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澁澤倉庫 Research Memo(8):「Shibusawa2030ビジョン」達成へ向けて強みを生かす

配信日時:2022/07/20 16:08 配信元:FISCO
■澁澤倉庫<9304>の中期経営計画

2. 「澁澤倉庫グループ中期経営計画2023」
(1) 「澁澤倉庫グループ中期経営計画2023」の概要
「Shibusawa2030ビジョン」を達成するためのステップとして「経営計画2023」を2021年5月に発表した。2024年3月期に営業収益730億円、営業利益45億円を目指す。「経営計画2023」の目的は、1)物流事業の成長戦略を着実に実行することで自社の強みを明確にし、競争力のある物流サービスを提供する、2)事業環境の変化に合わせコストの削減と適正料金の収受など受注条件の見直しを行い、既存業務の採算性を向上させる、3)既存の物流サービスの領域にとらわれず、将来の新たなサービスを創造するための布石を打つ、4)戦略的パートナーシップと物流事業併営メリット追求により、不動産事業ポートフォリオを充実させる、5)持続的な企業価値向上のためESGへの取り組みを進化させる、の5つである。なかでも成長戦略では、専門性や機械化・自動化といった強みを強化するとともに受注条件の見直しを進め、採算性向上とさらなる競争力の強化を目指す。また、「Shibusawa2030ビジョン」達成のために、物流の枠を超えたアウトソーシングサービスを拡大するとともに、ESGへの取り組みを強化する。

(2) 強みを生かした成長戦略
「経営計画2023」のなかで、専門性の追求、機械化・自動化、業域の拡大といった強みを生かして、競争力のさらなる強化とサービス領域の拡大を図っていく考えである。専門性の追求については多品種少量貨物の効率的運営モデルの進化や拠点拡充によるドミナント効果、消費財物流における専門性を今以上に発揮する方針である。

機械化・自動化では、マンパワーとオートメーションを融合した在庫波動を吸収する効率的運営モデルの確立、車両・配車データのデジタル化による運行効率の向上、AI・RPA導入による業務の効率化などを一層推進する。特に機械化においては、AGV(無人搬送機)によるフルオートメーションからGAS(ゲートアソートシステム)によるセミオートメーション、人によるマニュアル作業を並列で処理できる仕組みを構築し、機械のキャパシティに制限されない柔軟な在庫波動対応力を強化する。そのためにロット当たりの在庫量や在庫波動などのデータを分析し、貨物特性、数量、荷動きなど業務の全体像を把握する。そのうえで、保管形態と作業形態の最適な組み合わせ、作業効率を低下させない保管レイアウトなどを検討し、物流センターを設計、保管効率と作業効率を最大限高めた庫内オペレーションを実現する考えである。

業域の拡大では、海外現地物流やアウトソーシングサービスの拡大を目指す。このうち海外物流では、澁澤(香港)有限公司で保冷トラックを導入して香港域内の食品物流に参入した。澁澤物流(上海)では物流拠点と保有トラックを拡充することで中国国内物流業務を拡大する。Shibusawa Logistics Vietnamではトラックと内航船を活用したミルクラン輸送による現地工場への部品納入を進め、TDG-Shibusawa Logistics,Inc.では倉庫拠点の開設により国内物流や文書保管業務などへ進出する。また、アウトソーシングサービスでは、貿易事務や流通加工代行、受発注代行、データ加工分析など物流の枠を超え、顧客の領域までもターゲットにサービスを展開していく考えである。

(3) ESG戦略
「正しい道理で追求した利益だけが永続し、社会を豊かにできる」という創業者・渋沢栄一の精神を受け継ぐ同社は、ESG経営にも積極的に取り組む方針である。Environment(環境)では、モーダルシフトの推進やリサイクル物流の促進、サプライチェーン全体の最適化などによりCO2排出削減につながる物流サービスを提供し、倉庫やビル照明のLED化、再生可能エネルギーや環境配慮車両の導入により自社の事業活動におけるCO2を削減する。Social(社会)では、ダイバーシティ/人権の尊重、安全の確保/労働環境改善、機械化・自動化による労働負荷軽減などにより働き甲斐のある労働環境を構築し、災害備蓄品の取り扱い、学生への物流見学会、地域の清掃/交通安全活動参加などにより地域社会に対して貢献を深める。Governance(企業統治)では、コンプライアンスの徹底、内部統制システムの効果的運営、コーポレートガバナンス方針など持続的成長のための仕組みを構築する一方、Value、Missionの浸透、適切な情報開示(IR/SR)、リスクマネジメント/BCPなどによりガバナンスを補強する。

(4) 「経営計画2023」におけるキャッシュ・フロー
なお、「経営計画2023」におけるキャッシュ・フローは、安定的な財務基盤を維持しつつ、期間中に営業活動によるキャッシュ・フロー約200億円と資金調達100億円~200億円の計300億円~400億円のキャッシュ・インを計画している。これに対して、成長・更新投資で250億円~350億円と安定増配の継続で35億円の計285億円~385億円キャッシュ・アウトを計画している。成長・更新投資の詳細は、多品種少量貨物専用拠点の増床、輸入雑貨・食品の取扱い拠点の増床、飲料拠点のさらなる拡大(千葉地区におけるドミナント効果の発揮)など国内物流ネットワークの拡充のほか、多品種少量貨物取扱いのオペレーション能力向上、日用品・パレット貨物取扱いの効率化推進、飲料DCへの自動化設備導入などDX推進・機械化・自動化、海外事業投資やサステナビリティ推進の取り組みを計画している。こうした計画を着実に実現するため、実効性のあるコーポレートガバナンスの確立は欠かせない。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)


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