注目トピックス 日本株
ワコム Research Memo(4):2022年3月期上期は想定どおりの進捗。プロ向けのディスプレイ製品が拡大
配信日時:2021/11/30 15:44
配信元:FISCO
■決算概要
1. 2022年3月期上期業績の概要
ワコム<6727>の2022年3月期上期の連結業績は、売上高が前年同期比9.2%減の50,259百万円、営業利益が同12.3%減の7,560百万円、経常利益が同9.5%減の7,661百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同8.2%減の5,766百万円と、コロナ禍に伴う巣ごもり需要の落ち着き等により減収減益となったものの、想定どおりの進捗である。また、コロナ禍以前の業績水準※を上回っており、ベース部分では順調に底上げができている。
※コロナ禍以前の前々期(2020年3月期上期)の連結業績は、売上高が46,932百万円、営業利益が3,010百万円、経常利益が2,548百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が2,208百万円であった。
売上高は、「ブランド製品事業」及び「テクノロジーソリューション事業」がともに減収となった。「ブランド製品事業」は、コロナ禍に伴う巣ごもり需要が急増した前年同期と比べると僅かに減収となったが、主力のプロ向けディスプレイ製品については順調に伸ばすことができた。一方、「テクノロジーソリューション事業」については、OEM提供先メーカーにおける製品ポートフォリオの変化により大幅な減収となった。また生産サプライチェーンの制限※も一部顕在化しつつあるが、一過性要因によるところが大きいと考えられる。
※東南アジアでのコロナ禍の影響や世界的な半導体不足など。
損益面でも、減収による収益の押し下げや製品ミックスの影響※1に加え、積極的な研究開発投資の実施により営業減益となった。ただ、原価率については、1)為替の円安影響※2や、2)米国の対中追加関税措置の回避※3のほか、3)主力のディスプレイ製品の原価低減などにより大きく改善しており、特に3)については、製品ミックスの影響を軽減させる意味でも評価すべきポイントと言える。また、販管費についても、将来の成長加速に向けた研究開発費を積極投入しながらも、各費用の最適化によりほぼ前年同期並みの水準に抑えることができた。
※1 とりわけ相対的に原価率の低い「ブランド製品事業」のペンタブレット製品の構成比減は、利益率全体を悪化させる要因となる。
※2 同社試算によれば、営業利益を約9億円押し上げる要因となった。
※3 「ブランド製品事業」の一部製品ラインの主要生産工程を中国本土以外の地域(台湾等)に移管するなどの対応を行い、一部対米輸出モデルにおいて、米国税関国境取締局から対中追加関税措置を適用されないことが認められたもの。約7億円の売上原価削減要因となったようだ。
財政状態については、サプライチェーンの影響(部品不足等)に備え「たな卸資産」を増やした一方、手元流動性(現預金)が減少したことなどにより、総資産は前期末比6.1%減の66,830百万円に減少した。一方、自己資本は内部留保の積み増しにより同4.7%増の39,445百万円に増加したことから、自己資本比率は59.0%(前期末は52.9%)に改善した。
2. 事業別業績の概要
(1) ブランド製品別事業
売上高は前年同期比0.7%減の25,879百万円、セグメント利益が同28.5%増の5,494百万円と減収ながらも増益となった。売上高は「クリエイティブソリューション」が巣ごもり需要等の落ち着きにより減少した一方、「ビジネスソリューション」が欧州を中心に伸びたことで、全体ではわずかな減収にとどまった。損益面では、為替の円安影響や米国の対中追加関税措置の回避のほかディスプレイ製品の原価低減などにより、大幅な増益を確保した。
a) クリエイティブソリューションの売上高
前年同期比2.8%減の23,731百万円と減少した。製品別に見ると、「ディスプレイ製品」が増収を確保した一方、「ペンタブレット製品」及び「モバイル製品他」が減収となった。「ディスプレイ製品」はエントリーモデルが伸び悩んだ一方、経済活動の再開に伴う積極的な営業活動によりプロ向け製品がクリエイティブ需要(アニメ、映画、ゲーム等)の拡大を取り込む形で大きく伸びている。一方、「ペンタブレット製品」についてはプロ向け製品や低価格帯モデルが伸びたものの、需要の落ち着きにより中価格帯モデルが大幅に減少した。「モバイル製品他」はモバイル製品以外のスタイラスペン製品が減少した。
b) ビジネスソリューションの売上高
前年同期比31.9%増の2,148百万円と増加した。経済活動の再開に伴う積極的な営業活動により、欧州を中心に液晶ペンタブレットの売上が大きく伸びた。
(2) テクノロジーソリューション事業
売上高は前年同期比16.7%減の24,380百万円、セグメント利益が同34.9%減の4,217百万円と減収減益となった。売上高は「AESテクノロジーソリューション」が増加した一方、「EMRテクノロジーソリューション他」が大きく減少した。損益面でも、減収による収益の下押しに加え、次世代技術開発等に向けた研究開発投資等により減益となった。
a) AESテクノロジーソリューションの売上高
前年同期比10.0%増の9,888百万円と増加した。アクティブES方式デジタルペン製品に対して、OEM提供先メーカー各社から引き続き高い評価を得ており、生産サプライチェーンの制限等による影響を受けながらも、増収を確保することができた。
b) EMRテクノロジーソリューション他の売上高
前年同期比28.6%減の14,492百万円と減少した。OEM提供先の製品ポートフォリオの変化(新製品リリースに伴う一時的な影響)や生産サプライチェーンの制限により減収となった。
3. 2022年3月期上期の総括
以上から、2022年3月期上期を総括すると、コロナ禍に伴う急激な需要増があった前年同期と比べて減収減益となったものの、その中身を見ると一過性需要の落ち着きによる反動減と、経済活動の再開に伴う需要増のマイナス・プラス両面による影響を受けながら、ニューノーマルを見据えた本来の姿に戻りつつあると言える。その視点に立てば、中核をなすクリエイティブ需要の取り込みや教育分野での利用拡大等により、2020年3月期の業績水準を上回っているところは、確実に成長軌道に乗っているとの見方ができるであろう。一方、東南アジアでのコロナ禍再拡大の影響や世界的な半導体不足など生産サプライチェーンの制限がしばらくは足かせとなる可能性には注意が必要であるものの、クリエイティブ需要の伸びをはじめ、教育分野での利用拡大※1や様々な社会インフラDXへの寄与※2、他社製品との連携の動きなど、事業拡大の余地は益々大きくなっており、それらを取り込むための活動(営業活動や研究開発投資など)についても順調に進捗しているところは、評価すべきポイントと言えるだろう。
※1 オンラインと対面によるハイブリッド授業の普及や教育端末への搭載など。
※2 ヘルスケア(医療)分野や企業向けドキュメントフローへの導入、各種公共市政サービスや将来的な電子投票への活用など。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
<EY>
1. 2022年3月期上期業績の概要
ワコム<6727>の2022年3月期上期の連結業績は、売上高が前年同期比9.2%減の50,259百万円、営業利益が同12.3%減の7,560百万円、経常利益が同9.5%減の7,661百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同8.2%減の5,766百万円と、コロナ禍に伴う巣ごもり需要の落ち着き等により減収減益となったものの、想定どおりの進捗である。また、コロナ禍以前の業績水準※を上回っており、ベース部分では順調に底上げができている。
※コロナ禍以前の前々期(2020年3月期上期)の連結業績は、売上高が46,932百万円、営業利益が3,010百万円、経常利益が2,548百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が2,208百万円であった。
売上高は、「ブランド製品事業」及び「テクノロジーソリューション事業」がともに減収となった。「ブランド製品事業」は、コロナ禍に伴う巣ごもり需要が急増した前年同期と比べると僅かに減収となったが、主力のプロ向けディスプレイ製品については順調に伸ばすことができた。一方、「テクノロジーソリューション事業」については、OEM提供先メーカーにおける製品ポートフォリオの変化により大幅な減収となった。また生産サプライチェーンの制限※も一部顕在化しつつあるが、一過性要因によるところが大きいと考えられる。
※東南アジアでのコロナ禍の影響や世界的な半導体不足など。
損益面でも、減収による収益の押し下げや製品ミックスの影響※1に加え、積極的な研究開発投資の実施により営業減益となった。ただ、原価率については、1)為替の円安影響※2や、2)米国の対中追加関税措置の回避※3のほか、3)主力のディスプレイ製品の原価低減などにより大きく改善しており、特に3)については、製品ミックスの影響を軽減させる意味でも評価すべきポイントと言える。また、販管費についても、将来の成長加速に向けた研究開発費を積極投入しながらも、各費用の最適化によりほぼ前年同期並みの水準に抑えることができた。
※1 とりわけ相対的に原価率の低い「ブランド製品事業」のペンタブレット製品の構成比減は、利益率全体を悪化させる要因となる。
※2 同社試算によれば、営業利益を約9億円押し上げる要因となった。
※3 「ブランド製品事業」の一部製品ラインの主要生産工程を中国本土以外の地域(台湾等)に移管するなどの対応を行い、一部対米輸出モデルにおいて、米国税関国境取締局から対中追加関税措置を適用されないことが認められたもの。約7億円の売上原価削減要因となったようだ。
財政状態については、サプライチェーンの影響(部品不足等)に備え「たな卸資産」を増やした一方、手元流動性(現預金)が減少したことなどにより、総資産は前期末比6.1%減の66,830百万円に減少した。一方、自己資本は内部留保の積み増しにより同4.7%増の39,445百万円に増加したことから、自己資本比率は59.0%(前期末は52.9%)に改善した。
2. 事業別業績の概要
(1) ブランド製品別事業
売上高は前年同期比0.7%減の25,879百万円、セグメント利益が同28.5%増の5,494百万円と減収ながらも増益となった。売上高は「クリエイティブソリューション」が巣ごもり需要等の落ち着きにより減少した一方、「ビジネスソリューション」が欧州を中心に伸びたことで、全体ではわずかな減収にとどまった。損益面では、為替の円安影響や米国の対中追加関税措置の回避のほかディスプレイ製品の原価低減などにより、大幅な増益を確保した。
a) クリエイティブソリューションの売上高
前年同期比2.8%減の23,731百万円と減少した。製品別に見ると、「ディスプレイ製品」が増収を確保した一方、「ペンタブレット製品」及び「モバイル製品他」が減収となった。「ディスプレイ製品」はエントリーモデルが伸び悩んだ一方、経済活動の再開に伴う積極的な営業活動によりプロ向け製品がクリエイティブ需要(アニメ、映画、ゲーム等)の拡大を取り込む形で大きく伸びている。一方、「ペンタブレット製品」についてはプロ向け製品や低価格帯モデルが伸びたものの、需要の落ち着きにより中価格帯モデルが大幅に減少した。「モバイル製品他」はモバイル製品以外のスタイラスペン製品が減少した。
b) ビジネスソリューションの売上高
前年同期比31.9%増の2,148百万円と増加した。経済活動の再開に伴う積極的な営業活動により、欧州を中心に液晶ペンタブレットの売上が大きく伸びた。
(2) テクノロジーソリューション事業
売上高は前年同期比16.7%減の24,380百万円、セグメント利益が同34.9%減の4,217百万円と減収減益となった。売上高は「AESテクノロジーソリューション」が増加した一方、「EMRテクノロジーソリューション他」が大きく減少した。損益面でも、減収による収益の下押しに加え、次世代技術開発等に向けた研究開発投資等により減益となった。
a) AESテクノロジーソリューションの売上高
前年同期比10.0%増の9,888百万円と増加した。アクティブES方式デジタルペン製品に対して、OEM提供先メーカー各社から引き続き高い評価を得ており、生産サプライチェーンの制限等による影響を受けながらも、増収を確保することができた。
b) EMRテクノロジーソリューション他の売上高
前年同期比28.6%減の14,492百万円と減少した。OEM提供先の製品ポートフォリオの変化(新製品リリースに伴う一時的な影響)や生産サプライチェーンの制限により減収となった。
3. 2022年3月期上期の総括
以上から、2022年3月期上期を総括すると、コロナ禍に伴う急激な需要増があった前年同期と比べて減収減益となったものの、その中身を見ると一過性需要の落ち着きによる反動減と、経済活動の再開に伴う需要増のマイナス・プラス両面による影響を受けながら、ニューノーマルを見据えた本来の姿に戻りつつあると言える。その視点に立てば、中核をなすクリエイティブ需要の取り込みや教育分野での利用拡大等により、2020年3月期の業績水準を上回っているところは、確実に成長軌道に乗っているとの見方ができるであろう。一方、東南アジアでのコロナ禍再拡大の影響や世界的な半導体不足など生産サプライチェーンの制限がしばらくは足かせとなる可能性には注意が必要であるものの、クリエイティブ需要の伸びをはじめ、教育分野での利用拡大※1や様々な社会インフラDXへの寄与※2、他社製品との連携の動きなど、事業拡大の余地は益々大きくなっており、それらを取り込むための活動(営業活動や研究開発投資など)についても順調に進捗しているところは、評価すべきポイントと言えるだろう。
※1 オンラインと対面によるハイブリッド授業の普及や教育端末への搭載など。
※2 ヘルスケア(医療)分野や企業向けドキュメントフローへの導入、各種公共市政サービスや将来的な電子投票への活用など。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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