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最高値更新ならずも楽観論が優勢に (1) 【シルバーブラットの「S&P500」月例レポート】
配信日時:2025/12/12 11:40
配信元:MINKABU
S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。
●THE S&P 500 MARKET:2025年11月
息の長い順風満帆な相場上昇が続いてきた。2025年も残すところ22営業日となり、年初来のトータルリターンは17.81%、過去3年間のトータルリターンは86.00%(年率換算24.49%)に迫る
S&P500指数 は11月に入ると一転して下落基調での推移が続きました。先行きの経済成長、コスト問題、市場の各種バリュエーションやAI(人工知能)関連の債務水準の上昇に対する懸念が理由となり、昔ながらの利食い売りが広がりました。今年は(買い手や資金流入と比べて)目立った動きを見せてこなかった売り手が存在感を示し、11月中旬まで買い手を圧倒する展開が続きました。とはいえ、押し目買いが入ることで下値抵抗線が抜けることはなく、下げ幅は限定的なものにとどまりました。その後は売り先行の流れが反転して月末にかけて力強い上昇トレンドを描き、11月の最終営業日には月間騰落率を0.13%上昇のプラスに戻しました。この結果、S&P500指数は年初来で16.45%上昇(2024年23.31%上昇、2023年は24.23%上昇)となりました。11月は値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を上回りましたが、2025年5月以降で初めてS&P500指数が最高値を更新することなく月を終えました(年初来の最高値更新回数は36回)。
一方で、ダウ・ジョーンズ工業株価平均(NYダウ)は11月に最高値を更新しました(取引時間中の最高値は4万8431.57ドル、終値での最高値は4万8254.82ドル)。史上初めて終値で4万8000ドルを突破し、11月は0.32%上昇、年初来で12.16%上昇しました(過去1年は6.25%上昇)。
11月の相場のモメンタムはセクターのシフトで見られました。出遅れていたヘルスケアセクターのパフォーマンスが最高となり(9.14%上昇)、S&P500指数の営業利益(S&P500指数構成企業の96%が業績発表を終えました)は予想を大幅に上回り、6180億ドルで四半期ベースでの過去最高を記録する見通しです(これまでの最高は2025年第2四半期の5430億ドル)。売上高は当初は減少すると予想されていましたが、実際には増加して4兆5300億ドルで四半期ベースでの過去最高が見込まれています(これまでの最高は2025年第2四半期の4兆3500億ドル)。営業利益率も13.62%と過去最高の更新が目前に迫っています(これまでの最高は2021年第2四半期の13.54%)。
関税をめぐるニュースは依然として不安定で、関税率15%の水準での合意が続く中、米中間での交渉は継続しています。11月の株式市場は月の大半で下落基調を辿る展開となりましたが、最後の数日間は売り圧力が収束し、買い手が戻って月間騰落率をプラスに押し上げました。11月に市場は0.13%上昇しました(10月は2.27%上昇)。関税発表直後の4月8日に付けた安値(4982.77)の時点で、S&P500指数は年初来15.28%下落していましたが、それ以降の騰落率は11月末時点で37.46%上昇となっており、またこの期間に11セクター全てが上昇し(パフォーマンスが最高となったのは情報技術で63.13%上昇、最低だったのは生活必需品で5.37%上昇)、397銘柄が上昇し(27銘柄は2倍以上に上昇、97銘柄が50%以上上昇)、104銘柄が下落しました(52銘柄が10%以上下落、24銘柄が20%以上下落、2銘柄が50%以上下落)。S&P500指数は年初来で16.45%上昇し(配当込みのトータルリターンはプラス17.81%)、11セクター全てが上昇し(最高はコミュニケーションサービスの33.83%上昇、最低は不動産の2.51%上昇)、297銘柄が値上がり(平均28.36%上昇)、203銘柄が値下がり(平均16.04%下落)して、時価総額は8兆6310億ドル増加しました。
11月の相場のモメンタムはヘルスケア銘柄へとシフトしました。2025年12月末には2400万人に対する医療保険制度改革法(ACA、通称オバマケア)に関連する補助金が打ち切られる可能性があるにもかかわらず、ヘルスケアセクターは11月に全面高の9.14%上昇となりました(2022年10月の9.59%上昇以降で最高)。ヘルスケアセクターは2022年末以降、S&P500指数をアンダーパフォームしてきました(2022年末からの騰落率は2025年11月時点で15.29%上昇、2025年第3四半期時点末で2.11%上昇)。その一方で、情報技術は過去数年間にわたり上昇を継続してきましたが(過去1年間で29.30%上昇、2024年は35.69%上昇、2023年は56.39%上昇、2022年は28.91%下落)、11月は4.36%下落しました。とはいえ、年初来では23.67%上昇しています(2023年末比では67.80%上昇)。全体としては、売り圧力が買い圧力を上回ったものの、引き続き相場を下支えるに十分な買いが入り、全体的な影響は抑制されました。
仮にサンタクロースラリーが実現せずとも(S&P500指数の年初来の配当込みトータルリターンはプラス17.81%)、現時点では一部で懸念されている短期的な調整よりも楽観論が優勢となっています。こうした楽観的な見方を後押しするのが、支出に前向きな企業(AI分野が先導役)と消費者です。企業向けの税額控除や減価償却と、(2026年2月に開始される)個人向けの増額された税還付が経済を活性化すると期待されています。
11月のS&P500指数は、下落基調が続いたものの、最終的には前月比で小幅に上昇しました(前回月間騰落率がマイナスを記録したのは2025年4月で0.76%下落、同年3月は5.75%下落)。結果として11月は0.13%上昇し、同指数は7ヵ月連続の上昇となりました(7ヵ月間では累積で22.98%上昇)。11セクターのうち8セクターが上昇し(10月は6セクターが上昇、9月は7セクターが上昇、8月は9セクターが上昇)、値上がり銘柄数が増加して値下がり銘柄数を大きく上回りました。11月は324銘柄が値上がりし、177銘柄が値下がりしました(10月は204銘柄が値上がり、298銘柄が値下がり、9月は248銘柄が値上がりし、255銘柄が値下がり)。
11月のパフォーマンスが最高となったヘルスケアが市場の牽引役となり、9.14%上昇しました。年初来では14.26%上昇、2023年末以降では15.27%上昇となりました。パフォーマンスが最低だったのは情報技術で、利食い売りが膨らんで11月に4.36%下落しましたが(2025年3月の8.87%下落に次ぐ下落率)、年初来では23.67%上昇、2023年末以降では67.80%上昇となりました。S&P500指数は年初来で16.47%上昇し(配当込みのトータルリターンはプラス17.81%)、11セクター全てが上昇し、297銘柄が値上がりし、203銘柄が値下がりしました。同期間のパフォーマンスはコミュニケーションサービスが最高で33.83%上昇、不動産が最低で2.51%の上昇でした。
12月の株式市場では、まず12月9~10日に開かれる連邦公開市場委員会(FOMC)に焦点が集まるとみられます。市場は3会合連続となる0.25%の利下げを予想しており(CME FedWatchの予想では確率86%)、これによりフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標は3.50~3.75%となる見通しです。
その後は経済指標が話題の中心になるでしょう。通常通りに発表される経済指標に加え、43日間にわたる政府機関閉鎖で延期されていた経済指標もあり、延期されていた一部の指標は発表中止が決まっています(次の雇用統計は12月16日(火曜)に発表される予定です)。経済指標に基づいてエコノミストは予想を評価し、トレーダーはポートフォリオを評価・調整します。この間は市場のボラティリティが高まると予想され、一部の銘柄群は値動きの方向が転換する可能性もあります。短期的なつなぎ予算はニュースで大きく取り上げられていますが(このおかげで政府機関の閉鎖は終了しました)、取引テーマとして表立つことはないと思われます。つなぎ予算は2026年1月30日に期限を迎え、主な争点は引き続き、医療保険制度改革法(ACA)による個人向け保険料補助金(対象者は推定2400万人)の2025年末での終了です。市場では、補助金は延長されるものの、所得に応じて一部の個人向け給付の段階的縮小が盛り込まれると予想しています。
銘柄レベルでは、2025年第4四半期および2026年通期の利益見通しが修正され、年末に向けたウィンドウ・ドレッシングもボラティリティを高める可能性があります。さらに、関税の動向(現在は最高裁判所の判断待ち)、USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)交渉の進展(おそらく個別に行われる予定)、米中関税・貿易交渉の内容とスケジュールに関する最新状況にも焦点が当てられ、必要に応じて取引に反映されるとみられます。市場に関しては、12月24日(水曜)は米国の祝日前日のために市場は午後1時で取引を終了し、翌25日(木曜)は銀行と市場は祝日で休みになります。また、2026年1月1日(木曜)も市場は休みで、1月2日(金曜)から2026年の取引が始まります。
※「最高値更新ならずも楽観論が優勢に (2)」へ続く
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