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エスケーエレクトロニクス:高付加価値フォトマスクの世界シェア2位、PBR1倍接近かつ配当利回り4.9%
配信日時:2025/12/05 15:07
配信元:FISCO
*15:07JST エスケーエレクトロニクス:高付加価値フォトマスクの世界シェア2位、PBR1倍接近かつ配当利回り4.9%
エスケーエレクトロニクス(SKE)<6677>は、フラットパネルディスプレー(FPD)製造に不可欠な大型フォトマスクの専業メーカーであり、世界シェア28%で国内1位・世界2位というポジションを確立している。海外売上高比率90.7%。FPDは、スマートフォン、テレビ、タブレット、パソコンなどデジタル製品に欠かすことができない。印刷業を起源としながら、他社に先駆けて大型フォトマスク市場に参入。長年のノウハウ蓄積と高精細加工技術、電子技術、化学・光学技術をダイナミックに転換し、フラットパネルディスプレーの製造用原版となる大型フォトマスクの製品化をいち早く実現した。
セグメントは、大型フォトマスク事業が主力だが、そのほかソリューション事業とスクリーンマスク・メタルマスク事業で構成されている。2025年5月にアサヒテック株式会社を連結子会社化したことに伴ってスクリーンマスク・メタルマスク事業を新たに報告セグメントとして追加した。2025年9月期のフォトマスク事業における地域別売上高は、中国62%、韓国16%、台湾13%、日本9%。また、分野別では有機EL47%・液晶53%に分かれている。
同社の強みを語るうえで欠かせないのが中立性である。世界大手フォトマスクメーカーが特定地域・特定顧客に軸足を置く中、同社は製造拠点を日本・台湾に構え、フラットパネルディスプレー工場のある地域すべてにおいて安定的に取引実績を持つ数少ない企業である。この「どこにも属さないポジション」が、各国のパネルメーカーに対し公平かつ柔軟に対応できる背景となり、同社の顧客層を広げている。材料メーカーやフォトマスク装置メーカーが日本に集積し、SKEがその近傍で開発・製造のフィードバックループを高速回転できる体制を整えている点も優位性を強固にする。また、同社は高付加価値製品でシェアを獲得しているが、生産性の指標である従業員一人当たり売上高や営業利益は国内競合・類似企業と比較して際立っている。
2025年9月期の連結業績は、売上高29,187百万円(前期比13.4%増)、営業利益3,854百万円(同26.0%増)で着地した。事業構造の中心は大型フォトマスク事業では、中国市場でスマートフォン向け有機ELパネル用の需要が増加したほか、テレビおよび車載パネル向けの液晶パネル用の需要が、日本市場ではVRデバイス向けの液晶パネル用需要が増加。同社が得意とする高精細・高難度レイヤーの案件が増加したことが業績を大きく押し上げた。2026年9月期の計画は、売上高30,500百万円(前期比4.5%増)、営業利益4,600百万円(前期比19.4%増)を計画している。有機ELパネル用フォトマスクが、パネルメーカーから高精度・高精細な技術への期待がさらに高まり、新たな第8世代有機ELパネル工場向けもあわせて需要が増加すると見込んでいる。
市場環境について、フラットパネルディスプレー市場の成長は有機ELパネル(年平均成長率(数量)5%成長)が牽引していく想定となっている。スマートフォンでは有機ELパネル搭載機種の主流化、高機能化が継続し、IT製品では新サイズ・高機能化が進み、有機ELパネル搭載機種が拡大。車載パネルでは採用箇所が増加しつつ、画面の大型化・多機能化が加速していく。つまり、IT製品(ノートPC、タブレット)やVR・XRデバイスの高精細化が進むことで、フォトマスクの大型化・高難度化が進行し、市場全体として開発需要は中長期的に底堅く推移することとなる。
ただ、取材では市場の伸び率だけでは評価しきれない「技術開発の複雑さ」がフォトマスク需要を押し上げるという見立てもうかがえた。市場規模の視点では有機ELが液晶の需要を減らしていくトレンド予想があった。しかし、フォトマスクの視点では、液晶パネルの需要も継続して堅調に存在している。これは、有機ELでの新機能開発に加え、液晶においても、サイズ変化や多機能化に向けた技術開発が継続しているためだ。この通り、有機EL・液晶の両方で業界全体の開発需要は依然旺盛であり、FPD市場規模の伸び率だけでは見えないフォトマスク市場のポテンシャルがあることは頭に入れておきたい。
中期経営計画では、2028年9月期の売上高342億円。中長期的なKPI目標として営業利益率20%以上、ROE15%以上を掲げている。これは今後のM&Aを含まない計画となっている。重要施策では、積極的成長投資によるフォトマスク事業の拡大に向けて生産能力強化、ソリューション事業の黒字化、M&Aを通じたグループ企業の拡大の3点が挙げられた。実際、新規事業であるソリューション事業(RFID・ヘルスケア)は、顧客でのトライアル段階を経て実証フェーズに入りつつあり、単年度黒字化を狙っていくフェーズとなっている。スクリーンマスク・メタルマスク事業は自動車・半導体パッケージ向けの原版として成長余地があり、今後の事業ポートフォリオ拡大に貢献する見通しである。M&Aについては随時検討しながらも、既存製品の高付加価値化を軸に業績貢献を目指す姿勢が明確だ。
株主還元は、配当性向50%、2025年9月期の年間配当は130円と大幅増配となった。PBRは1倍に接近している。今後も、経営基盤の強化と積極的な成長投資を行い、継続的な企業価値の向上と株主への安定的かつ継続的な利益配分を実現することを基本方針としている。
総じて、エスケーエレクトロニクスは液晶と有機ELの両輪で進むFPD市場における技術進化の中心に位置し、難度上昇・大型化の深化に伴ってフォトマスク需要を確実に取り込めるポジションにある。高付加価値領域での圧倒的優位性、ノウハウ蓄積、中立性を活かした顧客基盤の広さに加え、旺盛な設備投資に裏打ちされた将来需要の取り込み力は大きな強みとなるため、同社の今後の動向に注目しておきたい。
<HM>
セグメントは、大型フォトマスク事業が主力だが、そのほかソリューション事業とスクリーンマスク・メタルマスク事業で構成されている。2025年5月にアサヒテック株式会社を連結子会社化したことに伴ってスクリーンマスク・メタルマスク事業を新たに報告セグメントとして追加した。2025年9月期のフォトマスク事業における地域別売上高は、中国62%、韓国16%、台湾13%、日本9%。また、分野別では有機EL47%・液晶53%に分かれている。
同社の強みを語るうえで欠かせないのが中立性である。世界大手フォトマスクメーカーが特定地域・特定顧客に軸足を置く中、同社は製造拠点を日本・台湾に構え、フラットパネルディスプレー工場のある地域すべてにおいて安定的に取引実績を持つ数少ない企業である。この「どこにも属さないポジション」が、各国のパネルメーカーに対し公平かつ柔軟に対応できる背景となり、同社の顧客層を広げている。材料メーカーやフォトマスク装置メーカーが日本に集積し、SKEがその近傍で開発・製造のフィードバックループを高速回転できる体制を整えている点も優位性を強固にする。また、同社は高付加価値製品でシェアを獲得しているが、生産性の指標である従業員一人当たり売上高や営業利益は国内競合・類似企業と比較して際立っている。
2025年9月期の連結業績は、売上高29,187百万円(前期比13.4%増)、営業利益3,854百万円(同26.0%増)で着地した。事業構造の中心は大型フォトマスク事業では、中国市場でスマートフォン向け有機ELパネル用の需要が増加したほか、テレビおよび車載パネル向けの液晶パネル用の需要が、日本市場ではVRデバイス向けの液晶パネル用需要が増加。同社が得意とする高精細・高難度レイヤーの案件が増加したことが業績を大きく押し上げた。2026年9月期の計画は、売上高30,500百万円(前期比4.5%増)、営業利益4,600百万円(前期比19.4%増)を計画している。有機ELパネル用フォトマスクが、パネルメーカーから高精度・高精細な技術への期待がさらに高まり、新たな第8世代有機ELパネル工場向けもあわせて需要が増加すると見込んでいる。
市場環境について、フラットパネルディスプレー市場の成長は有機ELパネル(年平均成長率(数量)5%成長)が牽引していく想定となっている。スマートフォンでは有機ELパネル搭載機種の主流化、高機能化が継続し、IT製品では新サイズ・高機能化が進み、有機ELパネル搭載機種が拡大。車載パネルでは採用箇所が増加しつつ、画面の大型化・多機能化が加速していく。つまり、IT製品(ノートPC、タブレット)やVR・XRデバイスの高精細化が進むことで、フォトマスクの大型化・高難度化が進行し、市場全体として開発需要は中長期的に底堅く推移することとなる。
ただ、取材では市場の伸び率だけでは評価しきれない「技術開発の複雑さ」がフォトマスク需要を押し上げるという見立てもうかがえた。市場規模の視点では有機ELが液晶の需要を減らしていくトレンド予想があった。しかし、フォトマスクの視点では、液晶パネルの需要も継続して堅調に存在している。これは、有機ELでの新機能開発に加え、液晶においても、サイズ変化や多機能化に向けた技術開発が継続しているためだ。この通り、有機EL・液晶の両方で業界全体の開発需要は依然旺盛であり、FPD市場規模の伸び率だけでは見えないフォトマスク市場のポテンシャルがあることは頭に入れておきたい。
中期経営計画では、2028年9月期の売上高342億円。中長期的なKPI目標として営業利益率20%以上、ROE15%以上を掲げている。これは今後のM&Aを含まない計画となっている。重要施策では、積極的成長投資によるフォトマスク事業の拡大に向けて生産能力強化、ソリューション事業の黒字化、M&Aを通じたグループ企業の拡大の3点が挙げられた。実際、新規事業であるソリューション事業(RFID・ヘルスケア)は、顧客でのトライアル段階を経て実証フェーズに入りつつあり、単年度黒字化を狙っていくフェーズとなっている。スクリーンマスク・メタルマスク事業は自動車・半導体パッケージ向けの原版として成長余地があり、今後の事業ポートフォリオ拡大に貢献する見通しである。M&Aについては随時検討しながらも、既存製品の高付加価値化を軸に業績貢献を目指す姿勢が明確だ。
株主還元は、配当性向50%、2025年9月期の年間配当は130円と大幅増配となった。PBRは1倍に接近している。今後も、経営基盤の強化と積極的な成長投資を行い、継続的な企業価値の向上と株主への安定的かつ継続的な利益配分を実現することを基本方針としている。
総じて、エスケーエレクトロニクスは液晶と有機ELの両輪で進むFPD市場における技術進化の中心に位置し、難度上昇・大型化の深化に伴ってフォトマスク需要を確実に取り込めるポジションにある。高付加価値領域での圧倒的優位性、ノウハウ蓄積、中立性を活かした顧客基盤の広さに加え、旺盛な設備投資に裏打ちされた将来需要の取り込み力は大きな強みとなるため、同社の今後の動向に注目しておきたい。
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