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【第11回】人民元資産への投資機会を増やす人民元NDFに注目 - 中国・アジア新興国特集 中国・アジア新興国特集

最終更新:2013/06/27 15:52

中国・アジア新興国特集 [ 中国経済と投資のトピックス ]

【第11回】

人民元資産への投資機会を増やす人民元NDFに注目

人民元NDFの取引が活発化している。それによって現物の人民元資金がなくても為替ヘッジのほか、実質的に人民元資産に投資することが可能となる。人民元NDFの実態を探ってみる。

為替予約と同じ効果の人民元NDF

NDFは、現物受け渡しの伴わない先渡取引(Non Deliverable Forward、ノンデリバラブル・フォワード)の略で、ちょっと特殊な為替予約である。人民元NDFは人民元を対象とするNDFのことである。通常の為替予約による人民元と米ドルの取引の場合、決済日に契約時に決めたレートと金額で人民元とドルの授受を行う。NDFの場合は、契約時に決めたレートと決済日の直物レートの差をドルなど主要通貨に換算して差金決済で行われる。

例えば、1年後に1ドル=6.5元のレートで100万ドルのドル売り・元買いの契約をしたとする。通常の為替予約であれば、1年後の決済日に100万ドルを相手に渡し、650万元を受け取ることになる。人民元NDFを使うと、決済日に直物レートが1ドル=6.0元と元高になったとすると、(6.0元−6.5元)×100万ドル÷6.0元=83,333.33ドルを受け取ることになる。

NDFは、差金決済であるため少額の資金で済むだけでなく、通常の為替予約と同じ効果が得られる。上記の例では、通常の為替予約で、決済日の100万ドルを調達するのに必要な元は、100万ドル×6.0元/ドル=600万元で、相手から受け取った650万ドルを差し引くとネットで50万元の受け取りになる。受け取った人民元を直ちに直物外為市場で売却すると、50万元÷6.0元/ドル83,333.33ドルを受け取る。つまり、NDF取引を使えば、人民元のやりとりなしで、通常の為替予約と同様の元高差益を受けることができる。

なぜ人民元NDF取引が生まれたか。それは、中国政府が厳しい為替管理を行っており、中国本土以外で多額の人民元の保有や、運用、調達、決済が難しいからである。そこで実物の人民元資金を一切必要とせず、米ドルなど主要通貨と公表された人民元レートがあれば取引可能なNDFという手法が編み出された。これにより、人民元建て資産・負債をもつ企業や投資家は、NDFを通じて為替ヘッジや投機が可能となる。中国だけでなく、インドやブラジル、韓国、ベトナム、フィリピンなど多くの新興国の通貨はNDFで取引されている。

人民元NDFを活用した金融商品の増加

NDFは相対取引で、主に欧米系大手銀行が仲介(プライムブローカー)の役割を果たしている。彼らの顧客の多くは貿易企業や香港に本部を置く中国本土企業で、主に貿易や直接投資に伴う為替リスクをヘッジするためにNDFを利用する。近年では、人民元の先高観が強まる中、NDFを活用して元高差益を狙う金融商品が増加し、運用会社やヘッジファンドによるNDF市場への参加が増えている。

日本でも、09年頃から脚光を浴びている通貨選択型投信のうち、NDFを使った人民元型の通貨選択型投信は2010年11月末現在、16本に達している。また11月29日に設定された「中国人民元マネジメント債券ファンド」(運用会社は新生インベストメント・マネジメント)は、中国企業が発行するドル建て社債に投資すると同時に、人民元NDFを活用して実質的に人民元建て運用するファンドである。

活発化している人民元NDF市場

人民元NDF市場は1996年6月にシンガポールで誕生し、その後、香港、東京も加わった。特にシンガポールと香港のNDF市場が活発である。現在、人民元NDFの種類は、1カ月物、2カ月物、3カ月物、6カ月物、1年物がある。貿易業者は、期日に決済するのがほとんどだが、投信商品などの運用会社の場合はロールオーバー(乗り換え)する。例えば、期日が来た3カ月物のポジションを決済すると同時に次の3カ月物を同ポジションで建て、それを繰り返す。

NDF取引はすべて相対取引であるため、取引規模などの詳細は公表されておらず、市場全体の統計を取るのが難しい。イギリス「フィナンシャル・タイムズ」紙による、1日当たりの取引高は300-500億ドルにのぼると推計されている。東京市場の場合、東京外国為替市場委員会が20の金融機関を対象に2010年4月の取引を調べた結果、人民元NDFの1日の取引高は約8,000万ドルである。

人民元NDFから見た元レートの展望

中国人民銀行(中央銀行)が毎日発表する人民元の直物の基準レートは介入もあり、日々の変動幅が小さく、比較的安定的に推移している。これに対し、NDFレートは、将来の人民元の上昇と下落の期待値(人民元のプレミアム)が織り込まれているので、基準レートと差異がある。近年、取引が活発化している中、NDFレートは市場の期待感や、世界政治・経済情勢の影響をより一層強く反映していると言える。最近の元相場をみると、NDFレートは、2008年秋のリーマンショックから2009年3月頃までの一時期を除き、基準レートより元高の状況が続いている。市場の人民元切り上げの期待が根強いことを物語っている。2010年11月3日、経済指標が中国景気の加速を示唆し、中国人民銀行が元高を容認するとの観測が強まったことを受け、1年物NDFレートは1ドル=6.4215元にまで上昇し、直物レート6.6761元を大きく上回り、向こう1年で人民元が3.8%上昇するとの予想を示唆した。その後、NDFレートはやや落ち着き、12月15日時点で1ドル=6.5145元となり、同日の直物レートは6.6555元であることから、NDFレートは今後1年で2.1%の元高との予想を織り込んでいるということになる。人民元資産への投資の関心が高まっている中、人民元NDFレートの動向から目が離せない。


執筆:株式会社ニーズ 李 粹蓉(掲載日:2011年01月14日)

プロフィール : 李 粹蓉  り すいよう
株式会社 ニーズ キャピタルデザイン 主席研究員
1988年京都大学経済学部卒業。1990年野村総合研究所に入社、2004年野村證券に転籍、同金融経済研究所経済調査部シニアエコノミスト、2006年野村資本市場研究所主任研究員、2007年野村アセットマネージメント総合企画室シニアマネジャー。野村グループでは約18年間勤務、その間エコノミストとして、統計データから経済構造、政治、社会など幅広い角度から、中国経済および中国金融資本市場を鋭く調査・分析。中国の金融・経済情勢に精通。平成13 年度国際金融情報センター「中国研究会」(財務省委嘱)委員。

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