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シナネンHD Research Memo(6):第二次中期経営計画を着実に進展させる方針

配信日時:2022/07/21 15:26 配信元:FISCO
■中期経営計画

4. 第二次中期経営計画の進捗
第二次中期経営計画の進捗は、コロナ禍の影響で想定より緩やかということができる。一方で、ウクライナ情勢などによる外部環境変化や脱炭素社会に向けた動きに対して、的確な対応も急がれている。シナネンホールディングス<8132>は、足もとのコロナ禍の規制緩和を機に、2027年の創業100周年に向けてペースを上げ、第二次中期経営計画の残りと第三次中期経営計画のなかで基盤整備や新規事業開発、M&Aなどをより着実に進展させていくことになると思われる。以下では、第二次中期経営計画の進捗について述べる。

(1) 資本効率の改善
「資本効率の改善」においては、低効率資産の活用・売却、既存事業の選択と集中を進めてきた。投資基準をクリアした資本効率の高い事業などに投資する一方、低収益・低成長の事業で収益性や資本効率を向上できないと認められる事業については撤退・売却を検討した。この結果、東京都品川区や埼玉県川口市に保有していた固定資産に加えて、ミライフが所有していた大阪府の貯蔵施設などの固定資産も売却し、シナネンが運営する一部事業の清算も実行した。また、ミライフ西日本が運営する愛媛の営業拠点を営業権ごと譲渡し、飛び地になっている拠点の整理も進めた。さらに、ブラジルで進めていたバイオマス事業も撤退した。ブラジルでは多年草植物「CAPIM」を原料にした民生用炭の製造を行い、循環型バイオマス燃料事業への発展を目指していたが、投資基準を上回る収益を確保することが困難と判断されたためである。コロナ禍で、ブラジル国内が混乱したことも影響したと思われる。しかし、「CAPIM」を活用する知見は得られており、後に若干触れるが、日本で新たに事業展開する可能性もあると考えられる。定量目標の持続的なROE6%以上については、売上高の多くを占める石油事業が固定マージンのため原油高やコスト高によって収益性が低下するという特徴があり、一方で現在50%以上ある自己資本比率の水準へのこだわりもあって、達成には想定よりやや長い時間がかかりそうだ。

(2) 持続的成長を実現する投資の実行
「持続的成長を実現する投資の実行」では、新規事業への戦略投資や基幹システムの整備などIT関連の投資を進めている。そのなかでもシェアサイクルの事業化が急ピッチである。シェアサイクル事業は、前述したように、ソフトバンクグループ企業のシェアサイクルサービス「HELLO CYCLING」を利用した、「ダイチャリ」ブランドで展開する電動アシスト自転車のシェアリングサービスである。現在、首都圏を中心にコンビニ大手3社や地方自治体、主要駅、地域小売店などと連携しながらサービスを拡大している。シェアサイクルビジネスは、世界に先行した中国で乗り捨て問題や参入過多による競争激化といった課題が生じたが、ステーション密度を高くした欧米では普及が進んでいる。このため同社も、首都圏で高密度なステーション開発を戦略的に進めている。2022年3月期は、埼玉県ふじみ野市などと新たな実証実験を進める一方、首都圏私鉄や地域企業などとも新たな事業展開を推進した。同社のシェアサイクル事業は、ノウハウの蓄積やコロナ禍の3密回避ニーズもあって、ユーザー数や利用回数が着実に増加しており、第3の交通インフラとして定着傾向にあるようだ。効率性を意識しスクラップ&ビルドしながら事業拡大を進めてきたが、現在ではシェアサイクル事業者として国内有数の規模となり、収益化も見えてきた。

同社は再生可能エネルギー関連の新規事業にも注力している。発電効率・静音性・安全性に優れた技術で注目される、新型マイクロ風車の開発・設計・製造などを行っている。新型マイクロ風車は、電源の確保が難しい場所でも小規模な工事で設置が可能で、防犯カメラやLED照明、Wi-Fi基地局など様々な機能を搭載できる上、独立型電源としてBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)にも対応している特徴を持つ。現在は、2023年3月期中の販売開始を目指し、2022年3月期に進めた実証実験や風洞実験で得られたデータを基に製品化に向けた取り組みを進めている。当面は国内展開が優先するが、将来はグローバルな展開も見据えており、非常に有望な事業ということができる。また、韓国における大型陸上風力発電事業についても2023年3月期中に開発許可を取得したい考えだ。ほかにも、家庭向け環境配慮型電力プラン「シナネンあかりの森でんき」の販売も展開しており、環境意識の高いユーザーへの販売を促進している。

また、同社は基幹システムの整備を進めており、次世代のIT基盤では、自社内サーバーからクラウドベースに移行してあらゆる作業をオンライン化、テレワーク環境を整備して多様な働き方改革に対応、繁忙期でも事務の効率化や業務負担の軽減が可能になるなど生産性の向上が見込まれている。AIやIOT、RPA、ビッグデータの活用、他社クラウドサービスとの連携などメニューは多いが、現在データを整備中で、第三次中期経営計画以降には、生産性向上のみならずビジネスモデルの変革へとDXのレベルを引き上げていく計画である。また、中央電力やGMOと共同開発・運用しているポイントモールでは、同業他社を巻き込んだ各種キャンペーンなどによって会員を獲得し、当面、LPガスの顧客網65万人を中心に100万人の会員数を目指す計画である。なお、2021年12月に「デジタルガバナンス・コード」の基本的事項に対応する企業として同社の取り組みが評価され、経産省の認定する「DX認定事業者」に選定された。

(3) 社員の考え方・慣習・行動様式の変革
「社員の考え方・慣習・行動様式の変革」では、従来の人事部ラインのプロジェクトからステイタスを引き上げ、代表取締役の直下にグループ改革推進室を設け、組織風土改革と働き方改革を強力に推進する体制を2020年に構築した。これまで、従業員とのFace To Faceミーティングで社長が約350人の社員と直接対話を実施、全社ミーティングでは1,000人以上の社員がリアルタイムで参加、グループ全社を対象にした職場座談会を全国で100回以上開催するなど、風土改革プロジェクトは順調に進展している。定量評価は難しいが、風通しが着実によくなっているようで、指示命令系統もトップダウンからボトムアップが増えるなど社員の意識改革は進んだようだ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)


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