後場の投資戦略
個人投資家の物色意欲に気掛かりな変化
配信日時:2022/09/20 12:23
配信元:FISCO
[日経平均株価・TOPIX(表)]
日経平均;27684.35;+116.70TOPIX;1946.97;+8.41
[後場の投資戦略]
本日の日経平均は朝方の大幅高後に急失速の展開。米連邦公開市場委員会(FOMC)
の公表結果を22日に控えるなか、一時28000円を窺う水準まで戻した動きから、早くもFOMC通過後のあく抜けを期待した買いが入っているのかと思われたが、その後の急失速で地合いの悪さが再確認された。日経平均は下向きの5日移動平均線まで上昇した後に失速しており、テクニカル面では嫌な形。25日線が下向きに転じてきているのも気掛かりで、FOMC後にあく抜けで上昇する期待がある一方、すぐ下に位置する75日、200日線の下放れリスクも意識される。
また、本日は新興株の下落が目立っており、マザーズ指数が一時2%近い下落率となる場面が見られた。先週後半までは新興株の相対的な堅調さが際立っており、米国の消費者物価指数(CPI)が上振れてインフレ懸念が再燃する場面でもそうした動きは見られていた。しかし、米10年債利回りが6月来の高水準に近づいた先週末は大きく下落。週明け、米10年債利回りが一時3.52%と2011年来の高水準まで上昇したこともあり、本日も厳しい動きが先行した。
このように、これまで相場を下支えてきた個人投資家の物色意欲に騰勢一服感が見られてきているのは気掛かりだ。背景としては米長期金利の高値更新もあるだろうが、もう一つ、個人投資家からの人気の高い銘柄の下落が考えられる。特に足元目立つのは、しばらく東証プライム市場の売買代金上位の常連にもなっていたダブル・スコープの株価急落だ。同社は新興株ではないが、会社側の相次ぐリリースや電気自動車(EV)というテーマ性を背景に個人投資家の間で次第に人気化してきた背景がある。
しかし、先週末、韓国子会社の上場に関してブックビルディングが不調との一部報道をきっかけに売りが殺到。今朝、子会社上場に関する詳細が正式に発表され、ほぼ報道通りの内容であることが判明したが、売り注文の殺到が止まない。SNSなどで度々話題に上り人気化していく過程で、投資リテラシーがあまり高くない初心者の個人投資家も巻き込む形で、これまで大量に信用買い残が積み上がってきていた。需給主導で急伸してきた分、下落時も過剰な動きとなっている。
ほか、同様に個人投資家からの人気が高く、信用買い残が大きく積み上がっている銘柄で東証スタンダード市場の主力株であるフェローテク<6890>も先週末から急落している。ダブル・スコープやフェローテックといった人気の高い銘柄が急落したことで、個人投資家の含み損益が悪化。それが他の中小型株や主力株にまでも波及したことが、マザーズ指数の大幅下落や日経平均の急失速に繋がっているのかもしれない。
これまで中長期の投資家の多くが様子見に徹するなか、短期目線の個人投資家による売買が中心的な役割を担ってきたこともあり、こうした動きの変化は注目に値する。逆バリ志向の個人投資家らが相場を下支えてきた背景は少なからずあると考えられ、個人投資家の含み損益が急激に悪化しているのだとしたら、下支え役が欠けることになり、注意を払う必要があろう。
ほか、16日には政府・与党が、2023年度予算編成にあたっての防衛費増額の財源として、法人税を軸に金融所得課税、たばこ税の増税を検討することが明らかになった。あまり話題に上がっていないが、海外投資家が日本株を敬遠する一つの要因にもなりかねず、今後の動向が気掛かりだ。
FOMCを受けた市場の反応を予想するのは困難で、22日までは上値の重い展開が続きやすいだろう。先週のフェデックスの一件で景気後退懸念も強まっており、イベント通過後に株高となったとしても、持続性には疑問符がつく。当面はディフェンシブ銘柄や業績回復シナリオを描きやすいインバウンド関連銘柄の間での循環物色が続きそうだ。
(仲村幸浩)
<AK>
日経平均;27684.35;+116.70TOPIX;1946.97;+8.41
[後場の投資戦略]
本日の日経平均は朝方の大幅高後に急失速の展開。米連邦公開市場委員会(FOMC)
の公表結果を22日に控えるなか、一時28000円を窺う水準まで戻した動きから、早くもFOMC通過後のあく抜けを期待した買いが入っているのかと思われたが、その後の急失速で地合いの悪さが再確認された。日経平均は下向きの5日移動平均線まで上昇した後に失速しており、テクニカル面では嫌な形。25日線が下向きに転じてきているのも気掛かりで、FOMC後にあく抜けで上昇する期待がある一方、すぐ下に位置する75日、200日線の下放れリスクも意識される。
また、本日は新興株の下落が目立っており、マザーズ指数が一時2%近い下落率となる場面が見られた。先週後半までは新興株の相対的な堅調さが際立っており、米国の消費者物価指数(CPI)が上振れてインフレ懸念が再燃する場面でもそうした動きは見られていた。しかし、米10年債利回りが6月来の高水準に近づいた先週末は大きく下落。週明け、米10年債利回りが一時3.52%と2011年来の高水準まで上昇したこともあり、本日も厳しい動きが先行した。
このように、これまで相場を下支えてきた個人投資家の物色意欲に騰勢一服感が見られてきているのは気掛かりだ。背景としては米長期金利の高値更新もあるだろうが、もう一つ、個人投資家からの人気の高い銘柄の下落が考えられる。特に足元目立つのは、しばらく東証プライム市場の売買代金上位の常連にもなっていたダブル・スコープの株価急落だ。同社は新興株ではないが、会社側の相次ぐリリースや電気自動車(EV)というテーマ性を背景に個人投資家の間で次第に人気化してきた背景がある。
しかし、先週末、韓国子会社の上場に関してブックビルディングが不調との一部報道をきっかけに売りが殺到。今朝、子会社上場に関する詳細が正式に発表され、ほぼ報道通りの内容であることが判明したが、売り注文の殺到が止まない。SNSなどで度々話題に上り人気化していく過程で、投資リテラシーがあまり高くない初心者の個人投資家も巻き込む形で、これまで大量に信用買い残が積み上がってきていた。需給主導で急伸してきた分、下落時も過剰な動きとなっている。
ほか、同様に個人投資家からの人気が高く、信用買い残が大きく積み上がっている銘柄で東証スタンダード市場の主力株であるフェローテク<6890>も先週末から急落している。ダブル・スコープやフェローテックといった人気の高い銘柄が急落したことで、個人投資家の含み損益が悪化。それが他の中小型株や主力株にまでも波及したことが、マザーズ指数の大幅下落や日経平均の急失速に繋がっているのかもしれない。
これまで中長期の投資家の多くが様子見に徹するなか、短期目線の個人投資家による売買が中心的な役割を担ってきたこともあり、こうした動きの変化は注目に値する。逆バリ志向の個人投資家らが相場を下支えてきた背景は少なからずあると考えられ、個人投資家の含み損益が急激に悪化しているのだとしたら、下支え役が欠けることになり、注意を払う必要があろう。
ほか、16日には政府・与党が、2023年度予算編成にあたっての防衛費増額の財源として、法人税を軸に金融所得課税、たばこ税の増税を検討することが明らかになった。あまり話題に上がっていないが、海外投資家が日本株を敬遠する一つの要因にもなりかねず、今後の動向が気掛かりだ。
FOMCを受けた市場の反応を予想するのは困難で、22日までは上値の重い展開が続きやすいだろう。先週のフェデックスの一件で景気後退懸念も強まっており、イベント通過後に株高となったとしても、持続性には疑問符がつく。当面はディフェンシブ銘柄や業績回復シナリオを描きやすいインバウンド関連銘柄の間での循環物色が続きそうだ。
(仲村幸浩)
<AK>
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