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NATOワシントン宣言「中国が侵略の決定的支援者」は日本を戦争に巻き込むシナリオ(1)【中国問題グローバル研究所】
配信日時:2024/07/12 16:12
配信元:FISCO
*16:12JST NATOワシントン宣言「中国が侵略の決定的支援者」は日本を戦争に巻き込むシナリオ(1)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している(※1)遠藤 誉所長の考察を2回に渡ってお届けする。
ワシントンで開かれていたNATOサミットがアメリカ時間7月10日に宣言を出し、その中で中国に関して、ロシアの侵攻に対する「決定的な支援者だ」と批判した。インド太平洋地域は米欧の安全保障に影響するとし、日本や韓国との協力強化も盛り込んだ。
これに対して中国は激しく抗議している。
両者の言い分を考察すると、日本人がやがてアメリカの駒として戦場で戦わされるシナリオが見えてくる。
◆NATOワシントン宣言の対中批難部分アメリカ時間7月10日、NATOサミットは<Washington Summit Declaration(ワシントン・サミット宣言)>(※2)というタイトルの宣言を発表した。その4項目目に「戦略的競争、蔓延する不安定性、そしてくり返されるショックが、われわれのより広範な安全保障環境を特徴づけている」とした上で、中国に対する警告が盛り込まれている。また26項目および27項目にも対中批難が書かれているので、それらの概要をまとめて以下に記す。
●野心と威圧的な政策を表明してきた中華人民共和国(以下、中国)は、われわれの利益、安全保障と価値観に引き続き挑戦している。
●ロシアと中国の戦略的パートナーシップの深化と、ルールに基づく国際秩序を無効化させ再構築しようとする試みは、深刻な懸念の原因となっている。われわれは、ハイブリッド、サイバー、宇宙、その他の脅威と悪意のある活動にも直面している。
●中国は、いわゆる「無制限」のパートナーシップとロシアの防衛産業基盤への大規模な支援を通じて、ロシアのウクライナに対する戦争を決定的に可能にしている。これにより、ロシアが近隣諸国と欧州大西洋の安全保障に及ぼす脅威が増大している。
われわれは中国に対し、ロシアの戦争活動に対するすべての物質的および政治的支援を停止するよう求める。
●中国は、自国の利益と評判に悪影響を及ぼさずに、ヨーロッパにおける近年最大の戦争を可能にすることはできない。
●中国は、欧州大西洋の安全保障に体系的な挑戦を取り続けている。われわれは、中国に起因する偽情報を含む悪意のあるサイバー活動とハイブリッド活動が継続しているのを目にしている。われわれは中国に対し、サイバー空間で責任ある行動をとるという約束を守るよう求める。
●われわれは中国の宇宙能力と活動の発展を懸念している。われわれは中国に対し、責任ある宇宙行動を促進するための国際的な取り組みを支持するよう求める。
●中国は核弾頭の増加と高度な運搬手段の増加により、核兵器の急速な拡大と多様化を続けている。われわれは中国に対し、戦略的リスク削減の議論に参加し、透明性を通じて安定を促進するよう求める。(概ね以上)
◆中国の反論これに対して駐EUの中国使節団の報道官は、7月11日の記者会見で以下のように反論した(※3)。
●NATOサミットの宣言は、冷戦のメンタリティと好戦的なレトリックに満ちており、中国関連の内容は、挑発、嘘、扇動、中傷に満ちている。
●周知の通り、中国はウクライナ危機の生みの親でもなければ当事者でもない。ウクライナ問題に関する中国の核心的立場は、和平交渉と政治的解決を促進することであり、これは国際社会から広く認識され、高く評価されている。
●中国は紛争当事者に殺傷力のある武器を提供したことはなく、民生用ドローンの輸出を含む軍民両用物品を常に厳しく管理してきた。中国とロシアの間の正常な貿易は第三者に向けられたものではなく、外部からの干渉や強制の対象であってはならない。
●ウクライナ危機は今のところ長引いているが、誰が火に油を注いでいるのか、誰がこの機会を利用して個人的な利益を求めているのか。国際社会は、このことをはっきりと認識している。われわれはNATOに対し、国際社会の正当な声に注意深く耳を傾け、自らが行っていることを深く反省し、責任を転嫁したり他国を非難したりするのではなく、事態の悪化を緩和し、問題を解決するための具体的な行動をとるよう求める。
●アジア太平洋地域は平和的発展の高地であり、地政学的な駆け引きの競技場ではない。NATOは再三再四にわたって「ユーラシア安全保障のつながり」誇大宣伝しているが、その意図は何処(いずこ)にあるや?
●われわれはNATOに対し、北大西洋における地域防衛機関としての地位を堅持し、アジア太平洋地域の平和と安定を台無しにしたり、特定の大国の覇権の道具にならないよう要請する。
●中国は世界平和の建設者であり、世界の発展に貢献し、国際秩序の擁護者である。
われわれはNATOに対し、中国に対する誤った認識を直ちに正し、冷戦のメンタリティとゼロサムゲームを放棄し、いわゆる中国の脅威を声高に叫ぶのをやめ、対立と対抗を扇動するのをやめ、世界の平和と安定のためにより実践的なことを行うことを要求する。(以上)
一方、中国の外交部はやはり7月11日の記者会見で(※4)以下のように抗議している。
●NATOの「ワシントン首脳宣言」は、アジア太平洋地域の緊張を誇張し、冷戦思考と好戦的な発言に満ちており、中国関連の内容には偏見・中傷・挑発に満ちており、われわれは強烈な不満を抱いており、断固として反対する。
●今回のNATOサミットにはNATO創設75周年という背景がある。存続の必要性を示すために、米国とNATOは会合前にNATOの「栄光」と「団結」を誇示し、NATOを「平和維持組織」であるかのように見せかけているが、実は「冷戦の遺物」であることを覆い隠すことはできない。
●NATO軍は「人道的災害の回避」を旗印にしながら、かつてユーゴスラビアに対して78日間にわたる爆撃を実施した。NATOの黒い手が伸びるところはどこでも、混乱が現れる。NATOのいわゆる安全保障は、他国の安全保障を犠牲にして成り立っている。NATOが売り込む「安全保障上の不安」の多くは、NATO自身が引き起こしている。NATOが誇るいわゆる「成功」や「力」は世界にとって大きな危険を意味する。「仮想敵国」を設定することで存在を維持し、国境を越えて勢力を拡大するのはNATOの常套手段であり、中国に対する「体制的挑戦」の誤った位置付けに固執し、中国の内政・外交政策の信頼を損なうことはまさにそれを体現している。
●ウクライナ問題に関して、NATOが「中国の責任」論を主張するのは荒唐無稽であり、邪悪な意図がある。NATOはいかなる証拠もなく、米国が捏造した虚偽の情報を拡散し続け、公然と中国を中傷し、中国とEUの関係を破壊し中欧協力を潰したいのだ。
ウクライナ危機を今日まで延期させ、火に油を注いでいるのが誰であるか、国際社会は知っている。NATOは、危機の根本原因と自らの行動を熟考し、国際社会の公正な声に注意深く耳を傾け、責任を転嫁したり他国を非難するのではなく、状況を緩和するために実際的な行動を取るよう勧告する。
●NATOはその範囲をアジア太平洋にまで拡大し、中国の近隣諸国や米国の同盟国との軍事・安全保障上の関係を強化し、「インド太平洋戦略」の実施において米国に協力してきたが、その行為は中国の利益を損ない、アジア太平洋地域の平和と安定を破壊し、すでに地域諸国の疑念と反対を引き起こしている。
●中国はNATOに対し、冷戦思考・陣営対立・ゼロサムゲームという時代遅れの概念を放棄し、中国に対する誤った理解を正し、中国の内政干渉をやめ、中国のイメージを汚し、中国とEUの関係に干渉しないよう求める。ヨーロッパを混乱させた後、アジア太平洋を混乱させるのをやめよ。
●中国は自国の主権・安全保障・発展利益を断固として守り、自国の発展と対外協力を通して、世界の平和と安定にさらなる安定と前向きなエネルギーを注ぎたい。(以上)
外交部のこの回答は7月11日の新華網(※5)が掲載し、中央テレビ局CCTV(※6)も同じ内容で報道した。したがって、外交部の記者会見での回答が中国政府の正式見解であると解釈していいだろう。
「(NATOワシントン宣言「中国が侵略の決定的支援者」は日本を戦争に巻き込むシナリオ2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。
この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※7)より転載しました。
NATOワシントン首脳会議で会見するバイデン大統領 写真: ロイター/アフロ
(※1)https://grici.or.jp/
(※2)https://www.nato.int/cps/en/natohq/official_texts_227678.htm
(※3)http://eu.china-mission.gov.cn/stxw/202407/t20240711_11451831.htm
(※4)https://www.fmprc.gov.cn/fyrbt_673021/202407/t20240711_11452358.shtml
(※5)http://www.news.cn/world/20240711/9707b00c867b4840bef0f9f4da2e6ac8/c.html
(※6)https://tv.cctv.com/2024/07/11/VIDENC0MeGRaeb3gQsqlcFeW240711.shtml
(※7)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/6c7ff82141848f044f808a47da2869a323564cef <CS>
ワシントンで開かれていたNATOサミットがアメリカ時間7月10日に宣言を出し、その中で中国に関して、ロシアの侵攻に対する「決定的な支援者だ」と批判した。インド太平洋地域は米欧の安全保障に影響するとし、日本や韓国との協力強化も盛り込んだ。
これに対して中国は激しく抗議している。
両者の言い分を考察すると、日本人がやがてアメリカの駒として戦場で戦わされるシナリオが見えてくる。
◆NATOワシントン宣言の対中批難部分アメリカ時間7月10日、NATOサミットは<Washington Summit Declaration(ワシントン・サミット宣言)>(※2)というタイトルの宣言を発表した。その4項目目に「戦略的競争、蔓延する不安定性、そしてくり返されるショックが、われわれのより広範な安全保障環境を特徴づけている」とした上で、中国に対する警告が盛り込まれている。また26項目および27項目にも対中批難が書かれているので、それらの概要をまとめて以下に記す。
●野心と威圧的な政策を表明してきた中華人民共和国(以下、中国)は、われわれの利益、安全保障と価値観に引き続き挑戦している。
●ロシアと中国の戦略的パートナーシップの深化と、ルールに基づく国際秩序を無効化させ再構築しようとする試みは、深刻な懸念の原因となっている。われわれは、ハイブリッド、サイバー、宇宙、その他の脅威と悪意のある活動にも直面している。
●中国は、いわゆる「無制限」のパートナーシップとロシアの防衛産業基盤への大規模な支援を通じて、ロシアのウクライナに対する戦争を決定的に可能にしている。これにより、ロシアが近隣諸国と欧州大西洋の安全保障に及ぼす脅威が増大している。
われわれは中国に対し、ロシアの戦争活動に対するすべての物質的および政治的支援を停止するよう求める。
●中国は、自国の利益と評判に悪影響を及ぼさずに、ヨーロッパにおける近年最大の戦争を可能にすることはできない。
●中国は、欧州大西洋の安全保障に体系的な挑戦を取り続けている。われわれは、中国に起因する偽情報を含む悪意のあるサイバー活動とハイブリッド活動が継続しているのを目にしている。われわれは中国に対し、サイバー空間で責任ある行動をとるという約束を守るよう求める。
●われわれは中国の宇宙能力と活動の発展を懸念している。われわれは中国に対し、責任ある宇宙行動を促進するための国際的な取り組みを支持するよう求める。
●中国は核弾頭の増加と高度な運搬手段の増加により、核兵器の急速な拡大と多様化を続けている。われわれは中国に対し、戦略的リスク削減の議論に参加し、透明性を通じて安定を促進するよう求める。(概ね以上)
◆中国の反論これに対して駐EUの中国使節団の報道官は、7月11日の記者会見で以下のように反論した(※3)。
●NATOサミットの宣言は、冷戦のメンタリティと好戦的なレトリックに満ちており、中国関連の内容は、挑発、嘘、扇動、中傷に満ちている。
●周知の通り、中国はウクライナ危機の生みの親でもなければ当事者でもない。ウクライナ問題に関する中国の核心的立場は、和平交渉と政治的解決を促進することであり、これは国際社会から広く認識され、高く評価されている。
●中国は紛争当事者に殺傷力のある武器を提供したことはなく、民生用ドローンの輸出を含む軍民両用物品を常に厳しく管理してきた。中国とロシアの間の正常な貿易は第三者に向けられたものではなく、外部からの干渉や強制の対象であってはならない。
●ウクライナ危機は今のところ長引いているが、誰が火に油を注いでいるのか、誰がこの機会を利用して個人的な利益を求めているのか。国際社会は、このことをはっきりと認識している。われわれはNATOに対し、国際社会の正当な声に注意深く耳を傾け、自らが行っていることを深く反省し、責任を転嫁したり他国を非難したりするのではなく、事態の悪化を緩和し、問題を解決するための具体的な行動をとるよう求める。
●アジア太平洋地域は平和的発展の高地であり、地政学的な駆け引きの競技場ではない。NATOは再三再四にわたって「ユーラシア安全保障のつながり」誇大宣伝しているが、その意図は何処(いずこ)にあるや?
●われわれはNATOに対し、北大西洋における地域防衛機関としての地位を堅持し、アジア太平洋地域の平和と安定を台無しにしたり、特定の大国の覇権の道具にならないよう要請する。
●中国は世界平和の建設者であり、世界の発展に貢献し、国際秩序の擁護者である。
われわれはNATOに対し、中国に対する誤った認識を直ちに正し、冷戦のメンタリティとゼロサムゲームを放棄し、いわゆる中国の脅威を声高に叫ぶのをやめ、対立と対抗を扇動するのをやめ、世界の平和と安定のためにより実践的なことを行うことを要求する。(以上)
一方、中国の外交部はやはり7月11日の記者会見で(※4)以下のように抗議している。
●NATOの「ワシントン首脳宣言」は、アジア太平洋地域の緊張を誇張し、冷戦思考と好戦的な発言に満ちており、中国関連の内容には偏見・中傷・挑発に満ちており、われわれは強烈な不満を抱いており、断固として反対する。
●今回のNATOサミットにはNATO創設75周年という背景がある。存続の必要性を示すために、米国とNATOは会合前にNATOの「栄光」と「団結」を誇示し、NATOを「平和維持組織」であるかのように見せかけているが、実は「冷戦の遺物」であることを覆い隠すことはできない。
●NATO軍は「人道的災害の回避」を旗印にしながら、かつてユーゴスラビアに対して78日間にわたる爆撃を実施した。NATOの黒い手が伸びるところはどこでも、混乱が現れる。NATOのいわゆる安全保障は、他国の安全保障を犠牲にして成り立っている。NATOが売り込む「安全保障上の不安」の多くは、NATO自身が引き起こしている。NATOが誇るいわゆる「成功」や「力」は世界にとって大きな危険を意味する。「仮想敵国」を設定することで存在を維持し、国境を越えて勢力を拡大するのはNATOの常套手段であり、中国に対する「体制的挑戦」の誤った位置付けに固執し、中国の内政・外交政策の信頼を損なうことはまさにそれを体現している。
●ウクライナ問題に関して、NATOが「中国の責任」論を主張するのは荒唐無稽であり、邪悪な意図がある。NATOはいかなる証拠もなく、米国が捏造した虚偽の情報を拡散し続け、公然と中国を中傷し、中国とEUの関係を破壊し中欧協力を潰したいのだ。
ウクライナ危機を今日まで延期させ、火に油を注いでいるのが誰であるか、国際社会は知っている。NATOは、危機の根本原因と自らの行動を熟考し、国際社会の公正な声に注意深く耳を傾け、責任を転嫁したり他国を非難するのではなく、状況を緩和するために実際的な行動を取るよう勧告する。
●NATOはその範囲をアジア太平洋にまで拡大し、中国の近隣諸国や米国の同盟国との軍事・安全保障上の関係を強化し、「インド太平洋戦略」の実施において米国に協力してきたが、その行為は中国の利益を損ない、アジア太平洋地域の平和と安定を破壊し、すでに地域諸国の疑念と反対を引き起こしている。
●中国はNATOに対し、冷戦思考・陣営対立・ゼロサムゲームという時代遅れの概念を放棄し、中国に対する誤った理解を正し、中国の内政干渉をやめ、中国のイメージを汚し、中国とEUの関係に干渉しないよう求める。ヨーロッパを混乱させた後、アジア太平洋を混乱させるのをやめよ。
●中国は自国の主権・安全保障・発展利益を断固として守り、自国の発展と対外協力を通して、世界の平和と安定にさらなる安定と前向きなエネルギーを注ぎたい。(以上)
外交部のこの回答は7月11日の新華網(※5)が掲載し、中央テレビ局CCTV(※6)も同じ内容で報道した。したがって、外交部の記者会見での回答が中国政府の正式見解であると解釈していいだろう。
「(NATOワシントン宣言「中国が侵略の決定的支援者」は日本を戦争に巻き込むシナリオ2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。
この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※7)より転載しました。
NATOワシントン首脳会議で会見するバイデン大統領 写真: ロイター/アフロ
(※1)https://grici.or.jp/
(※2)https://www.nato.int/cps/en/natohq/official_texts_227678.htm
(※3)http://eu.china-mission.gov.cn/stxw/202407/t20240711_11451831.htm
(※4)https://www.fmprc.gov.cn/fyrbt_673021/202407/t20240711_11452358.shtml
(※5)http://www.news.cn/world/20240711/9707b00c867b4840bef0f9f4da2e6ac8/c.html
(※6)https://tv.cctv.com/2024/07/11/VIDENC0MeGRaeb3gQsqlcFeW240711.shtml
(※7)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/6c7ff82141848f044f808a47da2869a323564cef <CS>
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対中包囲網・石破案「アジア版NATO」をASEAN諸国がどう見たかを中国が分析【中国問題グローバル研究所】
*16:01JST 対中包囲網・石破案「アジア版NATO」をASEAN諸国がどう見たかを中国が分析【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版「環球時報」や青年版「中国青年報」が一斉に「アジア版NATO」に対するASEAN諸国の反応を報道した。石破・李強会談を経て、自信を強めたという勢いが読み取れる。二紙の考察と中国ネット民の雑感を紹介する。◆環球時報社評:「アジア版NATO」がASEANで壁にぶつかった事実は何を物語るのか?10月12日、環球時報は<“亚洲版北约”在东盟碰壁说明什么>(「アジア版NATO」がASEANで壁にぶつかった事実は何を物語るのか)(※2)という見出しで社評を発表している。かなり長いので、概略を個条書き的に拾うと以下のようになる。●10日に開催された第27回中国・ASEAN(10+1)首脳会議では、中国・ASEAN自由貿易地域バージョン3.0の格上げ交渉が実質的に妥結したことを発表した。 これは、中国とASEANが共同で東アジアの経済統合を主導する大きな動きであり、多国間主義と自由貿易を支持する双方の明確な態度を示し、安定・協力・発展の追求こそが中国・ASEAN地域の揺るぎない主流であることを改めて証明した。●ハイレベル会合の前に、米国、日本などはブロック対立と地政学的対立を会議に持ち込む準備をしていたようだが、会議は明らかに冷たい壁でそれを阻んだ。特に、日本の石破茂新首相が提唱したいわゆる「アジア版NATO」は、域内で強い抵抗に遭っている。●マレーシアのハッサン外相は、「ASEANにNATOは必要ない」と単刀直入に述べた。インドネシアの英字新聞ジャカルタ・ポストは、「アジア版NATO」は中国に対抗することを狙っており、ASEAN10カ国にとって「極めて攻撃的」であると警告した。●この大きな反発により、石破茂は会議で「アジア版NATO」に言及するという考えを断念せざるを得なくなったが、これは何を物語っているのだろうか。1.NATOや米国の一部の同盟国が自分たちに満足しているのとは異なり、それ以外の多くの国々の目には、ただ単に「紛争と戦争のメーカー」としてのイメージを強化ただけだ。特にASEAN諸国の世論から判断すると、NATOに対する嫌悪感と反感には言葉では言い表せないほど激しいものがある。2.この地域の国々は、NATOモデルをアジア太平洋地域に持ち込むことに反対するだけでなく、NATOに代表される冷戦精神やブロック対立をアジア太平洋地域に持ち込むことにも反対し、中国を地政学的紛争の「仮想敵」とすることに反対している。3.NATOの哲学は、アジア諸国のそれとは大きく異なる。NATOは西側陣営が支配する軍事同盟であり、アジア諸国は独立に焦点を当てている。NATOの目的は、軍事力によるいわゆる「抑止と防衛」を促進することだが、ほとんどのアジア諸国は平和を重んじ、開発を優先することに同意している。4.NATOは外国の干渉に取り憑かれ、しばしば他国の主権と人権を踏みにじる一方で、多くのアジア諸国は近代において植民地化され侵略されるという悲劇的な経験をしており、地域諸国は外部からの干渉を心から深く嫌悪し平和共存を望んでいる。5.NATOは、その存在を永続させるために共通の「敵」の確立に依存しており、昔は「ソ連」で現在は「ロシア」だ(アメリカは一極支配を維持するために「共通の敵」がいないと困る)。6.アジアではそのような脅威は存在せず、「共通の敵」を中国に向ける試みは成功しない。中国は15年連続でASEANの最大の貿易相手国であり、ASEANも4年間中国の最大の貿易相手国であり続けている。7.中国とASEANはRCEPを完全かつ高品質で実施し、中国・ラオス鉄道とジャカルタ・バンドン高速鉄道は一帯一路構想の名刺となり、デジタル経済やグリーン経済などの新興産業での協力が強力な推進力を与えている。●シンガポールのYusof Ishak研究所の東南アジア研究センターが4月に発表した調査によると、ASEAN諸国は米国よりも中国に対して良い評価を与えている。日経アジアンレビューも、フィリピンでさえ、オブザーバーが「アジア版NATO」という考えを非現実的と見なしていることを認めている。一部の欧米メディアさえ「アジア版NATO」が適切だとは思っていない。●石破首相本人はASEANでの李強首相との会談で、日中関係の着実かつ長期的な発展を促進することへの希望を表明している。(以上、環球時報社評より)環球時評社評の中で、最も注目を引いたのは「多くのアジア諸国は近代において植民地化され侵略されるという悲劇的な経験をしており、地域諸国は外部からの干渉を心から深く嫌悪し平和共存を望んでいる」という文言だった。岸田政権の時もバイデン大統領の言いなりになって、西側の現存のNATOの「アジア化」を形成しようと岸田元首相は努力したが、環球時報に書いてあるこの現実を日本はあまりに認識していない。環球時報の社評に対する判断に関しては、ここでは言及しないが、少なくとも、この現実だけは深く認識すべきだと思う。◆中国青年報:インドネシアが「アジア版NATO」を弄ぶなと石破に警告10月11日、中国青年報は<インドネシアのメディアが「アジア版NATO」を弄ぶなと石破に警告>(※3)という見出しで、おおむね以下のような内容の報道をした。●石破茂首相は日本政界の「古き顔(老面孔)」としてASEANで外交デビューした。しかし彼が到着する前に、インドネシアのジャカルタ・ポストから「アジア版NATO」に対する単刀直入の警告を受けた。●ジャカルタ・ポスト紙によると、中国、米国、EU、日本はASEANの貿易相手国であるものの、2020年以降、ASEANの最大貿易相手国は中国であり続けている。ASEAN諸国にとって、日本やその同盟国が「ASEANはインド太平洋地域の中心だ」と主張して「密かにASEANをまとめて中国に立ち向かわえようとしているもくろみ」は、まったく非現実的であり、到底受け入れられるべきものではない。ASEANは、日本が地域の緊張を悪化させるだけの「軍事同盟国」ではなく、信頼できる貿易・経済パートナーになることを望んでいる。●日本の経済力が衰退し、ASEANの力が大きくなる中で、石破茂は今でもまだ「日本はASEAN諸国のリーダーを引きつけるほどの影響力を持っている」という幻想を抱いているのだろうか。日本政界の「古き顔」は、世界情勢の事実認識に関しても「古き視点」しか持ってないのかもしれない。(以上、中国青年報から抜粋)◆中国ネット民:石破茂は総理になって初めて世界の現実を知ったのではないか?中国のネットでは「日媒称」(日本メディアによれば)とか 「美媒称」(アメリカメディアによれば)という書き出しで、実に多くの情報が即時的に中国語に訳されて報道されている。中国のネット民はそれらを熱心に読んでいる者が多いので、実に当意即妙を得た反応が数多く見られる。それらを列挙するのは至難の業だが、「中国青年報」で取り扱っているようなテーマに関する書き込みを拾い上げると、たとえば以下のようなものがある。●石破茂は自民党で長い間「干されていた」ので、現在進行形の世界情勢を認識する力がないんじゃないの?●日本の政治評論家が石破内閣を「在庫一掃内閣」と評していたけど、あれって、おもしろいよね。今まで主流派から外されていた人たちをかき集めたんだろ?●石破茂は「防衛問題オタク」って言われているようだけど、家の中で組み立てたプラモデルで構築した「アジア版NATO」は、机上の空論だったってことが、総理になって初めて分かったんじゃいの?●そうじゃないと、自民党総裁選の選挙運動の時にあれだけ主張しておきながら、総理になったとたんに引っ込めるって、おかしいだろ?●西側式の民主主義って、ほんとにいいのかね?選挙公約は当選した瞬間に捨てていいんだったら、選挙なんかする必要ないじゃない?●中国式民主主義の方がよっぽどいいよ。選挙のたびに方針を変える必要がないから、国家戦略を貫くことができて、結局、新産業技術においても西側式民主主義国家を超えている。●日本みたいに自民党政権がずーっと継続している国って、ほんとに「西側式民主主義国家」なんだろうか?アメリカはまだ二大政党が常に拮抗して争っているけど、それでも選挙のために国力を使い果たして、どんどん衰退していってる側面があるじゃない?日本はほぼ自民党による一党支配だから、もっと成長していいはずなのに、結局「自分が当選したい!」という欲望に駆られた議員ばかりだから、当選するための裏金問題とか内部の派閥争いで腐っていって、経済も新産業技術も立ち遅れていくばかりだよね。●そんな日本がアジアをリードして「軍事同盟」を作って中国やロシアや北朝鮮を包囲していくって、なに考えてるの?バカじゃない?●いや、だからさ、石破は総理になって、初めて少しだけ「現実」を知り始めたんだよ。初めて現在進行形の国際情勢が見えたんじゃないの?だから李強との会談で、「田中角栄の日中共同声明の立場を堅持する」って誓ったんじゃないの?●そんなに「揺れ動いてばかりいて」、それで一国の総理が務まるのかな?●そうだね。でも、石破を選んだのは現場にいたはずの政権与党の自民党だろ?「現実」を知っていたはずじゃないの?西側式民主主義って何?・・・・・・以上、中国のネットから適宜、興味深いものを選んでみた。表現は、無数にある書き込みや民間ウェブサイトの主張などを、平均的にまとめたものである。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※4)より転載しました。就任会見の時の石破首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.youtube.com/watch?v=SfJcXh0qm3o(※3)https://news.qq.com/rain/a/20241011A018LH00(※4)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/dd6c42371c1e358a5988a60d48fd11e8508a1202
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2024/10/15 16:01
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中国、台湾総統「新二国論」に激しい抗議 日台関係に危機をもたらす石破発言(2)【中国問題グローバル研究所】
*10:55JST 中国、台湾総統「新二国論」に激しい抗議 日台関係に危機をもたらす石破発言(2)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「中国、台湾総統「新二国論」に激しい抗議 日台関係に危機をもたらす石破発言(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。◆台湾メディア:石破茂が李強に「中日共同声明を堅持する」と叫んだのは日台関係に危機をもたらす10月11日、台湾の「中時新聞網」は<石破茂は李強に中日共同声明を堅持すると叫んだ 対日関係は危険になったか?>(※2)という見出しで、石破首相の「日中共同声明堅持」発言を問題視している。それによれば、民進党の元立法委員の沈福雄氏が石破発言に関して以下のように述べているとのこと。●石破茂が内閣を組閣した後、日中関係は悪化するのではなく、良くなる方向に動くだろう。●何と言っても李強との会談で台湾問題について石破は「中日共同声明を堅持する立場は変えていない」と明言したのだから。それは「一つの中国」を遵守することであり、「台湾独立を認めない」と表明したということになる。●政治家は権力を握る前と握った後では、まったく違うことを言うこともあるが、石破茂の場合は掌(てのひら)返しがひどすぎる。沈福雄元立法委員が出演した番組は、国民党の副総統に立候補した趙少康氏(2023年11月26日のコラム<台湾総統選、国民党支持率急上昇の謎が解けた>(※3)にある写真を参照)が主宰する「少康戦情室」というテレビ番組である。その番組では出演者が、日本の自民党総裁選挙前に台湾を訪問し頼清徳総統とも会談して民進党を喜ばせたことを踏まえ、「石破茂に期待を寄せた民進党を非常に失望させている」と述べている。◆中文圏のネット民に広がる石破首相への不信感中国大陸および大陸以外の中文圏のネット民の間では「石破茂への不信感」が広まっている。たとえば台湾関係では、以下のようなものがある。●自民党総裁選の前に台湾を訪問して頼清徳にまで会ったのは、「選挙活動」のために決まってるじゃないか。親中だと当選しないから、台湾を訪問して反中の姿勢を見せただけさ。●それでいて李強に会った瞬間にコロリと態度を変えて「台湾独立反対」を表明するために田中角栄を持ち出して「中日共同声明を堅持する」って言って見せるんだから、石破の言うことなんか、何も信じない方がいいよ。●「中日共同声明を堅持する」と李強に誓って見せることは、きっと早くから決まっていたんだぜ。だって、その埋め合わせをするために10月10日には山東昭子が引率する「日本の国会議員団」を祝賀のための台湾に派遣してるじゃないか。(筆者注:台湾の総統府のウェブサイト(※4)によれば、10月10日、自民党の元参議院議長を務めた山東昭子氏が「国会議員祝賀団」を引き連れて台湾を訪問し、午後頼清徳総統と会ったようだが、そのホームページには「日本の石破首相の指導の下」と書いてある。双方に良い顔をしようとして双方からの信用を失っている。)●そもそも日本の総理になったらすぐには議会解散をしないと選挙期間中にあれだけ言っていながら、その舌の根も乾かぬうちに回線宣言をしてしまったんだから、石破が何を言おうと、信頼などしちゃいけないよ。◆馬英九元総統が頼清徳の「新二国論」を批判10月10日、馬英九は双十節祝賀式典を欠席しただけでなく、<新二国論は違憲だ>とも述べている(※5)。報道によれば馬英九は「新二国論は違憲であるだけでなく、台湾の民衆を危険な境遇へと道連れしていく」と警告し、以下のように主張しているとのことだ。●中華民国の現行憲法によれば、台湾と本土は2つの国ではなく2つの地域であり、互いに平和的に共存できる。頼清徳の主張は憲法に違反しており、「新二国論」を提唱し、台湾海峡に緊張をもたらしたことで、世界は頼清徳を「トラブルメーカー」だと深刻に懸念している。●頼清徳路線を疑問視する多くの国際的な声があり、その中には頼清徳を「蔡英文前総統よりも挑発的だ」と批判するアメリカの「ワシントン・ポスト」や、ベルギーの首都ブリュッセルに拠点を置く世界的に有名な国際NGOもまた、「頼清徳は憲法や両岸人民関係条例に基づいて両岸問題を解決すべきで、挑発的な言葉を避けるべきだ」と、最近出した報告書で勧告している。●頼清徳は一刻も早く冷静になり、崖っぷちから引き返し、全台湾人民の幸福を第一に考え、不条理で違憲の「新二国論」を放棄し、台湾人民全員を危険にさらすのをやめるべきだ。(報道からの引用は以上)石破首相が李強首相との対談で、台湾問題について「日中共同声明の立場を堅持する」と明言したことを公開しなかったのは、日本のメディアだけのようだ。筆者が書かなかったら、日本は「そんなことはありませんでした」のままスルーするつもりだったのだろうか。筆者がいなくなった後は、誰が真相を明かす役割を果たしてくれるのだろうかと、肌寒く思う。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※6)より転載しました。「双十節」式典で演説する台湾の頼清徳総統(写真:ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.chinatimes.com/cn/realtimenews/20241011005009-260407?chdtv(※3)https://grici.or.jp/4850(※4)https://www.president.gov.tw/NEWS/28776(※5)https://www.zaobao.com.sg/realtime/china/story20241010-5015085(※6)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/9c369c86038e2dc965dbde9d8b163fdb596830fe
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2024/10/15 10:55
GRICI
中国、台湾総統「新二国論」に激しい抗議 日台関係に危機をもたらす石破発言(1)【中国問題グローバル研究所】
*10:54JST 中国、台湾総統「新二国論」に激しい抗議 日台関係に危機をもたらす石破発言(1)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している(※1)遠藤 誉所長の考察を2回に渡ってお届けする。台湾の頼清徳総統は10月10日の「双十節」(建国記念日)式典演説で「中国には台湾を代表する権利はない」などと表明した。中国(大陸)はこれを「新二国論」として激しい抗議を展開している。台湾内でも国民党の馬英九元総統は事前に公表されていた頼清徳総統の主張に反対し、建国記念日祭典の出席を拒絶した。そのような中、石破首相が李強首相との会談で「台湾問題は日中共同声明を堅持」(=独立反対)と明言したことが台湾で「日台関係に危機をもたらす」と危険視されている。中文圏のネット民の間には「石破茂に対する不信感」広がっている。◆双十節における頼清徳総統の演説1911年10月10日に辛亥革命が勃発し1912年1月1日に「中華民国」が誕生するが、台湾はこの辛亥革命勃発の日を今も「中華民国」の建国記念日として祝賀する。「10」が二つあることから「双十節」とも呼ぶ。今年、113回目の「双十節」式典において、頼清徳総統が総統就任後初めての「双十節」演説(※2)で、「中華人民共和国(中国)には台湾を代表する権利はない」と表明した。それ以外にも両岸関係(中台関係)に関して概ね以下のような発言をしている。●中華民国はかつて国際社会から追放されたが、台湾国民は一度も自国を放棄したことはない。●現在、中華民国は台湾本島・澎湖島・金門馬祖に根を下ろしており、中華人民共和国には属しておらず、この地では民主主義と自由が栄えている。●台湾は国家主権を堅持しており、中国による侵犯と併合を許さない。(以上)頼清徳総統は10月5日に開催された「双十節」記念ベントでも「中華人民共和国は中華民国の祖国になり得ない」と述べており、その理由として「中華人民共和国は10月1日に75歳の誕生日を迎えたばかりだが、数日後に中華民国は113歳の誕生日を迎える」ことを挙げた。すなわち、中華人民共和国の方が若いのだから、「祖国」と言うのなら、「中華人民共和国の祖国が中華民国」と言えると皮肉ったわけだ。そうでなくとも頼清徳総統は今年5月の就任演説で、「中華民国と中華人民共和国は互いに隷属しない」と述べている。したがって「双十節」式典で、頼清徳総統が何を言うかは事前にわかっていたので、台湾の国民党の馬英九元総統は、抗議を表明するために当日になって式典の出席を拒絶した。◆激しく燃え上がる中国大陸における頼清徳「新二国論」への批判10月10日、中国のありとあらゆる報道機関は「頼清徳双十講和」に対する激しい批判報道を展開した。国務院台湾事務弁公室(国台弁)は<頼清徳の“双十”講和は両岸の緊張を高め台湾海峡の平和と安定を激しく破壊する>(※3)という見出しで、双十講和を激しく批判した。批判概要は主として以下のようなものである。●頼清徳は講和の中で「互いに隷属しない」という「新二国論」を提唱し続け、「台湾独立」の誤謬を編み出し、分離主義的な見解を広め、海峡両岸間の敵意と対立を扇動した。これは、頼清徳が頑固に「台湾独立」の立場を堅持し、対立的な思考に満ち、絶えず挑発し、両岸の緊張を故意に悪化させ、台湾海峡の平和と安定を深刻に損なっていることを十分に表している。●中華民族の偉大なる復興を実現することは、現代の中華民族の最大の夢であり、それは常に(台湾海峡)両岸の同胞の未来と運命に影響を与えるものである。1840年のアヘン戦争後、外国の侵略を打ち負かし、民族解放に努め、民族統一を実現するために、中国人民は次々と前進し闘ってきた。●台湾は古くから中国の神聖なる領土であり、近代には外国の侵略軍に侵略され占領されて、台湾の民衆は大きな苦しみを味わった。1945年、中国人民は抗日戦争で大勝利を収め、それに伴い台湾は失地を回復した。1949年以降、中国の内戦の継続と外部勢力の干渉により、海峡両岸は長期にわたる政治的対立の特殊な状態に陥ったが、台湾は常に中国の領土の一部分であり、台湾の同胞は常に中華民族の一員であり、中華人民共和国政府は常に台湾を含む中国全土を代表する唯一の正当な政府であり、中国は常にすべての中国人民の偉大な祖国であり、一つの中国の原則を堅持することは常に国際社会の普遍的なコンセンサスである。●頼清徳は故意に国を分裂させる根拠を寄せ集め、「台湾独立」の命題を強引に植え付け、「民主主義対権威主義」という古い概念をくり返し、「民主と自由」を装って「外国に頼って独立を謀り」、「武力による独立を求める」ことを続け、台湾を「台湾独立」という戦車に結びつけようと試みているた。●頼清徳が何と言おうと、台湾が中国の一部としての法的地位と、海峡両岸が一つの中国に属しているという事実と現状を変えることはできない。われわれには、祖国の完全な統一を実現する自信と能力がある。いかなる人も、いかなる勢力も、民族の復興と国家統一という歴史的な大勢を阻むことはできない。われわれは「一つの中国」原則と「92年コンセンサス」を堅持し、広範な台湾同胞大衆と団結し、「台湾独立」分裂主義行為と外国の干渉とたくらみに反対し、両岸交流と協力を積極的に推進し、両岸の統合と発展を引き続き深化させ、祖国の統一を断固として推進する。(国台弁の抗議概要は以上)同様の抗議を中央テレビ局CCTV(※4)も報道し、さらに数えきれないほどの特集番組を展開して、中国側に立つ海外の見識者や政治家の賛同なども報道した。見識者の多くは「1971年10月25日の国連総会において通過した【第2758号決議】を重視すべきで、中華人民共和国はその決議により『中国を代表する唯一の国家』として認められたのだから、それを覆さない限り中華民国を国家として認めるのは国連決議に違反する」と主張した。言うまでもなく、中国の外交部も10月10日の定例記者会見(※5)で頼清徳の講和を徹底して批判し、「いかなる事態になっても中国の意思は変わらない」と断言した。石破首相が中国の李強首相と会談したのは、まさにこの真っただ中だったので、10月11日のコラム<石破首相、李強首相との会談で台湾問題に関し「日本は日中共同声明で定められた立場を堅持」と誓う>(※6)のような事態になったのは、中国としては、どんなに歓迎すべきことだったか、想像に難くない。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※7)より転載しました。「中国、台湾総統「新二国論」に激しい抗議 日台関係に危機をもたらす石破発言(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。「双十節」式典で演説する台湾の頼清徳総統(写真:ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.youtube.com/watch?v=2J5Cz9tBzV4(※3)http://www.news.cn/tw/20241010/cfbabbb57f514762928ff3463d4a17af/c.html(※4)https://tv.cctv.com/2024/10/10/VIDELrcxu3PeuTEjRnv7EnQJ241010.shtml(※5)https://www.mfa.gov.cn/web/wjdt_674879/fyrbt_674889/202410/t20241010_11504884.shtml(※6)https://grici.or.jp/5675(※7)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/9c369c86038e2dc965dbde9d8b163fdb596830fe
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2024/10/15 10:54
GRICI
石破首相、李強首相との会談で台湾問題に関し「日本は日中共同声明で定められた立場を堅持」と誓う【中国問題グローバル研究所】
*10:23JST 石破首相、李強首相との会談で台湾問題に関し「日本は日中共同声明で定められた立場を堅持」と誓う【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。10月10日にラオスで中国の李強首相と会談した石破首相は、自分は田中角栄元首相の愛弟子だとして「日中友好」を重んじ、何よりも台湾に関して「日本は日中共同声明で定められた立場を堅持する」と誓った。10月10日の台湾の頼清徳総統の「二国論」演説で激しい批判を展開している中国は、この一言さえ引き出せば、あとはどうでもいいのである。日本のメディアでは、石破首相が強硬な姿勢で日本側の要求を主張したと、一斉に石破首相の姿勢を礼賛しているようだが、中国側から見ると、まったく別の景色が見えてくる。◆日本メディア、一斉に石破首相の主張を礼賛いつものことではあるが、日本のメディアは日本側に都合のいいことだけしか報道しないので、どのメディアも多少の違いはあるものの、おおむね以下のような論調で石破・李強会談を報道している。●石破首相は、8月の中国軍機による日本の領空侵犯など中国軍の活動について深刻な懸念を表明した。●石破首相は、深圳市の日本人学校に通う男児が襲われて死亡した事件の事実解明や邦人保護の徹底を求めた。●石破首相は、東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出をめぐり、中国が続けている日本産水産物の禁輸措置について協議した。●石破首相は、中国のネットにおける反日的なSNSの取り締まりを要求した。●一方、石破首相は、師と仰ぐ、日中国交正常化を実現させた田中角栄元首相の言葉を引用し、「日中両国の指導者が明日のために話し合うことが大事だ」と呼びかけ、戦略的互恵関係を続けたいと表明した。(日本メディア報道の例は以上)このように日本メディアは、あたかも「石破首相が勇ましく日本側の主張を中国側に突き付けた」というトーンで報道しており、最後の田中角栄元首相に触れた報道は少なかった。◆李強・石破会談に関する中国側の報道中国の外交部は10月10日夜9時31分、<李強は日本の首相石破茂と会見した>(※2)という見出しで、会見の模様を報道した。以下、中国側が発表した李強発言と石破発言の概略を示す。李強:習近平国家主席が(石破首相就任祝電で)指摘したように、中国と日本は一衣帯水の隣国であり、平和共存、永遠の友好、互恵協力の道を追求することが両国国民の基本的利益だ。日本が中日間の四つの政治文書の原則と合意を真摯に遵守し、二国間関係の正しい方向をしっかりと維持し、二国間関係の政治的基盤を維持し継続することを期待する。日本が、両国間の戦略的互恵関係を包括的に推進し、新たな時代の要請に応える建設的で安定した中日関係の構築に努めることを期待する。李強:中国と日本の発展はお互いにとって挑発ではなく重要な機会である。中国は日本と協力してそれぞれの比較優位性をさらに活用し、技術革新、デジタル経済、グリーン開発などの分野での協力のための新たな成長点をさらに模索し、輸出管理対話メカニズムをうまく活用し、産業サプライチェーンの安定性と円滑性、および世界的な貿易システムの維持に取り組んでいきたい。また共同で地域の平和と繁栄発展を促進していきたい。石破:日中両国は現在、戦略的互恵関係を包括的に推進し、建設的で安定した二国間関係の構築に努める方向で進んでいる。日本は中国と協力して将来を見据え、ハイレベル交流を強化し、あらゆるレベルでの対話と意思疎通を密接に行い、協議を通じて懸案問題を解決し、互恵協力を引き続き推進し、日中関係を安定的かつ長期的に促進していきたいと望んでいる。日本は中国との「ディカップリング(切り離し)や関係の断絶」をするつもりは全くなく、各領域における実務協力を深め、その成果が両国のより多くの国民に利益をもたらすよう希望している。台湾問題については、日本は≪日中共同声明≫で定められた立場を堅持しており、変更する意思は全くない。日本は国際問題や地域問題について中国との意思疎通を強化し、課題に対処していきたいと考えている。(以上)このように中国側から見れば、石破首相は模範的な表明をしていることになる。「≪日中共同声明≫で定められた立場を堅持する」ということはすなわち、「一つの中国」を堅持し、「台湾独立を絶対に認めない」ということに相当する。もちろん日本側は石破首相が、中国が喜ぶ満額回答をしていることは一切報じないが、中国の外交部は、少なくとも石破首相が言っていないことを発表したりするようなことはしない。そのようなことをしたら、たちどころに日本側からクレームが来るのを知っているからだ。日本の外務省あるいは駐中国の日本大使館などが異議を表明してないということは,石破首相はまちがいなく中国外交部が発表した言葉を言っているということになる。◆中国にとってはコントロールしやすい石破内閣中国にとっては、総理になったら靖国神社を参拝すると公言した高市早苗議員が総理にならなかっただけでも歓迎すべきことだと思っている。懸念は石破氏が自民党総裁選前に台湾を訪問していたことだったが、このたびの李強との会談で、「台湾独立は支援しません」と誓ったようなものだから、これで、その懸念材料はほぼなくなった。中国にとって石破茂個人に関する懸念は、内閣を組むまではさまざまあったが、その後に発表された石破内閣のメンバーを見て、「おおかた親華(親中)」とみなしており、御しやすいとみなしていた。加えて今般、台湾問題について、田中角栄の名前まで出して、日中国交正常化の時の基本方針を堅持すると誓ったのだから、もう何の心配もない。石破氏が総理になる前から唱えてきた「アジア版NATO」は、総理大臣所信表明で自ら封印してしまったし、アジアのどの国が日本ごときと軍事同盟を組む可能性があるかと、中国は石破の国際感覚を、今ではバカにしている。中国政府自身はそのようなことは言わないが、中国のネットに湧き出ている声を削除していないので、中国政府もネットの声に肯定的だということが窺(うかが)える。総体的に見て、「石破には現在進行している国際的時局を見る目が皆無だ」と思っているので、台湾問題に関して田中角栄が発表した「日中共同声明」を模範とすると誓ってくれれば、それ以外のことはどうでもいいのである。中国は今、同じ10月10日に台湾の頼清徳総統が講演で表明した「二国論」への批判に燃え上がっており、他のことにはほぼ無関心だ。頼清徳発言と、石破首相外交デビューのASEAN諸国にとってのアジア版NATOに関しては、別途改めて論じたいと思う。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※3)より転載しました。写真: 出典:新華社(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.fmprc.gov.cn/zyxw/202410/t20241010_11505060.shtml(※3)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/7c87345f7a3b948525d9c7db095e064a49055446
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2024/10/15 10:23
GRICI
中国は石破首相をどう見ているか?【中国問題グローバル研究所】
*10:24JST 中国は石破首相をどう見ているか?【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。習近平国家主席が石破首相に祝電を送ったのは毎回のことなので特記するほどのことではない。中国政府側メディアは内政干渉になるとして評価はしないが抗議はする。それらを含めて中国が全体として石破首相の誕生をどう思っているかに関して考察を試みる。◆習近平国家主席の石破首相に対する祝電10月1日、習近平国家主席は石破茂首相に祝電を送り(※2)、日中は一衣帯水の隣国であると指摘した上で、「両国が平和共存、永遠の友好、互恵協力、共同発展の道を歩むことは、両国国民の基本的利益にかなう」と述べた。また「日中間の4つの政治原則と合意を遵守し、両国間の戦略的互恵関係を包括的に推進し、新時代の要求に沿った建設的で安定的な日中関係を構築することに尽力することを期待する」とも表明している。岸田(元)首相就任の際も、それ以前の日本の首相が就任した際にも送っている祝電で、目新しいことではない。李強国務院総理も同日、石破首相に祝電を送っている。中国は全ての国に対して、同様のことをしている。以下に示すのは、主として民間のウェブサイトに見られる膨大な情報の中から抽出した主だった見解である。◆「タカ派の高市氏でなく、親中の石破氏で良かった」と中国のネット民石破茂氏は中国では「親華派」(親中派)と見られることが多い。自民党議員でありながら常に自民党に反旗を翻してきたからだ。特に麻生氏や安倍元総理に対しては「背後から刺す」行動を取ることが多かったので、麻生氏や安倍氏を「アメリカ追従の軍国主義者」と見ている中国では、石破氏は「最終的には中国の味方」的な感覚を、全体としてフワーっと持っている。一方、高市早苗氏は、根っからの強烈な右翼だと見ている中国のネット民は多く、特に今般の自民党総裁選挙運動のときに「総裁に就任したら(→総理に就任したら)、靖国神社に参拝する」と明言したので、「どんなことがあっても高市氏には総理になってほしくない」という書き込みが中国のネットで数多く見られた。だから、そのような人物を総裁に選ばなかった自民党は、全体としてはやはり「親中」に傾いていると安堵しているという側面がある。この一連の情報の中で「おや?」と興味を引いたのは以下のような見解だった。●なんで石破が日本国民に人気があったか、ようやくわかったよ。日本国民は自民党にしか任せられないと思っているのが多いだろ?でもその自民党に不満を持っている。だから、野党ではないけど、自民党に弓を引く石破が人気だったのかもね。●でもさ、総理になったら結局「古い自民党」に戻っただけだろ?だから総理になったとたん、「嘘つき内閣」って呼ばれて、今は日本国民に嫌われてるようだよ。支持率だって、歴代総理の中で下から二番目の支持率の低さ。一番低いのが麻生総理で、その次に低いのが石破だよ。短命政権に終わるんじゃない?(中国のネットからの引用はここまで)ここに挙げた中国ネット民の最後の主張は、その通りだと思う。総裁選の選挙期間中は、あれだけ「すぐ解散」には反対だという趣旨のことを、さまざまな表現を使って主張してきたではないか。小泉進次郎氏が主張する「すぐ解散」を何度も否定し、「せめて予算委員会を開催したあとでないと、国民には自民党が何を主張しているかを理解してもらうのは困難だ」と言いながら、小泉氏の主張した通りのことをやっているではないか。日本国民が石破内閣を「嘘つき内閣」と呼ぶのは当然だと思う。当選した瞬間に、ここまで前言を翻(ひるがえ)す総理は見たことがない。何一つ信用できない。個人的感想は控えなければならないが、しかし、こればかりは言わずにはいられないので、お許し願いたい。◆「石破は総裁選の前に台湾を訪問していることに警戒せよ」と中国のネット民さて、中国側の見方の話に戻る。「石破は親中」と書いているネット民に対して、一方では「何を単純なことを言っているんだ」という他のネット民の反論も数多く見受けられる。理由の一つとして、石破氏ら日本の国会議員団が8月に台湾を訪問し、石破氏が8月13日に頼清徳総統と会談したことを挙げている。これに関してはネット民だけでなく、中国大陸の外交部など、中国政府は、「台湾独立派を激励するもの」として激しく抗議を表明している。その意見に賛同するネット民は、「総裁選のための人気取りに決まってるじゃないか」というのが多く、「日本では台湾を支援していない政治家は生きていけないんじゃないか?」という類のもある。◆アジア版NATOには中国全体が反対岸田元総理は、バイデンべったりだったので、バイデンのご機嫌に沿うためにも「(西側の)NATOのアジア化」に専心した。中国はもちろん激しく抗議してきた。今回、石破氏が唱えるのは「アジア版NATO」で、少しニュアンスが異なる。日米同盟は重視するものの、日米地位協定などを改正して「日米が対等」になる形に持っていき、むしろ日本が中心になって周辺諸国に呼び掛けてアジア版の軍事同盟的なものを形成していこうというのが石破氏の主張だ。これに関してはアメリカも肯定的でない。中国政府は言うまでもなく「アジア版NATO」には絶対に反対で激しい抗議を示している。そもそもASEAN諸国などが、こういった形で白黒つけて米中のどちら側に立つかを示すことを最も嫌がっているのに、それをやろうというのだから、日本人から見ても非現実的だ。結果、中国全体としては石破政権がこのまま進むことに対して喜んではいない。しかし高市氏なら総理になったとたんに靖国神社に参拝するだろうから、それよりは「まだマシか」というのが中国全体の見方だ。いずれにしても、自民党である限り、誰がトップに立とうと大差ないと中国は思っている。◆総理になって3日目に検挙?10月3日、中国大陸のネットを見ていて驚いた。いきなりスクープのように、次から次へと「石破氏、総理になって3日目に検挙?」という文字が躍った。その一つ一つをリンクさせるのは大変なので、関連情報をひとまとめにしたリンク先を示す(※3)。興味のある方は、リンク先をご覧いただきたい。日本ではニュースになっていなかったので、驚いて日本のネットに戻ってみたところ、共同通信が<石破首相らを大学教授が告発 収支報告書に過少記載の容疑>(※4)と書いているのを知った。「告発」を「検挙」と表現していただけのようだ。それにしても「裏金議員」を自民党公認候補に入れるか否かを議論しているときに、石破氏自身が金額は少なくても「収支報告書に過少記載」があるのでは話にならないだろう。このニュースを、こんな凄いスピードの速報の形で伝えている中国は、石破政権が短命で終わることを望んでいるのかと、そのことが興味深かった。◆高市氏はなぜ逆転されたのか?もちろん投票前に「総理になったら靖国神社に参拝する」と公言してしまったことが、心の中では親中派の多い自民党議員に警戒心を招いただろうし、公明党との連立が困難になるだろうから、解散選挙などがあったときに自民党が勝てない(=自分が当選できない)かもしれないと懸念した議員が多かったのだろうということは容易に想像がつく。また日本政治の専門家たちが指摘しておられるように、万一にも決選投票に持ち込まれた時には「〇〇に乗れ」といったキングメーカーの指示もあったのかもしれない。ただ、筆者自身の感覚から言うと、決選投票の直前までは高市氏が議員票においても石破氏を大きく引き離していたので、こういった説明には、なにか納得がいかないものを個人的には感じていた。筆者個人の少ない経験からすると、「3分間で答えてください」という要求をテレビやラジオあるいは講演などで要求された場合、「3分以内に回答する」ということを瞬時に計算して起承転結を構成することは、何としても守ってきた鉄則のようなものだった。総裁選の第1回目の投票が終わった後に、「5分間」、石破氏と高市氏にスピーチをすることが許された。「ここが勝負だ!高市さん、頑張れ!」と息をのむような緊張感の中で二人のスピーチを聴いた。石破氏の場合、いつもの陰湿で低い声の受け答えと違い、はっきりと大きな声で明確に「自分が総裁になったら何をする」ということを、起承転結を考えて5分以内言い切った。それに対して、期待した高市氏は、歴代の総理に感謝するという趣旨のことに時間を使い、「自分が総理になったら、必ずこうする!」という強いメッセージがないまま時間オーバーになってしまった。司会者から制限時間が過ぎたことを告げられた高市氏が最後に放ったひとことは「公明党との協力」だった。ああ、だめだ・・・。勝負があったな・・・。高市さんともあろう人が、あの人生の全てを懸けたはずの「5分間」を自ら殺してしまったのではないか・・・。敗北会見で高市氏は「私の力不足以外の何物でもない」という趣旨のことを仰っておられたように思うが、力不足は、あの最後の「5分間」だったように思う。自民党の中には右から左まで、どんな人でもいる。自民党機関誌で中国問題を長いこと連載させていただいたり、自民党本部で数多くの講演もさせていただいたが、もう自民党一党だけで日本の左翼も右翼も代表できるほど、非常に幅広く網羅していると痛感したものだ。それに比べて野党は、やたら細かな主張の違いにこだわって別の党を結成している。これでは野党は勝てない。自民党政治が長続きする裏には「旧統一教会」や裏金の「お陰」もあったかもしれないが、むしろ、この「政治的スタンス」に関する「幅の広さ」あるいは「寛容さ?」にあるのかもしれないと、つたない経験ながら思う次第だ。追記:念のため、習近平国家主席は2021年10月4日に、岸田首相が就任した時にも岸田首相宛に祝電を送っている(※5)。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※6)より転載しました。発足した石破内閣(写真: 代表撮影/ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.gov.cn/yaowen/liebiao/202410/content_6978125.htm(※3)https://haokan.baidu.com/web/search/page?query=%E6%97%A5%E9%A6%96%E7%9B%B8%E7%9F%B3%E7%A0%B4%E8%8C%82%E7%AD%894%E4%BA%BA%E8%A2%AB%E6%A3%80%E4%B8%BE(※4)https://nordot.app/1214396377421972120?c=302675738515047521(※5)https://www.gov.cn/xinwen/2021-10/04/content_5640969.htm(※6)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/0d8816223d643edb438581aa8e97c5feee16ab3d
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2024/10/07 10:24
GRICI
自民党総裁候補者に問う 「日本の官公庁のデータは中国人が作成している実態」をご存じか?【中国問題グローバル研究所】
*10:25JST 自民党総裁候補者に問う 「日本の官公庁のデータは中国人が作成している実態」をご存じか?【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。自民党総裁候補者が14日、日本記者クラブで討論会を開催。その質疑応答は見ごたえがあった。何名かの立候補者が対中防衛策やデータの絶対的機密性を必要とするマイナンバーなどの実行を強調しておられたが、「日本の官公庁のデータのほとんどは中国人が作成している実態」をご存じだろうか?防衛や経済安全保障は声高に叫ばれても、誰一人、それを実行するための膨大なデータ作成を誰がやっているかに関する認識はないように(あるいは知っていても見ぬふりをしているように)見受けられた。日本の官公庁のデータ作成に関する実態の一端を指摘し、各立候補者にネットを通して問いを投げかけたい。◆日本の全省庁統一資格が隠れ蓑周知のように日本のすべての官公庁には<全省庁統一資格>(※2)が設けられている。このリンク先に書いてある通り、全省庁統一資格とは「各省庁における物品の製造・販売等に係る一般競争(指名競争)の入札参加資格(全省庁統一資格)」のことだ。この資格は、各省庁申請受付窓口に掲げる申請場所のいずれか1か所に申請し、資格を付与された場合において、その資格は該当する競争参加地域のうち、希望する地域ごとに所在する各省庁の全調達機関において有効な入札参加資格となる。本資格が有効となる各省各庁は「衆議院、参議院、国立国会図書館、最高裁判所、会計検査院、内閣官房、内閣法制局、人事院、内閣府本府、宮内庁、公正取引委員会、警察庁、個人情報保護委員会、カジノ管理委員会、金融庁、消費者庁、こども家庭庁、デジタル庁、復興庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省及び防衛省で外局及び附属機関その他の機関並びに地方支分部局」だ。競争参加地域及び都道府県名はリンク先に列挙してある通り、北は北海道から南は沖縄県までの日本全国を網羅する。入札して落札する可能性のある企業に対する<付与数値・等級等>(※2)を見る限り、日本の大手企業しか受注できないような仕組みになっている。ここが肝心だ。官公庁の業務を受注した日本の大手企業が、実際には何をやっているか、ご存じだろうか。この大手企業が隠れ蓑となり、実際のデータ作成業務は、中国大陸にある「小さな中国企業」あるいは「中国人個人」が実施している流れをご紹介する。◆「全省庁統一資格企業」→「日本の下請け子会社」→「中国人孫請け業務」たとえば日本政府の官公庁の中央が、入札する資格を持っている「全省庁統一資格企業」Aに100億円のプロジェクトXを発注したとする。データ作成やウェブサイトの作成や補修をする場合、ふつうならば、企業AがA社内に多くのIT人材を抱えていて忠実にプロジェクトXを実行しなければならないはずだ。ところが、日本には優秀なIT人材が少なく、A社内で実行することが困難と判断する「全省庁統一資格企業」が少なくない。実行できる人材を抱えていれば給料を支払わなければならないし、そのプロジェクトに専念していなければならないので、儲けが大きくはならない。そこで少なからぬ「全省庁統一資格企業」は官公庁から受注した業務を、「日本国内の下請け子会社」に委託する。その際、仮に受注金が100億円のケースでは、良くても数億円、極端な場合は1億円程度で下請けの子会社にやらせるのである。そうすれば企業Aはボロ儲けをし、社員などほとんどいなくても受注金をたっぷりA社で貯めこむことができる。A社から受注した「日本の下請け子会社」は、本来なら100億円ほどかかる業務を数億円か1億円程度でこなさなければならないので、普通に日本人のIT人材を雇用してプロジェクトXの業務を完遂することなどできるはずがない。そこで格安の報酬でも引き受けてくれる中国人IT人材を使用することになる。「日本国内にある下請け子会社」は、自社で中国人元留学生を雇用する場合もあれば、中国にいるIT人材に遠隔で依頼する場合もある。国家全体としてのGDPは2010年から中国が日本を上回り、中国は世界第二の経済大国になっているが、現状ではまだ平均的な給料からすれば、日本の方が中国よりはやや高いので、中国人IT人材は、今のところ静かにじっと耐え、日本の官公庁の個人データを黙々と入力し、日本の官公庁のウェブサイトを黙々と制作補修している。筆者自身は1980年初頭から中国人留学生の世話をし続け、それなりの人脈もまだいくつか残っているので、実際に日本の官公庁の業務を、薄給で日夜遂行している実態を知っている。悪いのは中国人IT人材ではない。悪いのは日本政府であり、この実態を(おそらく)薄々知りながら、徹底究明をしようとしない日本の国会議員たちだ。もちろん、最も悪質なのは受注した「全省庁統一資格企業」だが、その「闇のからくり」を知りながら目をつぶる政府与党国会議員の罪は計り知れなく重い。◆中国にマイナンバーと年金情報が「大量流出」していた!2023年7月26日、ジャーナリストでもあり作家でもある岩瀬達哉氏が、<中国にマイナンバーと年金情報が「大量流出」していた…厚労省が隠蔽し続ける「不祥事」の全容>(※4)という論考を発表しておられる。岩瀬氏は事件の概要を、以下のように書いておられる。《事件の概要》2017年の大幅な税制改正を受け日本年金機構は、厚生年金から所得税などを源泉徴収する「税額計算プログラム」を作成し直す必要があった。約770万人の厚生年金受給者に「扶養親族等申告書」を送付。記載内容に漏れや間違いがないかをチェックしてもらうとともに、あらたにマイナンバーや所得情報を記入し、送り返すよう要請。送り返されてきた「申告書」をデータ入力することでプログラム化をはかることとした。機構はその入力業務を、東京・池袋のデータ処理会社、SAY企画に委託したものの、同社が中国大連市のデータ処理会社に再委託したため、そこから日本の厚生年金受給者の個人情報が、中国のネット上に流出した。(以上、岩瀬氏の論考から引用)岩瀬氏は2023年7月28日にも<【追及スクープ】「500万人のマイナンバーと年収情報」を中国に丸投げした池袋の企業に支払われた「7100万円の報酬」>(※5)を公開しておられ、それらの論考を詳細にご覧になればわかるが、この問題は何度も国会で取り上げられている。約10日間にわたった衆参両院での集中審議を行ったようなので、国会議員で、この事件を知らない者がいるとは思いにくい。しかし岩瀬氏の記述によれば、「国会での虚偽答弁の連発」により、うやむやにされてしまい、まるでなかったかのようなことになっているようだ。岩瀬氏の論考には、以下のようなことが書いてある。――すべてのはじまりは、’17年12月31日の大晦日だった。この日、日本年金機構の「法令等違反通報窓口」に2通のメールが届いた。メールの中身は、「最近中国のデータ入力業界では大騒ぎになっております。『平成30年分 公的年金等の受給者の扶養親族等申告書』の大量の個人情報が中国のネットで入力(ママ。公開のミスか?)されています。普通の人でも自由に見られています。一画面に受給者氏名、生年月日、電話番号、個人番号(マイナンバー)、配偶者氏名、生年月日、個人番号、配偶者の年間所得の見積額等の情報が自由に見られます。誰が担当しているかはわかりませんが、国民の大事な個人情報を流出し、自由に見られても良いものでしょうか? ネットからハードコピーを取りましたが、アップできませんでした。残念です。対策が必要と思います。宜しくお願い致します」というものだった。(岩瀬氏の論考の引用はここまで)これは過去のことでなく、日本の官公庁のデータ入力やウェブサイトの制作補修は、今この瞬間にも中国人IT人材が行っている。◆自民党総裁候補は自覚してほしい冒頭に書いた自民党総裁候補者が14日に日本記者クラブで行った討論会および質疑応答の中で、河野太郎候補をはじめ、少なからぬ候補者はマイナンバーの早期徹底化に関して強調しておられたが、筆者は裏の実態を知っているので、日本で最後の一人になってもマイナンバーの登録をする気はない。候補者の方々は、この現実をご存じなのか否か、ご存じでもスルーしているだけなのか、拙稿をご覧くださった関係記者の方たちには、ぜひ明らかにするように候補者の取材をお願いしたい。高市早苗候補の回答は見事だったが、しかし現役の経済安全保障大臣として、「全省庁統一資格企業」の一部が下請け子会社に業務を丸投げしている状況をご存じだろうか?子会社が「下請け」でしか生きていけない現状こそが「経済安全保障」に最も欠かせない課題で、そこが解決されない限り「孫請け中国人IT人材」の問題は日本から消えない。小林鷹之候補は「日本が世界をリードする国にならなければならない」として、「イノベーション」を例の一つに挙げておられたが、日本の知的水準が、世界レベルで見たときに、どれだけ低いかご存じだろうか。これに関しては一つのコラムでは書ききれないので、せめて6月21日のコラム<Natureの研究ランキング「トップ10」を中国がほぼ独占>(※6)に書いた事実を直視してほしい。1980年初頭から中国人留学生の教育に携わってきた筆者としては、最近の中国人人材の知的レベルの高さと、それに反比例するような日本人人材の低迷に当惑している。その原因がどこにあるのかを究明するために日々苦闘しているが、「孫請け中国人」が現れる原因の一つには、この問題もあることを見逃さないでほしい。言ってはならないことを書いてしまったが、真実を求める姿勢を崩すことはできないので、日本国民のために、あえて吐露した次第だ。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※7)より転載しました。自民党総裁候補者が討論会(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.p-portal.go.jp/pps-web-biz/geps-chotatujoho/resources/app/html/shikaku.html(※3)https://www.p-portal.go.jp/pps-web-biz/geps-chotatujoho/resources/app/pdf/bekki.pdf(※4)https://gendai.media/articles/-/112337(※5)https://gendai.media/articles/-/113087(※6)https://grici.or.jp/5381(※7)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/d3296f703edd924317ee43f8ccf6de55785cb0c4
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2024/09/17 10:25
GRICI
NHK元中国人スタッフ自身が「何を考えていたか」を発信 「次の反乱」に無防備な日本【中国問題グローバル研究所】
*10:28JST NHK元中国人スタッフ自身が「何を考えていたか」を発信 「次の反乱」に無防備な日本【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。5月31日に靖国神社に落書きをした犯人は、「靖国神社を侮辱する動画を流せば人気が出て、再生数が多くなり金儲けができる」というのが動機だった。8月19日未明に同じ場所に落書きした模倣犯は「仲間に,カッコいいだろ!」と自慢したかったからだ。日本を最大限の形で侮辱したのは「英雄的行為だ」という認識を持っている。8月19日午後に、その模倣犯の犯行に関するニュースを報道していたNHKの中国人外部スタッフが原稿にない文言「釣魚島(尖閣諸島)は中国の領土」や「南京大虐殺を忘れるな」などと報道したあと中国に帰国し、中国のSNSの一つウェイボーで自分の思いを数多く発信している。そこには強烈な「反日感情」が滲み出ている。中国で「胡越」という名で特定され絶賛されている彼は、NHKで22年間も働いていた。それでもなお、帰国後の発信から見える「反日感情」は、日本にいる、第二、第三・・・の「胡越」、いや無限に潜んでいるかもしれない「次の胡越」の出現を示唆し、無防備な日本に背筋が寒くなる。◆帰国後のNHK中国人元スタッフの発信が示す「第二の胡越」の出現中国で明らかにされているNHKの中国人元外部スタッフの名前は「胡越」だ。8月31日のコラム<5月の靖国神社落書き犯は2015年から監獄にいた犯罪者 PartII―このままでは日本は犯罪者天国に>(※2)に書いたように、「胡越」は8月26日にウェイボーで「ゼロに戻った、帰ってきた」、「22年間、22秒間」、「全ては22秒間に濃縮した」と発信している。彼のウェイボーにおけるアカウントは「ジュゴtreetalk」(ジュゴは樹語の簡体字で、「雲南から発布」とあるので、帰国した先は雲南のようだ。8月29日になると「胡越」は「ジュゴtreetalk」で(※3)、「多くの網友(ネットにおける友人=応援してくれるネット民)に感謝する。心が温まる」と書き、「現在の日本のメディアは歴史の真実を隠蔽している」などと書いている。8月30日午前11時24分に「胡越」は「ジュゴtreetalk」で、(※4)「日本は上から下まで、隠そうとすればするほどボロが出るような喧騒と狂乱の中にあるが、それは想定内のことだ」と、まず書いている。ここで「胡越」が使った中国語は「欲盖弥彰」という4字熟語で、「悪事は隠そうとすればするほど露呈しやすい(隠すより現るるはなし)」という意味だ。この4字熟語を見たときに、2020年7月にヒューストンの中国総領事館が閉鎖された一件を想起させた。このときも中国の外交部は「做賊心虚、欲善弥彰」(※5)(アメリカは悪事の露見をおそれてビクビクしているんだろうが、それを隠そうとすればするほどボロが出る)という言葉を用いてアメリカを非難した(と、中央テレビ局CCTVが報道した)。「胡越」はジャーナリストなので、中国外交部の発言および中共中央宣伝部が管轄するCCTVの報道をしっかり把握していることだろう。だから敢(あ)えて、その中共中央と同じ言葉を使ったものと思う。ということは、同じ思想的立場にある人間がNHKの外部スタッフとして22年間も仕事をしてきたのかと、ふと、そのことに背筋の寒くなる思いがよぎった。「胡越」はさらに「(日本は)すでに歴史の真相に敵対する歴史修正主義という戻れない道を選んだのだから、公義(道義、正義)を主張する個人の声を圧殺するしかない。私が声を発するのでなかったとしても、声を発する他の人が必ず現れるだろう。事実は非常に簡単なことだ」と書いている。これはすなわち、「第二、第三の自分が必ず現れるだろう」ということを示唆したものであり、日本には「第二、第三の胡越」どころか、数えきれないほどの隊列が潜んでいると覚悟した方がいい。8月30日15時35分、「胡越」は「ジュゴtreetalk」で(※6)、以下のように「自分が原稿にない内容の報道をしたことの正当性」を主張している。###報道の操守(そうしゅ)(節操、規範。信念を固く守って心変わりしないこと)や職業倫理に違反するか否かに関しては、以下の点が参考になる:1) 生放送では、台本から脱線することはよくあることだ。番組によっては、脱線の自由度も自ずと違ってくる。台本から脱線することは、直接的にはニュース報道の操守に違反したことを意味するものではない。2)脱線した報道の内容こそがカギだ。契約書に放送内容に関する取り決めがあるだろうか?一般的な契約書には、公序良俗や社会正義などに違反してはならないという報道のガイドラインが引用される。この「22 秒間」をあなたは「違反」だと思うのだろうか?3)(契約者の)甲と乙の間で内容に異議がある場合、それは契約上の紛争であって、報道操守とはいかなる関係もない。原稿にない言葉を発するという原稿脱線は、報道操守と社会正義を守っている(その範囲内だ)という例は、どこにでもあることだ。###以上が「胡越」の意思表明だ。すなわち「胡越」は、あの「報道テロ」のような事件を、「合法的な行為」として正当化しているのである。NHKの稲葉会長は8月22日、「副会長をトップとする検討体制を設けて、可能な限り原因究明を行う」とした上で、今後「損害賠償請求を行い、刑事告訴を検討する」という趣旨のことを言っているが、そのためには「胡越」本人が日本にいなければならない。日中の間には「犯罪人引渡条約」がないからだ。だというのに、追及を可能にする実働的な措置を何も取っていない。本気で原因究明を行ない、刑事訴訟にまで持って行くつもりなら、たとえば、「胡越」が日本を離れられないように、せめて「事件の究明が終わるまで、パスポートを一時預かる」くらいのことはしていいはずだ。しかし、まるで「スムーズにお帰り頂くための準備をしてあげた」かのように何もしなかったので、「胡越」は8月26日には、いかなる妨害も受けることなくスムーズに帰国してウェイボーで発信を始めたわけだ。◆「第二、第三の胡越」が出て来る危険性を秘めている在日中国人の現状日本の国立大学をはじめ大手の私立大学にも、「中国人留学生学友会」というのがあり、会長は必ず日本にある中国大使館に留学生の活動状況を報告しなければならない。つまり中国大使館の管轄下にあるのだ。日本には企業を経営している中国大陸から来た中国人が大勢おり(出入国管理統計から引用したデータ(※7)によると、2023年7月時点で、500万円の出資で2名以上の雇用を有する経営・管理ビザを持っている中国人の人数は15,986人)、日本の年末年始などにはそういった会社の社員なども集まって盛大なパーティを開く。そこには中国大使館の官員がゲストで参加することが多い。つまり中国政府もしくは中国共産党と親しく結びついているのである。また日本の企業で働いている大勢の中国人(主として元留学生)もいるが、ほとんどは非政治的であるものの、心の中では中国共産党を愛し肯定している者も少なくない。大学等で教育職に就いている中国人の中にも、中国共産党を愛し肯定している者が相当数おり、日本のメディアはむしろ迎合的にゲストとして呼んで、知らない間に中共中央統一戦線部のプロパガンダに与(くみ)しているテレビ局などさえあるくらいだ。NHKやフジテレビの一部番組などがその典型と言っていいだろう。念のため、日本の出入国在留管理庁<令和5年(2023年)末現在における在留外国人数について>(※8)によると、2023年末の「在日中国人総数は821,838人」となり、「留学在留資格の中国人は134,651人」となっている。これら巨大な母数の中で、いつ「第二、第三の胡越」が出現してもおかしくない。「胡越」のウェイボーに書かれているメッセージのうち「反日感情」に基づく発露は論外として、唯一正しいことを言っているのは、まさにこの「第二、第三の自分が出ても不思議ではない」という趣旨の発言だ。しかし日本には、その警戒心が完全に欠落している。そのことに気が付いている人は何人いるのだろうか?いたとすれば、NHKはこのような失敗をしなかったはずだ。今回の「報道テロ」で責められるべきは「胡越」ではなく、警戒心が欠落しているNHKもしくは日本政府であると結論付けることができる。「胡越」を帰国させてしまったNHKと日本政府の行動は、なによりも「警戒心の欠如」を如実に表していることを見逃してはならない。なお、中国における「反日感情がどのようにして植え付けられたのか」に関しては、次回のコラムで考察することとする。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※9)より転載しました。写真:NHK放送センター(Rodrigo Reyes Marin/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://grici.or.jp/5604(※3)https://passport.weibo.com/visitor/visitor?entry=miniblog&a=enter&url=https%3A%2F%2Fweibo.com%2F7942871901%2FOut47dKDd&domain=weibo.com&ua=Mozilla%2F5.0%20%28Windows%20NT%2010.0%3B%20Win64%3B%20x64%29%20AppleWebKit%2F537.36%20%28KHTML%2C%20like%20Gecko%29%20Chrome%2F109.0.0.0%20Safari%2F537.36&_rand=1725326437723&sudaref=(※4)https://weibo.com/7942871901/OuDtopW83(※5)https://m.news.cctv.com/2020/09/25/ARTIzQtqfZRcdvpSC9O4FVhy200925.shtml(※6)https://weibo.com/7942871901/OuF7mt3c6(※7)https://common-s.jp/tousich.html(※8)https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/13_00040.html(※9)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/45ed333947715e15a2834eeaf85fa55a9cda0484
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2024/09/03 10:28
GRICI
ハリス氏願望とは逆行 米「飛行士が地球に帰還できぬ事態に」、中「月面土壌から水生成法を発見」【中国問題グローバル研究所】
*10:25JST ハリス氏願望とは逆行 米「飛行士が地球に帰還できぬ事態に」、中「月面土壌から水生成法を発見」【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。米民主党党大会においてハリス大統領候補は指名受諾演説で「宇宙とAIで米国が中国に勝つ」という理念を断行するという趣旨の約束をしたが、その足元で米国は宇宙開発において信じられないような失敗を続けている。NASAが新型宇宙船の帰還を断念したという。今年6月6日に有人飛行船スターライナーで国際宇宙ステーションに送り込み、8日間ほどで地球に戻るはずだった宇宙飛行士が宇宙に取り残されたままになっている。その状態が来年2月まで続くという。その一方で、人類で初めて月の裏側に着地することに成功した中国の月探査衛星は、これも人類で初めて月の裏側から土壌を持ち帰ることに成功したのだが、このたび、月の表側から持ち帰った土壌を用いて大量の水を生成することに成功した。◆米国――NASA新型宇宙船帰還断念し、飛行士が地球に帰れぬ事態に今年6月6日に、米航空宇宙大手ボーイング社製の新型宇宙船「スターライナー」が2人の宇宙飛行士を、米主導の国際宇宙ステーション(ISS)に送り込んだ。当初は8日間で2人を乗せて地球に帰還することになっていた(※2)。ところがさまざまなトラブルが生じて、スターライナーの有人飛行による予定期間以内の地球帰還が困難になったことが6月10日頃から何度も報道されるようになっていた。そして今年8月24日、NASA(米航空宇宙局)は遂に「スターライナーの有人での地球帰還を断念した」と発表したのである(※3)。推進装置などに不具合が発生したためで、テストパイロットを務める宇宙飛行士2人は2025年2月にスペースXのクルードラゴンで地球に帰還する。ISS内の物資が足りなく立ったため、ロシアに頼んで補給物資を届けてもらう始末だ。<ロシア補給船「プログレス」、ISSに到着-食料や備品など2.8トンを運ぶ(UchuBiz)>(※4)にも、その辺の事情が書かれている。スターライナーはNASAが2010年に「商業乗員輸送開発1」契約として、ボーイング社にこの宇宙船の基礎設計として1800万ドル(26億円)を払い、2011年の「商業乗員輸送開発2」契約では9300万ドル(134億円)払った。たび重なる開発遅延により2024年8月時点で、超過コストが16億ドル(2300億円)を超える赤字プロジェクトとなっている。それでもISSに宇宙飛行士などを運ぶ役割を担う宇宙船が必要だったのは、ISSに飛行士を運ぶ宇宙船は、ロシアのソユーズしかなかったからだ。ロシアに全面的に頼っているのは危険だと米国は判断したのだろう。だから民間会社のボーイング社に有人飛行船の製造を委託していた(のちにはスペースX社のクルードラゴンにも委託している)。だというのに、ボーイング社のスターライナーは膨大な予算を喰っただけでなく、製造完成は遅々として進まず、ようやく完成してISSに飛行士を運んだと思ったら、今度は「飛行士を乗せて帰還することが困難になった」という、あり得ない事態にあるのが、米国の宇宙開発の実態だ。◆中国は月の裏側に着地しただけでなく、回収した月土壌から水生成にまで成功それに比べて中国は月の裏側着地とその土壌サンプルの回収に成功しただけでなく、持ち帰った月の表側の土壌から大量の水を生成することに成功している。「月の裏側に着地できた」というのは前代未聞のことで、そのこと自体、人類として初めての成功だった。なぜなら、月の自転と公転が一致しているため、地球からは月の片面だけしか見えていなくて、それを「表側」と称すれば、反対側の「裏側」には、地球自身に遮られて、地球からは直接信号を送ることができないからだ。かつて旧ソ連も米国も試みたが、すべて失敗に終わっている。ところが2018年5月、中国は通信を中継するための人工衛星「鵲橋(じゃっきょう)号」を打ち上げ、「ラグランジュ点」にピタリと打ち当てることができた。ラグランジュ点というのは二つの天体があった時の力の相互作用のうち、引力が相殺されて平衡を保つ点のことである。中継通信衛星「鵲橋号」を、まず地球と月を結ぶ直線上で、月の公転軌道の外側にあるラグランジュ点で静止させ、それを反射鏡として使ってして月の裏側の定位置のコントロールを地球上から行うという論理である。同年12月8日、嫦娥(じょうが)4号(月面探査機)を打ち上げ、2019年1月3日に月の裏側に軟着陸した。その後2020年に嫦娥5号を月の表側に軟着陸させて月の表側の土壌をサンプルとして回収。2024年6月には嫦娥6号が月の裏側に軟着陸して「月の裏側の土壌」をサンプルとして地球に持ち帰った。米国の科学者がかつて「鵲橋号」を使わせてくれと依頼してきたので、中国は快く承諾したが、NASAには月の裏側に行くだけの能力がなく、また今年6月の「月の裏側の土壌」に関しては、「人類共有のものなので、米国にも供与せよ」と中国に「上から目線」で要求した。中国のネットでは「あれだけ中国を潰そうとしているくせに、中国の成果だけは寄こせって言うんだ――!」という不満の声が上がっていたが、そうこうしている内に中国は8月22日に、<嫦娥5号が回収した土壌から、大量の水を生成する方法に成功した>(※5)。嫦娥5号が回収した土壌ということであるなら、「月の表側」の土壌だということになる。しかし、月の表だろうと裏だろうと、月面基地を建築しようとしている中国にとって、これは大きな発見だし、人類にとっても初めての発見なので、宇宙開発の新たな一歩を踏み出したと言えよう。◆「引退する米国主導のISS」と「稼働し始めた中国の宇宙ステーション」アメリカが主導するISS(国際宇宙ステーション)の寿命は、本来2024年までとされていた。しかしトランプ政権のときにそれを2030年まで延長させたが、このたびNASAは2031年1月にはISSを制御して落下させることを決定した(※6)。中国は早くから、何としても中国もISSに参加させてくれと米国に懇願してきたが、米国はそれをかたくなに拒み続けた。そこで中国は、中国独自の宇宙ステーションを建設しようと決意し、遂に2022年10月に中国独自の宇宙ステーション「天宮」の稼働に入ったのである。2022年11月1日のコラム<決戦場は宇宙に移った 中国宇宙ステーション正式稼働>(※7)にも書いたが、中国宇宙ステーションには「ロシア、インド、ドイツ、ポーランド、ベルギー、イタリア、フランス、オランダ・・・」など数多くの国がすでに国際協力プロジェクトを立ち上げている。また同年5月にはBRICS諸国が「BRICS宇宙協力連合委員会」を発足させた。◆ハリス演説とは逆行している宇宙の現実8月25日のコラム<ハリス指名受諾演説、対中政策なく理念だけ トランプ氏猛口撃>(※8)に書いたように、米民主党党大会においてハリス大統領候補は指名受諾演説で「宇宙とAIで米国が世界を未来に導き、米国が中国に勝つ」という趣旨のことを誓っている。ハリス副大統領は現在、米政府の宇宙政策を統括する「国家宇宙会議」の議長を務めている。トランプ政権のときは当時のペンス副大統領が議長だった。このたびNASAが、スターライナーの有人飛行による地球帰還を断念したことは、ハリス氏にとっては大きな痛手で、大統領選挙にもマイナスの影響を与えるし、共和党の大統領候補であるトランプ氏にとっては、格好の攻撃材料となるだろう。そもそもハリス氏は「国家宇宙会議」の議長でもあるのだから、スターライナーの大失態を知らないはずがないし(知っていなければならないし)、知っているとすれば、指名受諾演説で、アメリカが中国を打ち負かす分野として「宇宙」などを持ってこなければ良かったのにと思う。半導体を例に挙げるならまだしも、自分自身が議長をしている「国家宇宙会議」管轄下のNASAの大失敗を掌握していなかったという可能性もあり、好ましいことではない。前述したように、スターライナーの肩代わりをするのはイーロン・マスク氏がCEOを務めるスペースXだ。2031年のISS落下に関しても、落下処理を行なう宇宙船の製造委託先にスペースXが選ばれている。そのイーロン・マスク氏をトランプ氏は味方につけて、11月の大統領選で当選したら、起用すると表明している。8月22日のコラム<トランプ氏「当選すればマスク氏起用の可能性」と言うが、マスク氏は習近平と仲良し 対中政策はどうなる?>(※9)に書いたが、そのイーロン・マスク氏は親中であるだけでなく、習近平とは仲良しだ。なまじハリス氏が指名受諾演説で「宇宙において勝つのは中国ではなくアメリカだ」という趣旨のことを「理念的に(願望的に?)」言ったために、宇宙空間における実態が浮き彫りになってしまった。彼女の演説は明るくエネルギッシュで、心に訴えることには成功したように見えるが、論理を詰めていくと痛手になるのかもしれない。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※10)より転載しました。写真: 不具合を続けるボーイング社スターライナー(提供:Bill Ingalls/NASA/ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.space.com/boeing-starliner-first-astronaut-mission-end-june-18(※3)https://www.nasa.gov/news-release/nasa-decides-to-bring-starliner-spacecraft-back-to-earth-without-crew/(※4)https://news.yahoo.co.jp/articles/85a004943bccb83c4e63b1515d2b65ad2c0862bd(※5)https://news.cctv.com/2024/08/22/ARTIDfu2QC7JgZB43Vd1acwz240822.shtml(※6)https://www.nasa.gov/wp-content/uploads/2015/01/2022_iss_transition_report-final_tagged.pdf?emrc=4c4497(※7)https://grici.or.jp/3746(※8)https://grici.or.jp/5580(※9)https://grici.or.jp/5567(※10)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/5b5c89cd4becc25887fadae935709e5d761eba88
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2024/08/27 10:25
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トランプ氏、取材で台湾有事への回答を回避し「台湾は米国に防衛費を支払うべき」と主張【中国問題グローバル研究所】
*15:59JST トランプ氏、取材で台湾有事への回答を回避し「台湾は米国に防衛費を支払うべき」と主張【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。7月16日発売の雑誌「Bloomberg Business Week」(※2)は、トランプ氏を独占取材した記事を掲載。取材でトランプ氏は「中国大陸に対抗する台湾を防衛するか?」という問いには答えず、「台湾は米国から半導体を100%奪っていった」とかわし、「台湾はわれわれに防衛費用を支払うべきだ」と主張した。中国はこのトランプ発言を「みかじめ料を要求された島(台湾)は大騒動」という見出しで、主として台湾の情況を中心に報道している。◆ブルームバーグの独占取材記事まず、7月16日発売の雑誌「Bloomberg Business Week」が、どのような記事を掲載したのか、台湾防衛関係の部分だけを抜き出してご紹介したい。●トランプ氏の外交政策に対する取引的な見方と、あらゆるディール(取引)を「勝ち取る」という願望は、世界中に影響を及ぼす可能性があり、米国との同盟関係を断絶させることさえある。●「アジアの民主主義(台湾)を分離独立の地域とみなす中国から台湾を守るという米国の取り組み」について尋ねられたトランプ氏は、「台湾に対する最近の(米国内)超党派の支持にもかかわらず、中国の攻撃に立ち向かうことについては、せいぜいよく言って、生ぬるい」と表明した。(筆者注:米国は台湾を守るか否かに関しては回答を回避した。)●彼(トランプ氏)の懐疑的な姿勢の一部は、経済的な憤りに根ざしている。「台湾はわれわれから半導体事業を奪った」と彼は言う。「つまり、われわれはどれだけ愚かなのか? 彼らはわれわれの半導体事業をすべて奪った。彼らは途方もない巨額の富を手にしたのだ」と彼は続けた。彼が台湾に望んでいるのは、米国に防衛費(保護料)を支払うことだ。「われわれは保険契約と何ら変わらないと思うんだよ。なぜだ? なぜ、われわれはこんなことをしているんだい?」と彼は尋ねた。(筆者注:最後の「こんなこと」は英語では「this」だけだし、一瞬の会話の中で出てきた言葉なので、受け取る側が解釈するしかないが、「保険契約なら契約料を毎月支払うはずだが、それを受け取ってないのに、なぜ台湾を守らなければならいんだ?」という意味を示唆していると考えられる。)●彼(トランプ氏)が懐疑的になるもう一つの要因は、地球の反対側にある小さな島を守ることの実際的な難しさだ。「台湾は9,500マイルも離れているんだよ。それに比べて、中国からは68マイルしか離れていない」と彼は言う。台湾への関与を放棄することは、米国の外交政策の劇的な転換をもたらすだろう。それはウクライナへの支援を停止するのと同じくらい重大なことだ。しかし、どうやらトランプは、これらの関係を根本的に変える代替案の準備ができているようにも見える。(筆者注:この最後の文章は、おそらく「守ってほしければ金を払え」という言葉を指しているものと推測される。)ブルームバーグの独占取材記事の台湾に関する部分は概ね以上だが、別途、台湾問題に焦点を絞った討論番組<Watch Trump Suggests Taiwan Should Pay US for Protection - Bloomberg(トランプが「台湾は防衛費を支払うべきだ」と言ったことをウォッチしよう)>(※3)も報道されている。冒頭に掲げたタイトル画像は、この番組からのスクリーンショットである。トランプ氏の主張には、一貫した外交観が滲み出ている。すなわち、NATOに関してもトランプ氏は「その国の軍事費負担が不十分ならば米国はその国を守らず、ロシアに『好きにするよう促す』」(※4)とさえ言っている 。トランプ政権時代には日本や韓国に対しても、駐留米軍に対する経費をもっと支払わないと米軍を撤退させるようなことをほのめかしたことがある。台湾に対しても、「米軍に守ってもらおうと思うなら、米国に保護料を支払え」というわけだ。この姿勢であるなら、中国は喜ぶだろう。◆中国での報道7月18日の中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版「環球時報」は<みかじめ料をトランプに要求され、島内(台湾)は大騒動>(※5)という見出しの、かなり長い記事を発表した。ほとんどは、ブルームバーグの独占取材記事の解説と、台湾がどのように報じたかに関する内容が多いが、いくつかの要点をピックアップしてお示しする。台湾報道に関しては当然、中国大陸にとって都合のいいものを拾い上げているとは思うが、台湾で報道されていること自体は事実だし、中国がどのように受け止めているかも見えてくるので、考察する価値はあるだろう。●台湾の世論は、民進党当局の徹底した「親米・反中」政策が今後の台湾にとって厳しい課題となると一般に考えている。●トランプ氏は「米国に保護してほしいのなら、台湾はみかじめ料を支払うべきだ」とストレートに言った。トランプ氏の「台湾防衛」に対する態度が冷淡であることのもう一つの理由は、何千マイルも離れた小さな島を守るのは非常に難しいと考えていることだ。●トランプ氏は、今年4月の、タイム誌とのインタビューでも同様の見解を表明した。彼は、米国に依存する欧州とアジアの同盟国が米国に資金を支払うことを望んでいる。●タイム誌は「中国が台湾を攻撃した場合、米国は台湾を守るべきか」と質問し、トランプ氏は「この質問は何度も受けているが、(私の切り札が明らかになるので)答えたくない」と明言を避けた。●台湾にみかじめ料の支払いを求めるトランプ氏の発言に対し、民進党「立法院」議員団の呉思耀幹事長は17日、米国は「台湾の防衛に協力している」と述べ、台湾の卓栄泰行政院長は、「台湾は台湾海峡とインド太平洋地域にわたる共通の責任に対して、より多くの費用を支払う用意がある」と述べた。これに対して台湾の多くのネット民は不満を表明し、台湾のソーシャルプラットフォームPTTでは「お前が払えよ。私に払わせるな。みんなを水の中に引きずり込むな」と民進党当局を罵倒した。また、少なからぬ人が「我々が望んでいるの海峡の平和共存だ」、「みかじめ料は『台湾独立』を叫んでいる人から徴収せよ!」と呼びかけた。●国民党の立法委員である王鴻薇氏は、「台湾の米軍からの兵器購入額が最高値を更新し続けている今、米国の武器売却やみかじめ料に対処するために、将来さらに多くの資金を提供する必要があるのだろうか?」問うた。●元台湾空軍副司令官の張延廷氏は、「保護費は天文学的な金額になる」と述べ、「台湾は全体的な環境を理解しなければならず、米国の操り人形になってはならない」と語った。●元立法委員の蔡正元氏は17日、台湾の一部の愚か者は台湾と米国は「価値ある同盟」だとよく言っているが、「台湾は米国の単なる属国に過ぎない」とした上で、「台湾と米国の間には友好関係はない。すべては金銭的な関係にすぎない」と述べた。●米国在住の学者、翁履中氏は、「台湾がトランプを満足させるために、もっとみかじめ料を支払っても構わないが、いくら払っても彼を満足させることはできないのではないか」と心配している●国民党の立法委員である馬文君氏は、「唯一確かなことは、トランプは台湾の安全保障上の利益を考慮するのではなく、米国の利益を最優先しているということだけだが、民進党はそれを明確に理解することができない」とした上で、「鍵となるのは両岸関係だ。両岸関係がうまく処理されれば、台湾は他国に支配される必要はない」と述べた。●台湾国立政治大学国際関係センターの研究者厳振生氏は、「台湾海峡の問題解決を米国に依存することは、台湾にとって多大な損失をもたらし、効果的ではない」と述べた。●台湾聯合新聞網は17日、「最近の典型的なケースは、台湾は古い第4世代戦闘機F-16Vを購入したが、これは他国が第5世代ステルス戦闘機F-35を購入するよりも高価だったということである」と報道している。また「トランプ氏もバンス氏も現実主義者であり、(中国)大陸の軍事発展により、米国は台湾への派兵は極めて採算の合わない取引であり、米国の国益に合致しないとの認識を強めている」と書いている。(以上、「環球網」より)台湾では国民党の趙少康氏は18日に「頼清徳は今のところ押し黙っているが、このまま米国に跪(ひざまず)き続けるのだろうか?」と投稿し(※6)、民衆党の柯文哲主席は「保護費だって?それって、米国が台湾に支払うのか、それとも台湾が米国に支払うのか、どっちなんだい?だって、台湾が米国のために第一列島線を守ってあげてるんだから、米国が台湾に支払うべきなのでは?」(※7)という趣旨のことを書いている。なお、トランプ氏の台湾防衛に関する回答と発言は昨年から何度もくり返されているが、これまでの発言に関しては拙著『嗤う習近平の白い牙』の【第一章 TikTokと米大統領選と台湾有事】の【二 もしトランプが大統領に当選したら台湾有事はどうなるか?】で詳細に考察した。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※8)より転載しました。写真: ブルームバーグTV番組からのスクリーンショットに筆者が和訳加筆(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.bloomberg.com/features/2024-trump-interview/(※3)https://www.bloomberg.com/news/videos/2024-07-16/trump-suggests-taiwan-should-pay-us-for-protection-video(※4)https://www.bbc.com/japanese/articles/cevrjpgn418o(※5)https://taiwan.huanqiu.com/article/4IeY497cZfM(※6)https://tw.news.yahoo.com/%E5%B7%9D%E6%99%AE%E5%97%86-%E4%BA%A4%E4%BF%9D%E8%AD%B7%E8%B2%BB-%E6%90%B6%E6%99%B6%E7%89%87%E7%94%9F%E6%84%8F-%E8%B6%99%E5%B0%91%E5%BA%B7-%E5%8F%B0%E7%81%A3%E8%A2%AB%E7%95%B6%E8%82%A5%E7%BE%8A-073741087.html?guccounter=1(※7)https://tw.news.yahoo.com/%E5%B7%9D%E6%99%AE%E8%A6%81%E5%8F%B0%E7%81%A3-%E4%BA%A4%E4%BF%9D%E8%AD%B7%E8%B2%BB-%E8%B3%B4%E6%B8%85%E5%BE%B7%E6%B2%89%E9%BB%98%E4%BB%A5%E5%B0%8D-%E6%9F%AF%E6%96%87%E5%93%B2%E9%9C%B8%E6%B0%A3%E5%8F%8D%E5%97%86-%E5%B9%AB%E4%BB%96%E6%93%8B%E9%82%84%E8%A6%81%E4%BB%98%E9%8C%A2-065547831.html(※8)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/ef4b86f8b564211b82b54d1f5d2e9a97b14de7e7
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2024/07/19 15:59
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