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2025年は転換点だったのか?(1)【中国問題グローバル研究所】
配信日時:2026/01/14 10:14
配信元:FISCO
*10:14JST 2025年は転換点だったのか?(1)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している(※1)フレイザー・ハウイーの考察を2回に渡ってお届けする。
※この論考は12月30日の< Was this the Pivotal Year?>(※2)の翻訳です。
激動の一年
時事問題や歴史に関心がある人にとって、人類の歴史に大きな影響や転換点をもたらすことになる出来事や時代を、現在進行形の中で判断しようとするのは楽しいものだが、実があるとは言えない。その当時は政府や国民を完全に翻弄した出来事、例えば新型コロナウイルスのパンデミックも、多くの人にとって遠い記憶となり、忘れほうがよいものに見えるかもしれない。
しかし2025年が世界の地政学的バランス、特に米中対立において大きな転換点になったと見なされることは十分にあり得る。この転換の流れでドナルド・トランプの政権奪還が重要な意味を持つことは間違いないが、それだけではない。中国も自己主張を強め、予想以上の強靭性を見せたからだ。
米国テック業界の億万長者たちがトランプ大統領就任式の前列に並んだその日、中国のDeepSeek(ディープシーク)はAIチャットボットR1をリリースした。このオープンソースのAIツールは、米国の競合企業よりはるかに少ないコストで学習させたにもかかわらず、性能はほぼ同等であった。どうしてそれが可能だったのか?AI分野で中国は米国より数年遅れているのではなかったのか?DeepSeekはすぐにApp Storeでダウンロードランキングの上位に躍り出た。これが「スプートニク・モーメント」と呼ばれたのも当然で、米国のテック大手に対し中国が2位に甘んじるつもりはないことを示す警鐘となった。驚くべきは、DeepSeekが比較的無名の民間ベンチャーであり、国家による計画や潤沢な支援の産物ではなく、賢くてマニアックなエンジニアたちによる革新の成果だったことである。
トランプの2期目は1期目から劇的に変化した。1期目は、冷静沈着で、多くの場合プロフェッショナルかつ経験豊富な人材に囲まれており、トランプの最悪の暴走を抑えていた。しかし今回、同氏を支えているのは、いわゆる「プロジェクト2025」に沿って連邦政府を改編しようと周到に構想を練ってきた超忠誠派たちばかりだ。なお、トランプは選挙期間中、この計画については何も知らないと述べていた。
真にトランプの政策と言える取り組みには関税戦争がある。「解放の日」に発表された関税はすべての国に二桁の関税を課すもので、株式市場を暴落させ、経済活動に関わる文字通り世界中のすべての人に影響を与えた。当初発表された関税水準はほとんどが発効に至らず、各国はより有利な取引を結ぼうと交渉を急いだ。8ヶ月が経った今も最高裁はトランプ関税がそもそも合法かどうかの判断を下していないため、関税戦争自体が白紙に戻るかもしれず、少なくとも見直しが行われるだろう。
この関税戦争の過程で特筆すべきは、貿易制限に関して中国だけが断固として抵抗し、米国に対し報復に出たことだ。世界最大の単一市場を有するEUは、当初こそ強気な発言でトランプの措置を非難したが、結局は屈服し、米国が定めた条件に概ね従った。中国が反撃するとトランプは応酬し、関税は跳ね上がり100%以上というまったく非現実的な水準に達した。しかし中国はEUと異なりトランプの1期目から関税に備えており、現代のほぼすべてのテクノロジーに不可欠なレアアースの輸出を制限するという新たな措置で対抗できた。
EUはトランプ政権下のアメリカを4年間の異常事態と見なし、バイデン政権の復帰により通常に戻るものと考えていた。EUは基本的に米国を友であり、同盟国と見なしており、米国が自分たちに牙をむくとは予想だにしていなかった。中国はそもそも米国を友人ともパートナーとも見ておらず、そのような幻想は抱いていなかった。一党支配体制にとっては、米国の理想すべてが脅威であった。経済的結びつきがどれほど緊密になろうとも、中国共産党指導部は決して米国を信頼せず、むしろ米国主導の秩序は中国の行動を制限すると見ていた。
中国がレアアースの輸出許可制度導入の決定を下したことで、販売だけでなく全世界での最終用途まで管理されることとなり、すぐに米中間で交渉が持たれることになった。関税は引き下げられ、制限措置は延期され、少なくとも一部のビジネスは継続された。
トランプは中国から米国に直接輸出される貿易量と金額を減らすことには成功したが、中国の輸出拡大を抑制するという目的は果たせなかった。11月、中国は年間の貿易黒字が1兆米ドルに達したと発表した。多くの輸出品が第三国で積み替えられてから米国に向かい、また次々と原価割れで投げ売りされるなどした。ただ、中国の貿易黒字も内容は変化している。安価で多くは使い捨ての商品を供給していることに変わりはないが、電気自動車(EV)では世界を牽引するようになっている。中国は優れた内燃機関車の開発には失敗したかもしれないが、電気自動車分野では世界をリードしており、今や世界最速の量産車であるBYD製YANGWANG U9 Xtremeを擁している。
トランプは、米国の学術界における中核的研究への連邦予算削減を指示・容認してきた。あらゆる分野に影響が及んだこの削減は、まったくもって理不尽である。米国はこれまで先端研究の多くの分野で主導的立場にあり、大学・民間資本・ビジネスの知見を融合させたエコシステムによって研究室での画期的な発見を商業的成功へと導いてきた。研究への締め付けは、移民制限と並行して進められており、学生も研究者も米国が生活し働きたい場所かを考え直す事態を招いている。これに対して中国は、帰国を希望する自国民に手厚い資金と研究の機会を約束しているほか、他国出身の研究者をもますます惹きつけている。その数はまだ少ないが明らかに増加しており、欧米で資金援助が限られ、米国で意図的に大学を妨害する動きがある中で、無視できない傾向だ。
そして限定的ではあるが2025年を評価する最後の指標として、トランプ関税による変動後も米国株が年間約17%上昇していることが挙げられる。特に4月の安値以降に一部の企業が高騰し、AI開発で注目が集まるNVIDIAは2025年、史上初の5兆米ドル企業となった。ただし、中国の広範な銘柄を含むCSI300指数は20%余り上昇し、Nasdaqに相当するChiNext指数も50%余り上昇した。中国株が米国株を上回っただけでなく、MSCIオール・カントリー・ワールド(米国を除く)指数も30%近く上昇している。
「2025年は転換点だったのか?(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。
トランプ大統領と習近平国家主席(写真:ロイター/アフロ)
(※1)https://grici.or.jp/
(※2)https://grici.or.jp/7035
<CS>
※この論考は12月30日の< Was this the Pivotal Year?>(※2)の翻訳です。
激動の一年
時事問題や歴史に関心がある人にとって、人類の歴史に大きな影響や転換点をもたらすことになる出来事や時代を、現在進行形の中で判断しようとするのは楽しいものだが、実があるとは言えない。その当時は政府や国民を完全に翻弄した出来事、例えば新型コロナウイルスのパンデミックも、多くの人にとって遠い記憶となり、忘れほうがよいものに見えるかもしれない。
しかし2025年が世界の地政学的バランス、特に米中対立において大きな転換点になったと見なされることは十分にあり得る。この転換の流れでドナルド・トランプの政権奪還が重要な意味を持つことは間違いないが、それだけではない。中国も自己主張を強め、予想以上の強靭性を見せたからだ。
米国テック業界の億万長者たちがトランプ大統領就任式の前列に並んだその日、中国のDeepSeek(ディープシーク)はAIチャットボットR1をリリースした。このオープンソースのAIツールは、米国の競合企業よりはるかに少ないコストで学習させたにもかかわらず、性能はほぼ同等であった。どうしてそれが可能だったのか?AI分野で中国は米国より数年遅れているのではなかったのか?DeepSeekはすぐにApp Storeでダウンロードランキングの上位に躍り出た。これが「スプートニク・モーメント」と呼ばれたのも当然で、米国のテック大手に対し中国が2位に甘んじるつもりはないことを示す警鐘となった。驚くべきは、DeepSeekが比較的無名の民間ベンチャーであり、国家による計画や潤沢な支援の産物ではなく、賢くてマニアックなエンジニアたちによる革新の成果だったことである。
トランプの2期目は1期目から劇的に変化した。1期目は、冷静沈着で、多くの場合プロフェッショナルかつ経験豊富な人材に囲まれており、トランプの最悪の暴走を抑えていた。しかし今回、同氏を支えているのは、いわゆる「プロジェクト2025」に沿って連邦政府を改編しようと周到に構想を練ってきた超忠誠派たちばかりだ。なお、トランプは選挙期間中、この計画については何も知らないと述べていた。
真にトランプの政策と言える取り組みには関税戦争がある。「解放の日」に発表された関税はすべての国に二桁の関税を課すもので、株式市場を暴落させ、経済活動に関わる文字通り世界中のすべての人に影響を与えた。当初発表された関税水準はほとんどが発効に至らず、各国はより有利な取引を結ぼうと交渉を急いだ。8ヶ月が経った今も最高裁はトランプ関税がそもそも合法かどうかの判断を下していないため、関税戦争自体が白紙に戻るかもしれず、少なくとも見直しが行われるだろう。
この関税戦争の過程で特筆すべきは、貿易制限に関して中国だけが断固として抵抗し、米国に対し報復に出たことだ。世界最大の単一市場を有するEUは、当初こそ強気な発言でトランプの措置を非難したが、結局は屈服し、米国が定めた条件に概ね従った。中国が反撃するとトランプは応酬し、関税は跳ね上がり100%以上というまったく非現実的な水準に達した。しかし中国はEUと異なりトランプの1期目から関税に備えており、現代のほぼすべてのテクノロジーに不可欠なレアアースの輸出を制限するという新たな措置で対抗できた。
EUはトランプ政権下のアメリカを4年間の異常事態と見なし、バイデン政権の復帰により通常に戻るものと考えていた。EUは基本的に米国を友であり、同盟国と見なしており、米国が自分たちに牙をむくとは予想だにしていなかった。中国はそもそも米国を友人ともパートナーとも見ておらず、そのような幻想は抱いていなかった。一党支配体制にとっては、米国の理想すべてが脅威であった。経済的結びつきがどれほど緊密になろうとも、中国共産党指導部は決して米国を信頼せず、むしろ米国主導の秩序は中国の行動を制限すると見ていた。
中国がレアアースの輸出許可制度導入の決定を下したことで、販売だけでなく全世界での最終用途まで管理されることとなり、すぐに米中間で交渉が持たれることになった。関税は引き下げられ、制限措置は延期され、少なくとも一部のビジネスは継続された。
トランプは中国から米国に直接輸出される貿易量と金額を減らすことには成功したが、中国の輸出拡大を抑制するという目的は果たせなかった。11月、中国は年間の貿易黒字が1兆米ドルに達したと発表した。多くの輸出品が第三国で積み替えられてから米国に向かい、また次々と原価割れで投げ売りされるなどした。ただ、中国の貿易黒字も内容は変化している。安価で多くは使い捨ての商品を供給していることに変わりはないが、電気自動車(EV)では世界を牽引するようになっている。中国は優れた内燃機関車の開発には失敗したかもしれないが、電気自動車分野では世界をリードしており、今や世界最速の量産車であるBYD製YANGWANG U9 Xtremeを擁している。
トランプは、米国の学術界における中核的研究への連邦予算削減を指示・容認してきた。あらゆる分野に影響が及んだこの削減は、まったくもって理不尽である。米国はこれまで先端研究の多くの分野で主導的立場にあり、大学・民間資本・ビジネスの知見を融合させたエコシステムによって研究室での画期的な発見を商業的成功へと導いてきた。研究への締め付けは、移民制限と並行して進められており、学生も研究者も米国が生活し働きたい場所かを考え直す事態を招いている。これに対して中国は、帰国を希望する自国民に手厚い資金と研究の機会を約束しているほか、他国出身の研究者をもますます惹きつけている。その数はまだ少ないが明らかに増加しており、欧米で資金援助が限られ、米国で意図的に大学を妨害する動きがある中で、無視できない傾向だ。
そして限定的ではあるが2025年を評価する最後の指標として、トランプ関税による変動後も米国株が年間約17%上昇していることが挙げられる。特に4月の安値以降に一部の企業が高騰し、AI開発で注目が集まるNVIDIAは2025年、史上初の5兆米ドル企業となった。ただし、中国の広範な銘柄を含むCSI300指数は20%余り上昇し、Nasdaqに相当するChiNext指数も50%余り上昇した。中国株が米国株を上回っただけでなく、MSCIオール・カントリー・ワールド(米国を除く)指数も30%近く上昇している。
「2025年は転換点だったのか?(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。
トランプ大統領と習近平国家主席(写真:ロイター/アフロ)
(※1)https://grici.or.jp/
(※2)https://grici.or.jp/7035
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