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相場のモメンタムは企業利益へシフト (3) 【シルバーブラットの「S&P500」月例レポート】
配信日時:2025/11/14 11:41
配信元:MINKABU
●株式以外の市場
○米国10年国債利回りは9月末の4.16%から4.09%に低下して月を終えました(2024年末は4.58%、2023年末は3.88%、2022年末は3.88%、2021年末は1.51%、2020年末は0.92%、2019年末1.92%、2018年末は2.69%、2017年末は2.41%)。30年国債利回りは9月末の4.74%から4.66%に低下して取引を終えました(同4.78%、同4.04%、同3.97%、同1.91%、同1.65%、同2.30%、同3.02%、同3.05%)。
○英ポンドは9月末の1ポンド=1.3442ドルから1.3139ドルに下落し(2024年末は1.2520ドル、2023年末は1.2742ドル、2022年末は1.2099ドル)、ユーロは9月末の1ユーロ=1.1738ドルから1.1530ドルに下落しました(同1.0360ドル、同1.0838ドル、同1.0703ドル)。円(対米ドル)は9月末の1ドル=147.93円から154.09円に下落し(同157.32円、同141.02円、同132.21円)、人民元は9月末の1ドル=7.1195元から7.1174元に上昇しました(同7.2770元、同7.1132元、同6.9683元)。
○10月の原油価格は2.8%下落し、9月末の1バレル=62.54ドルから同60.78ドルとなりました(2024年末は同71.75ドル、2023年末は同71.31ドル、2022年末は同80.45ドル)。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は10月に2.6%下落し、1ガロン=3.164ドルとなりました(9月末は3.248ドル、2024年末は同3.128ドル、2023年末は同3.238ドル、2022年末は同3.203ドル)。2020年末から原油価格は25.5%上昇し(2020年末は48.42ドル)、ガソリン価格は35.8%上昇しました(同2.330ドル)。2025年8月時点のEIAの報告によると、ガソリン価格の内訳は、51%が原油(ディーゼルは42%)、16%(同22%)が配送・販売費、18%(同20%)が精製コスト、16%(同16%)が税金となっています。
○金価格は9月末の1トロイオンス=3882.40ドルから上昇し、一時4398.00ドルを付けた後、4011.50ドルで10月の取引を終えました(2024年末は2638.40ドル、2023年末は2073.60ドル、2022年末は1829.80ドル)。
○VIX恐怖指数は9月末の16.28から17.44に上昇して10月を終えました。月中の最高は28.99、最低は15.62でした(2024年末は17.35、2023年末は21.67、2022年末は17.22)。同指数の2024年の最高は75.73、最低は10.62でした。同指数の2023年の最高は30.81、最低は11.81でした。同指数の2022年の最高は38.89、最低は16.34でした。
●注目点
○米連邦公開市場委員会(FOMC)は2025年10月28~29日開催の会合で、予想通り2会合連続で政策金利を0.25%引き下げて3.75%~4.00%としました。また、量的引き締め(QT)政策を2025年12月1日から停止することも発表しました。現在、市場では12月9~10日のFOMC会合での0.25%の追加利下げが見込まれていますが、市場の見方にはばらつきがあります。カナダ銀行は前月(9月17日)の0.25%利下げに続き、10月29日にも政策金利を0.25%引き下げて2.25%としました。日銀は10月30日に政策金利を据え置き(0.50%)、欧州中央銀行(ECB)も10月30日に2.00%に据え置きました。
○米国連邦政府の債務残高は10月に38兆ドルを超えました。債務上限は2025年7月に36兆ドルから41.1兆ドルに引き上げられました。
○米国の2026年暦年の社会保障月次給付額(2024年は1.49兆ドル、2025年の見込額は1.6兆ドル)は2.8%増加する見通しです(出所:都市部勤労者・事務労働者向け消費者物価指数、2025年9月までの12ヵ月)。
○オートマティック・データ・プロセッシング(ADP)は週次のADP全米雇用統計の毎週火曜日の発表を開始しました。この指標では総民間雇用者数の4週間移動平均の変化の速報値が示されます。ADPは月次の民間雇用統計(毎月第1水曜日に発表)の発表も継続します。
○S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは、ハネウェル・インターナショナルからスピンオフした特殊化学メーカーのソルスティス・アドバンスト・マテリアルズをS&P500指数 に追加し、自動車小売業者のカーマックスを同指数から除外してS&P小型株600指数に追加しました。また、デュポン・ド・ヌムールからスピンオフした半導体素材企業のキューニティ・エレクトロニクスを2025年11月3日の取引開始前にS&P500指数に追加し、特殊化学企業のイーストマン・ケミカルを2025年11月4日の取引開始前に除外する(S&P小型株600指数に追加)と発表しました。
●S&Pリサーチ:9月の投稿とメーリング(spglobal.comを参照)
2025年第2四半期の利益とマグニフィセント・セブン の分析によれば、情報技術セクターと金融セクターが2025年第2四半期のS&P500指数の利益のそれぞれ22.6%と20.3%を占めました。情報技術セクターの利益の割合はS&P500指数の時価総額に占める同セクターの割合である33.1%を下回る一方、金融セクターの利益の割合は同14.0%を上回りました。2つのセクターの違いは、2025年の営業利益ベースの株価収益率(PER)にも反映されています。情報技術セクターは37.2倍と、投資家はより強い将来の成長を求めており、金融セクターは18.4倍で、大型株の成長が低いことは、(一部の投資家にとって)同セクターの配当利回りが1.42%と情報技術セクターの0.52%より高いことで補われています。
⇒マグニフィセント・セブンは、S&P500指数の時価総額の32.5%、営業利益の24.9%を占めており、予想を上回る成長を背景にPERが上昇しました。
10月はS&P500指数の70%に相当する企業が2025年第3四半期決算を発表しました。319銘柄が決算を終えた段階で、319銘柄中260銘柄(81.5%、過去10年の平均は75.0%)で営業利益が予想を上回りました。営業利益は過去最高を記録した2025年第2四半期から9.8%増、前年同期比では18.8%増が見込まれており、四半期としての過去最高を更新する見通しです。2025年第3四半期は、318銘柄中245銘柄(77.0%)で売上高が予想を上回っています。売上高も過去最高を更新する見通しで、過去最高を記録した2025年第2四半期から2.4%増、前年同期比では5.0%増が見込まれています。第3四半期の営業利益率は13.35%と、第2四半期の12.46%から上昇が予想されています。1993年以降の平均は8.74%で、過去最高は2021年第2四半期の13.54%です。個別銘柄レベルでの株式数の減少によるEPSへの影響を見ると、2025年第3四半期に株式数の減少によりEPSが大きく押し上げられた発表済みの銘柄の割合は15.3%となっています。この割合は、2025年第2四半期は17.3%、2024年第3四半期は13.6%でした。2025年通年の利益は前年比12.1%増が見込まれており、これに基づく2025年予想株価収益率(PER)は26.2倍です。2026年通年の利益は前年比16.3%増が見込まれており、予想PERは22.5倍です。
米国の2025年第3四半期の国内の普通株式の配当支払いは鈍化する状況が続きました。背景には変化する関税政策を巡る不透明感に加えて、その売上高、コスト、経済全般への影響により、将来的な資金使途のコミットメントに対する懸念が悪化したことがありました。全体として、企業は引き続き配当を引き上げましたが、(年ごとの)増配予定のある企業では引き上げが小幅となり、予定のない企業の一部は当面は動きを先延ばしているようです。第3四半期に関税と政策の行方が明確になり始めたことで、企業は第4四半期に配当を引き上げる可能性はありますが、将来の長期的な配当へのコミットメントには、なお法制・行政面の確実性が高まる必要があります。トランプ政権の予算による現在の税制、減価償却面の恩恵が企業利益を押し上げているほか、予想される個人の税還付(2026年2月に始まる)の増加を背景に売上高予想は上方修正されており、企業は短期的には安心感を持っていますが、増配へのコミットメントに向けた長期的な確信を抱くには至っていません。
⇒数値で見ると:2025年第3四半期中に発表された米国の普通株式の配当の引き上げ(増配と配当開始)は総額で140億ドルと、2025年第2四半期の98億ドルから43.0%増加した一方、2024年第3四半期の141億ドルからは0.7%減少しました。
⇒2025年第3四半期中に発表された米国の普通株式の配当の引き下げ(減配と配当停止)は総額で34億ドルと、2025年第2四半期の23億ドルから46.1%増加した一方、2024年第3四半期の46億ドルからは25.2%減少しました。
⇒2025年9月までの12ヵ月間に発表された米国の普通株式の配当の引き上げ(増配と配当開始)は総額で575億ドルと、2024年9月までの12ヵ月間の747億ドルから23.1%減少しました。
⇒2025年9月までの12ヵ月間に発表された米国の普通株式の配当の引き下げ(減配と配当停止)は総額で124億ドルと、2024年9月までの195億ドルから36.4%減少しました。
⇒2025年9月までの12ヵ月間の企業による発表配当額は、差し引きプラス451億ドルとなりました。対して、2025年6月までの12ヵ月間ではプラス441億、2024年9月までの12ヵ月間はプラス553億ドルでした。
S&P500指数の2025年10月の配当支払額は前年同月比で0.3%減少しました。9月は同17.2%増、8月は同0.9%減でした。10月の配当支払い金は1株当たり4.82ドルと、前年同月の4.83ドルを下回りました。年初来では1株当たり63.49ドルと、前年同期の59.86ドルを上回っています。10月までの過去12ヵ月間は1株当たり78.46ドルで、2024年10月までの12ヵ月間の74.07ドルを上回りました。2025年10月は、増配が26件、配当開始が1件、減配が0件、配当停止が0件でした。対して、2024年10月は増配が26件、配当開始が0件、減配が1件、配当停止が0件でした。年初来では、増配が289件、配当開始が5件、減配が7件、配当停止が1件となっています。
S&P500指数構成企業の2025年第2四半期の実効法人税率は18.65%で、2025年第1四半期の18.90%、2024年第2四半期の20.51%から低下しました。実効法人税率は、減税・雇用法発効前の2017年第2四半期、及び2015年第2四半期(10年前)の29.63%から大幅に低下しており、2000年第2四半期(25年前)の36.28%からは49%低下しています。
⇒2025年6月までの過去12ヵ月間の実効法人税率は19.36%と、2025年3月までの12ヵ月間の18.98%、2024年6月までの12ヵ月間の18.22%を上回りました。
⇒1993年第1四半期から2025年第2四半期までの四半期の実効法人税率の平均は29.07%で、同期間の12ヵ月間の平均は29.94%となっています。
⇒減税・雇用法発効後(2018年第1四半期から2025年第2四半期)の四半期の実効法人税率は平均で18.29%、同法発効前(1993年第1四半期から2017年第4四半期)の平均は32.31%となっています。
⇒1993年第1四半期以降で、四半期の実効法人税率が最も高かったのは2002年第4四半期の56.30%で、最低は2008年第4四半期の0.55%です。
⇒2025年第2四半期の税引き前利益は6421億3000万ドルと、2025年第1四半期の5814億ドル、2024年第2四半期の5823億7000万ドルを上回り、過去最高を更新しました。
⇒2025年第2四半期の法人税支払額は1197億3000万ドルと、2025年第1四半期の1098億9000万ドルから増加し、2024年第2四半期の1194億6000万ドルも上回りました。
アナリストは強気を維持しており、S&P500指数のボトムアップの1年後の目標株価は9月の7358から7686に上昇し、12.4%の上昇が見込まれています。ダウ平均の目標株価も9月の5万0170ドルから5万2396ドルに上昇し、向こう1年間で10.0%の上昇が見込まれています。
[執筆者]
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
シニア・インデックス・アナリスト
※このレポートは、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはサイトをご参照ください。
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