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シュッピン Research Memo(6):中期経営計画では「時計事業」を「カメラ事業」に続く2本目の柱へ成長させる
配信日時:2025/12/08 11:36
配信元:FISCO
*11:36JST シュッピン Research Memo(6):中期経営計画では「時計事業」を「カメラ事業」に続く2本目の柱へ成長させる
■中長期の成長戦略
1. 目指す姿
シュッピン<3179>は、EC小売企業からの変革により、最先端テクノロジーを駆使し続けるEIC企業を目指しており、リバリューとテクノロジーの掛け合わせをさらに進化させる考えだ。特に、「カメラ事業」で先行してきたAIMDやAIコンテンツレコメンド、AI顔認証システムの精度をさらに高めるとともに、「時計事業」への展開を推進し、「カメラ事業」と「時計事業」の両軸で独自の事業モデル(プラットフォーム)の完成度をさらに高めていく方針である。また、そのためのシステム投資や人財育成(体制強化)にもこれまで以上に積極的に取り組んでいく。
2. 中期経営計画(ローリング)の方向性
同社は毎年、向こう3ヶ年の中期経営計画を更新しており、2025年5月にも新たな中期経営計画を公表した。今回、2026年3月期の業績予想を減額修正したものの、今後の方向性に見直しはなく2026年5月に新たに更新する予定である。今後も主軸のEC売上が高成長を維持する計画であり、越境ECの強化にも取り組む。利益面でも不確実性の高い市場動向の影響(特に時計事業)を保守的に見ているが、AI活用による売上総利益率の安定化や仕入リスクの軽減に取り組んでいく。また、将来を見据えた成長投資(商品在庫、AI活用、システム強化、人財等)も積極的に進める方針※であり、それに伴う減価償却費や人件費の増加を見込んでいる。中長期目標として経常利益率8%以上、ROE30%以上を目指す。
※ その筆頭として、今後の成長基盤となる基幹システム及びデータウェアハウスのリプレイスに約15億円の投資を予定している。ビッグデータをベースにフロント機能(様々なテクノロジーを載せるプラットフォーム)及びコア機能(経営分析やマーケティング戦略におけるAI活用)の両軸を強化するところにねらいがある。
3. 成長戦略
(1) カメラ事業のシェア拡大
デジタルカメラ市場は、ソーシャルメディア及びコンテンツ制作の人気の高まりなどを背景として、フリークエントユーザー(愛好者)の広がりや優れたデジタル写真機器への需要拡大(シフトを含む)が見込まれている。同社では新規・既存顧客の囲い込みに向けて、シュッピンポイントプログラムの活性化(シュッピン商圏の確立)やAI及びテクノロジーを活用したサービスの開発(アクティブ率の向上)に加え、新たな世界観の訴求※により新たな市場でのシェア獲得にも取り組む戦略である。
※ その一環として、「Camera is Fashion」をテーマとする特別イベント「TOP NOTCH」を2025年3月より開催している。第2回目の開催(2025年9月)では、「融合」をテーマとするファッションショーを実施し、イベント会場からのSNS拡散などを通じて、アパレル市場からの顧客獲得に取り組んだ。
(2) 時計事業の成長戦略
世界の中古高級時計市場の拡大が見込まれるなかで、同時に進むEC化や富裕層化率の上昇は同社にとってまさに追い風であり、来るべき「ブルーオーシャン」への種まきをしっかりとやり遂げ、2本目の柱へと成長させる考えだ。特に、カメラ事業での成功体験(記事や動画の豊富なコンテンツ作成など)を生かすとともに、高価格帯、希少価値の高い商品を中心とするラインアップの充実、富裕層向けSR・CRM施策の展開により、独自のポジショニングを確立し、ECでの高級機械式時計No.1を目指す。
(3) 海外ビジネスの強化
新たな軸を育成すべく、越境ECの強化にも取り組む。まずは主要KPIを購入者評価(eBay等のフィードバック)とし、高クオリティを維持することで高いブランド力の醸成と売上拡大を目指す。また、現地企業のM&Aによる海外での買取体制の構築も予定しており、軌道に乗れば、日本における成功モデルの展開を通じて海外ビジネスの拡大につながるポテンシャルを秘めている。
(4) 新基幹システムの活用
2027年3月期中に完成予定の新基幹システム及びデータウェアハウスの活用により、これまでの「One to One」から「One to Me」へ進化させる考えだ。具体的には、「お客様マイページ」を公開(任意設定)するとともに、CGMをさらに強化し、顧客同士のコミュニケーションの場を提供する。顧客同士の売買も可能(同社が介入することで安心・安全を提供)とすることでプラットフォームの活性化と新たな収益機会(仲介手数料等)も確保する。また、最新のAGI技術※を活用することによりECサイト上での新たな購入体験も目指す。
※ 「Artificial General Intelligence(人工汎用知能)」の略で、特定のタスクに特化した従来のAIとは異なり、創造性や柔軟性をもって対応できる汎用的な能力を持つ。
4. 中長期的な注目点
AIの活用や様々な価値の追求により特定分野でさらにプレゼンスを高め、利益成長を重視する戦略は、弊社でも合理性があると評価している。戦略的に取り組んできた「時計事業」は想定外の相場変動や円高進行に伴う影響を受けたものの、これをきっかけとして先を進む「カメラ事業」と同様にAIやテクノロジーを導入し、ビジネスモデルの精度を高めることができれば、他社との差別化を図るうえでも大きなチャンスとして捉えることもできる。また、長期的なアップサイド要因として注目されるのは、M&Aや事業提携を含む、海外への本格展開、並びに新たな収益源の創出にある。海外展開については、既にテストマーケティング的に取り組み、「カメラ事業」を中心に認知度が上がってきており、越境ECを通じて着実に利用者から高い評価を受けている。国内と同様、海外でのブランド力や買取の仕組みを確立することができれば、新たな成長の軸となる可能性は大きい。さらには、新たな収益源の創出(例えば、情報力及び会員基盤を生かした有料サービスの導入、メディア事業への展開など)についてもポテンシャルがある。その具現化のためにはロイヤリティ(熱量)が高く、質・量ともに充実した会員基盤をはじめ、愛好者にとって魅力的なコンテンツ情報が集まる仕組みを、いかに収益化に結び付けていくかがカギを握る。いずれにしても、来期(2027年3月期)稼働を予定している基幹システム及びデータウェアハウスのリプレイスが事業モデルのさらなる進化に向けて大きな転機となる可能性があり、その目指す方向性や期待効果が注目される。
■株主還元策
配当性向を40%~50%に引き上げ。2026年3月期は前期比7円増配を予定
同社は株主還元を重要な経営課題として位置付け、配当による還元を基本方針としている。2025年5月に配当基準の見直しを公表し、これまでは配当性向25%~35%を基準として利益成長に応じた安定継続配当としてきたが、2026年3月期より配当性向40%~50%に大きく引き上げた。
新たな配当基準が適用される2026年3月期は前期比7.0円増配となる1株当たり47.0円を予定しており、実現すれば5期連続の増配となる。業績予想を減額修正したにもかかわらず配当予想を据え置いたのは、今回の業績の落ち込みが一過性であることや株主重視の姿勢の表れと受け止めることができる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
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1. 目指す姿
シュッピン<3179>は、EC小売企業からの変革により、最先端テクノロジーを駆使し続けるEIC企業を目指しており、リバリューとテクノロジーの掛け合わせをさらに進化させる考えだ。特に、「カメラ事業」で先行してきたAIMDやAIコンテンツレコメンド、AI顔認証システムの精度をさらに高めるとともに、「時計事業」への展開を推進し、「カメラ事業」と「時計事業」の両軸で独自の事業モデル(プラットフォーム)の完成度をさらに高めていく方針である。また、そのためのシステム投資や人財育成(体制強化)にもこれまで以上に積極的に取り組んでいく。
2. 中期経営計画(ローリング)の方向性
同社は毎年、向こう3ヶ年の中期経営計画を更新しており、2025年5月にも新たな中期経営計画を公表した。今回、2026年3月期の業績予想を減額修正したものの、今後の方向性に見直しはなく2026年5月に新たに更新する予定である。今後も主軸のEC売上が高成長を維持する計画であり、越境ECの強化にも取り組む。利益面でも不確実性の高い市場動向の影響(特に時計事業)を保守的に見ているが、AI活用による売上総利益率の安定化や仕入リスクの軽減に取り組んでいく。また、将来を見据えた成長投資(商品在庫、AI活用、システム強化、人財等)も積極的に進める方針※であり、それに伴う減価償却費や人件費の増加を見込んでいる。中長期目標として経常利益率8%以上、ROE30%以上を目指す。
※ その筆頭として、今後の成長基盤となる基幹システム及びデータウェアハウスのリプレイスに約15億円の投資を予定している。ビッグデータをベースにフロント機能(様々なテクノロジーを載せるプラットフォーム)及びコア機能(経営分析やマーケティング戦略におけるAI活用)の両軸を強化するところにねらいがある。
3. 成長戦略
(1) カメラ事業のシェア拡大
デジタルカメラ市場は、ソーシャルメディア及びコンテンツ制作の人気の高まりなどを背景として、フリークエントユーザー(愛好者)の広がりや優れたデジタル写真機器への需要拡大(シフトを含む)が見込まれている。同社では新規・既存顧客の囲い込みに向けて、シュッピンポイントプログラムの活性化(シュッピン商圏の確立)やAI及びテクノロジーを活用したサービスの開発(アクティブ率の向上)に加え、新たな世界観の訴求※により新たな市場でのシェア獲得にも取り組む戦略である。
※ その一環として、「Camera is Fashion」をテーマとする特別イベント「TOP NOTCH」を2025年3月より開催している。第2回目の開催(2025年9月)では、「融合」をテーマとするファッションショーを実施し、イベント会場からのSNS拡散などを通じて、アパレル市場からの顧客獲得に取り組んだ。
(2) 時計事業の成長戦略
世界の中古高級時計市場の拡大が見込まれるなかで、同時に進むEC化や富裕層化率の上昇は同社にとってまさに追い風であり、来るべき「ブルーオーシャン」への種まきをしっかりとやり遂げ、2本目の柱へと成長させる考えだ。特に、カメラ事業での成功体験(記事や動画の豊富なコンテンツ作成など)を生かすとともに、高価格帯、希少価値の高い商品を中心とするラインアップの充実、富裕層向けSR・CRM施策の展開により、独自のポジショニングを確立し、ECでの高級機械式時計No.1を目指す。
(3) 海外ビジネスの強化
新たな軸を育成すべく、越境ECの強化にも取り組む。まずは主要KPIを購入者評価(eBay等のフィードバック)とし、高クオリティを維持することで高いブランド力の醸成と売上拡大を目指す。また、現地企業のM&Aによる海外での買取体制の構築も予定しており、軌道に乗れば、日本における成功モデルの展開を通じて海外ビジネスの拡大につながるポテンシャルを秘めている。
(4) 新基幹システムの活用
2027年3月期中に完成予定の新基幹システム及びデータウェアハウスの活用により、これまでの「One to One」から「One to Me」へ進化させる考えだ。具体的には、「お客様マイページ」を公開(任意設定)するとともに、CGMをさらに強化し、顧客同士のコミュニケーションの場を提供する。顧客同士の売買も可能(同社が介入することで安心・安全を提供)とすることでプラットフォームの活性化と新たな収益機会(仲介手数料等)も確保する。また、最新のAGI技術※を活用することによりECサイト上での新たな購入体験も目指す。
※ 「Artificial General Intelligence(人工汎用知能)」の略で、特定のタスクに特化した従来のAIとは異なり、創造性や柔軟性をもって対応できる汎用的な能力を持つ。
4. 中長期的な注目点
AIの活用や様々な価値の追求により特定分野でさらにプレゼンスを高め、利益成長を重視する戦略は、弊社でも合理性があると評価している。戦略的に取り組んできた「時計事業」は想定外の相場変動や円高進行に伴う影響を受けたものの、これをきっかけとして先を進む「カメラ事業」と同様にAIやテクノロジーを導入し、ビジネスモデルの精度を高めることができれば、他社との差別化を図るうえでも大きなチャンスとして捉えることもできる。また、長期的なアップサイド要因として注目されるのは、M&Aや事業提携を含む、海外への本格展開、並びに新たな収益源の創出にある。海外展開については、既にテストマーケティング的に取り組み、「カメラ事業」を中心に認知度が上がってきており、越境ECを通じて着実に利用者から高い評価を受けている。国内と同様、海外でのブランド力や買取の仕組みを確立することができれば、新たな成長の軸となる可能性は大きい。さらには、新たな収益源の創出(例えば、情報力及び会員基盤を生かした有料サービスの導入、メディア事業への展開など)についてもポテンシャルがある。その具現化のためにはロイヤリティ(熱量)が高く、質・量ともに充実した会員基盤をはじめ、愛好者にとって魅力的なコンテンツ情報が集まる仕組みを、いかに収益化に結び付けていくかがカギを握る。いずれにしても、来期(2027年3月期)稼働を予定している基幹システム及びデータウェアハウスのリプレイスが事業モデルのさらなる進化に向けて大きな転機となる可能性があり、その目指す方向性や期待効果が注目される。
■株主還元策
配当性向を40%~50%に引き上げ。2026年3月期は前期比7円増配を予定
同社は株主還元を重要な経営課題として位置付け、配当による還元を基本方針としている。2025年5月に配当基準の見直しを公表し、これまでは配当性向25%~35%を基準として利益成長に応じた安定継続配当としてきたが、2026年3月期より配当性向40%~50%に大きく引き上げた。
新たな配当基準が適用される2026年3月期は前期比7.0円増配となる1株当たり47.0円を予定しており、実現すれば5期連続の増配となる。業績予想を減額修正したにもかかわらず配当予想を据え置いたのは、今回の業績の落ち込みが一過性であることや株主重視の姿勢の表れと受け止めることができる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
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