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早稲アカ Research Memo(4):中期経営計画は順調に進捗。LTVを最大化し、成長を目指す
配信日時:2024/11/29 14:04
配信元:FISCO
*14:04JST 早稲アカ Research Memo(4):中期経営計画は順調に進捗。LTVを最大化し、成長を目指す
■早稲田アカデミー<4718>の業績動向
3. 中期経営計画の進捗状況
同社は2024年3月期から3ヶ年の中期経営計画をスタートしている。業績の進捗については営業利益・経常利益で2026年3月期目標を1年前倒しで達成する可能性が高く、順調に推移していると評価される。中期経営計画では、少子化の進行やそれに伴う高校・大学受験の環境変化により生徒獲得競争の激化が続くとの前提の下、「本来価値※1」と「本質価値(ワセ価値)※2」を提供し続けることで塾生数を増やし、成長を続けていくという従来の基本戦略を継続していく。
※1 顧客の最終目標である学力向上と志望校合格に全力を尽くすことを「本来価値」と定義している。
※2 保護者が願う我が子の未来・将来について、自立し豊かな人生を送れるような素養を育むことを「本質価値(ワセ価値)」と定義している。
小学部においては、首都圏での私立中学受験に対するニーズが旺盛であることを背景に、難関校での高い合格実績に加えて、「早稲田アカデミーOnline」による利便性の高いサービスを提供していくことで、今後も塾生数の着実な増加を目指す。また、個別進学館や新たに開始した東進衛星予備校事業を強化し、集団指導、個別指導、IT授業と3つの形態の教育サービスを提供することで多様な顧客ニーズを取り込んでいくほか、幼児教育事業への進出により早稲田アカデミー小学1〜2年生コースとの接続強化を図ることで未就学児童からの顧客囲い込みを行い、LTVの最大化に取り組むことでさらなる成長を目指す考えだ。LTVを拡大していくことができれば、顧客獲得コストが低減し収益性向上にもつながるだけに、今後の展開が注目される。中期経営計画における主な施策は以下のとおり。
a) 標準校舎の着実な成長
標準校舎については年間1校程度の新規開校ペースに留めるが、需要の旺盛な校舎については移転・増床リニューアルを行うことで、1校当たりの塾生数増加を図っていく。また、講師・事務スタッフの育成強化による授業サービスの品質向上や、ICTを活用した付加価値の高いサービスを拡充していくことで顧客満足度の向上を図り、塾生数の増加につなげていく。
b) 大学受験部の新領域開拓
大学受験部では東進衛星予備校事業の開始により、塾生数並びに売上高の一段の増加を目指す。今までは東京大学や早稲田・慶應義塾大学など難関大学志望の学生をターゲットにしていたため、早稲田アカデミー単体の塾生数は1,800人弱、売上高で9億円弱に留まっていたが、1学年に1万人以上いる「卒塾生」へアプローチすることで塾生数を拡大していく余地はあると見ている。校舎展開としては、2025年春に3~4校を開校し、その後は各エリアの状況を見ながら展開していく。東進衛星予備校及び東進ハイスクールは首都圏で既に200校を超えており、新規生徒の獲得競争も激しいが、卒塾生へのアプローチを強化することで一定程度の生徒獲得は可能と見られる。同社は東進衛星予備校も含めた大学受験部について、2027年3月期に塾生数で4,000人、売上高で約18億円と現在の2倍に拡大することを目指している。
c) 個別指導部門の展開加速
個別指導部門では2024年10月時点で、FC校も含めて73校と、2027年3月期末の100校体制に向けて順調に拡大している。同社は首都圏における難関校受験対策の個別指導としてNo.1の地位確立を目指しており、今後はFCも含めて年間9~10校のペースで校舎を開設していくことになる。校舎は標準校舎の近隣に開設することで、他の個別指導塾と掛け持ち通塾している生徒あるいは卒塾生を個別進学館で取り込むなど、シナジーを高めていく戦略だ。売上高は2024年3月期の30億円弱から2027年3月期には約35億円を目指す。
d) 幼児教育分野への進出
幼児未来教育は、幼稚園・小学校受験のための幼児教室を都内で3校(恵比寿校、麻布十番校、小石川校)運営している。グループ化の目的は、未就学児向けの教育ノウハウの共有並びに、これまで同社と接点が少なかった顧客層(未就学児童及び保護者)との接点を強化することで、「早稲田アカデミー」への導線を作り、LTVの最大化につなげていくことにある。年間の売上規模は1億円強と安定して推移している。今後の取り組みとして「早稲田アカデミー」の小学1~2年生向けで使用している教材を「サン・キッズ」でも提供していくことを検討しているほか、ブランド戦略も含めたプロモーション施策やWebサイトの見直しなどを進めていくことにしている。また、校舎数についても需要が見込めるエリアで徐々に増やしていく方針だ。
e) DX戦略で他社と圧倒的な差別化を図る
同社は2020年以降、「早稲アカDUAL」や「早稲田アカデミーOnline」などICTを活用した様々なサービスを積極的に提供したことで顧客から高い評価を獲得し、塾生数の拡大につなげてきた。このため、今後も同戦略を積極的に推進していくことで競合他社との差別化を図っていく考えだ。2025年3月期に新たにリリースした「G-Navi」(過去の模試データを活用した成績管理システム)は、塾生の模擬試験の結果と同社が過去に実施してきた膨大な模試データとの結果をAI技術を使って比較分析することで、属人的でなくデータに基づいた進路指導や学習指導に生かしていくシステムとなる。直近では新たに志望校別の併願パターン検索機能を追加し、合格率の高い併願校を抽出できるようにした。同システムの活用により、志望校の合格率アップの効果が期待できるほか、塾生や保護者にとっても納得感が得られやすい進路指導や学習指導を受けることができるため、顧客満足の向上につながるといった効果も期待できる。2025年春の合格実績において、どのような変化が見られるのか注目される。
f) 人材育成・採用の取り組み強化
質の高い授業サービスの提供に向けて、教務力向上施策プロジェクトを始動している。具体的には、講師マニュアルについての動画研修や相互授業見学・各種研修を強化しているほか、模擬授業コンテストを行うことなどして教務力の向上に取り組んでいる。採用に関しては、内部リクルートの強化(非常勤職員から正社員への登用、卒塾生の非常勤職員としての採用等)や採用手法の改善(募集広告の効率向上、本社と校舎が一体となった採用手順の強化)に加えて、2023年から新たに教育や教育業界に興味のある大学生・大学院生に向けた合同説明会イベント「教育×就活 EXPO※」なども開催している。
※ 学校・塾・出版・EdTechと教育に関わる4領域の学校や企業が集まり、セミナー形式で説明会を開催するほか個別相談ブースでの就職相談にも対応している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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3. 中期経営計画の進捗状況
同社は2024年3月期から3ヶ年の中期経営計画をスタートしている。業績の進捗については営業利益・経常利益で2026年3月期目標を1年前倒しで達成する可能性が高く、順調に推移していると評価される。中期経営計画では、少子化の進行やそれに伴う高校・大学受験の環境変化により生徒獲得競争の激化が続くとの前提の下、「本来価値※1」と「本質価値(ワセ価値)※2」を提供し続けることで塾生数を増やし、成長を続けていくという従来の基本戦略を継続していく。
※1 顧客の最終目標である学力向上と志望校合格に全力を尽くすことを「本来価値」と定義している。
※2 保護者が願う我が子の未来・将来について、自立し豊かな人生を送れるような素養を育むことを「本質価値(ワセ価値)」と定義している。
小学部においては、首都圏での私立中学受験に対するニーズが旺盛であることを背景に、難関校での高い合格実績に加えて、「早稲田アカデミーOnline」による利便性の高いサービスを提供していくことで、今後も塾生数の着実な増加を目指す。また、個別進学館や新たに開始した東進衛星予備校事業を強化し、集団指導、個別指導、IT授業と3つの形態の教育サービスを提供することで多様な顧客ニーズを取り込んでいくほか、幼児教育事業への進出により早稲田アカデミー小学1〜2年生コースとの接続強化を図ることで未就学児童からの顧客囲い込みを行い、LTVの最大化に取り組むことでさらなる成長を目指す考えだ。LTVを拡大していくことができれば、顧客獲得コストが低減し収益性向上にもつながるだけに、今後の展開が注目される。中期経営計画における主な施策は以下のとおり。
a) 標準校舎の着実な成長
標準校舎については年間1校程度の新規開校ペースに留めるが、需要の旺盛な校舎については移転・増床リニューアルを行うことで、1校当たりの塾生数増加を図っていく。また、講師・事務スタッフの育成強化による授業サービスの品質向上や、ICTを活用した付加価値の高いサービスを拡充していくことで顧客満足度の向上を図り、塾生数の増加につなげていく。
b) 大学受験部の新領域開拓
大学受験部では東進衛星予備校事業の開始により、塾生数並びに売上高の一段の増加を目指す。今までは東京大学や早稲田・慶應義塾大学など難関大学志望の学生をターゲットにしていたため、早稲田アカデミー単体の塾生数は1,800人弱、売上高で9億円弱に留まっていたが、1学年に1万人以上いる「卒塾生」へアプローチすることで塾生数を拡大していく余地はあると見ている。校舎展開としては、2025年春に3~4校を開校し、その後は各エリアの状況を見ながら展開していく。東進衛星予備校及び東進ハイスクールは首都圏で既に200校を超えており、新規生徒の獲得競争も激しいが、卒塾生へのアプローチを強化することで一定程度の生徒獲得は可能と見られる。同社は東進衛星予備校も含めた大学受験部について、2027年3月期に塾生数で4,000人、売上高で約18億円と現在の2倍に拡大することを目指している。
c) 個別指導部門の展開加速
個別指導部門では2024年10月時点で、FC校も含めて73校と、2027年3月期末の100校体制に向けて順調に拡大している。同社は首都圏における難関校受験対策の個別指導としてNo.1の地位確立を目指しており、今後はFCも含めて年間9~10校のペースで校舎を開設していくことになる。校舎は標準校舎の近隣に開設することで、他の個別指導塾と掛け持ち通塾している生徒あるいは卒塾生を個別進学館で取り込むなど、シナジーを高めていく戦略だ。売上高は2024年3月期の30億円弱から2027年3月期には約35億円を目指す。
d) 幼児教育分野への進出
幼児未来教育は、幼稚園・小学校受験のための幼児教室を都内で3校(恵比寿校、麻布十番校、小石川校)運営している。グループ化の目的は、未就学児向けの教育ノウハウの共有並びに、これまで同社と接点が少なかった顧客層(未就学児童及び保護者)との接点を強化することで、「早稲田アカデミー」への導線を作り、LTVの最大化につなげていくことにある。年間の売上規模は1億円強と安定して推移している。今後の取り組みとして「早稲田アカデミー」の小学1~2年生向けで使用している教材を「サン・キッズ」でも提供していくことを検討しているほか、ブランド戦略も含めたプロモーション施策やWebサイトの見直しなどを進めていくことにしている。また、校舎数についても需要が見込めるエリアで徐々に増やしていく方針だ。
e) DX戦略で他社と圧倒的な差別化を図る
同社は2020年以降、「早稲アカDUAL」や「早稲田アカデミーOnline」などICTを活用した様々なサービスを積極的に提供したことで顧客から高い評価を獲得し、塾生数の拡大につなげてきた。このため、今後も同戦略を積極的に推進していくことで競合他社との差別化を図っていく考えだ。2025年3月期に新たにリリースした「G-Navi」(過去の模試データを活用した成績管理システム)は、塾生の模擬試験の結果と同社が過去に実施してきた膨大な模試データとの結果をAI技術を使って比較分析することで、属人的でなくデータに基づいた進路指導や学習指導に生かしていくシステムとなる。直近では新たに志望校別の併願パターン検索機能を追加し、合格率の高い併願校を抽出できるようにした。同システムの活用により、志望校の合格率アップの効果が期待できるほか、塾生や保護者にとっても納得感が得られやすい進路指導や学習指導を受けることができるため、顧客満足の向上につながるといった効果も期待できる。2025年春の合格実績において、どのような変化が見られるのか注目される。
f) 人材育成・採用の取り組み強化
質の高い授業サービスの提供に向けて、教務力向上施策プロジェクトを始動している。具体的には、講師マニュアルについての動画研修や相互授業見学・各種研修を強化しているほか、模擬授業コンテストを行うことなどして教務力の向上に取り組んでいる。採用に関しては、内部リクルートの強化(非常勤職員から正社員への登用、卒塾生の非常勤職員としての採用等)や採用手法の改善(募集広告の効率向上、本社と校舎が一体となった採用手順の強化)に加えて、2023年から新たに教育や教育業界に興味のある大学生・大学院生に向けた合同説明会イベント「教育×就活 EXPO※」なども開催している。
※ 学校・塾・出版・EdTechと教育に関わる4領域の学校や企業が集まり、セミナー形式で説明会を開催するほか個別相談ブースでの就職相談にも対応している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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