストと相談して使い分ける必要がありますね。
優柔不断な人
「優柔不断」でなかなか株の購入に踏み切れない人のために、背中を押してもらう方法をお伝えしておきます。例えば、「株価が2,000円まで下がったら買おう」とか「株が4,000円を超えてきたら、追従して買おう」と思っていても、いざとなると手が出ない方のための「かぶオプ」活用術です。
まず、「株価が2,000円まで下がったら買おう」と思っているのならば、その株の「プットを売る」という戦略があります。プットの売り方は、権利行使された時には、株を権利行使価格で買う義務があります。つまり、権利行使価格2,000円のプットを売っておけば、権利行使日に株価が2,000円を下回って権利行使された時に、株を2,000円で強制的に買うことになるのです。ちなみに、この戦略には証拠金がかかりますし、株の購入代金分の現金は、必ず手元に確保しておく必要がありますので注意して下さい。
あるいは、「株が4,000円を超えてきたら、追従して買おう」と考えているならば、その株の権利行使価格4,000円の「コールを買う」のもありでしょう。権利行使日に株価が4,000円を超えていたら、是非権利行使して、市場価格よりも安い4,000円で株を手に入れましょう。どんなに優柔不断なあなたでも、これなら迷いはありませんね。もちろん、株式購入代金は予め確保しておきましょう。
以上、感情に左右されやすい人が、「かぶオプ」を使って、戦略的に株を売買するための方法を紹介しました。いずれの場合も、権利行使日の前に「かぶオプ」を反対売買することが可能です。事情や気が変わった場合は、途中で戦略を止めることは可能です。しかし、ある程度の強制力にはなると思います。「かぶオプ」を使って、現物株の売買が上手くなると嬉しいですね。

株式会社シンプレクス・インスティテュート取締役
日本ファイナンシャル・プランナーズ協会AFP認定者
慶応義塾大学法学部法律学科卒。学生時代より、ベンチャー企業での新事業の立ち上げ等に関わり、2001年よりシンプレクス・インスティテュートに勤務。本業の傍ら、個人投資家として、主に日経平均先物・オプション、日経225miniの売買を行っている。セミナーや講演会にて、デリバティブの啓蒙・教育活動も行っている。
Fanet MoneyLife(掲載日:2011年12月09日)
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