注目トピックス 市況・概況
国内株式市場見通し:機関投資家夏休み入りのなか底堅い展開継続
配信日時:2022/08/13 14:51
配信元:FISCO
■インフレピークアウト期待で6月高値上抜く
今週の日経平均は週間で371.11円高(+1.32%)と続伸。4週連続の陽線で、終値は52週移動平均線を大きく上放れた。
週初8日の日経平均は73.37円高。米7月雇用統計が予想を大きく上回る強い内容となったことで米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締め強化への警戒感が強まる一方、景気後退懸念が後退し、強弱材料が混在するなか底堅い推移となった。その後、9日は249.28円安、10日は180.63円安と上昇一服。米半導体大手エヌビディアが業績見通しを引き下げたほか、同業のマイクロン・テクノロジーも1カ月前に示した業績予想レンジを下回る可能性を示唆したことで指数寄与度の大きい半導体関連株が連日で大幅下落。また、低調な決算を発表した東エレク<8035>やソフトバンクG<9984>の急落も指数を押し下げた。
一方、国内の祝日明け週末12日は一転して727.65円高と急反発し、6月9日高値28389.75円をも大きく上回った。米国7月の消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)が共に予想以上に大きく減速したことでインフレピークアウト期待が高まった。売り方の買い戻しが入るなか、週前半に下落が目立っていた半導体関連株なども大きく上昇し、日経平均は28500円をも一気に上抜けた。なお、8月オプション取引に係る特別清算指数(SQ)算出値は28525.62円だった
■FOMC議事要旨などに注目
来週の東京株式市場はもみ合いか。4-6月期決算が一巡し、材料不足となる一方、需給面から底堅い推移が続きそうだ。
米国の重要インフレ指標の減速を受けてインフレピークアウト期待が高まり、7月半ばからのリバウンド相場が長期化している。市場関係者の多くは、足元の株式市場の上昇はベアマーケットラリー(弱気相場の中の一時的な上昇)に過ぎないと見ている。ただ、機関投資家の多くが夏休みに入るなか、市場参加者が限られ、相対的に個人投資家や短期売買のみを目的とした投資家の動きに左右されやすい地合いが続く。このため、相場に乗り遅れることを嫌った個人投資家の買いや、商品投資顧問(CTA)などの短期筋の追随買いで足元は上方向に振れやすい状況だ。週末の米国版SQ(特別清算指数)算出までは売り手に乏しいなか買い手優位の状況が続きそうだ。
来週は米中の小売売上高や鉱工業生産など注目度の高い指標が多い。中国では行動制限の長期化で景況感の回復が想定以上に遅れている。米国でも、所得の伸びがインフレに追い付かないことで実質所得の減少が続いており、けん引役となってきた個人消費の失速が懸念される。共に指標結果は冴えないものになる可能性があろう。4-6月期の決算発表が一巡したばかりだが、景況感の悪化は7-9月期決算への警戒材料となり、需給主導の上げ相場が終わり次第、相場の重石となりそうだ。
インフレピークアウト期待についても、米7月のCPIとPPIの減速要因の大半はエネルギー価格であり、食品価格などはむしろ上昇ペースが加速している。住居費などの下方硬直性のある分野のインフレもほとんど減速していない。また、代表的な商品市況の総合指数であるCRB指数は7月14日をボトムに下値切り上げの上昇トレンドに転換している。こうした背景から、7月のインフレ指標は大きく減速したものの、8月分以降は高止まりが想定される。7月雇用統計で平均賃金の伸びが予想に反してむしろ加速していたことも見逃せない。
FRB高官からもけん制発言が相次いでいる。市場とFRBが想定する今年末の政策金利予想や、来年の利上げペースを巡る認識にはかなり開きがあり、いずれ、市場の楽観は修正される可能性がある。17日に公表される米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨を受けてこうした乖離が修正される可能性もあるため注目したい。
ここしばらく落ち着いた動きだった米10年債利回りは、11日、2.89%(+0.1pt)と大幅に上昇した。これに伴い、期待インフレ率の指標とされる10年物の米ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)を差し引いた実質金利は一時再びマイナス圏に突入しそうな勢いだったが、8月に入ってからの反発基調をやや強めている。米国で業績予想の下方修正が進むなか、予想一株当たり利益(EPS)は切り下がっており、株価上昇には投資家の期待値を表す株価バリュエーションのPER(株価収益率)の上昇が欠かせないが、実質金利の低下に歯止めがかかり、上昇に転じてきているなか、そうした展開は見込みにくいだろう。
来週、米国では小売大手のウォルマートやターゲットなどの決算も予定されている。既に業績予想を下方修正しており、期待値は低いが、在庫の処分ペースなどが注目され、景況感の悪化を一段と強める恐れもあるため注意したい。
■4-6月GDP速報値、米中7月小売売上高、連銀景気指数など
来週は15日に4-6月期国内総生産(GDP)速報値、中国7月鉱工業生産、中国7月小売売上高、米8月ニューヨーク連銀景気指数、16日に米7月住宅着工件数、米7月鉱工業生産、17日に6月機械受注、7月貿易収支、米7月小売売上高、FOMC議事録、18日に米8月フィラデルフィア連銀景気指数、米7月中古住宅販売、19日に7月全国消費者物価指数などが発表予定。
<FA>
今週の日経平均は週間で371.11円高(+1.32%)と続伸。4週連続の陽線で、終値は52週移動平均線を大きく上放れた。
週初8日の日経平均は73.37円高。米7月雇用統計が予想を大きく上回る強い内容となったことで米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締め強化への警戒感が強まる一方、景気後退懸念が後退し、強弱材料が混在するなか底堅い推移となった。その後、9日は249.28円安、10日は180.63円安と上昇一服。米半導体大手エヌビディアが業績見通しを引き下げたほか、同業のマイクロン・テクノロジーも1カ月前に示した業績予想レンジを下回る可能性を示唆したことで指数寄与度の大きい半導体関連株が連日で大幅下落。また、低調な決算を発表した東エレク<8035>やソフトバンクG<9984>の急落も指数を押し下げた。
一方、国内の祝日明け週末12日は一転して727.65円高と急反発し、6月9日高値28389.75円をも大きく上回った。米国7月の消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)が共に予想以上に大きく減速したことでインフレピークアウト期待が高まった。売り方の買い戻しが入るなか、週前半に下落が目立っていた半導体関連株なども大きく上昇し、日経平均は28500円をも一気に上抜けた。なお、8月オプション取引に係る特別清算指数(SQ)算出値は28525.62円だった
■FOMC議事要旨などに注目
来週の東京株式市場はもみ合いか。4-6月期決算が一巡し、材料不足となる一方、需給面から底堅い推移が続きそうだ。
米国の重要インフレ指標の減速を受けてインフレピークアウト期待が高まり、7月半ばからのリバウンド相場が長期化している。市場関係者の多くは、足元の株式市場の上昇はベアマーケットラリー(弱気相場の中の一時的な上昇)に過ぎないと見ている。ただ、機関投資家の多くが夏休みに入るなか、市場参加者が限られ、相対的に個人投資家や短期売買のみを目的とした投資家の動きに左右されやすい地合いが続く。このため、相場に乗り遅れることを嫌った個人投資家の買いや、商品投資顧問(CTA)などの短期筋の追随買いで足元は上方向に振れやすい状況だ。週末の米国版SQ(特別清算指数)算出までは売り手に乏しいなか買い手優位の状況が続きそうだ。
来週は米中の小売売上高や鉱工業生産など注目度の高い指標が多い。中国では行動制限の長期化で景況感の回復が想定以上に遅れている。米国でも、所得の伸びがインフレに追い付かないことで実質所得の減少が続いており、けん引役となってきた個人消費の失速が懸念される。共に指標結果は冴えないものになる可能性があろう。4-6月期の決算発表が一巡したばかりだが、景況感の悪化は7-9月期決算への警戒材料となり、需給主導の上げ相場が終わり次第、相場の重石となりそうだ。
インフレピークアウト期待についても、米7月のCPIとPPIの減速要因の大半はエネルギー価格であり、食品価格などはむしろ上昇ペースが加速している。住居費などの下方硬直性のある分野のインフレもほとんど減速していない。また、代表的な商品市況の総合指数であるCRB指数は7月14日をボトムに下値切り上げの上昇トレンドに転換している。こうした背景から、7月のインフレ指標は大きく減速したものの、8月分以降は高止まりが想定される。7月雇用統計で平均賃金の伸びが予想に反してむしろ加速していたことも見逃せない。
FRB高官からもけん制発言が相次いでいる。市場とFRBが想定する今年末の政策金利予想や、来年の利上げペースを巡る認識にはかなり開きがあり、いずれ、市場の楽観は修正される可能性がある。17日に公表される米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨を受けてこうした乖離が修正される可能性もあるため注目したい。
ここしばらく落ち着いた動きだった米10年債利回りは、11日、2.89%(+0.1pt)と大幅に上昇した。これに伴い、期待インフレ率の指標とされる10年物の米ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)を差し引いた実質金利は一時再びマイナス圏に突入しそうな勢いだったが、8月に入ってからの反発基調をやや強めている。米国で業績予想の下方修正が進むなか、予想一株当たり利益(EPS)は切り下がっており、株価上昇には投資家の期待値を表す株価バリュエーションのPER(株価収益率)の上昇が欠かせないが、実質金利の低下に歯止めがかかり、上昇に転じてきているなか、そうした展開は見込みにくいだろう。
来週、米国では小売大手のウォルマートやターゲットなどの決算も予定されている。既に業績予想を下方修正しており、期待値は低いが、在庫の処分ペースなどが注目され、景況感の悪化を一段と強める恐れもあるため注意したい。
■4-6月GDP速報値、米中7月小売売上高、連銀景気指数など
来週は15日に4-6月期国内総生産(GDP)速報値、中国7月鉱工業生産、中国7月小売売上高、米8月ニューヨーク連銀景気指数、16日に米7月住宅着工件数、米7月鉱工業生産、17日に6月機械受注、7月貿易収支、米7月小売売上高、FOMC議事録、18日に米8月フィラデルフィア連銀景気指数、米7月中古住宅販売、19日に7月全国消費者物価指数などが発表予定。
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