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Mimaki Research Memo(4):販売子会社を設立して積極的に海外展開
配信日時:2024/12/13 12:04
配信元:FISCO
*12:04JST Mimaki Research Memo(4):販売子会社を設立して積極的に海外展開
■ミマキエンジニアリング<6638>の事業概要
2. グローバル展開
同社は、欧州や米国といった先進諸国だけでなく、中国やブラジルなど成長著しい新興諸国にも海外販売子会社を設立して積極的に進出しており、現在では世界約150の国と地域のSG、IP、TAの各市場において製品・サービスを提供している。また、同社主導で地域密着の販売・保守サービス網を構築しているが、密度の高い顧客情報をリアルタイムで入手することで、地域の多様なニーズを素早く製品開発へ反映する体制も構築している。同社は、世界各地で小規模なプライベート展示会「ミニ展※」を同社単独で開催しており、同社製品の魅力を「見て、触って、実感いただくプロモーション」を通じて具体的な提案活動を行っている。このような施策を背景に、同社の海外売上高の構成比は70%を超えるほどに大きくなったが、現在でも依然高い成長を続けている。
※ ミニ展:各社が集結する大規模展示会とは異なり、同社単独で行う小規模なプライベート展示会のこと。
高機能インクの開発力やヘッドの制御技術なども強み
3. 同社の強み
同社のビジネスフローは、(1) 顧客ニーズに対応する様々なプリンタを製造販売する、(2) プリンタや素材にあった様々な機能性インクを独自開発する、(3) 機能性インクに最適なヘッドを選択する、(4) 制御技術によりヘッドとインクを制御して高画質で高い生産性を実現する、(5) 市場に最適なプリンタを投入することで顧客とともに成長する、というサイクルを描いている。このことから分かるように、重要なことはカッティングプロッタや産業用インクジェットプリンタを生産する技術だけでなく、素材に応じた多種多様なインクを開発するケミカル技術や、特殊な機能性インクを安定的に吐出して美しくプリントするためのヘッドの制御技術を含めた複合的な技術基盤を構築することで、そのため開発体制や営業体制にも磨きをかけることである。
プリンタ以外で同社最大の強みはインクにあり、顧客それぞれの用途に応じ、「水と空気以外なら何にでもプリントできる」ことを目標に独自開発している。オリジナルインクには、SG市場向けにソルベントインクや水性顔料インク、IP市場向けにはUV硬化インク(強膜インク、折れ曲がるインク、伸びるインク)、TA市場向けには水性昇華インク、酸性染料インク、反応染料インク、捺染顔料インク、分散染料インク、熱転写顔料インク(DTF専用インク)などが揃えられている。そのなかで注目されるのが、UV硬化インクと水性昇華インクである。UV硬化インクは、UV光(紫外線)を照射すると即座に硬化・定着するインクで、出力直後すぐに硬化するため納期を大幅に短縮することができる。小物の装飾から建築・工業デザインの分野まで、用途・メディアに応じた多彩なラインナップがあり、樹脂やガラス、金属など非吸収性のメディアにも印刷することができる。なお、UV硬化インクには、米国の第三者安全科学機関UL社が定める「GREENGUARD Gold」認証を取得しているものもある。
水性昇華インクは、高温で瞬時に昇華してメディアに定着させることでポリエステル素材へのプリントを飛躍的に美しくしたインクで、微妙な色調のブラックカラーも豊富にラインナップされている。マシンテクノロジーとのコンビネーションによって低コストで環境負荷の小さいダイレクトな昇華プリントも実現、発色・画質が鮮明で美しいため昇華転写プリントにも対応している。スイスに本部を置くエコテックス(R)国際共同体が定める「ECO PASSPORT(エコパスポート)」の認証を取得した水性昇華インクもある。このように多種多様な素材にプリントすることができる高機能インクのレパートリーは、SG、IP、TAといった幅広い市場でインクジェットプリンタを展開するうえで、またプリンタ本体の付加価値をより高めるうえで差別化要素となっている。インクはプリンタ本体が獲得した市場を土壌に売上となっていくため、消耗品ビジネスとして安定収益が見込める事業と言える。インクの売上高構成比はプリンタなど製品本体と同水準の40%弱で、売上総利益率はプリンタ本体と変わらないようだ(プロモーションなど営業経費を考慮すると営業利益率はやや高いと思われる)。家庭用のように安いプリンタを供給して高マージンの消耗品で高い利益を短期的に刈り取るのではなく、長く安定した商売につなげたいという考え方が背景にある。
同社はインクを吐出する部品であるヘッドを製造していない。1機種であれば使うインクも少ないためヘッドを自社で開発すれば効率的だが、様々な顧客ニーズに対応するにはそれだけ多くのプリンタや特殊な機能性インクが必要となり、そうしたインクは化学的・電気的な特性を持つため安定的に吐出して美しくプリントするには、ヘッドを自ら製造するよりも、インクやプリンタに最適なヘッドを市場から調達したほうが合理的だからだ。しかも、結果的にマーケットインによる新製品開発も可能となる。そうなるとサプライヤから調達した様々なヘッドを使い分け制御する技術が重要な要素となるが、同社はこうしたヘッドの制御技術を独自で開発し、技術基盤の1つとしてノウハウを蓄積している点に強みがある。
同社は、SG市場で蓄積されたノウハウを、IP市場とTA市場に展開することで成長を続けている。さらに、そうした市場で培った、例えば素材を選ばず環境に優しく少量多品種生産が可能なうえ、カラーリングが難しいと言われるホワイトに対応したUV印刷のノウハウなどを、3Dプリンタ事業に横展開している。3Dプリンタは、1,000万色の色表現を実現し色付きの3Dデータが容易に入手できるようになったことで新たな局面に入っており、今後、3Dソフトや周辺機器の充実を背景に、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)を活用したジャンルの急成長が予測されている期待の分野である。また、デジタル・オンデマンド生産による受注生産、ワンストップかつ多品種少量への対応、プリント工程や工場のスマート化といったニーズに対応可能なFA技術を有していることも強みで、これを最大限活用し、SG、IP、TAの各市場にデジタルオンデマンド・プリントソリューションを提供していく考えである。
こうした複合的な技術基盤を強みに、同社は大手の参入しづらい比較的小規模で成長ポテンシャルの高い市場に素早く製品を投入し、グローバルニッチトップの座を獲得してきた。これは、プラットフォーム化による開発コストの低減や、製品投入までのリードタイムの短縮、世界各地域に密着した営業などを進めてきた、従業員の30%以上が開発要員という開発体制や、「ミニ展」などグローバルでローカルな営業体制が強みとなっている。なお、大手競合他社が大きな市場の創出を狙って多額の開発コストを一気に投入するのに対し、同社は相対的に小さい複数の市場それぞれに対し売上高の7〜8%の開発費を投じることで、リスクを分散しながらより多くのヒットを出すという基本的な考え方を持っている。様々な強みの背景にある考え方だと思われる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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2. グローバル展開
同社は、欧州や米国といった先進諸国だけでなく、中国やブラジルなど成長著しい新興諸国にも海外販売子会社を設立して積極的に進出しており、現在では世界約150の国と地域のSG、IP、TAの各市場において製品・サービスを提供している。また、同社主導で地域密着の販売・保守サービス網を構築しているが、密度の高い顧客情報をリアルタイムで入手することで、地域の多様なニーズを素早く製品開発へ反映する体制も構築している。同社は、世界各地で小規模なプライベート展示会「ミニ展※」を同社単独で開催しており、同社製品の魅力を「見て、触って、実感いただくプロモーション」を通じて具体的な提案活動を行っている。このような施策を背景に、同社の海外売上高の構成比は70%を超えるほどに大きくなったが、現在でも依然高い成長を続けている。
※ ミニ展:各社が集結する大規模展示会とは異なり、同社単独で行う小規模なプライベート展示会のこと。
高機能インクの開発力やヘッドの制御技術なども強み
3. 同社の強み
同社のビジネスフローは、(1) 顧客ニーズに対応する様々なプリンタを製造販売する、(2) プリンタや素材にあった様々な機能性インクを独自開発する、(3) 機能性インクに最適なヘッドを選択する、(4) 制御技術によりヘッドとインクを制御して高画質で高い生産性を実現する、(5) 市場に最適なプリンタを投入することで顧客とともに成長する、というサイクルを描いている。このことから分かるように、重要なことはカッティングプロッタや産業用インクジェットプリンタを生産する技術だけでなく、素材に応じた多種多様なインクを開発するケミカル技術や、特殊な機能性インクを安定的に吐出して美しくプリントするためのヘッドの制御技術を含めた複合的な技術基盤を構築することで、そのため開発体制や営業体制にも磨きをかけることである。
プリンタ以外で同社最大の強みはインクにあり、顧客それぞれの用途に応じ、「水と空気以外なら何にでもプリントできる」ことを目標に独自開発している。オリジナルインクには、SG市場向けにソルベントインクや水性顔料インク、IP市場向けにはUV硬化インク(強膜インク、折れ曲がるインク、伸びるインク)、TA市場向けには水性昇華インク、酸性染料インク、反応染料インク、捺染顔料インク、分散染料インク、熱転写顔料インク(DTF専用インク)などが揃えられている。そのなかで注目されるのが、UV硬化インクと水性昇華インクである。UV硬化インクは、UV光(紫外線)を照射すると即座に硬化・定着するインクで、出力直後すぐに硬化するため納期を大幅に短縮することができる。小物の装飾から建築・工業デザインの分野まで、用途・メディアに応じた多彩なラインナップがあり、樹脂やガラス、金属など非吸収性のメディアにも印刷することができる。なお、UV硬化インクには、米国の第三者安全科学機関UL社が定める「GREENGUARD Gold」認証を取得しているものもある。
水性昇華インクは、高温で瞬時に昇華してメディアに定着させることでポリエステル素材へのプリントを飛躍的に美しくしたインクで、微妙な色調のブラックカラーも豊富にラインナップされている。マシンテクノロジーとのコンビネーションによって低コストで環境負荷の小さいダイレクトな昇華プリントも実現、発色・画質が鮮明で美しいため昇華転写プリントにも対応している。スイスに本部を置くエコテックス(R)国際共同体が定める「ECO PASSPORT(エコパスポート)」の認証を取得した水性昇華インクもある。このように多種多様な素材にプリントすることができる高機能インクのレパートリーは、SG、IP、TAといった幅広い市場でインクジェットプリンタを展開するうえで、またプリンタ本体の付加価値をより高めるうえで差別化要素となっている。インクはプリンタ本体が獲得した市場を土壌に売上となっていくため、消耗品ビジネスとして安定収益が見込める事業と言える。インクの売上高構成比はプリンタなど製品本体と同水準の40%弱で、売上総利益率はプリンタ本体と変わらないようだ(プロモーションなど営業経費を考慮すると営業利益率はやや高いと思われる)。家庭用のように安いプリンタを供給して高マージンの消耗品で高い利益を短期的に刈り取るのではなく、長く安定した商売につなげたいという考え方が背景にある。
同社はインクを吐出する部品であるヘッドを製造していない。1機種であれば使うインクも少ないためヘッドを自社で開発すれば効率的だが、様々な顧客ニーズに対応するにはそれだけ多くのプリンタや特殊な機能性インクが必要となり、そうしたインクは化学的・電気的な特性を持つため安定的に吐出して美しくプリントするには、ヘッドを自ら製造するよりも、インクやプリンタに最適なヘッドを市場から調達したほうが合理的だからだ。しかも、結果的にマーケットインによる新製品開発も可能となる。そうなるとサプライヤから調達した様々なヘッドを使い分け制御する技術が重要な要素となるが、同社はこうしたヘッドの制御技術を独自で開発し、技術基盤の1つとしてノウハウを蓄積している点に強みがある。
同社は、SG市場で蓄積されたノウハウを、IP市場とTA市場に展開することで成長を続けている。さらに、そうした市場で培った、例えば素材を選ばず環境に優しく少量多品種生産が可能なうえ、カラーリングが難しいと言われるホワイトに対応したUV印刷のノウハウなどを、3Dプリンタ事業に横展開している。3Dプリンタは、1,000万色の色表現を実現し色付きの3Dデータが容易に入手できるようになったことで新たな局面に入っており、今後、3Dソフトや周辺機器の充実を背景に、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)を活用したジャンルの急成長が予測されている期待の分野である。また、デジタル・オンデマンド生産による受注生産、ワンストップかつ多品種少量への対応、プリント工程や工場のスマート化といったニーズに対応可能なFA技術を有していることも強みで、これを最大限活用し、SG、IP、TAの各市場にデジタルオンデマンド・プリントソリューションを提供していく考えである。
こうした複合的な技術基盤を強みに、同社は大手の参入しづらい比較的小規模で成長ポテンシャルの高い市場に素早く製品を投入し、グローバルニッチトップの座を獲得してきた。これは、プラットフォーム化による開発コストの低減や、製品投入までのリードタイムの短縮、世界各地域に密着した営業などを進めてきた、従業員の30%以上が開発要員という開発体制や、「ミニ展」などグローバルでローカルな営業体制が強みとなっている。なお、大手競合他社が大きな市場の創出を狙って多額の開発コストを一気に投入するのに対し、同社は相対的に小さい複数の市場それぞれに対し売上高の7〜8%の開発費を投じることで、リスクを分散しながらより多くのヒットを出すという基本的な考え方を持っている。様々な強みの背景にある考え方だと思われる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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