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新電元工業:パワーデバイス事業の構造改革でV字回復、M&Aとインド戦略でPBR1倍越えを目指す

配信日時:2025/12/02 13:56 配信元:FISCO
*13:56JST 新電元工業:パワーデバイス事業の構造改革でV字回復、M&Aとインド戦略でPBR1倍越えを目指す 新電元工業<6844>は1949年創業、セレン整流器から出発したパワーエレクトロニクスメーカーである。パワー半導体(デバイス)と電源製品(ユニット、システム)の両方を手掛ける垂直統合型モデルが特色。デバイスの知見を電源製品に、電源製品の要求をデバイス開発にフィードバックする体制を持つ。

同社は2026年3月期より、事業実態に合わせセグメントをパワーデバイス、パワーユニット、パワーシステムの3事業に再編している。

パワーデバイス事業は(ダイオード、MOSFET等)、売上高の3割程度を占める。
主力となるダイオードの用途は、自動車が半分程度、家電が3割、産業機械が残りとなっている。近年は自動車の電動化などを受け、需要自体は拡大しているものの、中国メーカーなどとの価格競争が熾烈となっている。同社の強みは長年の実績に裏付けられた高い品質と安定性にある。また同社は長年電源に関する技術に強みを持っておりパワー半導体や回路技術に高い専門性を保持している。使用されるデバイスの周辺分野である回路技術を踏まえた顧客提案が可能であり、他社との差別化につながっている。また、足元では、来年1月に京セラパワーデバイス事業を取得予定で、同社事業分野との親和性の高さ、同事業の技術取り込みを踏まえたもの。

次に、パワーユニット事業は売上高の6割超を占める。用途としては、二輪車が全体の7割、残りは自動車などとなっている。二輪車はアジア市場での成長が継続しており、特に足元ではインド市場でのシェア拡大余地が大きくなっている。同社の強みとしては、パワーユニットで用いられるパワー半導体を自社で作成できる点にある。また、組込みソフトウェアにおいても内製しており、パッケージ製品として収益性を高める余地がある。最後にパワーシステム事業は、売上の6%程度と全社への影響は限定的であるが、通信インフラ向け整流装置の販売など安定した収益源となっている。

外部環境は、米国の関税政策や中国経済の停滞などで見通し不透明ではあるが、パワーデバイス事業では採算性の改善や京セラパワーデバイス事業の取得など収益性改善を進めている。パワーユニット事業では、インド市場をターゲットに追加投資を行うなど、商品の収益性を高めるとともに、成長率の高いセグメントにリソースを投下する算段である。

2026年3月期の通期連結業績予想は、売上高は前期比3.9%増の110,000百万円、営業利益は同2,464.8%増の3,300百万円、当期純利益は3,100百万円となっている。第2四半期の営業利益進捗率は70%と好調に推移している。尚、この通期予想には2026年1月取得予定の京セラパワーデバイス事業の業績寄与が織り込まれていない。同事業においては、既存事業とのシナジー効果などが見込めるため、中長期的な収益拡大に寄与するものと見込む。

同社は、第17次中期経営計画(FY2025-2027)では、最終年度(2027年度)に売上高120,000百万円、営業利益率5.0%、ROE6.0%という定量目標を掲げる。戦略的なリソース配分と財務戦略の強化により、2027年度末までにPBR1倍以上の達成を掲げている。

株主還元については安定配当を基本方針としている。2025年3月期は最終赤字を計上した厳しい業績下においても、年間65円の配当を維持するなど高いコミットメントが見て取れる。2026年3月期においては、年間配当予想は1株当たり65円(配当性向21.6%、予想配当利回り2.17%)としている。

投資の視点としては、パワーデバイス事業の構造改革で稼ぐ体質への転換が進みつつある点はポジティブ。また、京セラM&Aによるシナジーとインド新工場への成長投資が、中計で掲げるPBR1倍超の目標達成を後押しするアップサイド要素となろう。足元の株価バリエーションはPBR0.46倍、PER10倍と割安感があり投資妙味があると考える。

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