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シライ電子工業:基板業界におけるシライ品質への高信頼性、通期業績予想を引き上げ、配当利回り5%超え
配信日時:2025/11/12 16:26
配信元:FISCO
*16:26JST シライ電子工業:基板業界におけるシライ品質への高信頼性、通期業績予想を引き上げ、配当利回り5%超え
シライ電子工業<6658>は、プリント配線板(PCB)事業と検査機・ソリューション、ロボティクス事業を展開するメーカーである。創業から約60年の歴史を経て、短納期試作から少量多品種・量産まで一貫した供給体制を構築しており、カーエレクトロニクス、通信・事務機器、家電、産業機器、アミューズメントなど多様な分野に基板を供給している。日本・中国の自社工場及び、基板製造を委託している協力メーカー(以下、OEM先)を中心にグローバル展開しており、2025年4月にはインドに販売会社設立、9月にタイOEM先のWELL TEK社と業務提携契約を締結している。地域・顧客の分散化を通じた供給安定化と、地産地消による競争力強化を進めている。プリント配線板事業が連結売上高の大半を占め、直近注力し始めているロボティクス事業は「その他」セグメントとして位置づけられているが、将来的な拡張余地を有する新規事業として注目される。
同社の競争優位性は、長年の取引関係で構築された信頼、確かな技術力と品質保証体制にある。ハイエンド領域のICパッケージ基板が何十層もの多層構造を要するのに対し、同社は14層程度までの製造技術を用い「製品差別化が難しい市場での品質・納期・実績・信頼性」を強みとして顧客との長期取引関係を築いてきた。日本・中国の自社工場で同一品質を確保した製造活動を行いながら、シライのグローバル品質保証水準を担保した製品を製造できる複数のOEM先を持つという、顧客に対する多様なサプライチェーンを構築できていることは、同社ならではのリスクヘッジ構造である。取材時には、過去にコロナ禍で受注残が多く発生し、各地でサプライチェーンが混乱していた際にも、顧客との長期の取引関係を有する強みを活かし、顧客の要望が特に強い受注を精緻に見極め、優先順位に応じて基板を納入するという顧客目線の活動により、顧客からの信頼を得たエピソードを受けて、同社の実直な生産姿勢を確認できた。創業以来積み重ねた品質第一主義の文化と、TPSに基づく現場力が同社の屋台骨を支えている。
11月6日に発表した2026年3月期第2四半期決算では、売上高13,678百万円(前年同期比4.4%減)、営業利益1,071百万円(同9.4%減)で着地した。各種コスト高を吸収しながら、売上高・利益ともに順調に進捗、前年同期比でカーエレクトロニクスの売上が減少しているが、その他分野は安定して受注を獲得。地域別では、ASEAN・インド・EUなど その他地域の売上比率が上がり、中国比率が減少傾向にある。国内で車載向けの動きが鈍化したが、その他の分野が広く下支えし、総じて安定推移となった。中国においても車載向けが弱含む一方、タイでは堅調な需要が見られた。米国の関税政策による直接的影響は限定的で、特定のサプライチェーン内で生じている間接的影響にとどまっている。
合わせて、通期業績予想の上方修正を発表しており、売上高は28,000百万円(前期比4.6%減、従来計画27,000百万円)、営業利益は2,000百万円(同22.4%減、従来計画1,700百万円)に引き上げた。国内外の主力であるカーエレクトロニクス分野が回復途上であるものの、ホームアプライアンス分野を中心にその他の分野でカバーできており、売上高は前回の予想を上回る見込みのようだ。また、売上高の上振れ及び事業・製品の採算性を重視し、製造設備・製造人員の最適化を図るなど、企業全体で収益性を高めることに注力したことが寄与する。さらに、同時に配当予想も引き上げており、従来計画32円から35円に修正。海外子会社の会計期間が3カ月ずれているため、関税影響は第2四半期以降に表面化する可能性があるが、現時点では足元の業績に大きなネガティブ要素は見られないとの見解もある。
一方、市場環境は総じて不透明感を伴う。カーエレクトロニクスの一部で受注が鈍化しており、中長期的にも日系自動車メーカーやテスラなどOEM各社の競争構図によって基板需要が変動する状況となる。日系自動車メーカーが優位を保てば同社にとっては追い風だが、海外勢などの新興メーカーが台頭すれば影響を受けるという認識をもっているようだ。とはいえ、車載電装化やADASの進展により、プリント配線板の使用数は中長期的に増加する見込みであり、同社の技術領域にとっては社会的構造変化そのものが需要拡大要因となる。家電や通信機器分野でも、放熱・高耐熱・微細化などの技術要求が高まっており、同社が強みを持つ厚銅・金属ベース基板は着実に成長余地を広げている。
中期経営計画(2024-2027年度)では、2027年3月期に売上高330億円、営業利益26億円を目標としており、インオーガニック成長も含めた事業拡張を想定している。重点方針として、設計から製造・検査・実装までの一気通貫体制の強化、外注工程の内製化による付加価値向上、ASEAN・インド市場への販路拡大を掲げる。特にインド販社設立に続き、2025年9月に締結したWELL TEK ELECTRONICS(タイ)との業務提携は、同社が製造した高品質基板にシライ品質の保証を付け、世界各国へ迅速供給する仕組みを構築するものである。顧客からの要望に基づくタイ製造の受注もすでに進行しており、業績寄与は来期以降に見込まれる。国内生産が厳しい中、ASEANを軸にした地域分散は同社の持続的成長戦略の柱となる。
その他の事業においては、検査機・ソリューション事業が安定した収益源として貢献している。主力のシライ自社開発である外観検査装置に加え、製造工程における環境ロス削減など、基板製造の効率化・高品質化に資するソリューションを提供しており、基板事業の変動を補う形でグループ全体の収益安定化を支えている。ロボティクス事業は病院・ホテル向けの自動搬送・配膳ロボットを展開し、エレベーター自動乗降など独自機能を付与している。まだ市場認知度は低いものの、社会的ニーズの高まりから中期的な伸長余地は大きい。
株主還元方針は、配当性向35%を目安とした安定・成長配当を基本に、「シライファン」を増やす姿勢を鮮明にしている。過去は配当金を出せない時期もあったが、経営の根本を変える経営構造改革によって利益体質へと転換し、安定的な還元が可能となった。今期は減収減益予想ながらも、配当金額の決定に際しては、短期的な利益変動でなく中長期的な企業価値向上と株主の利益を重視しているようだ。
総じて、同社は長年の取引関係で構築された信頼、確かな技術力と製品品質を武器に、守りの投資期間を経て再び成長軌道に乗ろうとしている。カーエレクトロニクス分野の停滞や為替変動など外部環境リスクは残るものの、ASEAN・インドを軸とした市場開拓と内製化による付加価値拡大は注目しておきたい。「正しい道をコツコツと登っていく」という経営姿勢が浸透するなか、着実な成長と安定的な株主還元を両立できる企業として再評価の余地があろう。
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同社の競争優位性は、長年の取引関係で構築された信頼、確かな技術力と品質保証体制にある。ハイエンド領域のICパッケージ基板が何十層もの多層構造を要するのに対し、同社は14層程度までの製造技術を用い「製品差別化が難しい市場での品質・納期・実績・信頼性」を強みとして顧客との長期取引関係を築いてきた。日本・中国の自社工場で同一品質を確保した製造活動を行いながら、シライのグローバル品質保証水準を担保した製品を製造できる複数のOEM先を持つという、顧客に対する多様なサプライチェーンを構築できていることは、同社ならではのリスクヘッジ構造である。取材時には、過去にコロナ禍で受注残が多く発生し、各地でサプライチェーンが混乱していた際にも、顧客との長期の取引関係を有する強みを活かし、顧客の要望が特に強い受注を精緻に見極め、優先順位に応じて基板を納入するという顧客目線の活動により、顧客からの信頼を得たエピソードを受けて、同社の実直な生産姿勢を確認できた。創業以来積み重ねた品質第一主義の文化と、TPSに基づく現場力が同社の屋台骨を支えている。
11月6日に発表した2026年3月期第2四半期決算では、売上高13,678百万円(前年同期比4.4%減)、営業利益1,071百万円(同9.4%減)で着地した。各種コスト高を吸収しながら、売上高・利益ともに順調に進捗、前年同期比でカーエレクトロニクスの売上が減少しているが、その他分野は安定して受注を獲得。地域別では、ASEAN・インド・EUなど その他地域の売上比率が上がり、中国比率が減少傾向にある。国内で車載向けの動きが鈍化したが、その他の分野が広く下支えし、総じて安定推移となった。中国においても車載向けが弱含む一方、タイでは堅調な需要が見られた。米国の関税政策による直接的影響は限定的で、特定のサプライチェーン内で生じている間接的影響にとどまっている。
合わせて、通期業績予想の上方修正を発表しており、売上高は28,000百万円(前期比4.6%減、従来計画27,000百万円)、営業利益は2,000百万円(同22.4%減、従来計画1,700百万円)に引き上げた。国内外の主力であるカーエレクトロニクス分野が回復途上であるものの、ホームアプライアンス分野を中心にその他の分野でカバーできており、売上高は前回の予想を上回る見込みのようだ。また、売上高の上振れ及び事業・製品の採算性を重視し、製造設備・製造人員の最適化を図るなど、企業全体で収益性を高めることに注力したことが寄与する。さらに、同時に配当予想も引き上げており、従来計画32円から35円に修正。海外子会社の会計期間が3カ月ずれているため、関税影響は第2四半期以降に表面化する可能性があるが、現時点では足元の業績に大きなネガティブ要素は見られないとの見解もある。
一方、市場環境は総じて不透明感を伴う。カーエレクトロニクスの一部で受注が鈍化しており、中長期的にも日系自動車メーカーやテスラなどOEM各社の競争構図によって基板需要が変動する状況となる。日系自動車メーカーが優位を保てば同社にとっては追い風だが、海外勢などの新興メーカーが台頭すれば影響を受けるという認識をもっているようだ。とはいえ、車載電装化やADASの進展により、プリント配線板の使用数は中長期的に増加する見込みであり、同社の技術領域にとっては社会的構造変化そのものが需要拡大要因となる。家電や通信機器分野でも、放熱・高耐熱・微細化などの技術要求が高まっており、同社が強みを持つ厚銅・金属ベース基板は着実に成長余地を広げている。
中期経営計画(2024-2027年度)では、2027年3月期に売上高330億円、営業利益26億円を目標としており、インオーガニック成長も含めた事業拡張を想定している。重点方針として、設計から製造・検査・実装までの一気通貫体制の強化、外注工程の内製化による付加価値向上、ASEAN・インド市場への販路拡大を掲げる。特にインド販社設立に続き、2025年9月に締結したWELL TEK ELECTRONICS(タイ)との業務提携は、同社が製造した高品質基板にシライ品質の保証を付け、世界各国へ迅速供給する仕組みを構築するものである。顧客からの要望に基づくタイ製造の受注もすでに進行しており、業績寄与は来期以降に見込まれる。国内生産が厳しい中、ASEANを軸にした地域分散は同社の持続的成長戦略の柱となる。
その他の事業においては、検査機・ソリューション事業が安定した収益源として貢献している。主力のシライ自社開発である外観検査装置に加え、製造工程における環境ロス削減など、基板製造の効率化・高品質化に資するソリューションを提供しており、基板事業の変動を補う形でグループ全体の収益安定化を支えている。ロボティクス事業は病院・ホテル向けの自動搬送・配膳ロボットを展開し、エレベーター自動乗降など独自機能を付与している。まだ市場認知度は低いものの、社会的ニーズの高まりから中期的な伸長余地は大きい。
株主還元方針は、配当性向35%を目安とした安定・成長配当を基本に、「シライファン」を増やす姿勢を鮮明にしている。過去は配当金を出せない時期もあったが、経営の根本を変える経営構造改革によって利益体質へと転換し、安定的な還元が可能となった。今期は減収減益予想ながらも、配当金額の決定に際しては、短期的な利益変動でなく中長期的な企業価値向上と株主の利益を重視しているようだ。
総じて、同社は長年の取引関係で構築された信頼、確かな技術力と製品品質を武器に、守りの投資期間を経て再び成長軌道に乗ろうとしている。カーエレクトロニクス分野の停滞や為替変動など外部環境リスクは残るものの、ASEAN・インドを軸とした市場開拓と内製化による付加価値拡大は注目しておきたい。「正しい道をコツコツと登っていく」という経営姿勢が浸透するなか、着実な成長と安定的な株主還元を両立できる企業として再評価の余地があろう。
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