USスチール買収完了時期は変更せず、組合と一致が重要=日鉄副社長
[東京 7日 ロイター] - 日本製鉄の森高弘副社長は7日の決算会見で、米鉄鋼大手USスチールの買収に関し、2024年9月までとしている買収完了予定時期は変更しないと述べた。米国の政治的な反発を抑えるためにも、全米鉄鋼労働組合(USW)と一致点を見いだすことが重要との認識を示した。
森副社長は「今回の買収はUSスチールそのものの成長を狙ったもの」と述べ、米国にとっても利益になると強調した。1月中下旬にワシントンを訪れ、各議員や関係者に買収の意義について説明を行ったほか、米国ではロビイストも雇っているという。
買収を巡っては、米議会から反対の声が上がっているほか、11月の米大統領選に出馬しているトランプ前大統領は、勝利すれば買収計画を阻止すると表明した。こうした米国の反応は「想定内」としたうえで、米国は自由と平等、法と秩序がある国だとし「デュープロセスを経て、両方にとって意味があり、関連産業、両国にとってもメリットのある案件を政治の思惑だけでブロックすることはできないと思っている」と述べた。
USWが反対の姿勢を示していることが政治的な反対につながっているとし「対話を通じてUSWと一致点が見いだせれば静かになっていくだろうと思っているし、一致点を見いだすことは十分可能。早期に組合と一致点を見いだすことが重要」と述べた。USWとは対話を開始しているほか、質問状を受け取り、回答も送っているという。
トランプ氏についても「この買収が各産業に及んで、米国に広く貢献できると理解されれば、意見も変わってくると思う」との見方を示した。11月の大統領選挙が近付いてくると、政治的な動きがさらに活発になる可能性も懸念されるため、早期に組合と一致点を見いだし、政治的な動きにストップをかけていくことが重要と指摘した。
USスチールは3月末に株主総会を開くことになるため、組合とも同時期に一致点を見いだせれば望ましいとした。
破談になった場合、それぞれの理由により、双方ともに違約金5億6500万ドルの支払い義務が定められている。
USスチール買収後もUSスチールの社名・ブランド・本社を維持する。合弁だとコア技術を共有することができないため、日鉄の研究開発も含めて技術を全面共有するためにも、100%子会社化することが重要と指摘した。
USスチール買収の収益への影響については「買収直後から連結事業利益に貢献してくる」とし、24年度は小さな貢献にとどまるものの、25年度以降は「10億ドル程度、事業利益では1400から1500億円の貢献が追加される」との見通しを示した。