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明日の株式相場に向けて=SBGは巨大なる炭鉱のカナリアと化すか

配信日時:2025/12/02 17:30 配信元:MINKABU
 きょう(2日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比17銭高の4万9303円とわずかに反発。11月中旬以降、5万円台への戻りは比較的たやすく達成されるのだが、5万円台に乗せると大台を固められず、4万円台に押し戻されるという展開が繰り返されている。TOPIXは相対的に強く、それを反映してNT倍率は12月上旬を分水嶺として、それ以降は一貫して低下の一途をたどっている。  対TOPIXで日経平均の動きが鈍い理由は明らかで、指数寄与度上位のソフトバンクグループ<9984.T>の株価下落の影響が大きい。同社株は先物絡みの需給主導で買われ過ぎた反動とはいえ、下げもドラスチックだった。10月29日の2万7695円の上場来最高値形成は、結果的にジェットコースター相場の頂上となった。そこから3営業日後の11月4日に大陰線を引き、急下降に転じることになり、株価は約1カ月で1万5000円近辺まで下げ幅にして1万2500円あまりの暴落を余儀なくされた。信用買い残が960万株弱と急膨張するなか、リバウンドしようにもどうにも上値が重く、短時日で時価総額の45%、18兆円相当を吹き飛ばした。  この18兆円というのはファーストリテイリング<9983.T>の時価総額とほぼ合致する。つまりソフトバンクGは1カ月でファストリ1社を吹き飛ばしてしまった勘定となる。こうした観点で眺めると、企業の株価は実体あってこそとはいえ、かなりの部分がビールジョッキから溢れる泡のようなものであることを痛感させられる。ちなみにファストリの「日経平均構成比」は株価を急落させたソフトバンクGを上回り、アドバンテスト<6857.T>に次ぐ2位に再浮上した。これも何やらアイロニカルな順位逆転といえなくもない。  前日に日経平均株価は一時1000円超の大幅安で、大引けでも950円安と下げ幅としては結構なボリュームであった。きょうはかろうじて反発したが、5分足チャートを見ると前場中盤以降は雪斜面を滑降するように値を消す展開で、下げ止まったとは呼べない動きとなった。TOPIXもきょうは朝高後に軟化を強いられたのだが、前週まで日経平均とは対照的に史上最高値近辺で頑強な値動きをみせていた。市場関係者いわく「バンクとバンクのロングショートが直近1カ月の隠れテーマ」(中堅証券ストラテジスト)と揶揄する。つまり“ソフトバンク(G)売りのメガバンク買い”を如実に投影した相場つきだったといえる。1か月間を振り返って、大きく値を崩したソフトバンクGを横目に、三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306.T>をはじめとするメガバンク3社は次第高の様相を呈した。  背景にあるのは長期金利の上昇だ。新発10年債利回りはきょうは結局低下したが、一時1.880%まで上昇する場面があった。トリプル安に伴うキャピタルフライトへの警戒論がかまびすしいとはいえ、金融機関にとって金利上昇は基本的に運用利ザヤを拡大させるプラス材料となる。メガバンクの傍らで地銀株も上昇しているが、地銀株の場合は財務体質が弱ければ保有債券の評価損が経営基盤を直撃するため、金利上昇が一概にプラスとは言い切れない。その点、メガバンクは買い安心感が強い。  足もとの金利上昇は負債負担を考慮すればソフトバンクGにとっては常識的にマイナスであり、これもメガバンクとのロングショートの有効性を裏打ちする。しかし現状はまだ2%未満の水準であり、少々慌てすぎではないかという声もある。今から36年前の1989年12月末に日経平均はバブルの頂点として歴史に刻まれた3万8915円をつけたが、この時の10年債利回りは5.720%であった。時代背景も経済の諸条件も異なるが、植田日銀総裁の言う通り、日本は依然として緩和的な金融環境にあることは間違いない。一方、超長期債である20年債や30年債は過去最高水準に達していることで、これがレジーム・チェンジとして株式市場にとっての警戒材料とみなされているのだが、これは売り方の決め台詞ともなっていて、この答え合わせはこれからの相場の動向を見守っていくしかない。果たして今、高市政権が日本版トラス・ショックのカウントダウンが始まっているのかどうか、ソフトバンクGはある意味、巨大な炭鉱のカナリアといえるかもしれない。  あすのスケジュールでは、12月の日銀当座預金増減見込みが朝方取引開始前に開示される以外には国内で特に目立ったイベントは見当たらない。海外では11月のレーティングドッグ中国非製造業購買担当者景気指数(PMI)が発表される。また、米国では重要指標の発表が相次ぎ、労働市場の軟化が観測されるなか、11月のADP全米雇用リポートにマーケットの関心が向かうほか、9月の米輸出入物価指数、9月の米鉱工業生産・設備稼働率、11月の米サプライマネジメント協会(ISM)非製造業景況感指数などが注目されている。個別企業の決算発表ではセールスフォース<CRM>の8~10月決算に耳目が集まりそうだ。(銀) 出所:MINKABU PRESS

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