みんかぶニュース 市況・概況
米国市場データ NYダウは137ドル安と4日ぶりに反落 (7月22日)
配信日時:2022/07/25 07:20
配信元:MINKABU
― ダウは137ドル安と4日ぶりに反落、スナップ決算不調でIT大手に売り波及、経済指標の悪化も重荷 ―
NYダウ 31899.29 ( -137.61 )
S&P500 3961.63 ( -37.32 )
NASDAQ 11834.11 ( -225.50 )
米10年債利回り 2.757 ( -0.122 )
NY(WTI)原油 94.70 ( -1.65 )
NY金 1727.4 ( +14.0 )
シカゴ日経225先物9月限 (円建て) 27640 ( -250 )
シカゴ日経225先物9月限 (ドル建て) 27665 ( -225 )
※( )は大阪取引所終値比
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(3)米国覇権の再構築に与力する日本
●第三の開国、米国の世界秩序再構築の支柱に
近代日本の興隆は常に米国とともにあった。黒船による第一の開国、敗戦による第二の開国、そしていま第三の開国が米国流株式資本主義の受容として、実現しようとしている。
近現代の日本の世界史的役割は、西欧民主主義と資本主義の世界伝播の懸け橋になったことにある。非西洋で近代資本主義と民主主義を土着化させ発展させたのは、日本だけである。また、非西洋で近代化と工業化を発展させ、国民の生活水準を先進国の域にまで高めたのは韓国・台湾・中国(香港)の東アジア3カ国だけであるが、韓台中の発展は日本の経済発展モデルをほぼ模倣・踏襲したものであった。韓国・台湾・中国(香港)の東アジア3カ国は、移植した市場経済の基盤の上で、米国・先進国からの技術導入と米国市場でのシェア獲得により飛躍的経済成長を実現した。
●日中で対極にある対米姿勢、どちらが吉か
起点は1971年のニクソンショックにある。ドルが金の縛りを脱したことにより、米国は対外債務を急増させ、まず日本から、そして最後には中国から巨額の輸入を行った。1980~90年代に日本が対米輸出で経済飛躍を遂げ、1990~2000年代には韓国、台湾、香港などのアジアNIES(新興工業経済地域)が離陸し、2000年代以降は中国経済が高成長を遂げたが、その起点はドルの散布にあったと言える。
中国が世界の製造業生産の4割弱、PC、スマートフォンなどのハイテク製品や、ソーラパネル、EV(電気自動車)などのクリーンエネルギー分野では8~6割という高シェアを獲得するというオーバープレゼンスは、まさしくニクソンショックの賜物であった。
米国は巨額の輸入により東アジア諸国の発展を支えたが、それが脅威となり、敵対者と認識すると手のひらを返す。まず、産業競争力を飛躍的に高めた日本を米国産業の土台を壊す相手と認識し、強烈な日本叩きを展開した。貿易摩擦、超円高、構造協議という口実による内政への関与などで日本を縛り上げた。そしていま、米国覇権に対する挑戦の意志をあからさまにした中国に対して、激しい制裁を課し始めている。
ここにおいて同じ経路で発展してきた日本と中国の間に、決定的相違が生じた。軍事的に従属している日本は米国に屈服したが、中国は米国への対抗心を強めて意気盛んである。中国の方にこの話をすると、溜飲を下げる表情を見せるが、米国は甘くはない。
●日本の米国要求の受容は正解だった
米国流のビジネスモデルを受け入れた日本の対応は正しかった。失われた30年の間に、日本は米国の価値観とビジネス慣習に大きくすり寄り、好ましいビジネスパートナーに変わった。
この米国への譲歩は、日本における企業のガバナンス改革に帰結し、これからの日本株高、株式資本主義の繁栄を準備しているように見える。既得権益が強固な日本においてガバナンス改革が成就し得たのは、米国の外圧が重要であった。
他方、中国は勝ち目のない相手を敵視することで、国の選択を誤ろうとしている。日本は米国の世界秩序再構築の共同遂行者の役割を淡々とこなすことで国運の隆盛につながる。
(4)2025年日本復活のKey Ward、産業ルネサンスとBarbarian at the Gate
●遅れていたJカーブ効果の発現、実質賃金上昇により内需の拡大循環が始まる
2025年に繰り延べられていた円安によるJカーブ効果のプラス面が発現することは確実である。日本の工業基盤が衰弱してしまって円安による生産回復に時間がかかったこと、インフレによる実質所得減のリカバリーに時間がかかったことなどから、円安のプラス効果発現までのタイムラグがずいぶん長くなったが、ここからは期待できる。
2025年も2年連続の5%賃上げが続き、実質賃金は2%程度のプラスに浮上していくだろう。国民民主党の頑張りによる恒久減税の寄与も期待でき、実質消費は1~2%のプラスに浮上するだろう。そもそも円安のメリットは、インフレによる名目成長率の急伸、海外所得の増加となって、すでに企業収益と税収増加に結び付いていた。この企業利益と税収増加を家計に還流させることが焦眉の課題だが、石破自民党の少数与党化は、恒久減税を主張する国民民主党に譲歩せざるを得ず、むしろプラスになっている。2025年の参院選を睨めば、恒久減税が目玉政策として飛び出すかもしれず、それは株価の好材料である。
●産業ルネサンス……米国の対中封じ込め、日米半導体協力で流れが変わった
2025年はTSMCの熊本工場の稼働が始まり、日本の産業拠点としての根源的強さが再評価される元年となるだろう。
日本の産業基盤の素晴らしさに驚愕したTSMC創業者のモリス・チャン氏に見られるように、日本の生産拠点としての圧倒的強さを思い知らせる事柄が、これから続出するだろう。世界の最先端半導体を一手に供給しているTSMCはその全てを台湾で生産しているが、それは需要者にとって大きな地政学的リスクである。TSMCは台湾以外の重要供給拠点として日本に注力していくだろう。熊本(JASM)1、2期に続き、第3期の最先端工場建設が検討されている。
北海道千歳のラピダスや海外半導体企業の研究所創設など、日本において過去30年間で初めて、設備投資が引き起こす好循環が起きている。これらの半導体プロジェクトは全て米中対立の下で、米国が経済安全保障上、日本に協力を求めたことが起点となったものであり、失敗するという結論はない。つまり、成功するまで国は資金を出し続けるのである。国による巨額の半導体支援を批判し小馬鹿にする論者が少なくないが、そのような人々は経済安全保障の深刻さを理解していない。
ハーバード大学が作成している「世界の経済複雑性ランキング」(ECI)において、1995年から日本が一貫して世界のナンバーワンであることに、注目するべきである。このランキングは、世界各国の輸出データに基づき、①輸出品の複雑性と多様性、および②偏在性(独占度)を評価し、順位付けしたものである。複雑性が高いほど高付加価値産業を有し、産業の多様化が進み、世界市場での独占度が高いことを示している(カリフォルニア大学サンディエゴ校ウリケ・シェーデ教授著「シン・日本の経営 悲観バイアスを排す」日経BPで紹介されている)。
スマートフォンを例にとると、スマートフォン完成品の組み立ては規模は大きいが工程そのものは単純である。他方、材料や部品、製造機械はそれぞれが固有の工程と技術的ブラックボックスを持っている。この複雑性ランキングでは、固有の工程数とブラックボックス部分が大きい方がランクが高くなる。日本はスマホの生産シェアは低いが、スマホの最終完成品に至る必要技術を世界で一番多く備えていると言える。その産業基礎力は、日本に生産回帰を進めるうえで大きな力になる。
国際的ビジネスマンにとっては、(突出した異能はいないが)日本の労働力の均質性、レベルの高さ、労働に対する誠実性が抜きんでていることは、常識である。いまさらではあるが、それがOECD(経済協力開発機構)による成人力調査によって明らかにされた。2023年の調査によると日本人の成人力は、調査3項目のうち読解力、数的思考力でフィンランドに次ぎ第2位、問題解決能力でフィンランドとともに第1位、と発表された。
これらのビジネス拠点としての日本の優位性は、同時に半導体工場の建設が進む米国やドイツなどとの比較において、際立っていくだろう。日本が先端産業の世界的製造拠点として復活することは明らかである。日本の産業ルネサンスはすぐそこに来ている。
●買収ブームが引き起こす株式資本主義時代
AI革命など歴史的技術発展の時代に、企業収益が高まり、企業部門に過剰利益が蓄積されることが常態化している。この企業利益を経済システムに還流させる上で、米国で定着した株式資本主義が大きな役割を果たした。ベンチャーに巨額の投資資金が集まるエコシステムは、米国経済の長期繁栄と長期株高の原動力であった。
米国の株式資本主義は、①金融の効率性=適切な資源配分、②技術の米国への集積、ハイテクエコシステムの形成、③成果の大衆(有権者)への還元として確立し、トランプ次期政権の政策プラットフォームとしても認識されている。
この株式資本主義の出発点が、1988年のコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)によるRJRナビスコ買収に象徴される米国の買収ブームであった。
それは2000年のドットコムバブル形成に向かう株高を準備したが、いまの日本に同様の動きが起きている。東証・金融庁によるPBR1倍以下の企業の是正要求、日本経済新聞「私の履歴書」へのKKR創業者ヘンリー・クラビス氏(30年前は米国でも野蛮人と言われていた)の登場など、日本の政策と企業社会のM&A受容姿勢への変化は驚くばかりである。
カナダ企業であるアリマンタシォン・クシュタール(ACT)によるセブン&アイ・ホールディングス <3382> [東証P]の買収提案は、資本の効率性をないがしろにし、低株価を放置してきた日本の株式市場に大きく活を入れるものになるだろう。日産自動車 <7201> [東証P]・ホンダ <7267> [東証P]の経営統合も、台湾電機大手の鴻海精密工業による日産の買収意向が伏線となっている。また、ニデック <6594> [東証P]が工作機械の老舗・牧野フライス製作所 <6135> [東証P]に対するTOBを発表したが、ニデック創業者の永守重信氏は「中国の脅威の前に時間はかけられない」との弁を述べた。
日本は米国が進む株式資本主義に急速にシフトしている。それは海外投資家の日本株買い、企業による自社株買いを通して、異常に割安だった日本株のバリュエーション革命を推進するだろう。
(2025年1月1日記 武者リサーチ「ストラテジーブレティン371号」を転載)
株探ニュース
2025/01/02 12:00
みんかぶニュース 市況・概況
武者陵司「2025年『世界資本主義再構築』と日本の好位置」(前編)<新春特別企画>
(1)何故、強い米国が必要かつ必然なのか
●歴史的転換を推進する二つの力
10年後を考えると、世界のシステム・経済主体が、いまのままで存続し続けることはないだろう。いまの世界を突き動かす二つの力が、すべてを押し流していくと考えられる。その第一は専制国家を排除した世界秩序の構築、第二はAI(人工知能)革命の不可逆的進展による国際分業と各国の経済・産業構造の変容、である。
●専制国家排除の国際秩序、いずれ見えてくる
第一の力について。どこかの時点で、専制国家を排除した世界秩序構築が加速化するだろう。中国、ロシア、北朝鮮、イランなどの専制国家は袋小路を進んでいる。アサド・シリアの滅亡に続き、ロシア・中国の経済的衰弱は避けられない。
他方で米国では資本主義の蘇生が進展し、米国のプレゼンスは経済的にも政治・軍事的にも高まらざるを得ない。資本主義的世界秩序は米国主導で再構築が進められるだろう。トランプ氏の利己的にも見える「強いアメリカ再構築」に他国が従順にならざるを得ないのは、それ以外の選択肢がないからである。トランプ外交を米国の孤立主義、ナショナリズム回帰と見ることは間違っている。強いアメリカの復活は、世界秩序再構築の必須の条件である。
●空前のAI革命、米経済優位を一段と強める
第二の基本的力について。空前のAI革命は国際分業(各国の相互依存関係)の再構築、および各国経済・産業構造の大転換を必然的に引き起こすだろう。技術革命のスピードは驚異的である。我々はムーアの法則(半導体では18カ月で2倍という集積度[=生産性]の向上が40年にわたって続いていること)が、現代経済の枠組みを根底から変えてしまっていることを痛感している。
しかし、いま進行中のAIの基本構造であるニューロネットワークは、ムーアの法則以上のペースでの指数関数的生産性の向上(=損失の低下)を引き起こしている、といわれている。これをスケーリング則といい、AIが応用されるすべての分野において、それと類似の劇的な変化を引き起こすことが想定される。
ほぼ1000億個に上るニューロン(脳細胞)が1ニューロン当たり1万個のシナプスでつながることにより、人類の知能は飛躍的に高まった。AIデバイスは演算素子がヒトの脳に類似したネットワークで連携されることにより形成され、並列処理と高速化を可能にした。半導体と異なり、AI実装はあらゆる人間の頭脳労働の場面で実装可能なので、生産性上昇は広範囲な分野で実現していきそうである。それは自動的に供給力を高め潜在成長率を引き上げていく。
●エヌビディアの株価急騰はバブルではない、何故か
このAIハイテク技術の多くは米国独占であり、他国は米国からの一極供給に依存することになる。この不可欠な基本技術と供給力を米国に依存し続けている以上(=米国は独占的に最先端ハイテクを供給している以上)、国際分業体制を後退させるわけにはいかない。トランプ氏の反グローバリズムという選挙レトリックを真に受けてはならないだろう。
AI技術が希少財であり代替供給者がいないとすれば、AI技術品・サービスの相対価格が高まる。一見バブルに見えるエヌビディアとマグニフィセント・セブンの株価上昇は、知的生産物の価格上昇を反映しており、根拠なき楽観とは言えない。AI革命は米国を圧倒的に有利にするだろう。
また、先進国での労働は頭脳労働中心なのでAIの応用分野が多岐にわたり、広範な生産性向上が期待できる。他方、労働力が潤沢な新興国は筋肉労働中心で、AIの活用分野は狭い。そもそも新興国の多くは余剰労働力を抱えているので、生産性向上が雇用を奪うことで社会不安を引き起こす可能性もある。つまり、AI実装のモチベーションは低く、生産性の伸びは先進国に比し低いままに止まる可能性が高い。いま勢いのあるように見えるBRICS(ブリックス)に集う新興諸国は、全体として経済プレゼンスを下げていくだろう。
●AI革命は国際分業上の各国の地位を変化させる
AI革命は、世界各地域における国際分業上の在り方を大きく変化させていくだろう。
①米国は、AI・ネットなどのデジタル分野および金融において独占的な強みを発揮し続ける。日欧はじめ各国は、米国にデジタル関連費用を支払い続けることになる。
②東アジア(台湾・韓国・中国・日本)は、半導体を中心とするハイエンド製造業を独占的に供給している。東アジアのエコシステムは最強であるゆえに代替は困難、東アジアへの供給依存は続くだろう。しかし、東アジア域内での供給体制は、徐々に日本にシフトするだろう。米国による中国排除が一段と進展すること、韓国の政治不安定化と競争力の低下、台湾積体電路製造(TSMC)製品など最先端ハイテク品の台湾集中のリスクの高まりにより、安全地域である日本へのシフトが強まるだろう。
③ASEAN(東南アジア諸国連合)諸国、インドなど多くの新興国においては衣料品やローエンド機械などの製造の優位性は変わらない。ただ、労働力潤沢な新興国諸国の相互間の競争があるうえ、中国には潜在的に巨大な生産力の余剰がある。価格支配力の維持は困難で、交易条件は改善できない。また、いまは順調に見える中国からの資本の提供は、中国のバブル崩壊=資本の破壊により衰弱していくだろう。
④欧州は、高級消費財および高額サービスにおいては強い。ものをいうブランド力は先進国、特に欧州の独壇場である。しかし、グリーンエネルギー・EV(電気自動車)産業の挫折、対中・対ロ戦略の失敗などにより、競争力のある国際商品は乏しい。国際分業上の立場は低下気味だろう。
●AI革命が米国の産業構造をどう変えるか、製造業復活は限定的
それではAI技術は、米国の産業構造をどのように変容させるだろうか。トランプ政権下の米国では減税による景気刺激策の下で、旺盛な需要・雇用創造が展開されるとみられる。引き続き雇用拡大の中心はサービス産業となるだろう。米国のハイテク優位は一段と強まる。
また、米国の信認の強さ、デジタル分野(デジタルサービスとデジタル企業の海外利益)の大幅黒字、高金利と海外からの対米投資増加によりドル高基調が継続するだろう。そうした条件の下では、米国の貿易赤字は改善しない。米国の製造業復活は限られたハイエンド・軍事関連分野に限定されるだろう。
メキシコとカナダとの分業は調整されるが、大きくは変わらないだろう。NAFTA(北米自由貿易協定)からUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)へと衣替えしたが、米国の対メキシコ、対カナダ貿易赤字は全く減らなかった。米国の狙いは中国の迂回輸出を遮断すること、不法移民の取り締まりなどであり、それらの譲歩を得たうえで交渉は決着するのではないか。
●2025年米国が世界経済の牽引車
米国の内需好調、中国からの輸入減少、ドル高などにより、日本・韓国・台湾やASEAN、欧州からの対米輸出は増加、中国に代わり米国が牽引する世界経済回復の年となるかもしれない。
●戦略と立ち位置が定まっているのは米国、日本
国際政治を概観すると、日本の立ち位置は恵まれている。混迷を深める欧州・中国・韓国、ミスジャッジしかねないBRICS諸国・ラテンアメリカ・アフリカ諸国に対して、日本の立ち位置は明確かつ好ましいものである。
つまり、中国やロシア、北朝鮮、イランなど専制国家に対する厳しいスタンス、DEI(多様性、公平性、包括性)やPC(ポリティカル・コレクトネス)など、経済合理性を否定する心情の影響の小ささ、安倍・岸田政権から踏襲されている、より透明で自由な金融を推進する「新しい資本主義」路線など、日本の政策のフレームワークは、グローバル投資家にとって納得性のあるものである。
(2)トランプが米国資本主義を蘇生させる
●格差分断の下で資本主義強化を支持する米国世論
格差・分断という現実は、他の国では容易に反資本主義・反市場経済、社会主義礼賛につながるが、米国ではむしろ市場と資本主義を強化する路線に収斂したことは、注目に値する。AI革命は劇的な生産性の向上により企業部門(特にマグニフィセント・セブンなどの巨大ハイテク企業)に著しい超過利潤=過剰貯蓄を与える一方、労働者への分配が滞り、格差を拡大させるという問題を引き起こした。
この企業部門に蓄積されている超過利潤をいかに経済システムに還流させ、成長(=新規需要と雇用創造)につなげるかが、米国経済が直面する最重要の課題である。
企業の内部資金(純利益+減価償却費)は、1960年代から1990年代まで、GDP(国内総生産)の10~12%で推移していた。それが、最近では14~16%で推移するようになっている。他方、企業の設備投資は長期にわたってGDP比10%程度で推移しており、企業部門の資金余剰が顕著になっている。この企業余剰をどう再分配し、新規需要と雇用につなげるのか。
●潤沢な企業利益の還流、政府がやるか市場に任せるか
その経路としては、①政府による企業・富裕者増税と社会的弱者に対する財政支援、②株式・資本市場を通した企業の利益還元、③強制的賃金引き上げ、労働分配率引き上げ、の3つが考えられ、①、③は政府による介入、②は市場経済を通した再配分と整理できる。
先の米国大統領選挙での明確な論点は、ハリス・民主党の「大きな政府・弱者優遇論による増税路線」と、トランプ・共和党の「小さな政府・アントレプレーナー支援論に基づく減税路線」の対立であり、まさにこの核心を巡って国民選択を問うものであった。そして、トランプ・共和党の勝利により、米国の方向性は定まった。
●AI技術の実装に先行する
トランプ氏はイーロン・マスク氏を政府効率化省DOGE(Department of Government Efficiency)トップに指名した。DOGEは組織も建物もないが、マスク氏は既存の行政組織OMB(行政管理予算局)を采配することで、行政の効率化と予算削減を行う、と報道されている。
マスク氏は2022年にツイッター(現・X)を買収し、従業員を8割削減するという大ナタをふるった。また、マスク氏が率いるロケット打ち上げ企業スペースXは打ち上げコストを8割削減し、契約を勝ち取った。それらは労働強化ではなく、業務の効率化と新技術の活用によって実現した。マスク氏は同様のことは、行政機構においても可能である、と考えているのであろう。
AIの進歩は驚異的であり、我々が最新の技術を装備すれば、信じがたい効率化が可能になる。それを阻んでいるのは、旧来の既得権益と慣習である。既得権益には、人権、マイノリティ保護などリベラルの衣を着ている主体も含まれている。DEI(多様性・公平性・包摂性)という口実そのものも、経済発展の阻害要因になっているという認識である。
現状においてすら、規制が少なく、労働と資本が流動的で最もイノベティブな米国が、一段と効率化するなら、それは競争相手にとって恐るべきことである。トランプ氏とマスク氏がこれほどまでに規制緩和と既得権益の打破にこだわる背景には、十分な技術的・経済的正当性がある、と言ってよいであろう。
●既得権益排除、徹底した規制緩和、究極の自由主義
トランプ氏、マスク氏が共有する徹底した反権威主義、自立自尊の開拓者精神は米国の歴史上、度々登場し、経済社会の舵を切ってきた、と言われている。1820年代のA・ジャクソン大統領、1980年代のR・レーガン大統領などはその代表例であろう。彼らはリアリストであり、力の信奉者でもあった(森本あんり「反知性主義」2015新潮選書)。
このように整理すると、トランプ・マスク氏の経済革命は左右両極が非難する新自由主義どころか、もっと激しい究極の自由主義(=リバタリアニズム)であり、大きな思想革命を伴っていることに気づかされる。それは市場と資本主義に対する強い信頼に起因している。AI革命はコストの透明性を大きく高め、市場機能を効率化した。いわば「神の見えざる手」を著しく強化した。それがトランプ・マスク流の究極のリバタリアニズムを正当化している。
※<後編>へ続く
株探ニュース
2025/01/02 12:00
みんかぶニュース 市況・概況
富田隆弥のチャート倶楽部2025スペシャル <新春特別企画>
「日経平均は高値4万5800円を目指す」
さて、2025年は「巳年」。格言に「辰巳天井」とあり、2024年に続いて高値を追う可能性はあるものの、ピークアウト(天井形成)には注意する必要がありそうだ。
新年の日本では、金利上昇、賃金上昇を軌道に乗せられるのか、また企業が利益成長をしっかりと示すことができるのか、さらには7月の参議院選挙の行方などが焦点となる。
一方、米国ではトランプ新大統領の下で規制緩和や国内産業の育成が期待される半面、インフレ高進と金利高止まりに対する警戒感、激しさを増す貿易摩擦、地政学リスクの高まりなど懸念要因も少なくない。これら要因のその時々の組み合わせによって、株式市場は一喜一憂を繰り返すことになろう。
ここではファンダメンタルズを踏まえつつ、チャート(テクニカル分析)を重視して2025年の株式市場を展望してみたい。詳細は後述するが、結論としては2025年の日経平均株価は「前半に高値4万5800円、後半は調整」のシナリオを想定している。
◆保ち合いで新年を迎える
まず、2024年相場を簡単に振り返ると、年初からAI(人工知能)に対する期待感を背景に上昇を強め、2月には34年ぶりに史上最高値(3万8957円)を更新。そして、3月に初めて4万円の大台に乗せると、4万1087円まで前年末比で約22%の上昇を演じた。
日経平均株価の年間の上昇率の上限は概ね15%~25%であるから、2024年は3月までで上昇エネルギーを大方使い果たしてしまったといえる。7月に史上最高値を4万2426円まで伸ばし、前年末比で26.7%まで上昇したが、8月5日に一時4753円安と過去最大の下落幅を記録するなど夏相場は大きく荒れた。その後4万円処まで戻したものの、年末まで膠着相場が続いた。
チャートで注目されるのは、日経平均株価が9月下旬から3カ月にわたって膠着を続けていることだ。週足チャートでは、52週移動平均線を下値に三角保ち合いが煮詰まりをみせている。
この保ち合いを煮詰めている状況は、前年(2023年)の終盤と似ている。2023年は6月に3万3772円まで上昇したがこれが年間の高値となり、年後半はもたついた。ただし、チャート的にはこのもたつきが2024年春の上放れにつながったといえる。
◆保ち合い上放れ、15%高で4万5800円
ならば、2025年も新春に保ち合いを上放れる可能性がある。仮に年間上昇率の目安である15%上昇ならば「4万5878円」、20%上昇なら「4万7872円」となり、2024年7月の史上最高値4万2426円を更新することになる。ただ、上昇エネルギーの蓄積につながる今回の保ち合い期間は3カ月と2023年の半分程度であり、上放れた時の上昇率は15%程度にとどまるだろう。
高値をつける時期としては、まずは2月~3月が想定される。1月下旬から3月期企業の決算(4-12月期)発表が始まり、3月は年度末を迎え、春闘もある。日経平均株価のもたつきが長引き、上放れが後ろにずれるなら高値は「4月~5月、4万7800円」の可能性も出てくる。どのタイミングで4万円に乗せて上放れるかが焦点になる。
◆半導体株指数SOX
2024年に日経平均株価の行方を左右したのは、NYダウでも為替でもなく、米国のフィラデルフィア半導体株指数SOXだった。エヌビディアを筆頭に市場テーマが「生成AI」に偏り、日本株も半導体関連株が上昇を牽引した。だが、SOXの勢いに陰りが出ると、日本株も歩調を合わせて年後半は調整を余儀なくされた。その意味で、2025年はSOXが日本株のカギを握るとみている。SOXの調整が半年を経過することで、新年は調整一巡から生成AI相場の第2ラウンドもあり得よう。
◆NN倍率1倍
以前にも紹介したが、日経平均株価とNYダウの価格を比較する「NN倍率」(日経平均株価÷NYダウ)という指標がある。12月30日の日経平均株価3万9894円、29日のNYダウ4万2992ドルで算出した倍率は「0.9倍」だが、2024年前半は日経平均株価が高くNN倍率は1.0倍以上で推移していた。それが7月に逆転して半年が経つ。ならば2025年はどこかで日経平均株価が上昇してNYダウに追いつくことも想定される。いずれにしても、2025年は年前半の上昇がポイントとなるだろう。
◆春闘で大幅賃上げは可能か
ここからは懸念要因を挙げておく。
ドイツのフォルクスワーゲンは国内工場の閉鎖を回避することで労使が合意した。ただし、労働組合は賃金の一部減額を受け入れている。国内ではホンダ <7267> [東証P]と日産自動車 <7201> [東証P]・三菱自動車工業 <7211> [東証P]の統合報道に驚かされたが、自動車業界を巡る厳しい環境はドイツと変わらない。
脱デフレに向けて賃上げに取り組む日本だが、産業の要(かなめ)である自動車業界の状況を踏まえると、春闘での大幅な賃上げの実現は怪しく思えてくる。12月11日に自動車総連は2025年春季交渉で1万2000円を要求の目安とする方針を決めたが、すんなりこの水準で決まるかは疑問で、それが株式市場に影響しかねないと懸念している。
◆マネーバブルは5年目に
2020年3月、世界の株式市場をコロナショックが襲い、各国・地域の金融当局は一斉に大胆な金融緩和に動いた。その甲斐もあって「過剰流動性相場」の恩恵を享受して、2024年に日米欧の主要市場は最高値の更新を果たした。表現を換えると、「マネーバブル」は間もなく5年目に差し掛かる。
米国ではインフレが顕著となり、米連邦準備制度理事会(FRB)は政策金利を5.5%まで引き上げた。2024年9月から引き下げに転じたが、インフレの加速ペースは緩んだものの鎮静化に向かう兆しはまだ見られない。そして、トランプ氏の大統領返り咲きによりインフレの再加速が懸念されている。新大統領と議会・マスコミとのハネムーン期間(100日)は4月までとなる。それ以降はマーケットが「トランプリスク」を一段と意識せざるを得ない状況となることも想定される。
米国市場にバブルの予兆が漂っていることは否めない。その意味で2025年は米国株、日本株ともにチャートの「陰転」シグナルには警戒が必要となる。世界の投資マネーはETF(上場投信)など「ファンド」に集中しており、動き出すと一方向に走りやすいのがいまの相場だ。上述したように年前半の上昇を想定するが、揺り戻しによる年後半の調整には注意を払う必要がありそうだ。
新年の注目株については、次回で紹介する。
(2024年12月30日 記、次回更新は2025年1月11日10時を予定)
情報提供:富田隆弥のチャートクラブ
★元日~6日に、2025年「新春特集」を一挙、"25本"配信します。ご期待ください。
→→ 「新春特集」の記事一覧をみる
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2025/01/02 09:00
みんかぶニュース 市況・概況
米国市場データ ニューイヤーズデーのため休場 (1月1日)
米国市場はニューイヤーズデーのため休場。
株探ニュース
2025/01/02 08:55
みんかぶニュース 市況・概況
シカゴ日経平均先物 ニューイヤーズデーのため休場 (1月1日)
米国市場はニューイヤーズデーのため休場。
株探ニュース
2025/01/02 08:50
みんかぶニュース 市況・概況
<きょうのイベント>
■ きょうのイベント
特になし
出所:MINKABU PRESS
2025/01/02 07:30
みんかぶニュース 市況・概況
米国市場データ NYダウは29ドル安と3日続落 (12月31日)
― ダウは29ドル安と3日続落、長期金利上昇を背景にハイテク株などに利益確定の売り ―
NYダウ 42544.22 ( -29.51 )
S&P500 5881.63 ( -25.31 )
NASDAQ 19310.79 ( -175.99 )
米10年債利回り 4.572 ( +0.033 )
NY(WTI)原油 71.72 ( +0.73 )
NY金 2641.0 ( +22.9 )
VIX指数 17.35 ( -0.05 )
シカゴ日経225先物 (円建て) 39390 ( -600 )
シカゴ日経225先物 (ドル建て) 39485 ( -505 )
※( )は大阪取引所終値比
株探ニュース
2025/01/01 08:23
みんかぶニュース 市況・概況
シカゴ日経平均先物 大取終値比 600円安 (12月31日)
シカゴ日経225先物 (円建て) 39390 ( -600 )
シカゴ日経225先物 (ドル建て) 39485 ( -505 )
※( )は大阪取引所終値比
株探ニュース
2025/01/01 08:18
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出所:MINKABU PRESS
2025/01/01 07:30
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