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シナネンHD Research Memo(6):仕入施策が奏功し営業利益は大幅増益となった
配信日時:2021/09/02 15:06
配信元:FISCO
■業績動向
1. 2021年3月期の業績動向
シナネンホールディングス<8132>の2021年3月期の業績は、売上高217,122百万円(前期比8.4%減)、営業利益2,935百万円(同19.6%増)、経常利益3,023百万円(同37.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益2,717百万円(同9.1%減)となった。国内経済は、コロナ禍の影響により厳しい状況が続く中、政府の経済支援策の効果などもあり、個人消費、企業収益ともに持ち直しの動きが見られた。しかし、感染症の再拡大に伴い緊急事態宣言が再発出され、飲食業界や小売・サービス業界など個人消費関連の産業が軒並み弱含みの展開となるなど、不透明な状況も継続した。国内のエネルギー業界においては、原油価格とプロパンCPが期初にコロナ禍の影響などにより大きく下落したが、OPECプラスの協調減産や世界的なワクチン普及への期待感などから上昇基調に転じ、期末には原油価格・プロパンCPともにコロナ禍前の水準に回復した。需要に関しては、少子高齢化や省エネ機器の普及、ライフスタイルの変化などにより長期的な減少傾向が継続しているものの、2021年初の寒波の影響により、下期を中心に比較的堅調に推移した。
このような環境下、同社の業績は、コロナ禍の影響による販売価格の下落により、減収となった。一方、仕入施策で安い原油を確保したことにより売上総利益率が大きく改善し、シェアサイクル事業やマイクロ風車事業など新規事業で先行コストなどが発生したものの、営業利益は2ケタ増益を達成することができた。また、第二次中期経営計画で示した定量目標と定性目標の達成に向けて、固定資産の譲渡や新規事業への継続投資などの取り組みを進めた。なお、資本効率の改善に向けた動きの中で特別損益がマイナスに働いたため、結果的に親会社株主に帰属する当期純利益のみ減益となった。
3セグメントともに増益貢献
2. 2021年3月期のセグメント別業績動向
2021年3月期のセグメント別業績は、BtoC事業が売上高62,994百万円(前期比12.8%減)、営業利益963百万円(同25.7%増)、BtoB事業が売上高135,998百万円(同8.8%減)、営業利益892百万円(同8.9%増)、非エネルギー及び海外事業が売上高17,781百万円(同15.3%増)、営業利益243百万円(前期は営業損失50百万円)となった。
BtoC事業は、原油価格やプロパンCPの低下による販売単価の下落に加えて、夏場の平均気温が平年と比較して高かったことなどによる販売数量の減少により減収となった。しかし利益面では、卸電力市場の高騰はあったものの、寒冷地を中心に差益が改善したこと、コロナ禍による「自粛」を背景に物流費や営業関連経費など販管費が減少したことなどにより大幅な増益となった。その一方、主力のLPガス及び灯油販売において進めている営業権買収などM&Aについては、案件が想定より少なかった。なお、収益基盤の強化と事業基盤の拡大に向けては、西日本エリアにおいても家庭向け電力販売事業を開始したほか、関東エリアでは水回りリフォーム専門店を新たに2店舗オープンするなど積極的に取り組みを進めた。
BtoB事業では、主力の石油事業で、コロナ禍により産業用エネルギーなどの需要が低迷したが、春先の低温や年末年始の寒波などから需要が増加に転じ、前年を上回る販売数量を確保することができた。また、電力事業で、契約電力量や太陽光発電の分譲販売が伸長した。しかし、原油価格やプロパンCPの低下を背景に販売単価が下落、減収の主因となった。利益面に関しては、物流単価上昇に伴う物流費の増加、新規事業のマイクロ風車の開発費用、コロナ禍によるSS事業の低迷という圧迫要因はあった。しかし、価格競争力の強い原油を海外で仕入れて国内に供給するという、原油市況の変動に応じた施策を講じたため、圧迫要因をカバーする以上の差益を確保、連結全体の売上総利益率改善の主因にもなった。なお、現状は、既存の石油販売施設(灯油センター)の軽油出荷能力を増強したオイルスクエアの利用率が向上しており、強みを持つ灯油の販売に加え軽油の販売にも注力している。また、法人向けを中心とした電力販売事業では、契約電力量が伸長したほか、電源構成の最適化による原価低減に取り組んだ。マイクロ風車関連事業は、2021年3月にさいたま市で実証実験を開始するなど、本格販売開始に向けた取り組みを進め、韓国で参画した大型風力発電事業は、2021年3月期下期の稼働に向けて開発許可を待っている状況にある。
非エネルギー及び海外事業において、自転車事業では、新入学需要がコロナ禍の影響で2020年3月期第4四半期から2021年3月期第1四半期にずれ込んだため販売が順調に推移、プライベートブランド車の拡販や不採算店舗の閉店を進めたこともあって収益力も改善した。シェアサイクル事業は、ステーションの設置や自転車稼働台数の拡大、利用率向上などにより順調に拡大した。環境・リサイクル事業は、コロナ禍の影響による建設工事の中断などで原料となる建築廃材の発生が減少傾向にある中、コスト抑制などによって収益を確保した。抗菌事業は、世界的な感染症拡大を受け、北米のマスク・手術衣向け抗菌剤の受注が大幅に拡大するなど好調に推移した。下期に入ると北米向け需要は一段落したものの、国内外からの問い合わせが急増したため増産体制を整備、一方で展示会への出展などマーケティング活動を強化して認知度の向上や販路の開拓・拡大に努めた。システム事業は、主力のLPガス販売管理システムが安定して収益に貢献、加えて電力自由化に対応した電力CIS(顧客管理システム)の利用が大幅に伸長するなど好調に推移、一方でシステム開発などの内製化率を高めて原価の低減を推進した。建物維持管理事業は、コロナ禍により一部施設で休業はあったものの、病院などからの感染消毒清掃の受注が増加するなど順調に推移した。ブラジルのバイオマス事業は、コロナ禍が継続していることなどを背景に撤退を決定した。以上、非エネルギー及び海外事業では、各事業ともおおむね順調に収益化が進んだことで、セグメント利益は大きく黒字転換した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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1. 2021年3月期の業績動向
シナネンホールディングス<8132>の2021年3月期の業績は、売上高217,122百万円(前期比8.4%減)、営業利益2,935百万円(同19.6%増)、経常利益3,023百万円(同37.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益2,717百万円(同9.1%減)となった。国内経済は、コロナ禍の影響により厳しい状況が続く中、政府の経済支援策の効果などもあり、個人消費、企業収益ともに持ち直しの動きが見られた。しかし、感染症の再拡大に伴い緊急事態宣言が再発出され、飲食業界や小売・サービス業界など個人消費関連の産業が軒並み弱含みの展開となるなど、不透明な状況も継続した。国内のエネルギー業界においては、原油価格とプロパンCPが期初にコロナ禍の影響などにより大きく下落したが、OPECプラスの協調減産や世界的なワクチン普及への期待感などから上昇基調に転じ、期末には原油価格・プロパンCPともにコロナ禍前の水準に回復した。需要に関しては、少子高齢化や省エネ機器の普及、ライフスタイルの変化などにより長期的な減少傾向が継続しているものの、2021年初の寒波の影響により、下期を中心に比較的堅調に推移した。
このような環境下、同社の業績は、コロナ禍の影響による販売価格の下落により、減収となった。一方、仕入施策で安い原油を確保したことにより売上総利益率が大きく改善し、シェアサイクル事業やマイクロ風車事業など新規事業で先行コストなどが発生したものの、営業利益は2ケタ増益を達成することができた。また、第二次中期経営計画で示した定量目標と定性目標の達成に向けて、固定資産の譲渡や新規事業への継続投資などの取り組みを進めた。なお、資本効率の改善に向けた動きの中で特別損益がマイナスに働いたため、結果的に親会社株主に帰属する当期純利益のみ減益となった。
3セグメントともに増益貢献
2. 2021年3月期のセグメント別業績動向
2021年3月期のセグメント別業績は、BtoC事業が売上高62,994百万円(前期比12.8%減)、営業利益963百万円(同25.7%増)、BtoB事業が売上高135,998百万円(同8.8%減)、営業利益892百万円(同8.9%増)、非エネルギー及び海外事業が売上高17,781百万円(同15.3%増)、営業利益243百万円(前期は営業損失50百万円)となった。
BtoC事業は、原油価格やプロパンCPの低下による販売単価の下落に加えて、夏場の平均気温が平年と比較して高かったことなどによる販売数量の減少により減収となった。しかし利益面では、卸電力市場の高騰はあったものの、寒冷地を中心に差益が改善したこと、コロナ禍による「自粛」を背景に物流費や営業関連経費など販管費が減少したことなどにより大幅な増益となった。その一方、主力のLPガス及び灯油販売において進めている営業権買収などM&Aについては、案件が想定より少なかった。なお、収益基盤の強化と事業基盤の拡大に向けては、西日本エリアにおいても家庭向け電力販売事業を開始したほか、関東エリアでは水回りリフォーム専門店を新たに2店舗オープンするなど積極的に取り組みを進めた。
BtoB事業では、主力の石油事業で、コロナ禍により産業用エネルギーなどの需要が低迷したが、春先の低温や年末年始の寒波などから需要が増加に転じ、前年を上回る販売数量を確保することができた。また、電力事業で、契約電力量や太陽光発電の分譲販売が伸長した。しかし、原油価格やプロパンCPの低下を背景に販売単価が下落、減収の主因となった。利益面に関しては、物流単価上昇に伴う物流費の増加、新規事業のマイクロ風車の開発費用、コロナ禍によるSS事業の低迷という圧迫要因はあった。しかし、価格競争力の強い原油を海外で仕入れて国内に供給するという、原油市況の変動に応じた施策を講じたため、圧迫要因をカバーする以上の差益を確保、連結全体の売上総利益率改善の主因にもなった。なお、現状は、既存の石油販売施設(灯油センター)の軽油出荷能力を増強したオイルスクエアの利用率が向上しており、強みを持つ灯油の販売に加え軽油の販売にも注力している。また、法人向けを中心とした電力販売事業では、契約電力量が伸長したほか、電源構成の最適化による原価低減に取り組んだ。マイクロ風車関連事業は、2021年3月にさいたま市で実証実験を開始するなど、本格販売開始に向けた取り組みを進め、韓国で参画した大型風力発電事業は、2021年3月期下期の稼働に向けて開発許可を待っている状況にある。
非エネルギー及び海外事業において、自転車事業では、新入学需要がコロナ禍の影響で2020年3月期第4四半期から2021年3月期第1四半期にずれ込んだため販売が順調に推移、プライベートブランド車の拡販や不採算店舗の閉店を進めたこともあって収益力も改善した。シェアサイクル事業は、ステーションの設置や自転車稼働台数の拡大、利用率向上などにより順調に拡大した。環境・リサイクル事業は、コロナ禍の影響による建設工事の中断などで原料となる建築廃材の発生が減少傾向にある中、コスト抑制などによって収益を確保した。抗菌事業は、世界的な感染症拡大を受け、北米のマスク・手術衣向け抗菌剤の受注が大幅に拡大するなど好調に推移した。下期に入ると北米向け需要は一段落したものの、国内外からの問い合わせが急増したため増産体制を整備、一方で展示会への出展などマーケティング活動を強化して認知度の向上や販路の開拓・拡大に努めた。システム事業は、主力のLPガス販売管理システムが安定して収益に貢献、加えて電力自由化に対応した電力CIS(顧客管理システム)の利用が大幅に伸長するなど好調に推移、一方でシステム開発などの内製化率を高めて原価の低減を推進した。建物維持管理事業は、コロナ禍により一部施設で休業はあったものの、病院などからの感染消毒清掃の受注が増加するなど順調に推移した。ブラジルのバイオマス事業は、コロナ禍が継続していることなどを背景に撤退を決定した。以上、非エネルギー及び海外事業では、各事業ともおおむね順調に収益化が進んだことで、セグメント利益は大きく黒字転換した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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