注目トピックス 日本株
IDOM Research Memo(6):中古車の流通形態の比較(1)
配信日時:2025/11/14 15:40
配信元:FISCO
*15:40JST IDOM Research Memo(6):中古車の流通形態の比較(1)
・大手中古車ディーラー
大規模な資金投入により全国的な中古車販売チェーンを形成しているのが、同社(ガリバー)、ネクステージ、および旧ビッグモーターの3社である。その生い立ちにより、現在の戦略に相違が起きているが、最も当面の成長に恵まれたポジションにいるのが、同社(ガリバー)と考えられる。
同社は買取専門店が創業事業であり、その後販売店の強化を進めて来た。現在はその販売店の大型化と販売店でのピット作業部門の強化による顧客満足度の向上、業績の拡大を目指している。一方でネクステージは名古屋地区での中古車販売店として創業し、大手メーカーとの取引関係を構築し全国展開を進め、現在は買取事業の強化を最優先に進めている。
買取事業はそれだけで事業として成立するが、販売店も持つ事業構造から考えると調達部門である。中小から大手ディーラーまでAA制度が広く利活用される現況においては、独自の買取事業が程度の良い中古車を入手する重要な機能を果たす一方、買取事業は消費者がネットで一括査定を依頼することも可能な数十社がひしめくレッドオーシャン事業でもある。買取事業は極力ローコストで継続的に持ち込みが行われる面展開を行えているかがポイントと考えられ、既に買取事業の十分な量と質が確保されている同社および大手OEM系ディーラーが比較優位な状況にあると考えられる。
旧ビッグモーターについて付け加えると、大手総合商社の資金力と取引関係業者の広さ、多さなど長期的には有力な中古車ディーラーに復活する可能性は十分あるが、一度信頼を失った企業、店舗は看板を挿げ替えたぐらいでは復活は成し得ないと考えられる。自動車は比較的金額の張る買い物であるうえ、事故により運転手や歩行者に致命的な影響を及ぼしかねない危険な存在でもあり、様々な商品の中でも信頼の意味でのブランド力が経営上重要な要素と考えられるためである。この観点から、大型店舗の増設とピットサービスの強化による、「ガリバー」ブランドの強化を進める同社の戦略は現在の市場ニーズに見事に合致しているといえよう。
・メーカー系ディーラー
メーカー系ディーラーは現在においても新車販売を優先させている事は論を待たないが、圧倒的は店舗数の多さで中古車流通においても約半分を占める最大のチャネルとなっている。国内メーカー最大手のトヨタの国内販売店が約5,000店、ホンダが約3,000店、日産が約2,000店、スズキとダイハツが約1,500店を運営しているのに対し、大手中古車販売店のガリバーが買取専門店含め約400店、ネクステージは新車ディーラー店と買取専門店含め約330店である。
メーカーは新車専門店、新車と中古車の併売店、中古車専門店を各社の販売戦略のもとで使い分けていると考えられるが、ホンダの中古車専門店が約800店、ダイハツの中古車専門店も700店強と大手中古車販売店の規模を大きく上回っている。また、メーカー大手3社中心に歴史的に複数存在する販売系列の統廃合などから店舗数自体は減少させているものの、中古車販売店は増やす傾向にあり、大手メーカーも中古車流通は強化すべきチャネルと認識していると見られる。中古車販売ディーラーとしてのメーカー系ディーラーの強みは、(1)認定中古車という自社ブランドの車を熟知した整備スタッフにより整備された安心の中古車という建て付けを消費者にアピールできること、(2)新車とほぼ同様のサービス保証などによる購入後の安心感、(3)それら全てを包含し顧客との関係や品質への約束を意味する大手メーカーのブランド力、と考えられる。
・小規模事業者(小規模中古車ディーラー、整備工場、板金工場)
このチャネルは日本の一般的な中小企業の強みと弱みを持ったチャネルと言える。日本の自動車流通の特殊性は法的拘束力のある車検制度によるところも大きいと考える。日本の車検制度によれば、新車の購入後は3年後、その後は2年毎に法定費用(自賠責保険料、自動車重量税、印紙代)の支払いとともに、車に不具合を感じていなくても車両検査を義務付けられている。車検違反での公道走行が発覚した場合、30日間の免許停止となり、違反点数6点減点、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が課せられる(運転免許点数制度の説明は脚注を参照)。違反車を減らす一定の効果はあるはずなので、速やかな道路交通に寄与している側面はあろうが、硬直的な既得権益への保護政策との指摘も多い。事実、大手メーカー系ディーラーや大手中古車ディーラーの多くでは、半年もしくは1年毎に法定車検よりも実用的かつ細かい点検を推奨しており、その点検により部品、モジュールの交換整備を行なうケースも多い。
しかし、法的拘束力のある法定車検制度のおかげで、自動車保有者は少なくとも2年(新車の初年度登録時は3年後)に一度は整備業者に点検整備を依頼することになる。不具合を感じていない状況においても点検整備に出すため、部品交換の際にはその整備業者に対する信頼感が極めて重要となり、友達や知り合いの業者に相談するというケースは今でも少なくないと思われる。さらに、その部品交換の金額によっては車の入れ替えも検討するため、車検タイミングでの車の入れ替えは一般的であり、小規模の整備工場、板金工場、販売店のチャネルが根強く残る背景と考えられる。
家族経営や小規模事業者の低コストオペレーションと信頼できる知人から購入するという安心感や納得感が得られやすいのがこのチャネルの強みと言える。一方で、このチャネルの弱点は(1)知り合い、友達からの口コミが最有力なプロモーション活動であるため広がりを求め難いこと、(2)日本の典型的な個人事業、中小企業であるため後継者難により廃業を余儀なくされるケースも多いこと、(3)自動車のコンピューター化の進展により町の整備工場では治せない、整備も出来ない車が増えてきている事、などが挙げられよう。今後、傾向的にシェア低下が続くチャネルと考えられる。
<HM>
大規模な資金投入により全国的な中古車販売チェーンを形成しているのが、同社(ガリバー)、ネクステージ、および旧ビッグモーターの3社である。その生い立ちにより、現在の戦略に相違が起きているが、最も当面の成長に恵まれたポジションにいるのが、同社(ガリバー)と考えられる。
同社は買取専門店が創業事業であり、その後販売店の強化を進めて来た。現在はその販売店の大型化と販売店でのピット作業部門の強化による顧客満足度の向上、業績の拡大を目指している。一方でネクステージは名古屋地区での中古車販売店として創業し、大手メーカーとの取引関係を構築し全国展開を進め、現在は買取事業の強化を最優先に進めている。
買取事業はそれだけで事業として成立するが、販売店も持つ事業構造から考えると調達部門である。中小から大手ディーラーまでAA制度が広く利活用される現況においては、独自の買取事業が程度の良い中古車を入手する重要な機能を果たす一方、買取事業は消費者がネットで一括査定を依頼することも可能な数十社がひしめくレッドオーシャン事業でもある。買取事業は極力ローコストで継続的に持ち込みが行われる面展開を行えているかがポイントと考えられ、既に買取事業の十分な量と質が確保されている同社および大手OEM系ディーラーが比較優位な状況にあると考えられる。
旧ビッグモーターについて付け加えると、大手総合商社の資金力と取引関係業者の広さ、多さなど長期的には有力な中古車ディーラーに復活する可能性は十分あるが、一度信頼を失った企業、店舗は看板を挿げ替えたぐらいでは復活は成し得ないと考えられる。自動車は比較的金額の張る買い物であるうえ、事故により運転手や歩行者に致命的な影響を及ぼしかねない危険な存在でもあり、様々な商品の中でも信頼の意味でのブランド力が経営上重要な要素と考えられるためである。この観点から、大型店舗の増設とピットサービスの強化による、「ガリバー」ブランドの強化を進める同社の戦略は現在の市場ニーズに見事に合致しているといえよう。
・メーカー系ディーラー
メーカー系ディーラーは現在においても新車販売を優先させている事は論を待たないが、圧倒的は店舗数の多さで中古車流通においても約半分を占める最大のチャネルとなっている。国内メーカー最大手のトヨタの国内販売店が約5,000店、ホンダが約3,000店、日産が約2,000店、スズキとダイハツが約1,500店を運営しているのに対し、大手中古車販売店のガリバーが買取専門店含め約400店、ネクステージは新車ディーラー店と買取専門店含め約330店である。
メーカーは新車専門店、新車と中古車の併売店、中古車専門店を各社の販売戦略のもとで使い分けていると考えられるが、ホンダの中古車専門店が約800店、ダイハツの中古車専門店も700店強と大手中古車販売店の規模を大きく上回っている。また、メーカー大手3社中心に歴史的に複数存在する販売系列の統廃合などから店舗数自体は減少させているものの、中古車販売店は増やす傾向にあり、大手メーカーも中古車流通は強化すべきチャネルと認識していると見られる。中古車販売ディーラーとしてのメーカー系ディーラーの強みは、(1)認定中古車という自社ブランドの車を熟知した整備スタッフにより整備された安心の中古車という建て付けを消費者にアピールできること、(2)新車とほぼ同様のサービス保証などによる購入後の安心感、(3)それら全てを包含し顧客との関係や品質への約束を意味する大手メーカーのブランド力、と考えられる。
・小規模事業者(小規模中古車ディーラー、整備工場、板金工場)
このチャネルは日本の一般的な中小企業の強みと弱みを持ったチャネルと言える。日本の自動車流通の特殊性は法的拘束力のある車検制度によるところも大きいと考える。日本の車検制度によれば、新車の購入後は3年後、その後は2年毎に法定費用(自賠責保険料、自動車重量税、印紙代)の支払いとともに、車に不具合を感じていなくても車両検査を義務付けられている。車検違反での公道走行が発覚した場合、30日間の免許停止となり、違反点数6点減点、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が課せられる(運転免許点数制度の説明は脚注を参照)。違反車を減らす一定の効果はあるはずなので、速やかな道路交通に寄与している側面はあろうが、硬直的な既得権益への保護政策との指摘も多い。事実、大手メーカー系ディーラーや大手中古車ディーラーの多くでは、半年もしくは1年毎に法定車検よりも実用的かつ細かい点検を推奨しており、その点検により部品、モジュールの交換整備を行なうケースも多い。
しかし、法的拘束力のある法定車検制度のおかげで、自動車保有者は少なくとも2年(新車の初年度登録時は3年後)に一度は整備業者に点検整備を依頼することになる。不具合を感じていない状況においても点検整備に出すため、部品交換の際にはその整備業者に対する信頼感が極めて重要となり、友達や知り合いの業者に相談するというケースは今でも少なくないと思われる。さらに、その部品交換の金額によっては車の入れ替えも検討するため、車検タイミングでの車の入れ替えは一般的であり、小規模の整備工場、板金工場、販売店のチャネルが根強く残る背景と考えられる。
家族経営や小規模事業者の低コストオペレーションと信頼できる知人から購入するという安心感や納得感が得られやすいのがこのチャネルの強みと言える。一方で、このチャネルの弱点は(1)知り合い、友達からの口コミが最有力なプロモーション活動であるため広がりを求め難いこと、(2)日本の典型的な個人事業、中小企業であるため後継者難により廃業を余儀なくされるケースも多いこと、(3)自動車のコンピューター化の進展により町の整備工場では治せない、整備も出来ない車が増えてきている事、などが挙げられよう。今後、傾向的にシェア低下が続くチャネルと考えられる。
<HM>
Copyright(c) FISCO Ltd. All rights reserved.
ニュースカテゴリ
注目トピックス 市況・概況
NY市場・クローズ
海外市場動向
注目トピックス 日本株
注目トピックス 経済総合
強弱材料
コラム【EMW】
オープニングコメント
日経225・本日の想定レンジ
寄り付き概況
新興市場スナップショット
注目トピックス 外国株
個別銘柄テクニカルショット
ランチタイムコメント
後場の投資戦略
後場の寄り付き概況
相場概況
本日の注目個別銘柄
JASDAQ市況
マザーズ市況
Miniトピック
来週の買い需要
日経QUICKニュース
みんかぶニュース 投資家動向
みんかぶニュース 為替・FX
みんかぶニュース 市況・概況
みんかぶニュース 個別・材料
みんかぶニュース コラム
みんかぶニュース その他
ビットコインニュース
アルトコインニュース
GRICI
暗号資産速報
Reuters Japan Online Report Business News
金融ウォッチ その他
FISCO その他
グロース市況
