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ゼレンスキー大統領はなぜ対中批難を引っ込めたのか? ウクライナ戦争和平案を巡り(2)【中国問題グローバル研究所】
配信日時:2024/06/17 10:55
配信元:FISCO
*10:55JST ゼレンスキー大統領はなぜ対中批難を引っ込めたのか? ウクライナ戦争和平案を巡り(2)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「ゼレンスキー大統領はなぜ対中批難を引っ込めたのか? ウクライナ戦争和平案を巡り(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。
◆中国&ブラジル和平案の「6項目コンセンサス」とは?
では、ウクライナ戦争に対する中国とブラジルが共同で提唱する和平案とはどういう内容なのだろうか?
今年5月23日、王毅・中共中央政治局委員兼外交部長は、北京でブラジルのアモリン大統領首席補佐官と会談し、「ウクライナ危機の政治的解決のための、中国&ブラジル6項目コンセンサス」に合意した(※2)。
以下に、その「6項目コンセンサス」を記す。
1.すべての関係者に対し、緊張緩和の「3つの原則」、すなわち、「戦場の拡大禁止、戦闘激化の禁止、戦争を煽ることを禁止」を遵守するよう呼びかける。
2.対話と交渉がウクライナ危機から抜け出す唯一の実行可能な方法であると信じる。 当事者は、直接対話を再開するための条件を整備し、全面的な停戦に達するまで緊張緩和を促進すべきである。中国とブラジルは、「ロシアとウクライナ双方が認め、各方面が平等に参加し、すべての和平案について公正な議論を行えるような」国際平和会議を適切な時期に開催することを支持する。
3.より大規模な人道危機の発生を未然に防ぐため、関連分野における人道支援を強化すべきである。 民間人や民間施設への攻撃は避けるべきであり、女性、子供、戦争捕虜などの民間人は保護されるべきである。 紛争当事者間の捕虜交換を支援する。
4.大量破壊兵器、特に核兵器、化学兵器、生物兵器の使用に反対する。 核拡散を防止し、核危機を回避するために可能な限りの努力をする。
5.原子力発電所やその他の平和的な原子力施設への攻撃に反対する。 すべての当事者は、原子力安全条約などの国際法を遵守し、人為的な原子力事故を断固として回避すべきである。
6.世界の分断と閉鎖的な政治的または経済的ブロックの形成に反対する。世界の産業チェーンとサプライチェーンの安定を維持するために、エネルギー、通貨、金融、貿易、食料安全保障、石油・ガスパイプライン、光海底ケーブル、電力・エネルギー施設、光ファイバーネットワークなどの重要インフラの安全保障に関する国際協力を強化することを求める。
中国とブラジル双方は、上記のコンセンサスに対する国際社会の支持と参加を歓迎し、事態の緊張緩和と和平交渉の促進に共同で建設的な役割を果たす。
(以上が中国の外交部ウェブサイトに載っている説明だ。)
ここで肝心なのは、「2」にある「ロシアとウクライナ双方が認める」という言葉で、中国&ブラジル案は、「排除の論理」に立っていないことが明らかである。当事者双方が参加し、他のいかなる国や国際組織も平等に自由に参加することを謳っている。
また、「4」にあるように、「核兵器の使用を禁じる」という意味では、ロシアに一定の圧力を与えることになる。
停戦交渉を行なう時に、戦争をしている当事国を招かないで、片方の国だけが相手国を排除した形で仲間を集めるのでは、停戦に結びつくはずがない。
おまけにゼレンスキー和平案はロシア軍が2014年以前までの状態に戻るまで一人残らずウクライナから撤退するというのが絶対条件で、ウクライナの完全勝利以外の結果は絶対に受け付けない。
しかし欧州外交問題評議会(ECFR)が今年1月に行った世論調査(※3)では、「わずか10%の欧州人しかウクライナの勝利を信じている人はいない」ことがわかった。この状況でゼレンスキー案が受け入れられる可能性は極めて低いだろう。
もちろんロシアがウクライナに軍事侵攻したのが悪い。
しかし、そこに追い込んだバイデン政権(副大統領時代からのバイデン個人の動き)を考えると、ロシアだけを一方的に非難することもできない。
バイデンは2013年末にウクライナでNED(全米民主主義基金)をフル活用してマイダン革命を仕掛け、ウクライナの親露政権を転覆させ、親米傀儡政権をウクライナに樹立させた。
もし仮に日本に激しい反中政権があり、中国共産党が日本で暗躍して日本の反中政権を転覆させ、日本に親中政権を樹立させるようなことがあったとしたら、日本は許すだろうか?あり得ない他国干渉であり、国際秩序を激しく乱すものとして全力で厳しく抗議するだろう。
その同じことをアメリカがウクライナでやっているのに、なぜそこはスルーするのか。アメリカなら何をやっても許されるのか。
アメリカの都合で(NEDの見えない糸の影響下で)動く日本のメディアは、真相から目をそらさせ、結局のところ日本を戦争へと導いている。そのことを、より多くの日本人が、上記の矛盾からも洞察してくださることを祈らずにはいられない。
この論考はYahoo(※4)から転載しました。
ウクライナのゼレンスキー大統領 写真: ロイター/アフロ
(※1)https://grici.or.jp/
(※2)https://www.mfa.gov.cn/wjdt_674879/wjbxw_674885/202405/t20240523_11310686.shtml
(※3)https://ecfr.eu/publication/wars-and-elections-how-european-leaders-can-maintain-public-support-for-ukraine/
(※4)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/579e120ba0f51cf3384ad9463fbddb948fa72557
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◆中国&ブラジル和平案の「6項目コンセンサス」とは?
では、ウクライナ戦争に対する中国とブラジルが共同で提唱する和平案とはどういう内容なのだろうか?
今年5月23日、王毅・中共中央政治局委員兼外交部長は、北京でブラジルのアモリン大統領首席補佐官と会談し、「ウクライナ危機の政治的解決のための、中国&ブラジル6項目コンセンサス」に合意した(※2)。
以下に、その「6項目コンセンサス」を記す。
1.すべての関係者に対し、緊張緩和の「3つの原則」、すなわち、「戦場の拡大禁止、戦闘激化の禁止、戦争を煽ることを禁止」を遵守するよう呼びかける。
2.対話と交渉がウクライナ危機から抜け出す唯一の実行可能な方法であると信じる。 当事者は、直接対話を再開するための条件を整備し、全面的な停戦に達するまで緊張緩和を促進すべきである。中国とブラジルは、「ロシアとウクライナ双方が認め、各方面が平等に参加し、すべての和平案について公正な議論を行えるような」国際平和会議を適切な時期に開催することを支持する。
3.より大規模な人道危機の発生を未然に防ぐため、関連分野における人道支援を強化すべきである。 民間人や民間施設への攻撃は避けるべきであり、女性、子供、戦争捕虜などの民間人は保護されるべきである。 紛争当事者間の捕虜交換を支援する。
4.大量破壊兵器、特に核兵器、化学兵器、生物兵器の使用に反対する。 核拡散を防止し、核危機を回避するために可能な限りの努力をする。
5.原子力発電所やその他の平和的な原子力施設への攻撃に反対する。 すべての当事者は、原子力安全条約などの国際法を遵守し、人為的な原子力事故を断固として回避すべきである。
6.世界の分断と閉鎖的な政治的または経済的ブロックの形成に反対する。世界の産業チェーンとサプライチェーンの安定を維持するために、エネルギー、通貨、金融、貿易、食料安全保障、石油・ガスパイプライン、光海底ケーブル、電力・エネルギー施設、光ファイバーネットワークなどの重要インフラの安全保障に関する国際協力を強化することを求める。
中国とブラジル双方は、上記のコンセンサスに対する国際社会の支持と参加を歓迎し、事態の緊張緩和と和平交渉の促進に共同で建設的な役割を果たす。
(以上が中国の外交部ウェブサイトに載っている説明だ。)
ここで肝心なのは、「2」にある「ロシアとウクライナ双方が認める」という言葉で、中国&ブラジル案は、「排除の論理」に立っていないことが明らかである。当事者双方が参加し、他のいかなる国や国際組織も平等に自由に参加することを謳っている。
また、「4」にあるように、「核兵器の使用を禁じる」という意味では、ロシアに一定の圧力を与えることになる。
停戦交渉を行なう時に、戦争をしている当事国を招かないで、片方の国だけが相手国を排除した形で仲間を集めるのでは、停戦に結びつくはずがない。
おまけにゼレンスキー和平案はロシア軍が2014年以前までの状態に戻るまで一人残らずウクライナから撤退するというのが絶対条件で、ウクライナの完全勝利以外の結果は絶対に受け付けない。
しかし欧州外交問題評議会(ECFR)が今年1月に行った世論調査(※3)では、「わずか10%の欧州人しかウクライナの勝利を信じている人はいない」ことがわかった。この状況でゼレンスキー案が受け入れられる可能性は極めて低いだろう。
もちろんロシアがウクライナに軍事侵攻したのが悪い。
しかし、そこに追い込んだバイデン政権(副大統領時代からのバイデン個人の動き)を考えると、ロシアだけを一方的に非難することもできない。
バイデンは2013年末にウクライナでNED(全米民主主義基金)をフル活用してマイダン革命を仕掛け、ウクライナの親露政権を転覆させ、親米傀儡政権をウクライナに樹立させた。
もし仮に日本に激しい反中政権があり、中国共産党が日本で暗躍して日本の反中政権を転覆させ、日本に親中政権を樹立させるようなことがあったとしたら、日本は許すだろうか?あり得ない他国干渉であり、国際秩序を激しく乱すものとして全力で厳しく抗議するだろう。
その同じことをアメリカがウクライナでやっているのに、なぜそこはスルーするのか。アメリカなら何をやっても許されるのか。
アメリカの都合で(NEDの見えない糸の影響下で)動く日本のメディアは、真相から目をそらさせ、結局のところ日本を戦争へと導いている。そのことを、より多くの日本人が、上記の矛盾からも洞察してくださることを祈らずにはいられない。
この論考はYahoo(※4)から転載しました。
ウクライナのゼレンスキー大統領 写真: ロイター/アフロ
(※1)https://grici.or.jp/
(※2)https://www.mfa.gov.cn/wjdt_674879/wjbxw_674885/202405/t20240523_11310686.shtml
(※3)https://ecfr.eu/publication/wars-and-elections-how-european-leaders-can-maintain-public-support-for-ukraine/
(※4)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/579e120ba0f51cf3384ad9463fbddb948fa72557
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中国半導体最前線PartIV 半導体微細化「ムーアの法則」破綻の先を狙う中国【中国問題グローバル研究所】
*16:23JST 中国半導体最前線PartIV 半導体微細化「ムーアの法則」破綻の先を狙う中国【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。半導体の微細化に関して「半導体の性能が18ヵ月で2倍になる」という経験則「ムーアの法則」は実際上かなり前から破綻しているが、人々は「3nm、2nm…」と競い合っている。ならば、「3nm、2nm…」の実態は何かと言えば、それは商品番号にすぎず、実際TSMCでも、たとえば「TSMC 3nm」チップとは言わずに、TSMC「3N」(※2)と、「こっそりと商品番号に置き換えている」ことに気が付かなければならない。その意味では製造者側は、実は良心的に「ムーアの法則」の破綻を認識していると言っていいだろう。多くの研究者は、物理学的には「3nm」辺りから事実上それ以上の微細化はできないとする「ムーアの法則」限界理論を10年以上前から展開はしている。しかしビジネス界はわかっていながらも、互いに「騙し騙され」、「3nm、2nm…」を唱えてきたのである。投資家に気付かれるのを避けるためだろう。いま現在は、既に「ムーアの論理」は破綻していると見る専門家は多く、中国もその中の一例だ。破綻すればどの関連企業も実際にはそれ以上先へは進めないので、「どん詰まり」のところで足踏みをすることになるだろう。アメリカが全方位的に中国の半導体技術を潰そうとしても、西側が限界領域で足踏みしている間に中国もその限界領域にまで達し、その頃にはAIを含めた新産業において中国は一気にアメリカを追い抜くという「心づもり」で動いていることを、今回は考察したい。◆「ムーアの法則」はなぜ破綻するのか?「ムーアの法則」に関してはご存じの方が多いとは思うが、念のために書くと以下のような経緯で生まれたものである。1965年、のちに(1968年に)アンディ・グローブ氏とともにインテル社を創業したゴードン・ムーア氏が大規模な集積回路(Integrated Circuit =IC、以後IC)の製造・生産に関して、IC当たりの部品数あるいは性能が毎年2倍になると予測し、その成長率があと10年は続くと予測したことから始まった。10年後の1975年になると次の10年を見据えて「2年ごとに2倍になる」に修正し、さらに「1.5年ごとに2倍」とも予測して、それが維持されたことから「ムーアの法則」と呼ばれるようになった。しかし、ICの微細化が進むにつれ、半導体チップの性能も驚異的に高まってはいったが、それにつれて「ムーアの法則」の破綻に関して数多くの論考が発表されるようになった。身近なところで言うならば、たとえば、早くも2014年05月21日にはITmediaから<ムーアの法則の終焉──コンピュータに残された進化の道は?>(※3)という論考が発表され、2016年3月4日には、当時の東京工業大学の岩井洋教授が<半導体微細化ロードマップ終焉とその後の世界>(※4)という、実にすばらしいプレゼンテーションをPDFにして公開しておられる。東京工業大学(現在の東京科学大学)に連絡して岩井(元)教授に確認を願いしたところ、岩井(元)教授自身は、このようなPDFをネット公開した覚えはなく、公的な論文はH. Iwai, “End of the downsizing and world after that,” 2016 46th European Solid-State Device Research Conference (ESSDERC), Lausanne, Switzerland, 2016, pp.121-126, doi: 10.1109/ESSDERC.2016.7599603.にあるとのことだった。それにアクセスするのは困難だ。これ以外にも非常に多くの論考や分析がネットに公開されているので、それ等から総合的に判断すると、どうやら物理学的に見て約「3nm」が限界値であるらしい。それ以上線幅を小さくすると、量子力学におけるトンネル効果が出現してきて、トンネル電流が流れてしまい、発熱して不安定状態になり破壊するリスクが激増するという。量子力学はかつてこよなく愛したエリアなので、ここで量子力学の話が出てくると嬉しくてならない。中国人留学生を助けたいという気持ちが80年代初期に湧き出てこなければ物理を捨てることもなかったのにと、恨めしい気持ちも覚える。その量子力学に戻って少しだけ説明させていただくなら、電子を粒子と考えたときに、それを隔てる絶縁物であるはずの「壁」(エネルギー・ポテンシャル障壁)があまりに薄いと(相対的にエネルギーレベルが低いと)、「壁」は絶縁物ではなくなり、電子は量子効果としての「波動」になって壁を通り抜け「トンネル電流(電子流)」を惹起してしまう。これを量子力学的に計算すると「トンネル長」は約「3nm」が限界であるという結果が出てくるようだ。したがって「3nm」以下の微細化は、物理学的に「安定的状態では」作れないはずなのである。これを「ムーアの法則」の破綻と称する。現に、<半導体、3nm・2nmという数字のウソ>(※5)というYahoo!エキスパートの、非常に簡潔な情報もあるので、ご一読なさると納得感が深まるかもしれない。◆中国は「ムーアの法則」の破綻を認識し、その先を睨んでいる12月7日のコラム<中国半導体最前線PartI アメリカが対中制裁を強化する中、中国半導体輸出額は今年20.6兆円を突破>(※6)に書いたように、今年12月2日のバイデン大統領による対中制裁強化(エンティティ・リスト大量追加)が発表されると、12月5日に「人民日報」は<米国がチップ制裁を強化している間に、中国の半導体輸出は1兆元(20.6兆円)を突破>(※7)を発表した。そこには専門家の意見として、以下のような中国の思惑が書いてある。●2017年、特に2019年以降、アメリカは中国の先端チップに対する制裁をくり返し強化してきたが、2023年10月以降、その対象にある変化が見られるようになった。それはハイテク産業の中でもAIに集中し始めたということだ。●このシフトは、アメリカも実は「ムーアの法則」の破綻を意識し始めていることを示唆する。●最近の半導体チップ製造は2nmまたは1nm未満のプロセスに入ったとみなされているが、実はチップの素子サイズは既に物理的限界に達している。この微細化によるチップ業界のアップグレードが終点の近辺で立ち止まっている間に、中国は進歩を遂げ、終点に追いつくことになる。その間中国は成長する。●アメリカがどんなに中国を潰そうとしても、中国はアメリカからの激しい制裁によりサプライチェーンを自国内で形成することに成功しつつあるので、アメリカは中国の成長に手出しをすることができない状況に追い込まれつつある。●微細化の王国を築いた「ムーアの法則」はAI半導体の分野には適用できず、AIエリアには「アーキテクチャ、接続帯域幅、アルゴリズムの最適化…」などさまざまな新たなパラメータを取り入れた未来予測が必要となってくる。(概ね以上)つまり中国は「ムーアの法則」破綻を認識し、その先を睨んでいることになる。アメリカの半導体工業会(Semiconductor Industry Association) (※8)は、2024年版米国半導体産業白書を発表した。アメリカの半導体における圧倒的優位は変わらないものの、2023 年の自動車市場における半導体の需要は 15% 増加したのに対し、スマホなどの通信機器市場は 1.8%減少し、パソコン市場は 7.1% 減少している。すなわち現在、半導体市場の成長の勢いは、自動車および工業セクターに傾いることを意味している。自動車用チップや工業用チップは、携帯性に対する要件が遥かに小さく、高度なプロセスに関しては、現在5nmから7nmに焦点を当てているのに対し、スマホ、パソコンなどの業界は、それより遥かに難しい2nmから3nmのプロセスに焦点を当てている。後者が「ムーアの法則」破綻の危機にある中、前者における中国の発展は著しく、アメリカは中国に大きな後れを取っている。成熟したプロセスに関しては、それが中国の得意とするところだ。したがって「アメリカは、中国半導体の直線的な発展を体系的に抑制することはできない」と、人民日報は結論付け、「中国はラスト・マイルに向けて取り組み続けることができる」としている。◆Google元CEOが中国のAIエリアの成長を肯定アメリカの戦略コミュニティは、「中国のチップ企業が抑圧の中で成長し、米国企業は競争力を失っている」という現象に注目している。これに関しては非常に多くの情報があるので特定しにくいが、あえて言うならこのような情報(※9)を挙げることができる。中国はEVなど製造業が強いことから、AI効果に関する実体経済における膨大な実験を実行することが可能なので、AIの実用化という面で優れている。また生成AIには莫大な電気量を必要とすることから、12月11日のコラム<中国半導体最前線PartIII AI半導体GPUで急成長した「中国版NVIDIA」ムーア・スレッド>(※10)の図表に示したように、AI開発では電気量において将来的には中国に優位性があると言えるのかもしれない。その証拠に最近、Former Google CEO Eric Schmidt Says U.S. Trails China in AI Development | News | The Harvard Crimson(※11)にあるように、Googleのエリック・シュミット元CEOが、最近、中国の方がAIの開発が進んでいるという趣旨の観点を発信している。同氏は、ハーバード政治研究所のフォーラムで、「より強力なAI開発競争でアメリカは中国に遅れをとっている」と述べたとのこと。ハーバード・ケネディスクールの元学長、グラハム・T・アリソン氏(1962年卒)が司会を務めたこのイベントでのシュミット氏の発言は、昨年10月のIOPで「アメリカがAI開発で中国をリードしている」と述べた立場から逆転している。講演の中でシュミット氏は、「アメリカのような優秀なエンジニア、強力なチップ、大規模なデータソースへのアクセスに加えて、中国はAIモデルのトレーニングに必要な電力をより多く持つことでも恩恵を受けている」と述べている。これは筆者の「中国半導体PartIII」での独自分析が正しかったことを裏付けてくれて、ホッとしている。ただ、日本としてはホッとしているわけにはいかないだろう。少なからぬ日本人にとっては、見たくない不愉快な現実だろうとは思うが、この「中国半導体最前線シリーズ」で書いたことは、日本の真の発展あるいは政策の方向性にとっては、無視できない「現実」であることを認識していただきたいと切望する。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※12)より転載しました。米アマゾンのラボAIチップ開発など研究(写真:ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.tsmc.com/english/dedicatedFoundry/technology/platform_HPC_tech_advancedTech(※3)https://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1405/21/news012.html(※4)https://semicon.jeita.or.jp/STRJ/STRJ/2015/2015_08_Tokubetsu_v2.pdf(※5)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/20b6ff18f1af61aecf56b53c1327ff989cb45bf6(※6)https://grici.or.jp/5891(※7)http://politics.people.com.cn/n1/2024/1205/c1001-40376144.html(※8)https://www.semiconductors.org/(※9)https://www.investors.com/news/technology/semiconductor-stocks-gear-makers-getting-china-boost/(※10)https://grici.or.jp/5904(※11)https://www.thecrimson.com/article/2024/11/19/eric-schmidt-china-ai-iop-forum/(※12)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/3445ed89b794463c97c011a2b1db2b52cb5fbde4
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2024/12/13 16:23
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帰化中国人投資家が日本を乗っ取る?(2)【【中国問題グローバル研究所】
*16:21JST 帰化中国人投資家が日本を乗っ取る?(2)【【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「帰化中国人投資家が日本を乗っ取る?(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。◆日本の株式制度における「企業防衛」の危うさそれに比べて日本企業の外資投入あるいは株主提案権に関する規制は世界一緩く、東京証券取引所及び大阪取引所の売買代金の約60%以上は海外投資家によって占められており(※2)、上場企業の金額ベースでみた外国人の日本株保有率は31.8%になっている(※3)。株主提案権を取得するための株式保有要件も非常に緩く、提案内容の制限もほとんどないというのが現状のようだ。株式を5%以上保有すると「大量保有報告書」を提出する義務があり、その後1%以上の変動があるたびに追加で報告することが法律で定められているだけだ。これらの状況が「ウルフパック」のような手法を生み、企業を乗っ取るグレーゾーンを招いている。「企業防衛」、「国家防衛」は「武器を手段とした防衛力」などでは到底守り切れない経済安全保障上のリスクの落とし穴を露呈している。投資者の道徳心に期待するには限界があるだろう。仮に万一、中共中央統一戦線がグレーゾーンを突いてきたらどうなるだろうか。たとえば日本がアメリカに追随し、台湾独立を支援する路線を明確にしたときなどは、武器による報復ではなく、グレーゾーンを用いた、日本の国家インフラを含めた日本企業乗っ取りという金融手段を用いる可能性はゼロではない。そうでなくとも日本は米国の餌食になっている側面が否めないのに、ウォール街と中南海がその気になれば、日本国など「消えてなくなる」危険性が潜んでいる。中国の富裕層が習近平政権を嫌がって日本に避難してきているといった類の記事が目立つが、喜んでいる場合ではない。また、懲罰を重くすればいいだけの話ではなく、日本はもっと抜本的に、そして予防的に規制ラインを引き上げなければならない。それができないのはなぜか?上述した対中貿易重視という日本政府や経団連の基本姿勢があるだけでなく、遅まきの対米追随にばかり目が行っていて、日本の国家を守るのだという「独立国家としての国家観」を持っていないところに根源があるのではないだろうか。この「国家観の欠如」は拙著『中国「反日の闇」 浮かび上がる日本の闇』でも詳述した。本稿で論じたのは氷山の一角にすぎず、日本はあらゆるエリアで「隙だらけ」であることを露呈している。この「日本の脆弱性」に対して、国は早急に規制を強くする方向で法整備の見直しをする必要がある。警鐘を鳴らしたい。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※4)より転載しました。東証 株価ボード(写真:イメージマート)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.jpx-recruit.jp/company/business05/(※3)https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB022T70S4A700C2000000/(※4)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/c39e87aee47e00c6b10bef040ee0ca0c0cc4694b
<CS>
2024/11/27 16:21
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帰化中国人投資家が日本を乗っ取る?(1)【【中国問題グローバル研究所】
*16:16JST 帰化中国人投資家が日本を乗っ取る?(1)【【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している(※1)遠藤 誉所長の考察を2回に渡ってお届けする。米中の新産業力を比較考察する本を執筆する過程で、日本を参考比較対象としてみた。すると、「なぜ日本の製造業はこんなにまで没落してしまったのか」、「なぜNatureの研究者ランキングなどで、日本はここまで低いのか」といった疑問にぶつかった。そこに共通しているのは「短期的成績が求められるようになったから」という事実で、日本企業の場合、その原因は「物言う株主」(アクティビスト)の存在であることが浮かび上がってきた。事実、製造業関係の社長を取材したところ、「最近は物言う株主の存在が大きくなりましてね、大型の設備投資など、とてもできません。短期的に目に見える利益を出さないと、物言う株主が許してくれないんですよ。日本の製造業が成長などするはずがありません」と嘆いておられた。その流れの中で<市場を赤く染める「中国系仕手集団」の“ウルフパック戦術” 電線メーカー「三ッ星」が白旗寸前>(※2)という事実を知り、非常な危機感を抱きながら近く出版する本の原稿を書いていたのだが、加えて金融界でも類似の動き(※3)があることを知った。そうでなくとも11月19日には、「ハゲタカ・ファンド」とも言われるほど激しい投資をすることで有名な米ヘッジファンド運営会社エリオット・インベスト・マネージメント(以下、エリオット)が、東京ガスの株式を5.03%獲得し(※4)、東京ガスが保有する新宿パークタワーなどの不動産について、非中核事業だとして売却を求めていると報道されたばかりだ。日本の国家インフラにまで「物言う株主」が口を出し、日本の国家の軸を揺さぶり始めている。注意しなければならないのは、かつての資本市場改革で株主の権利を強くしたために、「物言う株主」のみならず昔ながらの乗っ取りスタイルも息を吹き返しているということである。このまま放置すれば、日本はやがて中国人を含めた、何らかの形での外国人投資家に乗っ取られてしまう危険性がある。日本の「企業防衛」は、そして日本国の「インフラ防衛」は大丈夫なのだろうか。一方の中国。実は改革開放は、グローバリゼーションを唱え資本市場改革を促した新自由主義経済学者・フリードマンの論理を基礎にして進められてきた。したがって習近平は絶対にグローバリゼーションを崩さないし、その上で社会主義体制を軸にしているので国家インフラは国有企業で守りを固め、民営企業も証券法で外資投入を規制し企業崩壊を防いでいる。それに比べて日本の外資投入規制はあまりに緩く無防備だ。このままでいいのか、警鐘を鳴らしたい。◆帰化中国人集団が日本企業を乗っ取ろうとしていたケース冒頭に書いたように、2022年8月18日、<市場を赤く染める「中国系仕手集団」の“ウルフパック戦術” 電線メーカー「三ッ星」が白旗寸前>(※5)という見出しで、帰化中国人仕手(して)集団が日本企業を乗っ取ろうとしたケースが報告されている。「ウルフパック」というのは、実際はつながっている複数の共同投資家が、多数の異なる名義を利用し、水面下で分散的に大量の株式を購入し、ある日突然「狼の群れ」が姿を現して「株主提案権」を発揮し、当該企業を乗っ取るという手法のことである。本来、これらの株式が事実上共同で5%以上保有されている場合には、共同名義として「大量保有報告書」を提出する義務がある。しかし実際は、5%以上の株式を所有している某グループは、それぞれがあたかも関係のない人物であるかのようになりすまして異なる名義で5%以下の株式を所有する形を偽装するケースが頻発している。報道によれば、「相手企業に警戒心を抱かせないように各々が無関係を装い、株式を分散取得し、傘下株主の申し立てで臨時株主総会の開催に漕ぎつけると、共闘で乗っ取り劇を演じた」とのこと。典型的な「狼の群れ」だ。加えて「その中心人物と目されるのは、2003年10月に日本国籍を取得した帰化中国人」と、上記の記事には書いてある。それが真実だとすれば、いかにも「赤く染めそうな雰囲気」を醸し出しているではないか。この結末は2024年8月22日の<「狼」のような個人投資家が徒党を組み、狙った企業を買い上がる…!究極の敵対的買収「ウルフパック戦術」の行方>(※6)に見られるように、ウルフ3者に「計98万円の課徴金納付命令を出すよう金融庁に勧告した」だけで終わっている。こんなことでは、「狼の群れ」はいくらでも姿を変えて暗躍し、日本の製造業だけではなく、金融界あるいは日本の国家インフラさえ乗っ取ることが可能になってしまう。2023年3月31日の<「中国系仕手集団」頭目に弄ばれ、ついに上場廃止になった「アジア開発キャピタル」>(※7)を見ると、なんと、日本の複数の衆議院議員が役職に就くなどして、すでに国家ぐるみの犯罪が横行していることがわかる。その危機感を2023年4月1日の<何人もの「側室」を抱えるのが、「中国系仕手集団」の頭目>(※8)が報道しており、検索すると果てしなくこの手の情報が湧き出てくる。それでも大手メディアが大きく取り扱おうとしないのはなぜなのだろうか?この報道にもあるように経団連や国会議員などに親中派が多く、実は政府として中国との貿易にすがっているからかもしれない。「ウルフパック」は基本的に非合法性が高いものの、その「狼の群れの共謀性の程度」によって合法の範疇に入れられる場合もあり、グレーゾーンということができる。それも取り扱いを困難にさせている側面の一つとして考えられる。さらにやっかいなのは、日本の国家インフラを狙ったエリオットなどは、「物言う株主」として、実は合法的手段で株式購入活動を行なっているのだ。だから現在の法体制の下では、日本国を守ることはできない。◆中国は早くから米国の「ハゲタカ・ファンド」に警戒では、中国はどうだろうか?中国自身は自国インフラや自国企業を守るために米国の「ハゲタカ・ファンド」に早くから激しい警戒心を見せてきた。たとえば「ハゲタカ・ファンド」エリオットなどを「経済テロ」と称して警鐘を鳴らしている。2022年9月29日、中国政府の「新華社」電子版「新華網」は<「経済テロリスト」 - 米国の「ハゲタカ・ファンド」を暴く>(※9)という見出しで、エリオットが南米のアルゼンチンやアフリカの32カ国を「ハゲタカ・ファンド」に巻き込んで「喰い物にしている」状況を解説している。記事では、米国の金融覇権を維持するための手段の一つが、悪名高い「ハゲタカ・ファンド」だと位置付けている。「ハゲタカ・ファンド」に目を付けられたが最後、骨の髄まで喰い尽くされるとしている。記事は米国のエリオットの子会社であるNMLキャピタルの血に飢えた金融攻撃の様子を「経済テロ」と位置づけ、米国の新自由主義が生んだ残虐性を説明しているが、いや、待てよと思う。◆改革開放はフリードマン理論の下で遂行 ウォール街とつながる中南海そもそも中国は改革開放を推進するにあたり、冒頭に書いたようにグローバリゼーションを唱え資本市場改革を促した新自由主義経済学者であるミルトン・フリードマンの論理を基礎にしてきた。フリードマンはシカゴ大学の教授であったため、新自由主義を唱える経済学者を「シカゴ派」とか「シカゴ・ボーイズ」と称する。彼らは政府による介入を否定し、自由な市場経済を主張した。その主張が資本市場改革の流れを生み、最終的にはこんにちの「物言う株主」制度へと発展していったと位置付けることもできる。このフリードマンを中国に招聘すべきだと提案したのは、中国政府のシンクタンク中国社会科学院の世界経済研究所の研究員だ。この提案が中国政府に採用され、1980年にフリードマンは訪中して中南海のリーダーたちと会っている。その後も1988年、1993年と、計3回も訪中し、中国のトップリーダーたちに会い、中国における市場経済発展に関する論議をくり返している(※10)のだ。したがって中国はフリードマンの唱えるグローバリゼーションを基礎に置き、2001年にWTO(世界貿易機関)に正式加盟した。2000年には米中国交正常化を促したヘンリー・キッシンジャー元国務長官の勧めで清華大学経済管理学院に顧問委員会を設置した(※11)。ウォール街の金融大手などのトップを顧問委員会の委員にさせたのはキッシンジャーで、当時は中国入りのためにはコンサルティング会社「キッシンジャー・アソシエイツ」を通さなければならなかった。現在の顧問委員会のトップに君臨しているのはもちろん習近平国家主席(清華大学卒)だが、顧問委員会委員(※12)には、今もウォール街関連の錚々(そうそう)たるメンバーが名を連ねている。スティーブン・シュワルツマンは習近平が国家主席になった2013年に蘇世民書院(シュワルツマン・カレッジ)(※13)の発足式を挙行した。蘇世民はシュワルツマンの中国語名だ。2016年9月から金融を中心としたグローバル・リーダーを養成し、世界に羽ばたかせている。その意味で、中南海はウォール街と緊密に直結しており、フリードマン理論が生きている。だから習近平は絶対にグローバリゼーションを変えないのだが、それでいながら社会主義体制を軸にしているので、国家インフラなどは国有企業で固めていて絶対に海外資本の浸食を許さない。民間企業でも証券法で外資投入をかなり厳しく規制している(※14)のは、外資によって中国企業が破壊されるのを防ぐためであって、決して閉鎖的であるためではない。中国は外資に対する「企業防衛」が非常に堅固だ。これは中国の強みだと言えよう。「帰化中国人投資家が日本を乗っ取る?(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※15)より転載しました。東証 株価ボード(写真:イメージマート)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.dailyshincho.jp/article/2022/08181040/?all=1(※3)https://www.kushim.co.jp/wp-content/uploads/2024/11/ir_20241125-3.pdf(※4)https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-11-20/SN7ZXST1UM0W00(※5)https://www.dailyshincho.jp/article/2022/08181040/?all=1(※6)https://gendai.media/articles/-/135977?imp=0(※7)https://access-journal.jp/71386(※8)https://ameblo.jp/s2021751/entry-12796316351.html(※9)http://www.news.cn/world/2022-09/29/c_1129042829.htm(※10)https://finance.sina.cn/sa/2006-11-19/detail-ikftpnny2058670.d.html(※11)https://www.sem.tsinghua.edu.cn/xygk/gwwyh/gwwyhjs.htm(※12)https://www.sem.tsinghua.edu.cn/guwenweiyuanhuimingdan20241113.pdf(※13)https://www.sc.tsinghua.edu.cn/gywm.htm(※14)https://www.chinanews.com.cn/cj/2023/12-29/10137839.shtml(※15)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/c39e87aee47e00c6b10bef040ee0ca0c0cc4694b
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2024/11/27 16:16
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トランプ2.0 イーロン・マスクが対中高関税の緩衝材になるか(2)【中国問題グローバル研究所】
*16:56JST トランプ2.0 イーロン・マスクが対中高関税の緩衝材になるか(2)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「トランプ2.0 イーロン・マスクが対中高関税の緩衝材になるか(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。◆イーロン・マスク:(バイデン政権における)対中関税反対を表明イーロン・マスクは今年5月23日にパリで開催された大手テクノロジー企業の経営者などが集まる毎年恒例のビバテック会議に登壇し、「現在、中国のEVに対する米国の関税に反対する」(※2)と表明した。バイデン政権が、トランプ前大統領が導入した多くの関税を維持しながら、中国のEVに対する関税を4倍の100%以上に引き上げることに関して、イーロン・マスクは「市場を歪めるような措置は好ましくない」と述べている。イーロン・マスクはもともと民主党を支持する傾向にあったが、2021年8月5日にバイデンが呼び掛けたEVサミットにイーロン・マスクだけが招待されなかったことがあった(※3)。バイデンはホワイトハウスにゼネラルモーターズ、フォード、(フィアット・クライスラーとフランスのPSAが合併して設立された)ステランティスのCEOたちを招待しながら、世界最大のEVメーカーであるテスラのCEOイーロン・マスクを招待しなかったのだ。イーロン・マスクは当日Xに「いやー、テスラが招待されなかったのは奇妙じゃないかな」と投稿し(※4)、不満を漏らした。以来、バイデンから心が離れていき、2024年7月14日に起きたトランプ銃撃事件により、一気に強烈なトランプ支持に変わっていったようだ。翌日の7月15日にコラム<中国ネット民 トランプの「突き上げた拳」を熱狂絶賛――「これぞ強いリーダー!」>(※5)を書いたが、なんだか筆者には、中国のネット民とイーロン・マスクには一脈通じるものがあるように感ぜられる。◆イーロン・マスク:戦争屋ネオコンに反対と投稿トランプが勝利宣言をすると、イーロン・マスクは11月6日にXで<ネオコンの戦争屋に力を与えるべきではないことに賛同する>(※6)と投稿した。ご存じのようにネオコン(Neoconservatism、新保守主義者)は自由主義や民主主義を重視して「民主」を輸出し、世界各地の親米的でない政権を転覆させて武力介入も辞さない政治思想集団だ。いうまでもなくNED(全米民主主義基金)は、このネオコンのもと世界各地で暗躍し、「民主」を輸出して戦争を仕掛ける組織である。トランプが米国の利益を最重要視するのに対して、ネオコンはグローバリゼーションを広げて世界における米一極支配を目指す。トランプがNEDを嫌うことは11月5日のコラム<トランプは実は習近平やプーチンが好きで、民主の輸出機関NEDが嫌い>(※7)で書いた。ネオコンはトランプ1.0政権ではジョン・ボルトン(大統領補佐官)などが一部入り込んでいたため、たとえばトランプが金正恩と会談して朝鮮半島における第二次世界大戦以降の紛争を解決しようとしたことを阻止してしまった。トランプはどれだけこの事を後悔しているかしれないと推測する。トランプは朝鮮半島問題を解決して、ノーベル平和賞をもらいたかったのだ。2016年5月に、ベトナム戦争終結に寄与したとしてノーベル平和賞を受賞したキッシンジャー元国務長官から外交に関する手ほどきを受けた時から、トランプはノーベル平和賞受賞を目指していた。そのトランプが嫌う「戦争屋ネオコン(→NEDの暗躍)」をイーロン・マスクも嫌っていることを知ったのは、筆者にとっても大きい。◆トランプ2.0は、習近平にとっては悪くない以上さまざまな側面から、イーロン・マスクはトランプ2.0の対中高関税に対する緩衝材になるだけでなく、何よりもNEDの暗躍を一定程度は抑え込むだろうということによって、習近平にとっては非常に悪くない政権になるのではないかと思うのである。中国は米国から高関税などの制裁を受けることに関しては、少しも恐れていない。むしろ、その制裁があったからこそ自力更生を加速強化させてくれたし、結果ハイテク国家戦略「中国製造2025」は、その目標年である来年2025年までにほぼ完遂する。最先端の半導体製造装置に関しては未達成だが、他の新産業のほとんどの分野において中国は今や世界一になっている。また、仮に高関税をかけられても、中国はBRICS+という非米側陣営を拡大することによって経済的な結びつきを強化し、米一極支配から抜け出そうとしている。そのことは10月30日のコラム<中露を軸とした「BRICS+」の狙い G7を超えて「米一極支配からの脱出」を図る>(※8)で書いたとおりだ。実際にどうなるか、未知数はあるものの、少なくともトランプ2.0は習近平にとって決して悪いものではないと考えていいだろう。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※9)より転載しました。ドナルド・トランプ前大統領を応援するテスラのイーロン・マスクCEO(写真:REX/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.reuters.com/business/autos-transportation/elon-musk-im-against-tax-incentives-evs-2024-05-23/(※3)https://edition.cnn.com/2021/08/05/business/tesla-snub-white-house-event/index.html(※4)https://x.com/elonmusk/status/1423156475799683075(※5)https://grici.or.jp/5451(※6)https://x.com/elonmusk/status/1853944431512314093(※7)https://grici.or.jp/5746(※8)https://grici.or.jp/5725(※9)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/107c839d144ea564fd20c010880197274142511b
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2024/11/11 16:56
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トランプ2.0 イーロン・マスクが対中高関税の緩衝材になるか(1)【中国問題グローバル研究所】
*16:45JST トランプ2.0 イーロン・マスクが対中高関税の緩衝材になるか(1)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している(※1)遠藤 誉所長の考察を2回に渡ってお届けする。大統領選に圧勝したドナルド・トランプ前大統領は、選挙運動中に「全ての国に10~20%、中国からの全輸入品に60%の関税を課す」と表明している。しかし最大のトランプ支援者となったテスラCEOのイーロン・マスクは、EVの上海工場で莫大なビジネス権益を有しているだけでなく、中国政府に特別な厚遇を受け、習近平国家主席がトップを務める清華大学経済管理学院顧問委員会(海外大手企業トップが集まり中国経済発展を助ける委員会)のメンバーの一人だ。李強国務院総理(首相)が上海市の書記だったころに上海工場を設立したため、李強首相とも特別に仲がいい。母親のメイ・マスクともども、大の「中国ファン」なのである。そのため昨年は「台湾は北京政府の統治下にあるべきだ」として台湾の平和統一を支持する発言をしたり、バイデン政権が対中高関税をかけることに対して反対の表明をしたりしている。そんなイーロン・マスクが来年1月から始まる第二次トランプ政権「トランプ2.0」で発令されるであろう対中高関税政策を黙って見ているだろうか。おそらくイーロン・マスクが対中高関税の緩衝材になるのではないかと思われる。イーロン・マスクはまた「戦争屋ネオコンに反対!」とXに投稿しており、アメリカ・ファーストのトランプはそのネオコンの下で動く「第二のCIA」であるNED(全米民主主義基金)が嫌いだ。習近平にとって、トランプ2.0は、心地悪くはないものとなる可能性がある。◆テスラEVの利益のほとんどは上海工場から世界一の大富豪として知られるイーロン・マスクは、EV(電動自動車)の製造工場をアメリカのカルフォルニアとテキサスに持っているが、2023年の生産台数)はそれぞれ55.5万台と14.6万台で、あまり多くはない。一方、上海工場での2023年の生産台数は95.8万台に上り、全生産能力の半分以上を占めるに至っている。また今年9月には、上海工場から100万台目の中国製EVを輸出したと発表した。それが可能になったのは、習近平が上海工場設立に対して、独資企業としてスタートしてもいいという特別の厚遇をしたからだ。外国企業に対する独資認可は、テスラ上海工場が初めてのケースである。2019年1月7日に上海工場が着工し、同年12月30日には最初の車が納車された。着工から納車まで1年もかからなかったというこの生産スピードは、サプライチェーンが中国内に全て揃っているお陰でもある。習近平は2015年にハイテク国家戦略「中国製造2025」を発布したが、イーロン・マスクの登場は、その戦略にぴったりと当てはまった。拙著『嗤う習近平の白い牙 イーロン・マスクともくろむ中国のパラダイム・チェンジ』で詳述したように、習近平は「中国製造2025」達成を可能ならしめるためにも、テスラ上海工場をそのバネにする必要があったのだ。事実、これをきっかけに中国のEV製造は一気に成長して世界一になった。習近平にとってイーロン・マスクは無くてはならない存在だし、イーロン・マスクにとっても中国は欠かすことのできないビジネス・パートナーだ。したがってイーロン・マスクが対中高関税の緩衝材となるのではないかと推測されるのである。◆中国のネット:イーロン・マスクが対中高関税の潤滑油になるたとえば11月8日の新浪財形網には<トランプがホワイトハウスに戻ってくるが、マスが中米間の潤滑油になるのではないか?>(※2)という見出しで、筆者と同様の観測をしている。またシンガポールの聯合早報も11月7日、<トランプの高関税は中国にどの程度の打撃を与えるか? 学者はマスクの立ち位置留意すべきと>(※3)という見出しで北京特派員の見解を報道している。それによれば「中国で莫大なビジネス権益を持つ起業家であるイーロン・マスクは、米中貿易摩擦の緩衝材になる可能性がある」と学者が述べているとのこと。トランプ勝利が判明する前の11月4日、中国のネットの観察者網は<マスクは極端な親中派なので、米中間の重要な対話者として機能するのでは?>(※4)という趣旨の分析をしている。こういった視点からの分析は枚挙にいとまがないほど中国語のネット空間に溢れている。◆イーロン・マスク:北京が台湾を統治すべきと表明2023年9月13日、ロサンゼルス(のRoyce Hall on UCLA’s campus)で開催されたAll-In Summit 2023にリモートで参加したイーロン・マスクは、「台湾と中国の関係」を「ハワイと米国の関係」にたとえた(※5)。凄いスピードで話しているので、喋っている言葉を逐語訳すると何を言っているかわからなくなる。そこで彼の言わんとするところを要約してピックアップすると、以下のようになる。●台湾の再統一は中国の根本的な問題だ。半世紀以上にわたり、中国は台湾を返還する政策をとってきた。●彼らの視点から見ると、中国にとっての台湾は、アメリカのハワイのようなものかもしれない。●ただ、中国の再統一の試みを、米国の太平洋艦隊が武力で阻止したために中国の一部ではないようにしてしまっているだけだ。●台湾は中国の不可欠な部分であるが、台湾は「故意に中国の所有物であることを否定し」、米国が「いかなる形の再統一努力をも妨害している。(2023年9月のイーロン・マスクの発言要旨は以上)すると、9月14日、台湾外交部がマスク発言に対して激しく抗議した(※6)。それでもなお、イーロン・マスクは2023年11月になると、また台湾に関して言及した。2023年11月10日、レックス・フリードマンが主催するポッドキャストにオンラインで取材に応じ、以下のように回答して(※7)いる。●中国は台湾に対して強い感情を抱いている。その点については、長い間、非常に明確にしてきました。この観点から言えば、ハワイのような国ではなく、ハワイよりも重要な国の一つということになる。●中国は台湾を、中国の基本的な一部、台湾ではなく「中国の台湾島」と見なしています。今は台湾は中国の一部になってないが、そうあるべきだ。それが実現していない唯一の理由は、米国の太平洋艦隊のためだ。●中国は平和的もしくは軍事的に台湾を併合すると明言していますが、中国の立場からすれば、台湾を統一する可能性は 100%だ。(2023年11月のイーロン・マスクの発言要旨は以上)ここまでの踏み込んだ発言を断言的に表明したイーロン・マスクという人物が、習近平にとって、どれだけ重要か想像がつくだろう。そうでなくともトランプは大統領選挙中に何度も「もし中国が台湾を武力攻撃したら、あなたならどう反応するか?」という複数のメディアの問いに、毎回回答をはぐらかしてきた。それはバイデン大統領が何度も「米国は介入する」と明言した意思決定と歴然たる対比を成していた。ましてやイーロン・マスクがトランプ側に立った今、トランプ2.0における対台湾の認識は習近平にとって何よりも重要なものだ。トランプは11月6日の勝利宣言演説(※8)で、イーロン・マスクを「超天才」と呼び、「われわれの天才を守らなければならない」とまで述べている。きっとイーロン・マスクの意見を政権運営に取り入れていくことだろう。このこと一つをとっても、トランプ2.0における米中関係がイーロン・マスクの存在によりどれだけ悪化を防ぐか、その効果は計り知れない。「トランプ2.0 イーロン・マスクが対中高関税の緩衝材になるか(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※9)より転載しました。ドナルド・トランプ前大統領を応援するテスラのイーロン・マスクCEO(写真:REX/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://finance.sina.com.cn/jjxw/2024-11-08/doc-incvkiwc1758856.shtml(※3)https://www.zaobao.com.sg/news/china/story20241107-5307017(※4)https://www.guancha.cn/internation/2024_11_04_754094.shtml(※5)https://www.youtube.com/watch?v=tKqJ5-kkUGk(※6)https://edition.cnn.com/2023/09/14/business/elon-musk-taiwan-china-comments-intl-hnk/index.html(※7)https://www.youtube.com/watch?v=JN3KPFbWCy8(※8)https://www.youtube.com/watch?v=WI9fbbQ-aTo(※9)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/107c839d144ea564fd20c010880197274142511b
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2024/11/11 16:45
GRICI
トランプは実は習近平やプーチンが好きで、民主の輸出機関NEDが嫌い【中国問題グローバル研究所】
*10:31JST トランプは実は習近平やプーチンが好きで、民主の輸出機関NEDが嫌い【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。世界中に「民主」を輸出しては戦争を仕掛けるNED(全米民主主義基金)は現在、アメリカの民主党を中心に全世界で暗躍しているが、ドナルド・トランプ前大統領はNEDが嫌いで、実は習近平国家主席やプーチン大統領が好きなようだ。トランプ政権時代だった2018年、アメリカの雑誌The New PublicがCNNの録音を基に報道している。習近平やプーチンにしても、中国やロシアに潜り込んで反政府勢力を育てあげては政府転覆をさせようと暗躍しているNEDこそは最大の敵なので、当然ながら民主党政権よりはトランプに当選してほしいと思っているだろう。本稿ではThe New Public情報を、いくつかのパーツに分けてご紹介し、最後に中露が団結する原因の一つに関しても触れる。◆The New Public-1:トランプは習近平やプーチンを尊敬している1914年に創刊されたアメリカの権威ある雑誌The New Publicは2018年3月6日に<Trump’s Disdain for Democracy Promotion (トランプは民主主義推進を軽蔑している)>(※2)というタイトルで、トランプが習近平やプーチンを尊敬し、NEDを嫌っているという趣旨の内容の報道をしている。トランプの発言は、CNNの録音に基づいているらしい。作者はカナダ人の作家でありジャーナリストで、The New Publicのスタッフ・ライターでもあるJeet Heer(ジート・ヒヤー)だ。その内容をテーマ別にご紹介したい。まずは習近平とプーチンに関して。●ドナルド・トランプ大統領は、マー・ア・ラーゴで行われた非公開の募金活動で、中国の習近平国家主席に関して「彼は権力把握に関して実に賢明だ。何と言っても彼は今や終身大統領だ」と驚嘆してみせた上で、「私もいつか、それを試してみる必要があるだろう」と述べた。●トランプの周りに集まった寄付者たちは笑ったが、彼の独裁者称賛は不吉だ。2016年、彼はウラジーミル・プーチンを「非常にリーダー的だ…これまでの大統領がリーダーであった以上に」と述べたことがあり、プーチンをも称賛した。●トランプは、海外で民主主義と人権を促進することがアメリカの外交政策上の利益になるとは考えていない。それどころか、トランプ政権は、そうする任務を負った機関を弱体化させようとしている。◆The New Public-2:トランプはNEDを嫌い弱体化させようとしている●「国務省の2019会計年度予算要求に込められているのは、NEDの予算を削減するだけでなく、National Democratic Institute(全米民主党研究所)やInternational Republican Institute(国際共和研究所)を含む中核機関とNEDとの関係を解体する提案だ」とワシントン・ポストは報じた。●NEDとこれらの研究所にとって、この提案は彼らの組織だけでなく、彼らが献身している民主化の使命に対する攻撃でもある。●トランプ氏の民主主義推進に対する嫌悪感は、彼の権威主義的傾向と一致している。◆The New Public-3:トランプは「他国の内政干渉」より「自国の強化」を重視●20世紀のほとんどの間、民主党は「平和な世界を確保する最善の方法は、他の国々に民主主義の価値観と制度を採用するように奨励することである」と考えていた。共和党は「アメリカは自国の民主主義の守護者であり、他国の内政には責任がない」という、よりシニカルで孤立主義的な見方に傾いていた。●ところが共和党のレーガン大統領は、「民主主義のインフラを育成する」よう呼びかけ、1983年にNEDが超党派の支持を得て設立された。民主主義の推進を外交政策の要に据えるにあたり、レーガンは、少し前までリベラルな民主党員や社会主義者だったネオコンの幹部に助けられた。ネオコン知識人や政策オタクたちは、民主主義推進の中心性を主張した。●しかし、レーガンやジョージ・W・ブッシュのような共和党の大統領の許可にもかかわらず、民主主義の推進は右派から普遍的に支持されることは決してなかった。トランプはレーガンの伝統(NED)を放棄し、(レーガン以前の)硬派な現実政治に戻りつつある。●1980年代から、一連の民主主義革命が南アメリカ、アジア、アフリカ、東ヨーロッパの多くの国を襲った(筆者注:「アラブの春」など)。多くの場合、これらの革命は、超党派のアメリカの外交政策によって支援されたり、促進されたりした。近年、民主主義は後退し始めており、権威主義が台頭している。●この変化は、トランプの支援を受けて持続する可能性が高い。民主主義がますます危機に瀕しているという事実は、NEDのような機関をより重要にしている。トランプはそれを弱体化させ、むしろ、権威主義者や有力者になりそうな人々に、「アメリカは彼らの邪魔をしない」と言っている。●2020年にトランプが民主党に取って代わられたとしても、トランプが共和党の民主化に対する軽蔑を復活させた今、少なくともしばらくは、両党が団結して民主化を推進していた日々は戻らないかもしれない。(以上)◆The New PublicはNEDが戦争の武器になっていることに触れていないThe New Publicが、「トランプがNEDを嫌っていること」と「本当は習近平やプーチンが好きなこと」に関して報道しているのは実にすばらしく、また「アラブの春」に象徴される「他国の民主化への働き」を論じているのは高く評価する。それは拙著『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』で考察した内容と一致し、また「国務省の2019会計年度予算要求」によって、筆者の分析を補強していてくれているので非常にありがたい。しかし、肝心のことを忘れてはいないか。それは、NEDは「他国の民主化を支援すること」によって、「他国への内政干渉」を行い、「民主主義的でない国」=「アメリカに親密でない国」の政権を転覆させるという、国際法的には許されないことを設立後からこんにちまでやり続けていたという事実だ。その結果、絶えることのない紛争を巻き起こし続けてきた。世界から戦争が消えないのは、そのせいである。それ故にこそ、筆者はNEDが何をやってきたのかを徹底して分析し、「第二のCAI」として「戦争を先導する役割」に反対し続けてきた。ネオコンは戦争屋と結びついているので、この世から戦争が消えると商売が繁盛しないため、いつでも、どこかで戦争が起きている状態が最も望ましいと考えている。だから世界各地でNEDが暗躍し続けているのだ。この視点がThe New Public報道の作者であるJeet Heer氏には完全に欠落している。◆習近平がNEDを嫌うわけ:NEDが台湾独立を支援しているから何度も言い続けてきたので、くり返すのも申し訳ないが、習近平がNEDを嫌い、反スパイ法を制定したのは、NEDが台湾に支局を置いて、台湾独立をけしかけているからだ。中国大陸内での監視が激しく、NEDスタッフが上陸して暗躍するのが困難になったので、最近ではネットを用いて「白紙運動」などをけしかけている。それも拙著『習近平が狙う「米一極から多極化へ」』で詳述した。そのため、習近平はトランプが当選してくれることを願っているだろう。もちろんトランプは中国に高関税をかけたり、さまざまな制裁をしたりしてくるだろうが、そのようなことはいくらでも対処できる。むしろ、制裁により国産を目指すしかなくなったので、新産業における中国の目覚ましい発展を可能にさせてくれたほどで、制裁とか高関税などは、中国にとっては小さな問題でしかない。◆ウクライナの親ロシア政権を転覆させたのはNEDとバイデンこれに関しても何度も書いてきたが、たとえば2023年12月4日のコラム<ウクライナ危機を生んだのは誰か?PartIV 2016-2022 台湾有事を招くNEDの正体を知るため>(※3)などに書いたように、NED自身が年次報告書でNEDの活動の実態を証言しているので、これを疑う余地はない。(陰謀論というレッテルを貼って事実から逃げている人は、NEDの年次報告書をご覧になることをお勧めする。)結果、プーチンももちろんNEDの暗躍には絶対に反対で、それ故に中露の結びつきは、ちょっとやそっとでは弱体化しない。最近では露朝が近づいたので、習近平とプーチンの仲に「亀裂が?」という「希望」を書きたがる評論家が多いが、それは事実とは異なる。今年10月30日に書いたコラム<中露を軸とした「BRICS+」の狙い G7を超えて「米一極支配からの脱出」を図る>(※4)に書いたように、習近平とプーチンは巨大な世界戦略のもとに行動しており、石破内閣が北朝鮮のウクライナ派兵を足掛かりに中国に接近しようとしても、まるで話にならない厳然たる事実があることを見逃してはならない。なお、いまこの時点でアメリカ大統領選の投票が行われているはずだが、結果は明日6日以降にならないと判明しないようなので、「当選」に関しては未来形で書いている。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※5)より転載しました。大統領選挙中のトランプ前大統領(写真:ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://newrepublic.com/article/147290/trumps-disdain-democracy-promotion(※3)https://grici.or.jp/4885(※4)https://grici.or.jp/5725(※5)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/f10f4eeb3e2ad1a0c7cecc7f2ae36103b1729b48
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2024/11/06 10:31
GRICI
中国「反日」のジレンマ なぜ「短期滞在ノンビザ」日本はダメで韓国はいいのか?【中国問題グローバル研究所】
*15:55JST 中国「反日」のジレンマ なぜ「短期滞在ノンビザ」日本はダメで韓国はいいのか?【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。中国は11月2日、韓国など9カ国を15日以内の短期滞在のビザ免除(ノンビザ)対象にすると発表した。日本は対象となっていない。韓国は良くて日本がダメな理由はどこにあるのか?考察を深めると、そこには中国「反日」のジレンマが垣間見える。◆中国政府ノンビザ対象国追加を発表中国政府は11月2日、<中国はスロバキアを含む9カ国に対してビザ免除政策を試験的に実施している>(※2)という見出しで9ヵ国のビザ免除を追加的に発表している。内容は以下の通り。――中国外交部領事司は、中国と諸外国との人材交流をさらに促進するため、中国はビザ免除国の範囲を拡大し、「スロバキア、ノルウェー、フィンランド、デンマーク、アイスランド、アンドラ、モナコ、リヒテンシュタイン、韓国」の一般パスポート保有者に対するビザ免除政策を試行することを決定した。2024年11月8日から2025年12月31日まで、上記の国の通常のパスポートを保有する者は、ビジネス、観光、家族、親族や友人訪問、乗り継ぎなどのために15日を超えない範囲内でビザなしで中国に入国できる。ビザ免除の条件を満たさない者は、入国前に中国渡航へのビザを申請する必要がある。(以上)日本にとって気になるのは、なぜ韓国に対して免除するのに、日本がその対象から除外されたかだ。韓国メディアは、韓国が中国のビザ免除対象になるのは初めてだと、驚きを以て伝えている。中国は実は、2020年のコロナ禍以前は日本に対しても短期のビザなし渡航を認めていたが、コロナ禍を受けてすべての国に対してノンビザを停止した。コロナ終了に伴い中国は短期ノンビザ対象国を広げているが、日本はこれまでのところ対象となっていない。日本側は再開を要望しているが、中国政府は中国人の訪日でも同様に免除する「相互主義」を求めて応じていないと一般に言われている。果たしてそうだろうか?◆日中双方にない外交・公用ビザ「相互免除」2024年5月28日、中国領事服務網は<中国と外国の相互ビザ免除協定一覧表>(※3)を公開している。この中に「日本」はない。G7が全てないのかと言ったらそうではなく、「ドイツ、フランス、イギリス、イタリア」は入っている。しかし、日本以外に、「アメリカとカナダ」も入っていない。G7以外でクワッドなどの対中包囲網に参加している国を見てみると、インドやオーストラリアも免除されていない。しかし、たしかに「韓国」は入っている。中国と韓国の間では・2013年8月10日に外交旅券保持者に対して、・2014年12月25日に中国側公務旅券に対して、・2014年12月25日に韓国側官用旅券に対して、それぞれビザを免除することが取り決められた。それなら日本はどうなのかを確認してみよう。日本の外務省の令和6年(2024年)10月1日時点における<外交・公用旅券所持者に対する外交・公用旅券免除国>(※4)を見ると、たしかに中国が入っていない。しかし、日本はコロナ前も中国を外交・公用旅券免除国にしていないのに、中国は日本に対して短期ビザ免除を実施していた。したがって、「外交・公用旅券所持者に対する外交・公用旅券免除国」の対象国にしないことが理由ではないことが明白だろう。その証拠に、オーストラリアの場合、「外交・公用旅券所持者に対する外交・公用旅券免除国」の対象ではないのに、今年6月には短期ビザが免除されるた(※5)。◆では、なぜ日本は免除されないのか?今年7月30日、駐日本国の呉中国大使は記者会見で<ビザ免除再開しないのは「日中関係が原因」>(※6)と述べ、日本に対して改善を求めた。報道によれば、日本人が訪中する際のビザ免除が再開されない理由について、呉大使は「中日関係の全体の雰囲気や、直面している困難、立場の違いが関係している。条件面の調整ではなく、停滞する日中関係が影響している」という認識を示したとのこと。日中関係がコロナ前とコロナに入ってからでは、どのように違っただろうか?考えられるのはバイデン政権になったあと、日米豪印による「クワッド」や米英豪による「オーカス」などの小さなグループを最大限に活用して対中包囲網を形成し始めたことだ。それでもオーストラリア(豪)などがグループのメンバーであっても短期ビザ免除になったのは、「日本ではないから」である。韓国など、米韓軍事同盟により激しい軍事演習をやっていても、ノンビザの対象になる。それもやはり「日本ではないから」だ。なぜ「日本」だといけないのか。それは中国から言わせれば「中国を侵略したから」以外のなにものでもない。毛沢東はそもそも日中戦争時代に日本軍と共謀して国民党軍の蒋介石をやっつけようとしたくらいだから、プロパガンダでは「抗日戦争を戦っているのは共産党軍だ」と主張して民衆を惹きつけるために激しく「抗日」を叫んだが、実際は1956年に遠藤三郎(元大日本帝国陸軍中将)などを中南海に招聘して「皇軍に感謝する」と言ったくらいだ。しかし、その毛沢東でさえ、日本が朝鮮戦争の武器弾薬の倉庫となり日米安保条約を結ぼうとしたときには「反対武装日本」運動を全国的に大々的に展開した。街のいたる所に「中国侵略を終えたばかりの日本が、アメリカのポチになって再軍備をしようとしている」ことを表すポスターが掲げられていた。江沢民が反日教育を始めたあとは、拙著『中国「反日」の闇 浮かび上がる日本の闇』にも詳述したように、日本が国際社会で現在どのような動き方をしているかをつぶさに教える学習指導要領に沿って、若者は時々刻々の日本の動きを日々教えられる。だから日本の政治姿勢を実によく知っている。結果、「日本帝国主義」への怒りは、「現在の日本」へと投影されていく。それがネットで拡散して、「反日感情同調圧力」となっているのだ。岸田元首相はバイデンに諂(へつら)ってNATOの東京事務所を設置すべく動いていたし、自民党総裁選前の河野太郎氏は9月9日、NATOへの日本の加盟に関し「将来、そういう選択肢があってもいい」と述べ、首相に就任した場合、NATOの連絡事務所を東京に誘致する考えも示した(※7)。そして石破首相は今も「アジア版NATO」の考えを否定してはいない。「そのような日本を許してなるものか」という憤りが中国社会全体に流れている。かかる状況で、もし日本に甘い顔を見せたら、ネット民がどのような反応をするかは、中国政府は百も承知だ。韓国に短期ノンビザを認めただけで、中国のネットは荒れている(※8)。ましてや日本になどノンビザを認めたら、若者がどれだけ習近平を「売国奴」と罵るかわからない。だから、今はできないのだ。◆反日のジレンマ習近平としても日本企業には投資してほしいし、特に日本の半導体製造装置関連企業には中国に協力してほしくてならない。多くの観光客にも訪中してほしいからこそ、コロナ後に短期ノンビザ対象国を増やしているところだ。しかし、日本が台湾独立や軍事拡大の方向に動き、ましてや徒党を組んで対中包囲網などを試みようとしている限り、絶対に日本に甘い顔をするわけにはいかない。そこには「反日教育」を強化するしかないところに追い込まれた習近平のジレンマがあるはずだ。胡錦涛政権初期に胡錦涛は「過度の反日教育はナショナリズムを招き好ましくない」として馬立誠に「対日新思考」を書かせたところ、胡錦涛は売国奴として罵倒され、2008年の時には「現在の李鴻章」とまで言われて危機一髪の状況にまで追い込まれている。習近平が中共中央総書記に選ばれることになっていた2012年秋、建国以来最大規模と言ってもいいほどの激しい反日暴動が起きた。だから11月に総書記になった習近平は、江沢民が始めてしまった「反日教育」を強化する以外に選択肢はなかったのだとも言える。しかしもし、明日5日の米大統領選で「アメリカ・ファースト」のトランプが当選したら、事態は一気に変わっていく可能性もないではない。なぜなら、高関税はかけても、徒党を組んでじわじわと対中包囲網を形成したり、NED(全米民主主義基金)を暗躍させて台湾独立をそそのかすような動きを、トランプはしないからだ。日本が対米追随をしても、そこそことなる。明日の米大統領選の結果が待たれる。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※9)より転載しました。JAPAN PASSPORT(写真:吉原秀樹/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.gov.cn/lianbo/bumen/202411/content_6984511.htm(※3)http://cs.mfa.gov.cn/wgrlh/bgzl/202110/t20211029_10403855.shtml(※4)https://www.mofa.go.jp/mofaj/ca/fna/page22_002019.html(※5)https://www.gov.cn/yaowen/liebiao/202406/content_6959255.htm(※6)https://www.asahi.com/articles/ASS7Z3J9SS7ZUHBI02MM.html(※7)https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA082BW0Y4A900C2000000/(※8)https://www.voachinese.com/amp/china-expands-visa-free-policy-to-0-more-countries-including-south-korea-20241102/7848699.html(※9)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/def4fadecd68e21816827d52ba4bace6922856e6
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2024/11/05 15:55
GRICI
米中は惨敗した石破首相の非辞任表明をどう見ているか?(2)【中国問題グローバル研究所】
*10:44JST 米中は惨敗した石破首相の非辞任表明をどう見ているか?(2)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。◆国民民主の玉木代表には「石破氏を降ろすなら国会で協力する」と言って欲しかった玉木代表は各党と等距離を保ち、予算案・法案によっては自民党に協力するとしている。おまけに国民民主が首相指名選挙で1回目だけでなく2回目の決選投票においても自党の代表の名前を書くということは、それだけ無効票を増やして石破氏に有利に働くことになるのは明らかだろう。11月2日のデイリーは<「国民民主は裏自民党に」 首班指名決選投票の選択による可能性 選挙コンサルが指摘「2回目が無効票になれば」>(※2)と書き、国民民主を「裏自民」と称している。そこまでは言わないにしても、玉木代表にはせめて「石破氏を降ろすなら、自民党との国会における部分協力はしてもいい」と言って欲しかった。国民民主は野党として、現在の自民党の政治不信を批判してきたはずだ。石破首相は安倍元総理にも「辞任しろ」と迫ったのだから、今般の選挙で責任を取って辞任しないのはおかしい。特に「総理になっても、せめて予算委員会を開催してからでないと解散はしない」とあれだけ総裁選で言っておきながら、総理になった瞬間、正確に言えば総理になる前日に、「いきなり解散」を言い始めた石破首相は、それだけでも信用ができない人間性を持っており、そのような人物に日本の運命を託したくはない。そういう正義感を、玉木氏には持っていて欲しかった。今からでも遅くはないので、そのように迫るだけの豪胆さを持てば、もっと人気が上がるだろう。筆者は何度も、政治評論家(故)鈴木棟一氏が主宰していた「永田町社稷(しゃしょく)会」で講演をしたことがあるが、そのたびに玉木氏も会場におられて、講演が終わると挨拶に来られて話を交わしたものだ。非常に低姿勢でざっくばらん。感じのいい人だった。鈴木棟一氏も「ね!彼、悪くなよね」と二人のいつもの会話の中でも話題になったことがある。「応援してあげようか」と、まだ無名の玉木氏に好感を抱いていたものだ。このたびの選挙で躍進したのは祝賀したいが、しかし、政治改革をしないままの自民党を維持させる方向には動いてほしくない。別に野田代表が良いというわけではなく、このたびの一連の動き方をした石破氏を寛大に扱うとすれば、自民党はさらに小汚く動いて腐敗するだろうし、日本国民にさらなる不幸をもたらすだろうと憂うのである。選挙の結果は「民意」だ。「民意」よりも「党利」を優先しないようにしてほしい。日本の国家としての発言力・外交力を弱体化させれば、最終的に日本の権益を損ねるという、大所高所からの視点が持てるような党に育ってほしいと望む。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※3)より転載しました。衆議院選挙で惨敗した石破首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://news.yahoo.co.jp/articles/7a72df75ad6db808af092a703304280ca2ee4cb5(※3)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/086541d745f9f65623135803a1bedc1c27e32af3
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2024/11/05 10:44
GRICI
米中は惨敗した石破首相の非辞任表明をどう見ているか?(1)【中国問題グローバル研究所】
*10:40JST 米中は惨敗した石破首相の非辞任表明をどう見ているか?(1)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している(※1)遠藤 誉所長の考察を2回に渡ってお届けする。自民総総裁選のときの約束を破り、すぐに解散選挙を行った「嘘つき総理」に関する中国の見方は、10月28日のコラム<自公惨敗により日本短命内閣(回転ドア)が続けば中国には有利>(※2)で書いた。しかしその後、石破首相は居直りを決めていることがわかった。そのような不安定な日本の政局を中国およびアメリカは今どう見ているのか、改めて考察したい。◆観察者網:石破おろしの声が上がっても、野党が団結せずバラバラやや政府色があり、知識層が集まる観察者網は10月31日、<精彩を失う! 石破茂は大きな賭けに出て惨敗 それは中国にとっても悪いニュース>(※3)という見出しで、米中問題専門家の見解を報道している。そこには、おおむね以下のような内容が書かれている。●石破茂は首相に就任した途端、確実に勝てると読んだ賭けに出て惨敗。●石破は岸田政権が残した裏金問題をうまく解決するのかと思ったが、権力を握るとすぐに危険な動きに出て、自民党の基盤をさらに弱体化させた。●その結果、日本の政局は混乱に陥っており、この2日間、自民党内では石破の辞任を求める声が上がっている。●しかし、野党が団結していないため、自民党が政権の座に留まる可能性を高めている。野党を合わせると総得票数の過半数を占めているにもかかわらず、野党は非常に分散しており、野党連合を形成するのは自公連合を拡大させるよりも、さらに難しい。●中国のネット民が最も懸念しているのは、日本が回転ドアのように短命政権をくり返すようになったときに、日中関係がどうなるかということだ。一つには、内政で忙殺されていると中国に対して強硬なことを実施する時間などなくなるという可能性が考えられ、他方では逆に、内政があまりに不安定なために外界に敵を作って国民の目をそらせ、かえって対中強硬策を取るかもしれないという可能性もある。前者ならば「勝手にやってくれ」という感じだが、後者だと中国にとっても、これは悪いニュースになるというわけだ。(以上)10月4日のコラム<中国は石破首相をどう見ているか?>(※4)でも書いたように、自民党の中には右から左まで、どんな人でもいる。もう自民党一党だけで日本の左翼も右翼も代表できるほど、非常に幅広く網羅している。それに比べて野党は、やたら細かな主張の違いにこだわって別の党を結成しているので、政権を取りに行こうという図太さというか腹の太さがなく、たしかに「野党連携は、自公が他党を取り込んで拡大するよりも困難である」現状はある。◆環球時報:日本の政治的混乱は右翼ポピュリズムを激化させる可能性が10月29日、中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版「環球時報」は<日本の政治的混乱は右翼ポピュリズムを激化させる可能性がある>(※5)という見出しで、日本政局の混乱を論じている。論旨概要は以下の通り。●12年間続いた「一党優位」の状況は崩壊し、最大野党・立憲民主党の台頭により、日本の政治情勢は再び「二大勢力併存」の方向へ進化する可能性がある。しかし衆議院で過半数を超える議席を保持している政党がないため、将来的に大きな不確実性をもたらす。●それでも保守・右傾化の政治生態系は変わっていない。●自民党の長期政権によってもたらされた政策の安定は、戦後日本の経済復興の重要な支えとなったが、同時に「金権政治」「派閥政治」「密室政治」など多くの欠点も生み出した。●裏金事件の影響で自民党と最大野党・立憲民主党の力は盛衰をくり返し、新たな「二党対立」の状況が到来する可能性もあるが、アメリカの共和党と民主党や、イギリスの保守党と労働党を比較しても、日本の自民党と立憲民主党の統治理念や内政・外交路線の違いは変わらない。このことは、日本が二大政党制に移行する条件が未熟であることを示している。●日本政治における社会党や日本共産党に代表される伝統的な左翼勢力は徐々に縮小し、保守と分類されるその他の大小政党が95%以上を占め、全体として政治の保守右傾化が進展し続けている。●1955年の自民党結党以来、党内の主流派論争は「経済重視、軍事軽視の保守本流」と「憲法改正と自主防衛を主張する保守傍流」の対立であり、長い間、前者が優勢だった。21世紀に入ると、小泉純一郎から安倍晋三に至る政治の右傾化の進展に伴い、「戦後体制からの脱却」を目的とした「憲法改正・軍備増強路線」が主流となった。この文脈において、岸田文雄氏は保守的な出身であったにもかかわらず、在任中に「外部の脅威」を喧伝し、日本の防衛・安全保障戦略を守りから攻撃へ大幅に調整することを推進し、戦後最大の軍拡路線を打ち出した。●経済政策の面では、安倍政権の異例の量的緩和政策による副作用、特に日本の多額の国債と累積財政赤字を前に、金融政策の正常化と財政健全化をあえて提案する政党はほとんどない。それどころか、票を集めるために「パイの塗り分け」をし、減税などの功利的な財政刺激策の提案を競っている。●一方で、国民の心をつかむために、各党の政策提案が近視眼的な功利主義やポピュリズムを強める可能性もある。外交安全保障政策の面では、日本が国内の紛争を外に転嫁することに警戒する必要がある。●国力の衰退と中国の発展を前に、日本の政界は不安を隠せず、対中政策は対立思想に満ちており、合理的な中国観や対中政策に関する議論はほとんど存在しなくなっている。(以上)この見解は完全に中国共産党、すなわち中国という国家の対日観の一部を表明しており、中国は「保守と分類されるその他の大小政党が95%以上を占め、全体として政治の保守右傾化が進展し続けている」という見解を代表している。これが「日本は日本帝国の軍国主義に戻っている」という視点となって小学校から高校に至るまで教育されるので、かつての日中戦争に対する「反日教育」が「現在の日本」と重ねられて青少年の精神に染み込んでいくのである。この詳細は『中国「反日の闇」 浮かび上がる日本の闇』で考察した。これは中国の対日視点の特徴だ。環球時報がここまで赤裸々にそれを披露するのも珍しい。日本に二大政党制が出来上がらないのは、前述したように自民党内には右から左まで何でも網羅する「貪欲なまでの包摂力」があり、一党だけで日本政治が賄えることに加えて、野党の提案でも国民に受けそうだと見るや、まるで自党の提案でもあるかのように主張し始めるという貪食力もある。「旧統一教会」や「裏金」まで包摂していくので、何でもありの汚れた一党支配が日本の国力を落としていくことにつながる。また、ネットを通した無党派層の票を各党が吸収していくという意味では、右か左かは別として、「ポピュリズムへの移行傾向」は否めないのかもしれない。◆ブルームバーグ:世界がトランプの復帰に備える中、日本は内向きに一方、ガラッと変わってアメリカはどう見ているのか。一つの新聞では代表できないものの、10月29日のブルームバーグは<世界がトランプの復帰に備える中、日本は選挙後、内向きになるリスクがある>(※6)という見出しで、おおむね以下のような分析をしている。●石破氏は過半数を失ったにもかかわらず、首相に留任する意向を示唆した。●弱い連立政権は新リーダーの機動力を制限する可能性もある。●ホワイトハウスに大きな変化が現れようとしているこの時に、日本は政策停滞の新たな段階に入る危険にさらされている。●日本は1990年代以来初めて明確な勝者が出ず、世界第4位にまで落ちた(かつての)「経済大国」を、さらに弱い政府が運営することがほぼ確実となった。今のところ、その政権を率いるのは石破茂首相で、同首相は退陣する予定はなく多数派対策に没頭している。●自称「防衛オタク」の石破氏が率いるとしても、不安定な政権は、ウクライナ戦争や、より強硬な中国に対抗する台湾支援など、世界の問題で日本が今後もより主導的な役割を担っていくかどうか疑問を投げかける。また、今年の市場の混乱を招いた数十年にわたる金融・財政刺激策への過度の依存から、より正統的な政策立案への回帰を目指す日本の取り組みも減速する可能性が高い。●石破氏が戦後最短の在任期間となるのを避けるため、自民党は国民民主党などの小規模野党に連携の可能性を打診したが、国民民主党代表の玉木雄一郎氏は、自民党主導の連立政権への参加はしないと回答。しかし、法案によっては国会で協力する用意があり、かつ11月11日に国会で首相を選出する際に、2回目の決選投票でも同党は玉木氏の名前を書くと述べている。(以上)さすがにブルームバーグは最も核心を突いている。玉木代表の言動にまで着目しているのは、さすがだ「米中は惨敗した石破首相の非辞任表明をどう見ているか?(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※7)より転載しました。衆議院選挙で惨敗した石破首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://grici.or.jp/5718(※3)https://user.guancha.cn/main/content?id=1324888(※4)https://grici.or.jp/5672(※5)https://opinion.huanqiu.com/article/4K23L7NgkHx(※6)https://www.bloomberg.com/news/articles/2024-10-29/japan-risks-turning-inward-just-as-world-braces-for-trump-return(※7)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/086541d745f9f65623135803a1bedc1c27e32af3
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2024/11/05 10:40
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